少年提督と野獣提督   作:ココアライオン

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第6章

 今日の提督の秘書艦である高雄と愛宕は、執務室にてデスクワークに勤しんでいた。

高雄は、普段提督が使用している執務机で業務を行い、愛宕は秘書艦用の執務机に座っている。

特に会話を弾ませることも無く、高雄と愛宕は黙々と万年筆を書類に滑らせて行く。

普通なら秘書艦は一人なのだが、提督が執務室を空ける予定が在った為、こうして二人で執務にあたっていた。

今日は朝から、提督は野獣と共に、鎮守府裏手の山裾に建設されつつある、深海棲艦の鹵獲と捕獲、研究を行う為の施設へと出向いている。

チラリと顔を上げて時間を確認すると、昼を越えて、もうじき午後三時だ。提督はまだ帰って来ていない。

軽く息を吐き出してから、手元に視線を戻して書類の束を捲り、処理していく。

そして、ある一冊の書類束の表紙を見て、思わず手の動きが止まった。

“深海棲艦への精神拘束制御施術と、ケッコン(仮)の報告”と記された分厚い冊子だった。

こうした艦娘に対する施術報告書については、艦娘達も閲覧禁止では無い。だが、秘書艦であっても眼を通すことは殆ど無い。

“艦娘の召還”という神秘を実現する“提督達”への報告書については、基本的に処理しないのが、何処の鎮守府でも普通である。

理由としては、報告の概要を把握することが出来ても、内容を理解することが不可能だからである。眼を通したところで、処理のしようが無い。

 

 以前に提督宛に送られてきた『鹵獲計画書』については、高雄を含め他の艦娘達も眼を通し、熟読している。

だが、それは飽くまで『計画書』だったからである。提督達の扱う異能の力についての報告などは、見ても聞いても艦娘達には理解出来ない。

この冊子については、高雄が処理すべきでは無い。重要書類としてファイルに分けて、提督が帰ってきてから報告すべきだ。

それで問題は無い。これは、私が見るべきでは無い。見てはならない。知るべきでは無い。そんな、直感とも言えない何かを感じた。

ケッコン(仮)という文字にも興味を引かれたが、それ以上に、深海棲艦への精神拘束制御という文字に強く引き付けられた。

高雄は無意識のうちに、視線だけで愛宕の様子をチラリと伺っていた。執務室は静謐だ。時計の針が動く、規則正しい音がやけに大きく聞こえる。

執務机に座り書類を処理している愛宕は、高雄の視線には気付いていない。黙々と作業を続けている。高雄は唇を舐めて湿らせて、黙ってデスクに視線を戻した。

別にこんな風にコソコソする必要は無いのに、何故か緊張してしまう。どうしよう。愛宕にも声を掛けてみるべきか。仕事の邪魔をしてしまうだろうか。

いや。考え過ぎか。この報告書も、以前の『鹵獲計画書』の延長線上のものに違い無い。冷静に考えれば良い。

艦娘の目にも届く様な書類である。身構えるようなものでは無い筈だ。高雄は椅子を少しだけ引いて座りなおしながら、高雄は冊子を開いた。

 

 

 眼を通してみる。やはり内容については、提督達が艦娘を対象に行う施術式の、深海棲艦への応用が主体であった。

思考と意思、感情の剥奪に始まり、肉体の隷属を目指す施術式の開発。深海棲艦の艦娘化を目指す実験と解析の報告である。

難解な単語と数式で埋め尽くされた書類の中から、睨むようにしてページを捲っていくと、“ケッコン”の文字が目に入った。

『チ級、リ級とのケッコン施術に於ける報告』。その一文は、異様な程の存在感を持っていて、すぐに目に付いた。更にページを捲ると、写真が載っていた。

高雄は息を飲み込む。写真には、大掛かりな研究室の内部で、巨大な施術椅子に拘束された人型の深海棲艦の姿が在った。

それを取り囲んでいるのは、白衣とマスクを身に付け、手に工具らしきものを持つ研究者達。そして、両の掌に蒼い微光を灯した、提督服を着た男が二人。

背筋に寒いものが走る。艦娘である高雄の目から見て、この写真越しに見る『人間達』は、深海棲艦なよりも遥かに恐ろしく、忌むべき者に見えた。

報告内容を、更に視線で追っていく。

 

