銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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お久しぶりです

中々に煮詰まってしまったのですがキリがいいので更新いたします

なんか知らないうちに映画がはじまってたり、特殊文字とか入れられるようになってたのでちょこっとだけ試しました




第六十二話:災禍の先へ

 「こうしてる間にもユイが…!!」

 

 4体のクロム・ディザスターとの混戦は苛烈の一言であった。

 何度目かわからない攻撃を凌いだキリトは、焦るようにポータルの先を見る。

 まるで鬼神のように暴れまわる4体の災禍の鎧は例え力が弱まっていたとしても十分脅威であった。

 

 「ーーキリト!!」

 

 そんな中、黒雪姫の凛とした声が響く。

 

 「今から私達で隙を作り出す!!その隙にヴァベルの元へ!」

 

 「黒雪…!」

 

 「チャンスは一度だけだ…!ーー合わせろグラフ!!」

 

 「了解だロッタ!!」

 

 並び立ったグラファイト・エッジとブラック・ロータスは全身から心意光を解き放つと、その全てを二刀に収束させる。

 

 「「光環連旋撃(ジ・イクリプス)!!」」

 

 放たれた心意技による攻撃は、凄まじい威力を持ってクロム・ディザスター達に襲いかかる。

 激しい爆風を巻き起こしたその攻撃は、戦況を切り開くことに成功した。

 

 「ぐっ…」

 

 「黒雪!!」

 

 「黒雪さん!」

 

 「私のことはいい…!早く行け!」

 

 強力な心意技を使用した反動で膝をつくブラック・ロータスに駆け寄ろうとするキリトとアスナであるが、返される言葉に動きを止めると、コクリと頷き合う。

 

 ゲートに向けて走り出したアスナとキリトに気づいたディザスター達は、それを妨害しようと各々が戦っている相手を無視してでも二人を狙い始める。

 四代目クロム・ディザスターがその大斧を投げつけようと振りかぶった瞬間ーー

 

 「させない!《バレットオーダー》!」

 

 間髪入れずに放たれたシノンの一撃がそれを弾き飛ばした。

 特物を無くした四代目に走り込むのは同じように斧を主装備とするエギルと、カタナを構えたクライン。そしてシリカとリズベットだ

 

 

 「おらぁ!!」

 

 「くらっちまえ!」

 

 「てい!」

 

 「おりゃあ!」

 

 気合い一閃。

 ソードスキルの輝きに包まれた一撃がその巨体を吹き飛ばした。

 

 「行けキリの字!」

 

 「ユイちゃんを助けてこい!」

 

 「ここは私達が抑えますから!」

 

 「ちゃんと戻ってきなさいよ!」

 

 キュルル!とピナもシリカの頭の上で鳴きながらキリト達に声援を送っている。

 

 「Желаю удачи!(ジェラーユ・ウダーチ)、幸運を貴方達に!」

 

 「エック・カッラ・マーグル・メキアー・レクン!!出し惜しみは無しよ!!」

 

 セブンによるバフが二人を包み込み、更に走る道をレインのオリジナルスキルによって射出された剣達が作り始めた。

 

 「ルオオオオオ…!!」

 

 剣軍を吹き飛ばそうとブレスを放とうとする二代目ディザスターであるが、突如背中に衝撃を受けた事でブレス攻撃を中断してしまう。

 

 「こっちよこっち!」

 

 そこにいたのは愛用の短剣にソードスキルの輝きを纏わせたフィリアだ。

 短剣の一撃にはクリティカルダメージが発生しており、受けた相手を怯ませることができたのだ。

 リアルラックがどこまでゲームに影響するのかはわからないが、ここ一番で大きな効果をもたらしてくれたことにフィリアは笑みを浮かべる。

 

 「アスナ!キリト!」

 

 「ストレア!」

 

 尚も走る二人に並走する少女ーーストレアは両手剣を構えながら必死の表情でキリト達に言葉をかける。

 

