もんすたーな世界にもんすたーで転生?   作:ひなあられ

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投稿が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。


転生者のその後

「…えぇ…。」

 

これ…うん、何だこれ…。

 

ありえないでしょぉぉぉおお!?

 

闘技場が…闘技場が浮いてる…。

常に放電しながら宙に浮き、本来弾け飛ぶべき瓦礫でさえその場に留まると言う、ありえない現象が起こっている。

一応生きている人間は脱出したみたいだが、それでも変わらず危ない状況は続いている。

 

て言うか…あの竜何したし。

 

確かに転生者である俺も、この世界が俺の知っているモンハンと違うことを認識させられてから、無闇矢鱈と古龍種に挑もうとは考えなかったよ?

 

この世界ではキリンでさえ天災と恐れられており、様々なモンスターの攻撃の仕方が変化している。

例えばラオシャンロン。

普通ならただ歩いて攻撃するだけの存在だが、この世界だととんでもない強化がされている。

足踏みは地割れを作り、尻尾で周囲を薙ぎ払い、怒れば辺りに溶岩を噴きださせる。

 

初めて対決した時ビックリしたわ。

周りの人の雰囲気が雰囲気だし、会話を聞いてると、討伐どころか進路を逸らさせる事が精一杯。

大砲やバリスタはギルド員の仕事で、ハンター達の役目は地上戦。

しかも近距離武器は殆ど居らず、ランス系が得意な者が盾のみを装備し、後方のガンナーがひたすら弾を撃ち込むと言う戦法が基本。

 

昔は大長老が大野太刀一本で大立ち回りをしてハンター達を沸かせたそうだが、それでも撃退が精一杯。

最後の最後で持ち前の大野太刀を犠牲にし、脇差を使って尻尾を切り落とした事が唯一の戦果なんだとか。

 

それを超える成果は未だ出ておらず、あの伝説のレイスターでさえ角を切り落とすまでにしか至っていない。

 

それを踏まえて…だ。

 

アレ…完全に古龍種だよね?

電磁力で闘技場を浮かせるとか訳わかんないもん。

どうやったらああなるんだし。

あの中がどうなっているか分からないけど、あんなヤツがドンドルマに襲来した暁には全滅確定だわ。

どう考えてもラオシャンロン以上の被害だよ。

 

「…報告…どうしようか…。」

 

「そうですね…あの竜を古龍と認定せず、準古龍級生物として認定し、開拓地のベテランハンターを送るのが無難な選択かと。」

 

「うーん…それも考えたんだけどさぁ…。

フロンティアのハンターはかなり貴重な人材なんだよ。

それを無闇矢鱈と投入して死なせてしまうのも…ねぇ…。」

 

「しかし、現状それしか方法は無いかと。

フロンティアのハンターなら新種のモンスターへの対応も素早いですし、優れた龍脈術を事も無げに使います。

戦力的には十分なのでは?」

 

「それでもまだ足りないかな?

あれだけの兵器軍をいとも簡単に吹き飛ばしたんだ。

少なくともラヴィエンテ並みの戦力がないと…。」

 

「…そうですか…。」

 

隣にいる女性、エリナさんから意見が上がる。

彼女は古龍観測隊の隊員で、あのブラキモドキを観察し続けていたらしい。

発見後、シフトの関係でしばらく他の人が担当していたそうだが、本部の判断で担当に差し戻されたそうだ。

 

「…二人揃って黄昏ているところ悪いが、状況の報告をしてくれ。

さっきからギルドナイトの隊長が煩くてな。」

 

「あぁ、了解しました。

被害状況は見ての通り。闘技場が全く使えません。

闘技場運営側が不当に入手していた武器群の詳細は、こちらの資料に詳しく書かれております。

資料内容と私が視察したところより判断いたしますと、ここの闘技場運営者は闇ギルドと繋がっており、武器群の横流し、モンスターの不法狩猟、捕獲したモンスターへの非道な虐待等が挙げられます。

運営側の人間は全て確保しており、反抗の意思もありません。

後は資金を提供した人間を吊るし上げるだけですね。」

 

「黒闘竜の行方は?」

 

「わかりません。

闘技場内の様子が確認出来ない以上、逃走経路の判断のしようがありません。

なお、ナルガクルガの親子は水没林に帰ったようです。

捕獲と運搬の必要は無いかと。」

 

「わかった。

そこの夫婦!話がある。」

 

「ちょ、名前で呼べし!」

 

「…夫婦で反応してしまう私達も私達なんだけどね…。」

 

「いやいや、例えそうだとしても、名前で呼ぶのは常識だろ。」

 

「二人分の名前を呼ぶのが面倒だ。

だいたい、いつも一緒にいるのだから大して変わらんだろ。」

 