 

『我々は艦娘達の錬度の高さを現す指標として、“Lv”という単位を使用している』

『“Lv”の上昇には、艦娘達の戦闘経験によるものが大きい。戦闘を重ねることで、艦娘は強くなる』

『艦娘達には知能が在る。学習する。これは人間と同じである。繰り返すことで、その錬度は上がる』

『しかし、計測可能な錬度の高さは“Lv99”である。これ以上は数値化出来ず、艦娘達の能力的な成長は著しく低下する』

『生体兵器としての艦娘達の限界数値が、この“Lv99”である。肉体と精神を持つ以上、如何に強靭であろうと限界が存在する』

『しかし、ケッコン(仮)施術により、この限界数値を超えた“Lv150”まで錬度を高める事が可能である』

『ケッコン(仮)を行う条件は、対象の艦娘が“Lv99”である事。そして、人格を潰していない状態である事。この二つである』

『捨て艦用として、艦娘達の思考や自我を破壊する提督は多い。しかし、一度破壊された人格は二度と再生しない』

『完全な兵器となった艦娘には、ケッコン(仮)の施術は効果を発揮しない。これは研究によって既に解明されている』

『しかし、今回の深海棲艦を対象にしたケッコン(仮)で、更に条件が一つ加わると考えられる』

『それは対象となる艦娘と、術者である提督との間に、感情的、精神的な繋がりが必要であるという点である』

『実験にて、チ級、リ級を、自我を潰さぬ様に細心の注意を払いながら、学習装置によりLv99への矯正を終了させた』

『莫大な予算と時間を掛けた準備により、ケッコン(仮)への条件である“Lv99”と“自我の生存”はクリアしている筈だった』

『しかし、チ級、リ級に対してのケッコン(仮)施術は、悉く失敗に終わっている。我々、“元帥”の力を持っても不可能であった』

『此処で、ケッコン(仮)を実現している提督と艦娘達を見直してみると、やはり両者の間に信頼関係、或いは、恋愛感情にも似た繋がりが必要であると考えられる』

『この点に於いて、友好的な“感情”を持ち得ない深海棲艦とのケッコン(仮)には、余りに大きな問題が在る』

『人型である深海棲艦が持っている感情は、人類に対する憎悪のみしか観測できない。人格が生きている以上、それを払拭する事は不可能である』

『やはり、深海棲艦は、人類の不倶戴天の敵である。利用価値としては、やはり消耗品止まりであると、我々は結論付ける』

『チ級、リ級については、艦娘達への施術式を応用し、既にその思考の破棄、人格の破壊に成功。意思を持ち得ない、完成された兵器として運用を目指し、調整中である』

『共にLv99である為、実戦でも活躍が期待出来る。我々は更に研究を続け、より完璧な精神制御と支配を目指す』

『捕獲状態であるタ級、ル級、ヲ級、そして、戦艦棲姫については、チ級やリ級などに比べ、更に強靭な精神力を有しており、人格の破壊は不可能であった』

『学習装置による効果や、我々の精神制御施術の効果も共に薄く、未だ不明な点が多い。判明しているのは、解体施術による艤装無力化が可能である点のみ』

『タ級、ル級、ヲ級、戦艦棲姫の四体は、今回の実験後、我々の手を離れる。だが、その精神制御、支配が優先して求められるであろう』

 

 

 

