もんすたーな世界にもんすたーで転生?   作:ひなあられ

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少し早めの投稿です。



黒キ竜ハ紅キ心滅ノ光ヲソノ眼二宿ス

龍脈よりエネルギーを吸収。

狂心を起動。

怒り状態に移行。

排出機構の変形を開始。

完了。

尻尾の変形を開始。

完了。

粘菌へのエネルギー供給を開始。

完了。

 

ファイナルモードへの移行が完了しました。

 

 

 

ー蒸気が視界を塞ぐ。

ー視界の端が赤く染まる。

ーそれに合わせて景色から色が抜け落ちる。

 

「グルルル…。」

 

ー心臓の横で、あり得ない程の速度で動く機関がある。

ー自身の出した赤い残光が白い光となって目に映る。

ーモノクロの映像の中、敵の姿だけが鮮明に映し出される。

 

「…ォォォオオオ」

 

…考える?

そんな暇があったら叩き潰せ。

…攻撃を避ける?

攻撃には攻撃を返すまで。

…小細工?

力の前ではそれすら無力。

 

今はただ、全力で闘う。それだけだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

二匹の狂った龍の咆哮が響き渡る。

片方はおどろどろしく、地を這うように。

片方は猛々しく、天を突き破るように。

 

先に攻撃をしかけたのはどちらだろうか?

 

目の前を薙ぎ払わんと緑…いや、もはや赤黒くなった竜がブレスを吐く。

 

対するはこちらも赤黒い竜。

 

ブレスが吐かれるその瞬間、地面に二つのクレーターを残し、その竜の姿が掻き消えた。

人の動体視力を超え、最早残像しか残らない。

黒い霞の中に見えるのは紅い残光。

それは、その竜の目が発光していることを示している。

 

 

ゴバァアアアアアア!!

 

 

狂気が凝縮されたような赤黒いブレスの中を、物ともせずに突き進む。

いや、あまりの早さに真空の壁がその竜を守っているのか。

ブレスは黒い霞を避けるように流れ、黒い霞は赤黒い巨体に当たってその進撃を止めた。

 

 

ドォオオオオンンン!!

 

 

ー衝撃ー

 

右から左に振られる頭と、猛スピードで突っ込んだ角がぶつかり合う。

ぶつかり合った衝撃が、地面を円状に波だ立たせ、押し出された空気が轟音を奏でる。

ぶつかり合ったまま両者一歩も引かず、そのまま押し合いになった。

黒い甲殻が軋みを上げ、赤黒い皮膚が捻れていく。

 

だが、その拮抗は唐突に終わりを告げた。

 

ブラキの足元が再び爆発。

それによってさらに推進力を得たブラキは、そのままイビルを押し込んだ。

 

体制が崩れ、転倒寸前となるイビル。

そこに追撃をかけようとするが、爆発により体制を崩したのかそれ以上進まないブラキ。

果たしてイビルは…どうやら持ちこたえたらしい。

 

「グァァァアア!」

 

体制を立て直し、すぐさまブラキに向かって攻撃をしかける。

地面を陥没させながらの突進。

ブラキの一歩手前で横に一回転。

尻尾がブラキに迫る。

 

ドガンッ!

 

再び爆発音。

ブラキは横にも後ろにも避ける事は無く、真上にジャンプした。

その右手は既に引き絞られており、イビルの何処を殴るかを探っている。

 

ズドンッ!ーーッッッツォォォオオオン!

 

「グギャァァアア!!」

 

霞む程の速さで振られた拳はイビルの背中に命中。

一撃で足が地面にめり込み、続く爆発でめり込んだ地面が半円状に吹き飛んだ。

途轍もない威力だが、イビルの背中には焼け焦げた跡が付くのみで、大した損傷にもなっていないようだ。

巨体に物を言わせ、ブラキを振り払うイビル。

片腕だけで背中に張り付いていたブラキは、振り払われる寸前に自分から飛び退いた。

 

両者の間に体二つ分の間が空く。

ここでも先に仕掛けたのはイビルの方だった。

頭を後ろに引き、口を大きく開ける。

そして大地を喰らい、巨大な土塊を放り投げた。

大きさは中型の竜二匹分はあるだろうか。

放物線を描いている為、避ける箇所など何処にも無い。

 

だが。

 

ブラキに焦燥の色は無い。

尻尾のヒレが一瞬で展開。ヒレには縁取るように赤い粘菌が付く。

そして、変化し伸びるようになった尻尾を、ヒレだけ地面に突き刺す。

そのまま一歩前へ踏み込み、巨大な土塊目掛けてサマーソルトを叩き込む。

いや、むしろ切り捨てると言った方が正しいか。

 

ー斬ー

 

ドドドドゥン!