「…レイスターさんェ…。」

 

リア充の会話が聞こえたが、反応するのが面倒なので放置。

それより、事後報告の方が重要だ。

 

一応目的は達成。

救出、証拠品、保護と、全ての計画が順調に進行した。

問題はあの闘技場だ。

 

闘技場の役目は、保護したモンスターに人間への恐怖を植え付ける事。

そうしないとハンターと言う職業が全滅し、モンスターの進化が止まり、強力な素材も手に入らなくなってしまう。

実はかなり重大な役目を持っているのだ。

 

運営方針やそのあり方は、前世の市営プールと保健所を合わせた感じか。

闘技場は娯楽の一つで、民衆のモンスターへの理解やストレス発散の要素がある。

市営プールで言えば、水への恐怖とスポーツと言う形でのストレス発散と言った感じだ。

また、モンスターの研究の為に確保したモンスターを、自然界に返す為の訓練施設でもある。

研究の為に確保されたモンスターは、人間に対して警戒心が薄くなる傾向がある。

それを防ぐ為の処置と言う訳だ。

ある意味保健所だが、虐待する保健所と言う感じだ。

 

そんな闘技場での汚職事件…。

こりゃまた根が深そうな事件だ。

それより、根が深いって事は俺の事務処理が増えるって事に…。

あぁ…面倒くさい…。

 

ーーーーーーーー

 

「…と言う事だ。

どうやら黒闘竜は逃げたらしい。」

 

俺はこの夫婦に黒闘竜の現状を伝えた。

もし黒闘竜を討伐しなくてはならなくなった時、そこに必ずしも俺がいる訳では無い。

特に開拓地に送られていると、まず対処に向かう事が出来ない。

その為、この夫婦を育て上げて対抗出来るように訓練しようと考えたのだ。

二人とも中々の素質を持ち合わせており、夫婦ならではのコンビネーションもあるだろう。

…少し心配なのは、まだ新婚であると言う事だが、恐らく離婚する事などあり得ないだろうな。

 

「マジか…。もう一度闘いたかったんだけどなぁ…。」

 

「アレと?冗談でしょ?

明らかに前回戦った時より強くなってるじゃない!

死ぬわよ!?」

 

「…あ。」

 

「もしかしてそこまで考えて無かったとか言わないでしょうねぇ…?

だとしたら貴方は本物の馬鹿よ。」

 

「俺は馬鹿じゃねぇし!

これでも色々と考えてるんだよ!」

 

「例えば?」

 

「え…えーと…。」

 

「やっぱり馬鹿ね。」

 

「ぐ…ぬぅ…。

か、仮にそうだとしても!馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ!このバーカ!うはははは!」

 

…これは…かなりイライラするな。

これがリア充の力だとでも言うのか。

さっきから眩しくて直視出来ん。

どうすればこの雰囲気から抜け出す事が出来るのだ?

誰か…教えてくれないだろうか。

 

…おい猫。その哀れみと同情に満ちた目をこちらに向けないでくれ。

悲しくなってくる。

 

ーバルパルバルパルバルパルー

 

…ん?なんだこの歌は。

地面から途轍もない怨嗟の篭った激しい歌が聞こえてくる。

何やらリア充だとか死ねだとか不穏な響きが多いな…。

一体誰が歌っているんだ…。

 

ーリア充なんざ爆発しちまえこのやろー!ー

 

…!そうか!その手があったか!

 

「…駄目ね。どうしようも無く頭の悪い意見なんて、聞くもんじゃ無いわ…。

それでレイスターさん。…って、そっちはそっちで何してるんですか!?」

 

「…爆破の準備だ。

丁度良い所に、小樽爆弾があったのでな。」

 

「冷静にとんでも無いことをしでかさないでくれない!?

大体何を爆破しようとしているの!?」

 

「私の…いや、私達の敵だ。

猫!そいつを取り押さえろ!」

 

「はいにゃ!」

 

「ぬあっ!?ちょ、離せ!」

 

「くらえ!」

 

ブンッ!…チュドーン!

 

「ぷげらっ!?」

 

「ふっ…残像にゃ…。」

 

「アルンー!」

 

ハッハッハ。これは愉快だ。

修行中にイチャつき出したらこの方法を使うか。

 

おっと、修行の事についてまだ話して無かったな。

男の方が回復したら改めて説明するか…。




レイスターさんはこんな感じのキャラです。
別に間違ってはいません。

喋り方が少しおじさんっぽいのは、古龍と会話する事が多かったので、古龍達の喋り方が移ってしまった感じです。
ついでに、レイスターさんはまだまだ若いのです。
三十路にすら入ってませんからね。こう言う事があってもいいかと。

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