報告内容の流れ把握しつつ、高雄は指先が微かに震えるのを感じた。

人類は伊達や酔狂では無く、本気で深海棲艦達をその支配下に置くつもりなのだ。

その為の実験も、着々と進んでいる。末恐ろしい。もしかしたら、と思う。

高雄が思っている以上に、人類は、非常に優れた戦闘種族なのかもしれない。

自分を落ち着けるように静かに息を吐き出し、高雄は冊子を閉じようとして、気付く。

冊子の裏表紙には地図の様なものと、複数の建物の写真が印刷されてあった。見覚えが在る。

ついこの間、同じものが印刷された書類を渡され、提督から説明を受けていたからだ。

簡単な連絡事項の様なものだったが、やけに印象に残っているから、間違い無い。

鎮守府付近にて建設されつつあり、今日、提督達が出向いている深海棲艦研究の施設だ。

現在でも、深海棲艦達を捕らえておく為の特別捕虜房が幾つかと、其々の房室に備え付けられた強化ガラスシリンダーなど、既に一部の施設機能は稼動していると聞いた。

山裾に在った廃集落地区のほぼ全てを覆う規模の施設ではあり、その機密性、重要性から、警備に立つ兵も、かなりの数が配備されていた。

施設の外見はシンプルで、白い棟が立ち並んでいる程度のものだ。だが、その建物の全てに窓が無く、かなり異質な雰囲気を醸し出している。

窓の代わりに棟に備えられているのは、“搬入口”とでも言うべき規格の分厚いシャッターだ。出入りしているのは、装甲車と見間違える程に無骨な“生簀トラック”だけ。

敷地内には、舗装された広いアスファルト路が四方に伸びており、保護房棟、研究棟へと“生簀トラック”で深海棲艦を運搬できる様になっている。

 

 冊子の裏表紙を見詰めていると、いましがた読んだ報告内容が脳裏に蘇った。

『捕獲状態であるタ級、ル級、ヲ級、そして、戦艦棲姫は、我々の手を離れる』。

確か、そんな内容の報告が在った筈だ。

そして、冊子の裏にこの施設の写真が印刷されているという事は、つまり。「高雄?」

「えっ? ……ぁ…」弾かれた様に顔を上げると、愛宕と眼が合った。

 

「どうしたの? 何だか、もの凄く深刻そうな貌をしていたけれど…」

 

心配そうな貌をした愛宕が、高雄の貌を見詰めて来る。

高雄はその視線を受け止めつつ、すぐに返事は返さなかった。

肩を竦めながら、広げていた冊子をファイルに綴じて、横にどける。

それから、「そうかしれないわね…」と、ちょっと苦笑して見せて、軽く息を吐いた。

 

「提督が、艦娘達の精神に干渉出来るのなら、

貴女の男性恐怖症も治せるんじゃないかしらと…、そう考えていたのよ」

 

冗談っぽく言いながら、高雄は執務机に座りながら軽く伸びをする。

ただ愛宕の方は、何だか申し訳無さそうに視線を逸らして、俯いてしまった。

 

「……試して貰おうと頼んだ事も在るけど、断られたわ」

 

「え、どうして?」

 

「提督が仰るには、そういう施術は、私達の人格に大きな負担を掛けることになるらしいの。

人間と同じで、恐怖心の克服には、艦娘自身の経験か、意思の力によってにしか無理だそうよ」

 

苦笑を返してくる愛宕は、やっぱり何処か申し訳無さそうである。

 

高雄は何も言えず、ただ愛宕の言葉を反芻していた。

 先程まで読んでいた報告書の所為で、人格への負担という言葉に、強く反応してしまう。

 黙したままの高雄に、愛宕も何かを感じたのか。「大丈夫よ。高雄」

何時もどおりの柔らかな声で言いながら、愛宕は何時と同じように笑って見せた。

 

「こんな事で、提督に手間を掛けさせたく無いもの。

少し時間が掛かるかもしれないけれど、自分で克服してみせるわ。だから心配無用よ」

 

その愛宕の笑顔に、やはり高雄はうまく言葉を返すことが出来なかった。

やはり心配そうな貌をしているであろう自分に気付いて、咄嗟に、困ったみたいな笑顔を返した。

 

「あら。でも、提督は提督で、色々と世話好きな一面も持っておられるわ。

 もう少しくらい甘えて差し上げた方が、提督もお喜びになるんじゃないかしら?」

 