 「私もいく!!」

 

 同じMHCPでもあるストレアにとって姉であるユイは大切な存在だ。

 浮遊城での戦いでは実際に助けてもらったこともある。

 いまも囚われている姉を助けたい気持ちは二人にも負けないだろう。

 

 「抑えられない…!!キリトさん!!」

 

 ゲートまであともう少しのところで、三代目ディザスターがタクム達の包囲網を抜けて襲いかかってくる。

 

 「邪魔…しないで!!」

 

 三代目の攻撃を受け止めたストレアは、雄叫びと共に大剣を振り切った。

 吹き飛ばされ空中で体勢を崩した三代目ディザスターをリーファの風魔法が吹き飛ばし、ユウキが《ヴォーパル・ストライク》で追撃する。

 

 「お兄ちゃん!」

 

 「アスナ!」

 

 語る言葉は必要ない。

 ただアイコンタクトで先に行けと促す二人にキリト達は頷きを返し、ストレアと共にポータルに飛び込んだ。

 まるでエレベーターのように三人の体を運んだポータルの先にはダンジョンの終着点。

 そしてそのエリアの中央、祭壇のような場所に立っていたのは白いワンピースに身を包んだ黒髪の少女であった。

 

 

 「ユイちゃん!」

 

 「ユイ!!!」

 

 

 

 「…!パパ!ママ!ストレアも!」

 

 アスナとキリトの言葉に反応した少女は三人に駆け寄ろうとするが戸惑うように体を竦める。

 まるで何かを恐れるように。

 

 「…!この気配は…奴か!!」

 

 その様子に違和感を感じたキリトは周囲の気配を探る。

 すると物影から漆黒のドレスに身を包んだ少女が彼らの前に現れる。

 

 「ここまで来たか…」

 

 「ペルソナ・ヴァベル…!ユイを解放しろ!」

 

 「そしてあなたの目的を教えて!一体どうしてこんなことをするの?」

 

 

 二人の声にヴァベルは軽く微笑みながら口を開く。

 

 「目的は既に話したはずだ。私はこの世界に黄昏を導く…その最初の一手として、このNPC…貴様らがユイと呼ぶプログラムを滅する」

 

 「でもユイ…お姉ちゃんはキリトがSAOから持ち込んだ存在だよ!そう簡単に消すことなんてできない!」

 

 「貴様は…、まあいい。確かにこの者を消すのには骨が折れる。だが、何のために私がこの世界に負荷をかけ続けていたと思う?今現在、下の階層で戦っている同胞が、何の意味もなくその姿を増やしたと思っているのか?」

 

 「負荷…?一体何を!!」

 

 声をあげるストレアに眉をひそめるヴァベルであったが、溢れる喜びを必死に隠すように言葉を続ける。

 その垣間見得る狂気に思わず気圧されたキリトは質問を返すことしかできない。

 

 「全てはこの瞬間の為に…!」

 

 そう叫んだヴァベルが右腕を振り上げると、祭壇の前にノイズが走り、一つのオブジェクトが浮かび上がる。

 操作盤が浮かび上がるそれはキリトに取ってあまり見覚えが無いもの。しかしそれは何なのか、彼は直感で理解した。

 

 「GMコンソール…!?」

 

 「ーーユイちゃん!!」

 

 「パパ、ママーー」

 

 ユイの体から粒子のようなものが溢れはじめる。

 ヴァベルはGMコンソールから接続できる管理者権限により、ユイを削除しようとしているのだ。

 手を伸ばすユイに慌ててアスナが駆け寄ろうとするも二人の距離はかけ離れている。

 ユイの手は掴まれること無く、アスナの目の前で消滅ーーー

 

 

 させない

 

 

 瞬間、世界にノイズが掛かった。

 

 消滅する筈だったユイの体はまだ実体を保っている。

 

 「なに…?」

 

