銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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お待ちかねキリト君無双回

のはずが………?


気が付いたら放置されてるピエロの扱いに気づいた皆さんこう言ってあげてください

ピエロざまあ



ではどうぞ


第十四話:二人の黒

「……さて、うちの妹を傷つけたお返し、あんたらのポイントで償ってもらうぜ?」

 

地面から剣≪エリュシデータ≫を抜き放つと、俺は目の前の十数人のアバターを睨みつける。

 

「俺らのポイントで…だと?恰好つけてヒーロー気取りのようだが、なめてんじゃねえぞ!そういうことはな、俺たちの誰かを倒してからに………」

 

 

「………まず一人」

 

 

何やら口うるさい奴に瞬時に近づき、斬り捨てる。

その途端、ざわめきが広がり、全員俺から距離を取ってそれぞれの得物を構える。

 

「漆黒の鎧に、漆黒の剣。おい、まさかあれって…≪黒の剣士≫ミッドナイト・フェンサーじゃないのか…?」

 

「何言ってんだ!あいつは一年前に全損したって聞いたぞ!」

 

「じゃあなんだって言うんだよ!まさか幽r……」

 

 

「…二人目」

 

 

「ぐ、こ、こいつ!!」

 

遠距離型のアバターなのだろう。こちらに向かって光線を撃ってくる。

それを上空に飛びながら回避。

目の前に着地した瞬間に剣を右下から左上に斬り上げてアバターの首部分を飛ばす。

 

「ひ…っ!」

 

返す剣でもう一体。

 

「このやろう!!」

 

背後を狙って攻撃してきたアバターを、振り向きざまに一閃する。

たちまち三つのアバターがポリゴンになって消え、残りは12人

 

視界の必殺技ゲージを見ると、二割ほど溜まっている。

 

「………」

 

姿勢を落とし、剣を右肩にのせる。

その動きをシステムが感知し、必殺技ゲージが消費された。

 

「―――――≪ソニック・リープ≫!」

 

短く、必殺技名を呟くと同時に地面を蹴る。

システムアシストの流れに逆らわぬよう、足の蹴り、体の捻り、腕の振りを加え、必殺技の威力を高める。

ミッドナイト・フェンサーのレベル1必殺技≪ソニック・リープ≫は、相手との距離を瞬時に詰めると、その体力ゲージを一瞬で消し飛ばした。

 

 

「ば、化け物だ…!!」

 

「こんちくしょおおお!!!」

 

一人が逃げだそうとし、もう一人がその鍵爪で攻撃してきた。

その手を掴み、逃げ出した奴に投げつけたあと、剣を投擲。

案の定、投げ捨てた奴が逃げた奴の背中に重なる瞬間に剣は突き刺さり、後ろの奴諸共ポリゴンとなって消えた。

 

 

―――残り9

 

 

「馬鹿め!自分から剣を捨てやがって!!」

 

勝利の雄叫びを上げながら襲い掛かってくるアバターを、左腰に吊るされていた≪ダークリパルサー≫で斬り捨てる。

そのまま敵の集団に走り込み、一気に四人、斬り捨てる。

水平の四角形を作るように斬った後、残り四人になった敵を見据える。

内三人はたじろぐが、その中の一人は、自ら前に出てきた。

 

「やるなあんた。どうだい、俺と一勝負…しようぜ!!」

 

そう言いながら向かってきたアバターは、格闘型のようだ。

 

「―――シッ!!」

 

短い吐息と共に繰り出されるのは左腕でのジャブ。

こう懐まで入り込めば剣は使われないと考えたのだろう。

拳が兜の端を掠める感覚を感じながら、右手の≪ダークリパルサー≫を地面に落とし、こちらから距離を詰める。右腕の指を綺麗に揃え、そのまま相手を貫いた。

 

「な…にぃ………」

 

ポリゴンとなる名も知らぬ相手に「ナイスファイト」と軽く声をかけ、落ちていた白剣を拾って、残り三人になった相手を見る。

三人とも、驚き、恐怖しているようだ。

それはそうだろう。いきなり現れた相手に数で勝っていたはずの自分たちが壊滅させられかけているのだから。

 

「ひ、ひえええええええ!!!」

 

 

叫び声を上げて遠ざかる三人組。

追うか迷ったが、その前に背中に感じる衝撃で動きを止める。

 