「ふふ…♪ そうねぇ。ただ…、提督のあれは世話好きと言うよりも、

私達に対する提督なりの気遣いなのでしょうけれど…」

 

その愛宕の言葉に不思議な重みを感じつつ、高雄は、そういえば…、と思い出す。

 

「野獣提督の執務室で、提督が耳かきをして下さるのは……確か、今日からだったわよね?」

 

「えぇ。その筈よ。お夕飯を食べたら、

提督がどんな感じで耳かきをしてくださるのか、覗きに行ってみたらどう?」

 

 声を少し弾ませた愛宕に、高雄は力強く頷いた。提督が、野獣の執務室のスペースを借りて、極々小さな耳かきサロンを開く事になったのは数日前。

事の発端は、鎮守府に居る艦娘達全員に、提督や野獣に対して、何か望むことは無いかと行った青葉のアンケートである。

提督に対する要望については、“これからも、お傍にいさせて欲しい”、“お体を大切にして下さい”、などの意見が多数であった。

一方で、野獣に対する意見には、“くさい”、“きたない”、“がんばれ”、“かえれ”、“くだけちれ”、など、辛辣な一言が非常に多かった。

高雄も一応はアンケート用紙を渡されていたので、提督への要望として“御身をご自愛下さい”と記して提出した。

無理ばかり重ねる提督に対する高雄の、本心からの切なる願いである。“添い寝させて頂きたい”と書きそうになった事は秘密である。

そういったアンケート結果の中に、“耳かきをして欲しい”という要望が在ったのを、青葉がピックアップしたのだ。

青葉と野獣は割りと仲が良いし、面白そうな記事ネタになるのを確信しての事だろう。

以前も何やら寸劇の撮影なども行っていた様だし、野獣の行動力には舌を巻くしか無い。

 

 今回にしても、どれだけ悪罵されても涼しい貌の野獣が、また面白がって色々と用意を進めていたのだ。

既に野獣の執務室は、妖精さん達の協力のもと、執務机を残したままで立派な耳かきエステのフロアへと変貌を遂げている。

それを知った長門は激怒し、陸奥は呆れて、加賀は無表情のまま溜息を吐き出していたし、赤城は、苦笑を漏らしていた。

艦娘達のガス抜きが目的なのか。それとも、青葉との協力体制のもと、艦娘達へのいびりネタでも集めたいのか。

野獣の真意が測れずに居る高雄だが、実は本心では野獣に感謝していたりする。だって、公然と提督に耳かきをして貰えるのである。

望外の幸せである。正直、落ち着かない。期待でウキウキしてしまう。だが、それは高雄だけでは無い筈だ。間違い無い。他の艦娘達だってそうだ。

 

「そうね。まず、雰囲気というか…、ムードを体験しておくのは大切よね」

 

頷いた高雄は、思わず真顔になってしまった。

「そんな大袈裟なものでも無いと思うけれど…」と、愛宕が苦笑する。

 

「ぬわぁああああああああああああああああああああああああん!!

 疲れたもぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんん!!!」

 

 高雄と愛宕が、冗談めかして微笑みを交し合う。その瞬間だった。

執務室の扉が勢い良く開かれて、濁声なのに妙にトーンの高い声が大きく響いた。

突然だったから、かなりびっくりした。高雄と愛宕は、二人揃って肩を跳ねさせる。視線を扉に向ける。

野獣だった。相変わらず、ブーメラン海パン一丁に、ISLANDERSロゴ入りの白Tシャツ姿である。

確か提督と共に、新しく建設されつつある鹵獲・研究施設へ出向いていた筈だが、もしかしてあの格好で行って来たのか。

非常識というか、もはや挑戦的行為では無いだろうか。施設の研究員達もたまげたに違い無い。

ずかずかっと執務室に入って来た野獣は、ソファにどかっと座り、手脚をだらしなく投げ出した。

 

