もんすたーな世界にもんすたーで転生?   作:ひなあられ

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文字数が…!少ない…!
やっぱり二千字程度が限界ですかねぇ…。


始めの一歩【改】

現在の状況。

飯…何とか調達可能。

寝床…取り敢えず確保。

安全…誰かフカフカお布団を下さい。

環境…人間様お断わり。

結論…イビルの所為で命が危ない。

 

これからどうしようとか何とかの前に、初っ端から生きる道が絶たれている件について。

 

…えー…いや、コレ本当にどうすんの。ゲーム的に言えばこのエリア(巣)から、一歩も外に出られないんですが。一番安全なルート…足を踏み外せば終わりな彼処は、イビルが来ると逃げられなくなるので却下。俺の走る速度よりもイビルの方が速い。

 

もう一つのルート…。このクソ高い崖から飛び降りる方法。ゲームの時であれば、此処から飛び降りて違うエリアに行けた筈だ。反対にそのエリアから此方に上がって来ることは不可能で、もっぱらお守り探索の帰り道ぐらいでしか使った事が無い。

 

モンスター(な)ハンターなら兎も角。俺のような弱小ブラキが通っていい道では無い。…成長すればワンチャンあるかもしれんが。イビルに至っては穴掘って飛び出して来やがったし…。

 

そうなると…飯をどうするかだな。まさかウラガンキンではあるまいし、鉱石を食う事など出来ない。…出来ないよな?

 

…あぁでも、もしかするとウラガンキンの内臓を食えば鉱石も食えるかもしれない。いや、ウラガンキンで無くとも鉱石を食うモンスター…バサルモスやグラビモスでもいい。確かブラキディオスの唾液には粘菌を活性化させる何らかの要素があった筈…。それがもし他の菌類にも作用するならば後天的に鉱石食を獲得出来る…か?

 

…可能性は低そうだなぁ…。粘菌の活性化の要素と言っても、それがただ単に湿り気を与える事による活性化だったら意味が無いし、そうぽんぽんと菌を活性化していたら直ぐに病気になってしまう。…ブラキが過酷な環境下でしか現れないのはそれが理由?…いや、普通にモガ村に出没してたな。まぁ、ゲームの話だけれども。

 

そもそもバサルモスとかグラビモス居ないし。いるのはウラガンキン位だが、今の俺に倒せる訳無い。

 

…ん…?いや、俺が倒さなくてもいいのか。イビルかウラガンキンをどうにか鉢合わせにしてやれば、必然的に殺しあう。どっちも血の気は多い方だった…筈。

 

だけどそれ何時の話になるんだよ。当分は危険を覚悟でイビルのおこぼれを預かる他無い。何とかイビルの隙を見出して行動しなければ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

意外な事実。イビルは目がそれ程良くない。…と言っても、動くものは見える様だが。だがそれでも朗報だ。何せ俺の体色はこの火山に全く適合しない蒼紺。ちょっと見渡せば直ぐに見つかってしまう。

 

まぁ、この火山の影響も少なからずある様だが。

 

吹き出す硫黄などの有毒ガス。超高熱の溶岩。常に噴火する火山。有毒ガスと強烈な熱線は目を潰し、常に噴火し続ける火山は聴覚を潰す。その為か、イビルが火山地帯へ進行して来る回数は思ったより少ない。更に言えばイビルが近づいて来る気配も容易に分かる。熱に焼かれた皮膚が独特の臭気を放つからだ。

 

…コレが分かっただけ、結構な収穫じゃないだろうか?要するに、麓に降りなければパックンチョされる可能性が極端に減る。俺の住処にやって来る事もほぼ無いという事になる。

 

そんな訳で、此処は火山の頂上よりも下。僅かに斜面があるものの、十分に開けた土地だ。まだイビルがいた痕跡…僅かな悪臭が漂っているが、それはそれでチャンスだ。イビルの観察に一日使い、その間全く寝てない上に飯すら碌に食えていない。

 

そうなるとやる事は一つ。…新鮮な生肉を戴く…!それに限る!…さて、此処に来て初めての狩りだ。気を引き締めなければ…。

 

そんな風に思いながら歩き出す事約1歩。突然地面目の前の地面が盛り上がったかと思うと、例のアイツが飛び出してきた。ベタッと着地する赤いヤツ。

 

…。

 

う、うぉらぁぁぁぁああ!!

 

 

「キュルアァァァァアアア!」

 

「(カカカッ!?)」

 

 

無様にも嘴を打ち鳴らす事しか出来ていないウロコトル目掛け、必殺のパンチを繰り出す。ゴスッ…。と言う微妙な音。当然の如くウロコトルは無傷。そればかりか押し負けているのか、全く拳が沈まない。

 

…。あ、目が合った。うわ、メッチャ怒ってるよコレ。口から微妙に炎が漏れて…炎が漏れて?