「…っ、お兄ちゃん……?」

 

「……ああ、助けに来たよ、スグ」

 

おそるおそる問いかけるリーファに、心を痛めながら答える。

今の俺は≪ミッドナイト・フェンサー≫の殻を被った偽者だ。

直葉が求めているのは、俺でなくて加速世界で消えた兄。

このことは…いずれ話さなくてはいけないだろう。

ならば…

 

 

「…スグ、聞いてくれ。俺は―――」

 

 

リーファに真実を話そうとした瞬間、辺りにすさまじい轟音が鳴り響いた。

少しところで、黄色と黒の閃光がぶつかり合っている。

 

そしてそのクレーターの内部では、銀色のアバターが巨大な外装を纏ったアバターを守りながら戦っているのが見えた。

リーファが攻撃を受けていたことから推測すると、あの二人は仲間だろう。

 

「お兄ちゃん…」

 

「…加勢しよう。スグは下の奴らの援護を頼む」

 

「む、無理だよお兄ちゃん!あれって王だよ!?やられちゃうよ!」

 

今にも泣き出しそうな声で引き止めるリーファ。

もう、俺が消えるのを見るのが嫌なのだろう。

そんな彼女の頭を撫でて、声をかける。

 

「大丈夫だ。俺は、お前の前なら負けないよ」

 

最後にポン、と頭の上に手をのせると、リーファは小さく頷いた。

それに頷くと、新たに近づいてくる集団が見えてきた。

 

 

「リーファ、飛んであの集団を越えてお前の仲間に合流するんだ。お前が飛んでる間に、あれは片づけておく」

 

「駄目……お兄ちゃん!忘れたの?私は、飛べないんだよ!?」

 

「いいや飛べる筈だ。スグ、信じるんだ。お前は飛べるって」

 

俺の言葉にコクリと頷いたリーファの体を、淡い光が包み込む。

すると、彼女の体がゆっくりと浮かび上がった。

 

「お、お兄ちゃん!私…飛んでる!!」

 

「その調子だ!そのまま行くんだ!」

 

俺の言葉に頷いたリーファは、そのまま仲間たちのところに飛んでいった。

落ちていた≪エリュシデータ≫を拾いなおすと、彼女が飛ぶのを見て呆けている連中に向かって突っ込む。

不意を付かれた相手の殲滅は割と早く終わり、そのまま走り続けた俺は、丁度弾き飛ばされた黒いアバターに止めを刺そうと振り下ろされた黄色いピエロのバトンを弾いた。

 

「な…っ!?」

 

「黒いの、加勢するぞ」

 

「何を考えてるのだ!どこの誰だか知らないが離れろ!レベル9同士の戦いに入り込むなど…」

 

黒いアバターから凛とした響きが聞こえる。

 

「その通りですよ!自分の立場もわからないバーストリンカーは、消えな…なっ!?お、お前は…」

 

その言葉に便乗するように叫んだ黄色いピエロは、俺の姿を見ると驚愕した声を上げた。

そして歯ぎしりをするような声を上げると

 

「地獄から迷い出たとでも言うのですか…!お前はあの時……」

 

「全損したはず…か?この通り、戻ってきたぜ」

 

「…!なら、お前も一緒に消すまでです!≪無意味な運命の車……≫」

 

「いかん!必殺技だ!!」

 

後ろの黒いアバターが叫ぶのを聞きながら、俺はくるであろう技に対処するために腰を浅く落とす。

 

 

 

 

しかし、その言葉は、最後まで紡がれることはなかった。

突然現れた、黒ずんだ銀色の装甲のアバターの腕に、その体を貫かれたからだ。

 

 

 

「クロム・ディザスター…!?馬鹿な…早すぎる!!まさか、渋谷に着く前に≪加速≫を開始したというのか!?」

 

 

「ユルルルルルオ………!」

 

銀色の獣は黄色いピエロを地面に投げ捨てると、こちらに…正確には俺に顔を向けた。

そして雄叫びを上げると、とんでもない速さでこちらに肉薄してきた。

 

「く…ぉ……っ!!」

 

先ほどピエロを貫いたとは逆の腕で振り下ろされた大剣を白剣で防ぐが、同時にかなりの衝撃が俺を襲った。

反応はできる速度だ。だが、重い。

アバター相手の戦闘なら負ける気はしないが、化け物相手なら別だ。

 