 高雄は、近くに居る愛宕が微かに息を詰まらせたのを感じた。

微笑みこそ崩していないが、明らかにその表情が強張った。

だが、すぐに愛宕は「あら、お帰りなさい」と、その笑みを深めて敬礼して見せる。

高雄も続き、敬礼の姿勢を取った。それと同じか、少し遅いくらいかだった。

「ただいま戻りました」また扉が開いた。次に執務室に入って来たのは、穏やかな表情を浮かべた提督だった。

分厚いファイルを小脇に抱えた彼は、高雄と愛宕に向き直り、軽く頭を下げる。

「今日は、お二人に執務を押し付ける形になってしまって、申し訳ありません」

 

「い、いえ! これも秘書艦の務めです」 高雄は背筋を伸ばし、敬礼する。

「お役に立てれば光栄です」 隣に居た愛宕も、微笑みを浮かべたままで、高雄に倣う。

 

「…いつも有り難う御座います。

 では、少しだけ休憩にしましょう。どうぞ、座っていて下さい」

 

 労ってくれる彼の言葉に抗えず、敬礼を解いた高雄と愛宕は顔を見合わせて、頷きを返した。

彼は、執務室に備え付けられている小振りな食器棚から、カップやソーサーを人数分用意してくれている。

慌てて高雄と愛宕が手伝おうとしたが、微笑んだ彼に、「僕にさせて下さい」と言われては、何も言い返せない。

結局、大人しく彼に紅茶をお願いして、座り直すしか無かった。

 

「お、俺はコーヒーを頼むゾ(お客様気取り)

しかし、お前ンとこの艦娘は提督思いで羨ましいなぁ…。

 俺の保持してる艦娘なんて、まるでゴキを扱うみたいなノリで接して来るゾ(自業自得)」

 

 提督と高雄、愛宕の遣り取りを、ソファに座り鼻をほじりながら見ていた野獣が、羨ましそうに呟いた。

「え…、それは…」その発言は突っ込み待ちなのか。それとも、素なのか。高雄には判断出来なかった。まぁ、別にどうでも良いか。

そう思い掛けた時だった。愛宕が、野獣の方に向き直った。

 

「そうでしょうか? 

野獣提督を慕っている艦娘達も、大勢居ると思いますけれど」

 

 そう言った愛宕の声音や表情は、少々強張っていた。敬語も何処かぎこち無い。

呼吸が少し浅くなり、唇や肩も微かに震えている。野獣から逸らされた瞳が揺れていた。

一見すれば確かに、愛宕が野獣に対して恐怖心に近い何かを抱いている様にも見える。

だが傍に居る高雄には、愛宕の声や様子からは、嫌悪や悪意は感じられなかった。

言葉自体にも嫌味は無い。寧ろ、其処には敬服に近い感情が伺える。何処か妙な感じだ。

まぁ、多少はね…、と。野獣は横目で愛宕を見てから、軽く唇を持ち上げた。

 

「何だ何だATGァ…、まだ俺の事が怖いのかぁ?」

 

 野獣の視線に、愛宕は何か言おうとした様だが、それは言葉にならなかった。

視線から逃れて自分を抱きしめるように、右手で左腕を掴んだまま、愛宕は俯いた。

顔を伏せたまま唾を軽く飲み込んで、その身体の震えを強くさせている。

「……はい」。蚊の鳴く様な声で、何とか愛宕がそう答えた。

提督も、飲み物の準備をしながら愛宕の様子を見ているが、特に何も言わなかった。

 

「しょうがねぇなぁ~(悟空) 

ほら、お前も見てないでこっち来て」

 

 ソファに凭れかかっていた野獣は身体を起こして、提督を手招きした。

「? はい、何でしょう?」 提督は紅茶の入ったカップを、高雄、愛宕に渡してから、野獣に歩み寄る。

その無警戒、無防備な彼の仕種に、高雄は一種の不安の様なものを感じずには居られない。

無垢な彼が、もう既に野獣に誑かされ、毒牙に掛かっているのでは無いかと勘繰ってしまう。

いやいや、そんな事は在る訳が無いと。高雄はきつく眼を閉じて、自身の下世話な心配を頭から追い出そうと務める。

 