 

土塊は真っ二つに、尻尾の通った跡は爆発が巻き起こる。

振られる瞬間に伸びた尻尾は、イビルの顎を綺麗に捉えた。

 

「グギャァァアア!?」

 

顎をカチ上げられたせいで、脳を揺さぶられたのか、フラフラと後退するイビル。

サマーソルトを終え、地響きと共に地面に着地したブラキはそれを逃さなかった。

 

爆音と共に飛び出すブラキ。

仰け反ったせいでガラ空きの腹に角が命中。

 

「グルゥァアアア!!」

 

唸り声を一つ上げ、ぶつかった後も押し続けるブラキ。

ウエイトの差を物ともせずに押し込んでいく。

イビルももがくように身じろぎをするが、押される所が腹から横っ腹に変わっただけだった。

 

足元を爆発させ、さらに加速。

それに合わせて角も光り出す。

 

ーードォオオオオンンン!

 

「ゴギャァアア!?!!?」

 

角の先端が爆発。

押されていた以上の勢いで吹き飛ぶ。

なす術もなく、無様に壁に叩きつけられるイビル。

辺りに地震のような揺れが起こる程の勢いで叩きつけられたにも関わらず、まだ生きている。

だが、勢いがありすぎたのか、壁に埋まって出られないようだ。

 

そこに近寄る黒い影。

 

「グルルル…。」

 

黒いブラキである。

未だにそこから出ようともがく竜に対して、その両腕をゆっくりと後ろに引き絞る。

その拳には、今にも爆発しそうな光りが宿る。

そして…。

 

ゴギュバァアアア!!

 

空気が割れるような独特な音。

それが何連続も響き怪音を奏でる。

腕は黒い霞と化し、唯一見られるのは引き戻された拳の残像のみ。

大気を揺るがし、地面を抉り、壁を吹き飛ばす。

吹き飛ぶ暇などなく、なす術もなく殴り続けられるイビル。

抉れた地面は赤く赤熱し、辺りの温度を上げていく。

巻き上げられた瓦礫は、黒い霞に当たるたびにオレンジの閃光となり光り輝く。

やがてイビルの姿が見えない程に閃光が走り始め、それに合わせて壁が融解していく。

緑のヒルのような尻尾が宙を舞い、足…いや、もはや骨と化した体の一部が地面に転がり、溶けるように消えていく。

爪や牙、鱗や皮膚。

ありとあらゆる体のパーツが、冗談のように吹き飛び、地面を転がっていく。

 

だが、止まる事を知らぬような黒い嵐は、唐突に吹き荒れるのを止めた。

 

「ゴ…ルァアア…。」

 

後に残ったのは、息も絶え絶えと言った様子のイビル。

それもそうだろう。

頭部は損傷が酷く、たてがみのような龍属性のオーラでしかその形を見て取れない。

左脚は無くなり、皮膚は爛れ、鱗が剥がれ落ちている。

尻尾に至っては、付け根から"殴り潰され"その先が無くなっている。

胴体が無事なのが奇跡のような有様だった。

 

やがて立つ力も無くなったのか、ゆっくりと地面…いや、溶岩の海にその身を横たえる。

埋まっていた筈の壁が無くなり、もたれかかる物が消失したのもあるかも知れない。

 

だが。

 

ブラキはその手を休めない。

右腕を引き、何かを溜め込むように構える。

やがてその右腕は発光し始め、エネルギーのような物を纏い始める。

それに押されるように溶岩が波立ち、只ならぬ気配を伝える。

引き絞られた拳は大上段に構えられ、そこからさらに引き絞る。

限界なのだろう。それ以上引き絞るのを止め、ピタリとその動きを止めた。

 

「ゴガァアアッッ!!」

 

振り下ろす。いや、叩き下ろす。

それは唯一無事だった胴体目掛けて降ろされた。

そしてその箇所には…以前、何かに殴られたような傷が残っていた。

 

ズドンッ!

ーーーーッッッツーーンンンンーー

 

振り下ろされた拳は胴体を突き破り、地面に突き刺さる。

轟音が振動となり地面を伝い、振り下ろされた地面が閃光に飲み込まれる。

 

後に残ったのは…。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーッッッァアアアァァ!!!」

 

いつの間にか夕暮れとなった空に、天を突くように吠える黒き竜のみだった。

暗くなり始めた大地に、二筋の紅い光りが流れる。

それは…まるで涙のよう。

心なしか、吠えたその声も、涙に揺れるように聞こえた。




やったね!ブラキさんは復讐を果たしたよ!
最後のアレは…皆様の御想像にお任せします。

と言う訳でブラキさんの本気回でした。
いかがでしたか?
…若干擬音が多いのがアレですね…反省。

なにはともあれ一つの物語に終止符が打たれました。
ブラキさんはこれをどう乗り越えるのか…。
作者も楽しみです。

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