火花を散らす俺の剣と獣の大剣。

その拮抗は、俺が体をずらして剣を滑らせるようにして回避したことにより終わる。

重い音を立てて地面に突き刺さった大剣を確認した俺は、側面から斬りかかる。

 

しかし、その攻撃は、俺の脇腹に与えられた衝撃によって当たることはなかった。

 

「がっ…!」

 

地面を少し転がりながら距離を取り、獣を睨む。

―――尻尾だ。

今、俺は奴の尻尾で吹き飛ばされたのだ。

 

 

「ルルルルオオオオオ!!!」

 

再び叫んだ獣は相変わらず俺を狙ってくるが、それは横から入った黒によって妨害された。

 

「≪デス・バイ・ピア―シング≫!!」

 

黒いアバターの右腕がジェットエンジンじみた音響で突き出され、その刃を包んでいたヴァイオレットの輝きが膨れ、一直線に五メートル近く伸長した。

 

俺に向かって追撃する瞬間を付いた的確な一撃は、しかし超反応を見せた獣の角を一本斬り捨てただけだった。

 

「ほう…今のを躱すか…。おい、黒いの!手伝え!!」

 

「わかった!」

 

お前も黒じゃないか!という突っ込みは置いといて、黒いアバターの加勢に入る。

 

 

「ユルルルオオオオオオ!!」

 

 

獣は、俺たちの姿を見ると、大きな雄叫びを上げた。

 

 

 

 

 

「あれが…く、クロム・ディザスター………」

 

クレーターの縁でブラック・ロータスと、もう一人の黒いアバターがクロム・ディザスターと対峙するのを見て、ハルユキは恐怖に震えていた。

なんだあの化け物は。

勝てない。無理だ。

あんなのの足止めを僕がする?できるわけない。

 

気が付けば、ハルユキのアバターは地面に膝をついていた。

慌てて立ち上がろうとするが、立てない。

焦れば焦るほど、全身が凍り付いていく感覚。

まるでアバターの四肢から神経系そのものが切り離されてしまったように―――

 

「≪闘志なきバーストリンカーにデュエルアバターは動かせない≫」

 

そんなハルユキの耳に入ったのは、黒雪姫の凛とした言葉だった。

 

「…さっき私が倒れた時と同じだ。私は、二年前の裏切りを悔いて、許されない罪だと感じている。だから、己の中の闘志。勝利への闘争心を、私は心の底で深く恐れているんだ。だがハルユキ君、キミは敗北を恐れているんだ。負けることで自分の価値が下がると思い込んでる。それが最近の、キミの領土戦での不調だよ」

 

思い込んでるじゃなくて、そうなんだ!

だって、僕が負けたらあなたは、いつか僕を見限って―――

 

「ハルユキ君、先ほど、私の心を再び立ちなおさせてくれた言葉を、キミに言おう。キミと私を繋ぐ絆が……その程度だと思っているのか!!!」

 

それは、先ほど≪零化現象≫になった黒雪姫に、ハルユキが言った言葉だった。

その言葉とともに、ブラック・ロータスは、クロム・ディザスターに斬りかかっていった。

 

真っ向上段から振り下ろされた黒雪姫の一撃を、クロム・ディザスターがその大剣で防ぐ。

その衝撃に両者がノックバックしている間に、黒いアバターがクロム・ディザスターの装甲を切り裂いた。

その攻撃にディザスターが怯んだ瞬間、黒雪姫が右足の剣で攻撃を撃ち込む。

 

「ルルルル……!」

 

距離を取ったディザスターが、黒雪姫に向かって左手を開いた。

すると、黒雪姫のアバターが謎の引力に吸い込まれるように、ディザスターの左手に引き寄せられる。

 

――先輩!!

 

ハルユキが声にならない叫びを上げた瞬間、黒雪姫の後ろにいた黒いアバターが、疾風のように走り出した。

その剣には緑色のライトエフェクト。

 

―――必殺技!!