「先輩も、此方をどうぞ」 彼は、コーヒーの入ったカップを野獣に差し出す。

それを受け取った野獣は、礼も言わずにゴクゴクと飲んで、カップとソーサーをソファテーブルに置いた。

それから糞真面目な貌になって、提督と愛宕を交互に見て、深く頷いて見せた。

 

「ATGが男性に怯えていらっしゃるよ。脱いでさしあげよう(提案) …脱げ(強制)」

「えっ」 提督がきょとんとした貌になっていたが、高雄はそれよりも早く立ち上がり、異議を唱えた。

 

「ちょっと待って下さい!? 意味が分かりませんよ! 

何で提督が此処で裸になる必要なんかあるんですか(正論)!?」

 

「ATGが男性恐怖症を克服する為に決まってるダルォ!?

 こういうのはショック療法が最も効果的だって、それ一番言われてるから」

 

「何処でですか!? というか、今の状態の愛宕に、そんな強いショックは逆効果です!

 より悪化しますよ! 愛宕がひきつけでも起こしたらどうするんです!?」

 

「どうせ濃厚な“おねショタ”展開になるだけだから、ヘーキヘーキ(暴論)」

 

「なりませんよ!」

 

「あの…、野獣提督」

 

言い合う高雄と野獣の間に、ちょっと苦しそうに微笑む愛宕が入る。

 

「ご厚意は大変在り難いのですが…、その…」

 

「愛宕さんは、自身の力で克服すると仰っていました。

 先輩もご存知の通り、艦娘の皆さんも、人も、その精神構造はほぼ同じです」

 

 声を震わせる愛宕の言葉を引き継いだのは、提督だった。

彼は、いつもと同じ、ひっそりとした微笑を湛えながら、野獣と愛宕を見比べる。

 

「克己が容易いもので無い以上、愛宕さんにも、まだまだ時間が必要だと思います。

 死への畏怖とは違い、こうした恐怖心は少しずつでしか拭えませんから…」

 

 彼の声は、澄んでいて良く通る。落ちつき払った声音は、まるで老人のものの様だ。

少年らしさを完全に欠落させた彼の声を、似合わない思案顔となった野獣は、どんな心持ちで聞いているのだろう。

高雄と愛宕は、野獣と提督を見守る。その沈黙は、二秒か三秒程だった。野獣が、すぐに「お、そうだな」と頷いたからだ。

その野獣の顔には、何処か安心した様な、満足そうな表情が浮かんでいた。

 

「俺もATGが心配だったから、解決方法を急いちまったなぁ…(分析)

 困ったことが在ったら、俺にも声掛けてくれよなー。頼むよー」

 

 言いながら、野獣はソファから立ち上がって、ゆっくりと伸びをした。

そして、首を軽く回しながら、執務室への扉へと向う。途中で、高雄と愛宕にウィンクして見せた。

高雄は顔を顰めてしまったが、驚いたことに、愛宕は深々と頭を下げている。ちょっと混乱しそうになった。

 

 この鎮守府に配属されている高雄と愛宕は、共に提督が保持している艦娘ではあるが、顕現した時期はかなり違う。

愛宕はかつての激戦期に召還されているが、高雄が提督に召還された時期は、既に人類の優位が固まっているタイミングだった。

よって高雄は、愛宕が男性恐怖症を患うことになった切っ掛けについては詳しく知らない。野獣の所為である、という話は聞いた事が在るという程度だ。

 

 ただこの話については、今の愛宕を見ると、どうも信じられない。

愛宕の、野獣や提督への態度や様子を見ていると、微かな違和感を覚えるのだ。

引っ掛かる。本当に、愛宕は男性恐怖症なのか。もっと違う、何かではないのか。

ただ、男性恐怖症という事にして、愛宕は何かを隠しているのでは無いか。

猜疑心の様なものが、高雄の心の中で首を擡げてくる。過去に何が在ったのだろう。

「あ、そうだ(唐突)」 扉から出て行こうとする野獣が、肩越しに提督に振り返る。

 

