銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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就活とかで忙しいのに書いてる人、だーれだ

私です


オーディナルスケール二週目行ってきました。
やっぱり最後の追い込みのようなところが好きです

同じところで感動して同じところで盛り上がりました

今回少し書き方を変えてみました

それではどうぞ


第三十二話:月光の鴉

 無制限中立フィールド

 

 現実世界では梅郷中学校のグラウンドにあたるエリアにてとある戦いが起きてていた。

 

 

 その中で一際目立つのは左手を触手に、右腕を火炎放射機に変えたアバター。

 梅郷中を襲った能美征二ことダスク・テイカーだ。

 

 その触手はフィールドを縦横無尽に叩き回り、数少ないオブジェクトを破壊しながら上空に右腕の火炎放射機から火炎弾を放ち続けている。

 

 その火炎弾が向かう先には一体の翼が舞う。

 

 全身を銀の装甲で覆い、その背中にある加速世界唯一の銀翼で縦横無尽に空を飛び回る。

 

 

 「このっこのっこのっ!!当たれ!!当たれよ!!!」

 

 

 苛立ちを隠せないダスク・テイカーの放つ攻撃はしかし、その鴉に命中しない。

それどころか徐々に近づいてくるではないか。

 

 

 「ーーっ!!僕を見下ろすな…!雑魚の分際で、この僕を、僕をっ!!僕をぉぉぉっ!!」

 

 

 思い付く限りの呪詛を吐きながら火炎弾を連射するダスク・テイカーだが、突如その動きが止まる。

 火炎弾を放つための必殺技ゲージが無くなったのだ。

 しかし怒りで頭に血が上った彼はその事に気づくことが遅れてしまった。

 

 

 「しまっーー」

 

 

 「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 

 

 テイカーが己の失策に気づいたのは数秒後。

 たかが数秒。しかしその数秒を見切った鴉ーーシルバー・クロウは一気に急降下の体勢を取り、得意のダイブキックをテイカーに叩き込んでいた。

 

 

 大きな音を立ててダスク・テイカーが吹き飛ばされる。

 大ダメージを与えたハルユキは次の攻撃に切り替えるために一瞬だけ意識を休ませる。

 

 

 「ーーえっ、うわっ!!」

 

 

 その一瞬、今度は逆にシルバー・クロウの体が何かに引っ張られる。

 慌ててその方向を見ると膝を付きながらその触手をクロウの足に巻き付けたダスク・テイカーがまるで魚を釣るようにクロウを引き寄せていた。

 

 

 「ちぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」

 

 

 火炎放射機を大型カッターに変えたテイカーは、引っ張られた勢いで此方に向かってくるクロウにそれを叩きつけようと降り下ろす。

 隙を付かれたシルバー・クロウの翼ではこの攻撃は回避することはできないだろう。

 

 

 しかし

 

 

 

 「《ゲイルスラスター》ッ!!!」

 

 ハルユキの声に応えるように背中に装備されたブースターが火を噴いた。

 シルバー・クロウの動きが止まると共に、途端にテイカーの触手に負荷がかかる。

 

 「ちぃっ!!」

 

 

 このままでは触手ごと引っ張られると感じた能美は、クロウを拘束していた触手ごと強化外装の装備を解除する。

 結果、シルバー・クロウとダスク・テイカーはお互いに距離を取ることとなった。

 

 

 「クロウ……っ!!」

 

 

 「はぁ、はぁっ、大丈夫だリーファ……まだ大丈夫だっ」

 

 荒い息を吐きながら、シルバー・クロウは自分を心配する声に応える。

 気丈に振る舞うがその体はガタガタであった。

 彼の名を証明する銀色の装甲の殆どは剥がれ落ちている。

 

 その痛々しい姿を見た《リーフ・フェアリー》こと桐ヶ谷直葉は今すぐに加勢に行きたい身体をグッと堪え、自分の背後を見つめた。

 リーファの後ろには仲間である《シアン・パイル》と《ライム・ベル》が互いに寄り添うように倒れているのだ。

 

 そしてクロウ達から少し離れた場所に入る黒色のアバター、《ブラック・バイス》に視線を移す。

 

 シルバー・クロウをここまで傷つけたダスク・テイカーの援軍、彼の存在だけは直葉達にとって予想外のものだったのだ。

 

 

 「変な気は起こさないでくれよ?別にわたしは好き好んできみ達と戦いたいわけじゃないんだ。あくまでも報酬分しか働かない。きみが動かなければわたしは何もしないよ」

 

 「ーーっ」

 

 

 順を追って話そう。

 

 

 能美征二、ダスク・テイカーの秘密を掴んだハルユキ達は彼と互いのポイントを全て賭けた決戦に挑んでいた。

 