 

その剣は、クロム・ディザスターの装甲を深く抉り、明確なダメージを与えた。

その攻撃で黒雪姫を引き寄せる力もなくなったのか、自由の体になった彼女が、今度はその剣に必殺技の光を迸らせる。

先ほど躱されたものと同じ技。それは―――

 

「≪デス・バイ・ピア―シング≫!!」

 

今度は、はっきりとクロム・ディザスターの装甲を貫くのが見えた。

 

 

 

 

 

「ぐ……っ狂犬め…飼い主への恩も忘れて暴れだすとは…。皆さん、撤収です!池袋駅のリーブポイントに…っ!?」

 

ふと聞こえた声に視線を向けると、先ほどクロム・ディザスターに胸を貫かれたイエロー・レディオが、撤退命令を下しているところだった。

それを聞いたバーストリンカーが撤退しだし、続いてイエロー・レディオも逃げようとした瞬間、何かに気づいたように体を動かした。その、先ほどまでイエロー・レディオの頭があった場所に、緑の閃光が走り、彼の右腕が宙を舞うのが見えた。

 

「ぐっ…あなた……」

 

「逃がさないわよ、イエロー・レディオ…あんただけは…私が!!」

 

そこにいたのは、全身を淡い光に包んだリーファであった。

 

「あいつ…『心意』を…!?」

 

隣でそれに気づいたスカーレット・レインが驚きの声を上げる

その言葉の意味を聞こうとした瞬間、もの凄い勢いでリーファが吹き飛ばされてきた。

そのまま壁に激突するかに見えたリーファは、その場で急停止すると、力尽きたように地面に膝をついた。

 

 

「心意で攻撃してきたなら…こちらも心意技で応えるまで…!≪妖精≫リーフ・フェアリー…この腕の借りは必ず返しますからね!!」

 

「待ちなさい…っ!!……え?と、飛べない…なんで…?」

 

逃げるイエロー・レディオを追いかけようとするが、リーファは戸惑いの声をあげ、そのままイエロー・レディオは逃げてしまった。

 

「おいリーフ・フェアリー!やめとけ、今のあんたじゃ無理だ!今は休め!!」

 

「でも!アイツが目の前にいるのに!!こうして…!」

 

「いいから休めっつってんだ!!慣れない心意が使えたからって調子に乗ってんじゃねえぞ!あいつが本気を出せば、お前なんて瞬殺なんだからな!!」

 

強い口調であるが、リーファを心配するスカーレット・レインの言葉は伝わったようで、リーファはコクリと頷いた。

 

「さて…向こうもそろそろだな………」

 

そう言うとスカーレット・レインは、強化外装の主砲の照準を、クロム・ディザスターたちがいる方向に向ける。どうやら援護してくれるようだ。

 

黒い二人の連携は、まるで歯車のように噛みあっていた。

一人が防げば一人が攻撃し、その一人が攻撃を防げば一人が攻撃する。

まさに阿吽の呼吸で、二人はクロム・ディザスターを追いつめていた。

 

 

―――これなら勝てる!

 

 

ハルユキがそう確信した時、彼の近くで、衝撃が起きた。

そこまで強い衝撃ではない。巨大レーザーを撃ち、それの反動を耐えた時の微弱な衝撃だ。

 

 

「……………二コ…?」

 

ハルユキが戸惑いの声を上げる。

 

なにをやっているの?

まだあそこにはせんぱいがいるのに

 

 

真紅の光は、二人のアバターと、クロム・ディザスターを巻き込み、その場で大きな爆発を起こした。

 

 

 

 

 

「せん……ぱい…?」

 

 

 

 

 

ハルユキの、小さな呟きだけが、その場に響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うーん……前回と前々回に比べると変な違和感がぬぐいきれない

Q:アバター相手なら負ける気がしないならクロム・ディザスターもアバターじゃん
A:キリト君はディザスターの中がアバターだというのを知りません。ので、獣という表現に

Q:ホリゾンタル・スクエアとかエンブレイザーしてるけど必殺技じゃないの?
A:あくまで動きを模倣しただけです。キリト君無双

Q:ナイスファイトって?
A:皆ビビってたのに積極的に向かってきたから…です

Q:リーファ飛んでった後はどうしたの?
A:普通に戦ってました。ハルユキ達も忙しかったので、あ、帰ってきた。無事でよかったくらいで、彼女が飛んでたのを目撃したのはキリトに伸された奴らだけです

リーファは心意のことは知らないですけど、ピエロ本気だしたら瞬殺って言葉を聞いて踏みとどまった感じです



さて、ここからどうしようかな……


では、また次回!

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