 

咄嗟にサイドステップ。が、初めて生物を殴った興奮やら何やらのせいで足をもつらせ転倒。それでも運良く避けれたらしい。足裏の直ぐ側を熱線が撃ち抜いた。

 

ヤバイ…予想外に強い。イビルの捕食を免れたのも、単純に歳を食っていたからに違いない。現にコイツ今熱線を吐きやがった!つまりそれは、それだけ成体に近いと言う事なのだろう。上半身しか見えていなかった為、よく分からなかったが、改めて見る限り普通のウロコトルの2倍はある。

 

 

無様に転がった俺を見て、嘲笑うかのように嘴を鳴らすヤツの姿が見えた。その隙を利用して立ち上がる事に成功する。さぁ、あとは逃げるだけだ。

 

そうして俺は踵を返し、逃げようとして…足が動かない事に気づいた。

 

…おい、逃げろよクソ。イビル見た後だってのに、この程度のヤツ相手にビビって逃げられないとかダサすぎるって。

 

足を動かす。人間の頃なら、容易く動いた筈の足が動かない。……なんでだ。何で動かねぇんだ。別にビビってる訳でもないし、ここから逃げるくらい楽勝なのに。怯えるどころか、こんなにも怒りが全身を支配していると言うのに。

 

………怒ってる…?俺が?そんな筈無いんだが…。

 

あぁ、でもなんだろう。悪い気分じゃないな。むしろ本来の俺そのものに戻ったみたいな、妙な感覚だ。そういや俺、なんに対してもイライラしてたなぁ。それがいつの間にかそれを抑える方法覚えて、強いヤツに媚びへつらう楽な生き方覚えて、胸の内に怒りを燻らせながら毎日過ごして…。

 

動かない足が訴えかけてくるようだった。握りしめて硬く握られた拳が震えている。いつの間にか牙が軋むほど強く顎を噛み締めていた。全身の血が沸き立つかのように駆け巡り、心臓の音がやけに大きく聞こえる。

 

 

グルリと振り返る。

 

 

前を見た。そこに居たのは、心底見下した目をして、舐め腐った態度取ってる赤蛇がいるだけだった。

 

怒り、怒り。怒り…。

 

怒り

 

喉の奥から、自分でも聞いたことのない獰猛な唸り声が出てきた。怒りが全身を支配する。

 

その怒りは眼前の敵に、そしてあまりにも不甲斐ない自分に、何よりこれから人間をやめて、モンスターのように暴れ回れる興奮に侵され、爆発的な激情となって魂に点火する。

 

 

叫べ。

 

叫べ…!

 

叫べ!

 

 

『GAaaaaaa!!!』

 

 

 

倒せ!目の前の強敵を!

 

俺には毒が無い、特殊行動も無い、ましてや拘束捕食何て出来る訳も無い。あるのは搦め手なしの拳(ステゴロ)だけ。…詰ませるな、意地で繋げろ。隙を晒せ、その上でブチのめせ。此処が正念場。腹のくくり時。こっから先の行動が生死を分ける…!

 

 

俺が動かないのを好機と見たのか、ウロコトルは鋭い嘴で喉を狙いに来た。避けるなんて高等技術は持ち合わせていない。だが足掻く事は出来る。

 

喉に食いつかれながらも右腕を振るう。技もへったくれも有ったもんじゃない。只々惰力に任せて相手の脇腹を殴り飛ばす。

 

先程のヘタれたパンチとは比べ物にならないくらいの、強烈な『打撃』。思わずといった風に怯んだウロコトルの顔面目掛け、今度は左腕を叩き込む。

 

読まれたのか咄嗟の判断か。避けられた為に拳は空振りする。しかしそれで終わりでは無く、奴は体当たりをかまして来た。

 

それにより身体が浮き上がり、何も出来ない俺。何せ相手の体格は此方の二倍。そうだとしても、まさかここまで吹っ飛ばされるとは思わなかった俺は、なす術無くウロコトルの熱線を食らってしまう。

 

…アッツぅ…。クソッ!腹焼かれた!だがまだやれる!幸い火傷程度で済んでいる。熱線を吐き終わって隙だらけな今がチャンス!

 

一歩。奴は驚愕に目を見開きながらも、再び熱線を吐く構えを取った。

 

二歩。一瞬遅れて放たれる熱線。俺はそれを、左腕を犠牲にして耐え切った。

 

三歩。必殺の距離。体調はこれまでに無いほど最悪だったが、振り上げた右腕だけは最高潮に力が篭っていた。

 

 

拳を奴の脳天に叩き込む。ドッゴォッ!と言うちょっとした爆音を響かせ、ウロコトルはその顔面を地面にめり込ませた。だがまだ生きている様だ。俺は止めを刺すべく、身動きの取れない奴の脳天目掛け、何度も拳を振り下ろしたのだった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

今世初の狩り。色々とズタボロにされたが、何とか勝てた。アレだな。今回は人間の思考に助けられたって感じだな。もし普通のモンスターなら、腹に熱線を食らった時点で逃げ出してた筈だ。…その代わり、戦う戦わないで散々迷ったけど…。其処はもう、性格なので直しようが無い。

 

何はともあれ食料ゲット。イビルの来ない内に食べてしまうとしよう。


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