 まず、心意を習得したシアン・パイルが先陣を切りダスク・テイカーを追い詰めた。

 しかしここで彼にライム・ベルが必殺技《シトロン・コール》を発動。

 

 戦闘により傷ついた身体を回復していくダスク・テイカーであったが、ライム・ベルの狙いは別のところにあった。

 彼女の必殺技は回復魔法ではなく、時間を操るものだったのだ。

 

 その効果によってダスク・テイカーはシルバー・クロウの翼を奪う前のステータスに戻された。

 つまりシルバー・クロウの翼は彼の背中に戻ったのだ。

 

 これで心置き無く戦えると、動揺するダスク・テイカーに攻撃しようとした四人の前にある敵が現れた。

 

 

 全身が黒色の板のような体でできているアバター、ブラック・バイスだ。

 彼はダスク・テイカーの手によって用意された援軍で、加速世界唯一の減速能力者というとんでもない存在だったのだ。

 ハルユキ達との戦いに乱入できたのも、その能力が関係しているようだ。

 突然の援軍に驚き、動きを止めたシルバー・クロウが先ずブラック・バイスの身体を構成する板によって押し潰されるように拘束されてしまう。

 

 続いてリーファも不意をつかれその身体を大きく吹き飛ばされ戦線から離れてしまった。

 一瞬のうちに二人になってしまったシアン・パイルとライム・ベルに、ダスク・テイカーの触手が伸びる。

 

 レベル4になったとしてもまだ日の浅いライム・ベルはその触手に捕まってしまい、彼女という人質を取られたシアン・パイルはテイカーの心意技によってその両肩を切り落とされてしまったのだ。

 

 自分の翼を奪ったライム・ベルを少しずつ痛めつけるダスク・テイカー。

と、ここでリーファが復帰、加速した一撃でテイカーの隙を作り二人を救出。

 怒り狂うテイカーの猛攻を必死に凌いでいたリーファのもとに自力で拘束から抜け出したシルバー・クロウも参戦し、テイカーに叫んだ。

 

 

 『元々オレとお前の戦いだ!!決着をつけるぞ!能美!!!』

 

 

 普段の冷静な能美だったらハルユキの挑発に乗るようなことはしなかっただろう。

 しかし、翼を奪い返され自身の計画外の事態が起きすぎて頭に血が昇っていた彼はハルユキとの一騎討ちを承諾した。

 

 そして冒頭に戻る。

 

 

 最初のぶつかり合いは頭に血が昇っていたダスク・テイカーの隙をついたシルバー・クロウが優勢だったが、ここで相手は冷静さを取り戻したらしい。

 荒い息を整えながらダスク・テイカーはシルバー・クロウを睨み付ける。

 

 

 「まさか、こんなことになるなんて思いもしなかったですよ有田先輩……。僕のプランの中であなたは大人しく僕にポイントを持ってくるだけの犬だった筈なのに……」

 

 「飼い犬に噛まれるっていうのはこう言うんじゃないか?少なくともお前の思い描くプランとやらを滅茶苦茶にできて満足だよ」

 

 「減らず口が減らない人だ……!」

 

 ハルユキの皮肉まじりの言葉に吐き捨てるように答えた能美は、自身の内に入り込む。

 そも、自分のような加速利用者が目の前の雑魚に負けることなどありえないのだ。

 

 「見せてやりますよ……!僕の力を……!!」

 

 腕を心意の爪にしたダスク・テイカーは真っ直ぐシルバー・クロウに走り込む。

 再び飛び立とうとするシルバー・クロウだったが、必殺技ゲージが殆ど無くなっている事に気づく。

 

 先程のぶつかり合いで此方も必殺技ゲージを消費してしまったようだ。

 

 

 ーーーゲイルスラスターのリチャージはもう少し時間がかかる……っ!!

 

 

 

 ブラック・バイスの拘束から無理矢理脱出するために有らん限りの心意を捻り出した今のハルユキに光線剣(レーザーソード)を出せるかと言われれば否だ。

 降り下ろされる邪悪な爪を紙一重で回避したシルバー・クロウの腕にダスク・テイカーの触手が巻き付く。

 

 

 「あはっ!!逃がしませんよ」

 

 

 狂喜に満ちた声と共に振り下ろされる爪はシルバー・クロウが拘束されている腕とは逆の、左肩から下を綺麗に切断した。

 

 

 「うぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 

 「あははははははは!!!」

 

 

 痛みに思わず声を上げるハルユキに、能美は高笑いしながら追撃を加える。

 必死に回避しようとするが、その爪はシルバー・クロウの腹部を抉る。

 

 

 「あっれぇ?せんぱぁい、どうしたんですかぁ?」

 

