もんすたーな世界にもんすたーで転生?   作:ひなあられ

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共同戦線

「第一部隊、砲撃初め!第二部隊、弾薬の装填準備!しっかり足止めしろよ!俺たちの未来はここにかかってんだ!」

 

「「「「おう!!!」」」」

 

これ程までのハンターが集まるとは…圧巻だな。

黒闘竜が上げたキノコ雲は、遥か遠方のギルドまで見えたようで、各地のハンターが大集結した。

ラオシャンロンによるドンドルマ侵攻や、ジエン・モーランの大討伐の際にも集まるハンター達だが、ここまでの大人数は初めてだ。

あのキノコ雲を見た者は皆、只事では無い事態が起きたと直感で感じ取ったらしい。

 

本拠地であるドンドルマが潰され、連絡手段が全く機能していない今、この増援はかなりありがたい。

実際に、昨日の夜から朝に掛けて足止めを行い、その効果も徐々に現れてきている所だ。

 

更に向こう側では、モンスターが大量に現れ、この巨大龍に攻撃をしているとの報告もあった。

龍と人、利害が一致しただけの関係とはいえ、まさか共同戦線を張る日が来るとは…巡り合わせとはわから無い物だ。

 

そして…。

 

『ザギャァァァァァアアア!!!!』

 

『ーーーーーーッッッッツツツツァァァァァァアアアアア!!!!!!!!』

 

ゴォォォオオオオオンンン!!

 

遥か頭上で行われている大決戦だ。

両者全く引いていないのか、時間を追うごとに強くなる激突音。

立ち込める煙を吹き飛ばす程の荒々しい咆哮を上げる黒闘竜と、甲高い、奇妙な咆哮を上げる古龍の戦い。

そこに人の入れる余地は無く、終末のような光景が繰り広げられている。

 

幾筋もの雷撃が空を焦がし、黒い霧が空を覆い、天を突き抜け大樹が現れ、闇が全てを呑み込み、爆炎が大地を吹き飛ばし、立ち昇る闇がそれを引き裂く。

その度に空が震え、世界が衝撃に耐えかねて呻き声を上げる。

人と龍はその音と光景に、突き動かされるようにして巨大龍の足止めを必死に行っていた。

損傷はすぐさま回復してしまうものの、拘束バリスタ弾の多用により、幾らかの足止めは出来ている。

即興で作った落とし穴による作戦もある程度上手くいっており、巨大龍の侵攻を徐々にだが低下させることに成功していた。

 

「さて…私も行くか…。」

 

あの二人は既に前線で戦っている。後脚を担当している為、『電報』と呼ばれる発明品でしか戦況を確認出来ないが、今の所善戦しているようだ。

まだまだ後輩には負けてられんからな。…全力で行かせてもらうとしよう。

 

「おい、そこの指揮官。」

 

「あぁ?今は忙し…っと、レイスターさんでしたか。何か御用で?」

 

「最前線で戦っているハンターを下がらせろ。その分余った人手はバリスタか大砲に回してくれ。」

 

「は、はぁ…レイスターさんがそう言うならそうしますが…何か妙案でも?」

 

「何、少しあの黒闘竜を見習ってみようと思ったのさ。」

 

「はい?」

 

「あぁ、いや、こっちの話だ。」

 

「そうですか…。

おい野郎共!最前線を開けろ!疲弊したハンターは休憩の後、すぐさま援護班に回れ!」

 

「「「「へいっ!」」」」

 

「これでいいんですか?…って、いない!?一体何処に…。」

 

背負った太刀を腰元に下ろし、全速力で大地を駆ける。

龍脈による身体強化。G級ハンターには必須の技能を駆使して、人の限界を超える。

 

そして、自身の生命エネルギーを力に変える『気』。龍脈エネルギーと違い、生命体に強烈なダメージを与えるそれを、太刀に纏わせる。

 

…アレが生きているかどうかは別として、なんらかの効果は得られるだろう。

 

常に体力を持っていかれる為、一瞬一瞬でしか使えない事が多いものだが、大抵のモンスターに効く。

理由はそれが生命エネルギーだからだ。この技は、相手の生命エネルギーを揺さぶる事が出来るのだが、生命エネルギーが揺れると、その生命体は揺さぶられた分のダメージを身体に負うことになる。…だと思われる。

何せこの力を使っているのは、私以外にあの二人しかいないのだ。前例が無い以上、ある程度は憶測だ。

長く説明してしまったが、要するに自身を強化して物理的なダメージを与える龍脈術よりも、ダメージが大きいということだ。

 

撤退するハンターを縫うように走り、そびえるように立つ巨大な足までやってくる。

走ってきた分のエネルギーを殺さない為に、壁…ではなく足を駆け上りながら甲殻を切る。

 

「…居合…。」

 

ズバンッ!

 

「うぉっ!?いきなり人が現れた!?」

 

「マジか…あのクソ硬い甲殻が切れてんぞ…。」

 

「おい下がれ!指揮官から命令が入ってんだろうが!」

 

「ういうい。今行きますよい!」

 

…と、まぁ、『気』を使えば、このように普通なら切れない甲殻も切れてしまう訳だ。

そして…この技の真髄は『連撃』にある。

 

龍脈術は周囲に漂うエネルギーを用いる為、攻撃力を上げるには本人の技量が問われる。更に言えば人一人が扱える龍脈エネルギーには上限が存在しており、それ以上は本人の才能に頼る事になってしまう。

一方、『気』は龍脈エネルギー以上にエネルギーを消費するにも関わらず、これも人一人が扱える上限が決まっている。幾ら攻撃力が上がるとはいえ、これでは龍脈術と釣り合わないだろう。…一つ、ある特性を除けば。

 

「フッ…!」

 

足を駆け上がった後(と言ってもまだまだ上はあるが。)、重力に身を任せて駆け下りる。

太刀を逆手に持ち、『気』を纏わせ続けながら甲殻に刃を突き立て、徐々に深く突き刺していく。

それと同時に身体を反転させ、太刀に縋り付きながら両足を甲殻に当て、全身でブレーキを掛けた。

 

「う…お…!」

 

地面まで5メートルといくばか程になった時、甲殻を蹴り飛ばし、宙返りの要領で受け身を取る。

 

…切った側から傷が塞がっていたな…やはり、一筋縄ではいかんか…。

だが、どうやら生き物の範疇にはあったようだ。

これならばやりあえる。相手が生き物ならば、絶対に勝ち目はある。

 

…ふむ…それにしても…一体、何匹『混ざっている?』ここまで膨れ上がった『気』を見るのは初めてだぞ…。

 

…この『気』の真髄…それは相手の生命エネルギーを『吸う』事。

人も竜も獣も、果ては古龍でさえ持ち合わせている『気』。それは龍脈と違い、『個性』が存在しない為か、どんな生き物からでもエネルギーを『吸える』のだ。

その為、攻撃を繋ぐ事さえ出来れば、龍脈術を超える攻撃力を得る事が出来る。

自身の『気』とプラスして相手の『気』を使い倒す。

それが『気』の真髄。

 

そして…。

 

「…私の真髄でもある。」

 

 

…さて、この『気』が通用するならば、それ相応のダメージは期待出来るだろう。

上がどうなっているかは分からんが、ここは任せろ、黒闘竜。


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