 困惑の声を出すヴァベルであったが、覚えのある情報圧を感じると忌々しげにその発生源を睨み付ける。

 

 「させない…させないよ…!」

 

 「ここで干渉してくるか…!ストレアァ!!」

 

 「ストレア…?」

 

 キリトは名を呼ばれた少女を見つめる。

 土妖精(ノーム)の少女は苦しそうな表情を浮かべながらも彼ににこりと微笑み、ヴァベルを睨み付けた。

 視認することはできないが、どうやら彼女がヴァベルの妨害を行っているようだ。

 

 「キリトくん!」

 

 「ーーーっ!!」

 

 しかし呆けているわけにはいかない。

 アスナの声に弾かれるように走り出したキリトは現れたコンソールにかじりつくと直ぐ様操作を行う。

 

 GMコンソールによる権限でユイが消去に追い込まれているなら、その処理が完了する前に彼女のプログラムをストレージに仕舞えば良い。

 やることはそう、かつてSAOでナーヴギアの個人ストレージにユイを移したのと同じ要領だ。

 

 「やめろ…!やめろ!!」

 

 「ぐっ…!!」

 

 しかしヴァベルもストレアの相手をしながらもユイの削除処理を進めようとコンソールを操作し始めた。

 

 まるで人ではない(・・・・・)処理速度に歯噛みをするキリトであるが、諦めるわけにはいかない。

 ストレアの協力もあり、ヴァベルの妨害があったとしてもこのままユイを保護することはできそうであった。

 

 「ここまで来たのだ…ここに来て…邪魔などさせるものかぁ!!」

 

 「きゃあっ!!」

 

 ヴァベルもわかったのだろう。そう悲壮に満ちた声をあげると、衝撃波のようなものでストレアを吹き飛ばす。

 そしてそのままレイピアを構えてキリトに向かって飛びかかった。

 刀身を包むライトエフェクト。

 不意をつかれる形になったキリトはその攻撃に対応できない。

 

 アスナはユイの近くにいるため援護をすることができず、愛する人に迫る刃を止めることができない。

 しかしその細剣が描く軌跡を見て心が跳ねたのがわかった。

 その動きは彼女がSAOにて愛用し続けたソードスキル。

 

 体を捻るようにしながら剣をまっすぐ突きだす一連の動作は細剣スキルの《リニアー》であった。

 

 勿論ALO内ではソードスキルが実装されているのは周知の通りであり、アスナ以外にも使っているプレイヤーはごまんといる。

 しかしそう、その動きはまるで自分を見ているようでーーー

 

 「やめろぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」

 

 その瞬間、雄叫びと共にキリトとヴァベルの間に何者かの影が入り込んだ。

 凄まじい勢いで飛び込んできた戦士はその勢いのまま体を捻りながら腕を振るうと、襲いかかる細剣を弾きあげた。

 

 「ーーーっ貴様は!!」

 

 驚愕の声を上げたヴァベルは、ソードスキルが強制的に妨害されたことによる弊害で硬直してしまう。

 

 ヴァベルの攻撃を弾いた人物は、銀色の装甲を輝かせた戦士、シルバー・クロウである。

 先ほどまで戦っていたからか、その装甲は傷だらけだ。

 しかし立ちふさがる彼の姿はそれを微塵も感じさせない。

 

 来るであろう追撃に備えるヴァベルであるが、当のシルバー・クロウは構えを解くとヴァベルのことを見つめる。

 

 

 「もうやめよう…こんな、悲しいこと…」

 

 そして言い聞かせるように、その言葉を放ったのであった。

 

 




迫真の震え文字

ストレアさんはどうしてヴァベルに抵抗できたんでしょうね
同じ声の人が一人足りないのでそこそこ無理はしているみたいですが…

なんてできた妹なんだろうか

ご都合でもこの章でどうしてもやりたかったことができるまで頑張りたいとは思ってます

よろしくお願いいたします


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