 

 ついに膝をついたシルバー・クロウを見下ろしたダスク・テイカーは、込み上げる笑いを隠そうともせずに声をかける。

 

 

 「先程まで飼い犬に腕を噛まれるとか言ってませんでしたっけ?それがっ、ほら!こんな様ですよぉ?」

 

 

 ガンッとシルバー・クロウのヘルメット部分を蹴り飛ばすダスク・テイカー。

 地面に倒れこんだクロウを見下ろしたテイカーはクックッと笑う。

 散々好き勝手して自身の手を焼かした相手がこんな無惨に倒れているのだ。

 これは傑作だ。

 

 

 「ほら、命乞いしてくださいよぉ。あの時みたいに土 下 座 してくださいよ、有田せんぱぁい」

 

 「ーー、ー」

 

 

 「んー?何て言ったんですか?聞こえないですよぉ?」

 

 

 弱者は強者に勝つことはできないのだ。

 相手の泣き叫ぶ声は何度聞いても聞き飽きない。

 愉悦に浸りながらも、これまでの相手にしたように、ハルユキの命乞いを聞き逃すまいと耳を済ます能美。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そうやって調子に乗ってるからオレみたいなのに反抗されるんだろ、ばーか」

 

 

 

 

 

 「~~~~~~お前ぇぇぇえっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 明らかに挑発の言葉。

 予想だにしなかった言葉に逆上したダスク・テイカーはシルバー・クロウにその爪を突き立てようとする。

 

 

 ーーこれが振り下ろされれば、オレはブレイン・バーストを失い、その記憶も無くす。

 

 

 その光景を見ながらハルユキの思考は急激な加速を起こした。

 

 シルバー・クロウの右腕は拘束されていて光線剣(レーザーソード)を使おうにも使えない。

 そんな状況でも彼は冷静だった。

 彼が脳裏に浮かべるのは尊敬し敬愛する黒の王ブラック・ロータスの姿。

 

 元々この心意技だって彼女の影響が少なからずある。

 彼女に追い付くための剣。

 両手足が剣の、ブラック・ロータス。

 

 ーーそうだ。

 

 

 あの人はその四本の剣を自在に扱っていた。

 

 こんなところでやられていたら、僕は、オレは、何時までたってもあの人に追い付けない。

 

 まだだ、まだ僕は負けてない!!!

 

 

 「光線…(レーザー…)

 

 祈るように、願うように。

 背中の翼を展開しながら、技の名を紡ぐ。

 

 「無駄ですよ!!その腕じゃあね!!」

 

 

 「(ソード)!!」

 

 

 振り上げたのはその脚。

 シルバー・クロウの右足は心意光に包まれ、ダスク・テイカーの一撃を防いだ。

 

 「なっーー!?」

 

 「うおぉぉぉぉぉぉおおっ!!!」

 

 雄叫びを上げながらシルバー・クロウは自身の翼をはためかせ、右腕を強く引く。

 それと同時に身体を捻り、左足にも心意光を纏わせ右腕に絡み付いている触手を切り裂いた。

 

 「うっ、うわぁぁぁぁぁぁあっ!?」

 

 まるで背負い投げのような投げを受けたダスク・テイカーは、《月光》ステージのフィールドに叩きつけられる。

 

 

 

 ーー何故いまにもやられそうな奴がこんな力を!?

 

 

 背中に衝撃を受けながら能美は本日何度目かわからない驚愕をしながら立ちあがり、シルバー・クロウの方を向いて目を見開いた。

 

 

 「うおぉぉぉぉっ!!!」

 

 

 シルバー・クロウが、背中のゲイルスラスターと翼を展開して、超スピードでつっこんできたからだ。

 

 

 思考したのは一瞬。

 

 

 腹部に強い衝撃を受けたダスク・テイカーは、そのまま学校の校舎に勢い良く激突した。

 

 

 力を使い果たし地面に倒れこんだハルユキは荒く息をつきながらダスク・テイカーに、能美に言葉を放った。

 

 

 

 

 「能美……っ、これがバーストリンカー…だっ…!」

 

 

 

 

 

 




原作と大きく変えてみました。

ハルユキにも活躍させてあげたかったんです。

彼はボロボロになりながらも勝利するっていうイメージが強い

バイス君は影から見てたけど、初手シアンだったし、テイカ—からまずパイルから倒してクロウを倒してやるって意気込んでたのを依頼を受ける中で聞いてて、クロウも手を出す素振りみせないし働かなくていでしょって思ってるうちに電撃作戦のように翼奪還されてあららって感じです|M0)

そこから先はまあ報酬分は働かないとねって感じでいつもの拘束です。



ではまた次回

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