もんすたーな世界にもんすたーで転生?   作:ひなあられ

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番外編
番外編:あるいは竜と人の頂上決戦


「…私も老いたものだな…ドンドルマからここに来るまで半日もかかってしまった…。

…おそらく、本気を出せるのはこれが最後だろう…。

さぁ、黒闘竜。いつかの日の決着を付けないか?」

 

「…ウヘェ…キヅケバオレモオッサンッテコトカヨ…。

オタガイトシハトリタクネェナァ…。

マァイイゼ。ヤッテヤンヨ。セイゼイシナナイヨウガンバリナ。」

 

「私はまだ引退するつもりはないのでね。後輩を育てるまでは死んでも死に切れんよ…。

…さて…始めようか。」

 

「…ソンジャァ…アノキノミガオチタラハジメルカ。

イロンハネェヨナ?」

 

「当たり前だ。

…それでは…」

 

「「いざ。尋常に勝負!(グルルルル!!)」」

 

ーーーーーーーー

 

先制を仕掛けたのは魂砕竜。

地面を割り砕く咆哮と共に粘菌を活性化。粘菌が緑に輝いた途端、地面から無数のキノコが放射状に生えた。

次々と量を増やしながら広がっていくキノコ。

その種類は多種多様であり、本来存在しない物ですら混じっている。

赤、青、白、紫、黄色、緑…それら全てが特殊な力を持つキノコ群は、敵を倒さんと押し迫る。

 

それを見据え、ゆっくりと腰を落とすレイスター。

ユラユラと無色のオーラを纏いながら、腰に差した太刀に右手をかける…その刹那。

 

ー斬ー

 

一本のキノコが斜めに切り倒され、二メートル以上はあったキノコが半分程度の長さになった。

すかさずそのキノコの斜面を駆け上がり、爆発すると同時に次のキノコの傘へとジャンプ。

少しのショックでも爆発するキノコを次々と蹴りながら、中心にいる魂砕竜へと向かって行く。

 

それをチラリと眺め、グルルと静かに唸った竜は、頭の角を地面に差し込んで静止した。

ブラキディオスという種族特有の攻撃。本来ならば辺り一面を爆発させる剣士殺しの技だが、この魂砕竜は違う。

 

角が地面に突き刺さった途端、太刀を体の前で斜めに構えて防御の姿勢をとる剣士。

一瞬の間を置き、地面から湧き上がる緑の奔流。

その正体は無数の樹木。地面には辛うじて人がすり抜けられる程の隙間が空いているが、空中にいる剣士にはそれを避ける術は無かった。

 

「…ゼェァァアッ!!」

 

避ける術が無ければ、避ける場所を作り出せばいい。

そう言わんばかりに、迫り来る一本の木を縦に割き斬る剣士。

二本になった木には目もくれず、目の前に存在する木を次々と斬り倒し、竜の目の前まで到達した。

 

その剣士を睨み、ゆるりと拳を引く竜。

ドオッ!という重い音と共に、左ストレートが剣士に押し迫る。

並みの者なら避けるより前にそのプレッシャーで動けなくなる程の重圧。

だが、それさえも斬り捨てんとばかりに、剣士の目がグッと細まった。

 

次の瞬間。

 

「ガァッ!?」

 

ーーキンッーー

 

プツリと音が消え、涼やかな金属の音が辺りに響いた途端、魂砕竜の足の甲殻に一本の刀傷が走った。

もしこの戦いを見る者がいたならば、その光景に唖然とするだろう。

何故ならば、剣士が一瞬『消えて』、もう一度現れた時には刀を鞘に戻した状態で静止しているように見えるからだ。

 

だが、剣士は瞬間移動などは微塵も使っていない。

拳が迫ったその瞬間。体を地面と平行になるまで倒し、足に向けてジャンプ。

地面スレスレを約10m以上飛んだ剣士は、拳の下をすり抜け、足に到達した途端に刀を一線。

すぐさま納刀した後、地面に手をついて体を起こし、そのまま静止。

それら一連の動作がただ単純に速い。

トリックも何もない。その者が使える技術がそうさせているのだ。

 

そして剣士は振り向き様、二の太刀を放とうとして…。

 

「…!?」

 

背筋を走る悪寒に突き動かされ、全力で後方にダッシュした。

その判断は正しかった。

だが、反応は間違いだった。

何故なら、魂砕竜が放った攻撃は尻尾による一撃。

それも地面を擦るようにして放たれた一撃だからだ。

左腕の振られる慣性のままに、左回りで繰り出された攻撃。

ぐるりと一回転した後、その攻撃は真の威力を発揮する。

 

例に洩れず、地面から湧き上がる樹木。

だがそれは先程の攻撃とはうって変わって、隙間のない波状攻撃。

全方位に向けて突進する樹木の群れは、一見すると森が動いているようにも見えた。

その中心にいる竜の粘菌は緑の炎を散らし、左眼の眼光で中空に紅の線を描いていた。

 

怒り状態。

 

ハンターの間でそう呼ばれているものを、この竜はノーモーションで行った。

速すぎる怒り状態への移行。

だがそれは当然とも言える。

何故なら、その怒り状態こそが彼の真骨頂だからだ。

 

「…ッッアッ!!」

 

左の排気筒が伸び、金色の蒸気が噴出。

一層の輝きを見せた右腕を、剣士のいる方角へと振り下ろした。

下から伸びる樹木を捌いていた為、反応が遅れる剣士。

ゴッ!という鈍い音と共に吹き飛ばされたが、中空にいた為か、然程のダメージは受けていないようだ。

剣士は地面に着地した瞬間、地面にヒビが入るほどの勢いで右に飛ぶ。

一瞬遅れて、そこに周りの樹木を遥かに凌駕する巨木が出現。

先程竜が地面に拳を振り下ろしたからだろう。

 

見事な引き分け。

いや、剣士が回復薬を飲み、竜が樹木による回復を図った為、振り出しに戻ったようだ。

双方全く引かず、傷も全快。

 

生えた樹木の上にいる剣士が腰を落とし、竜の全身に力が篭る。

やがて竜が空を見上げ…。

 

爆音と共に第二ラウンドが始まった。





解説:
緑化粘菌ブラキさんモーション
1、キノコ乱舞
開始咆哮と共に全方位へ多種多様なキノコが生える。緑のキノコに向かって転がると、ダメージを受けないどころか回復できる。それ以外は何らかの状態異常。
2、樹木屹立
通常状態で地面に角を指すと、中距離の範囲内にランダムで樹木が生える。一応地面が光る。爆破と違い、光と光の間にいればダメージを受けない。ただし、必ず一個はハンターをホーミングするので注意。
3、左ストレート
左手でストレートを打ち出す。ほぼノーモーションな分、結構危険。
4、樹木波状屹立
怒り状態で行うモーション。尻尾で地面を擦りながら一回転した後、大量の樹木が隙間なく湧き上がる。あまりにも隙間がない為、タイミング良く転がると、樹木の上に乗って戦える。魂砕竜の所だけ円形に空いているのでジャンプ攻撃も可能。
5、大樹屹立
怒り状態で行うモーション。左右の手足、尻尾、角、どの部位でもやってくる。攻撃の最中には勿論当たり判定があり、ほぼ即死する程の威力。ただし、モーションは大きく避けやすい。屹立する樹木に当たると、着地した場所によっては二撃目を食らう可能性あり。腕に当たると確定で二撃目を食らう。所謂根性殺し。状態異常は皆無。
6、回復
周りに一定量の樹木があると、それを糧にして回復する。生えた樹木は切り倒せるのがネック。打撃系武器は切り倒せないので注意。

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