「今日の耳かきイベントは、島風コスで頼むゾ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高級耳かきサロンと化した野獣の執務室の中。

順番待ちの為に用意された長椅子に腰掛けた高雄は、軽く俯いたまま、色々な感情を混ぜ込んだ溜息を吐き出した。

室内には、心をリラックスさせる様な香りが満ちている。アロマポットが置かれてあるから、其処からの香りだろう。

だが、効果はあまり感じられない。全然くつろげない。何せ、凄い緊張感と期待感だった。ドキドキし過ぎておかしくなりそうだ。

変な話だが、いかがわしいお店に初めて訪れる青年の気持ちが理解出来る気がした。体がもの凄く熱っぽいし、喉が渇くし、手が震えて来る。

 

ちなみに、愛宕は用が在るとのことで、此処には不在だ。

高雄は視線を上げて、室内と長椅子の隣へと視線だけを向けた。

清潔感に溢れた室内には、本格的な施術ベットが二つに、ワゴン、アロマポット、ホットキャビネット、待合用の長椅子が二つ用意されている。

二つある長椅子に腰掛けて居るのは高雄の他に、朝潮、陽炎、不知火、長門、赤城、翔鶴が居た。

 

全員、ホットタオルで耳と首筋を暖めている状態である。

執務室の外では、ずらっと艦娘達が列を成していることだろう。

廊下の方からは、異様な熱気と共に騒がしさを感じる。

提督や野獣が予想していたよりも、遥かに多くの艦娘達がほぼ同時間に押しかけた為に、早い者勝ちでは無く、くじ引きで順番を決めたのだ。

提督にも明日の仕事が在る為、全員分の耳かきを終わらせることなど不可能である事を考えれば、まぁ妥当な判断なのだろう。

現在、執務室内の長椅子で順番待ちをしている第一斑は、高雄を含め、いわば大当たりを引いたのである。

続く第二、三、四、五班は、執務室の外で待機している状態だ。ちなみに、2時間という時間制限も設けられている為、第三班まで回る事は無いだろう。

実質、第二班までだ。それでも待っている辺り、籤で漏れた艦娘達の無念が伺える。その辺りの救済処置としては、第三班以降は、明日から順序が繰上げられるとの事だ。

しかし、それでも諦めて自室へと帰る艦娘達が居なかったのは、『施術の様子を公開しては如何でしょう』という、青葉の提案が在った為だ。

こういう展開も読んだ上で、野獣は提督に島風コスを着させたのだろうか。

 

色々と考えていると、掠れた様な吐息を吐き出す音が聞こえた。朝潮だった。

拳を両膝の上に置いて背筋を伸ばし、まるで面接でも受けるみたいな体勢である。

普段から真面目な彼女は、もう可哀相なくらい緊張した様子で、床の一点を見詰めていた。

その眼は涙ぐんでいるし、膝の上の拳は震えている。……大丈夫なんだろうか。

だが、声を掛けるのも何だか無粋というか、野暮というか、そんな気がして来る。

朝潮の隣に腰掛けた陽炎の方は、多少は落ち着いた様子ではあるが、冷静とは言い難い状態である。

せわしなく視線をあちこちに飛ばしているし、顔も少し赤い。下唇をしきりに噛みながら、額や顎の汗を拭っている。

一方で、不知火の方はかなり深刻な様子だった。“戦艦クラスの眼光”などと言われるその鋭い目つきを、更に鋭くさせた彼女は、動かない。

微動だにしない。死地に向う直前みたいな貌で、今にも艤装を召還しそうな雰囲気だ。

さっきから座ったり立ったり、室内をうろうろしている長門は、今まで見た事が無い程に挙動不審であり、表情はビキビキと強張りっぱなしである。

翔鶴に到っては、全てを悟り切った様な穏やかな表情で、手に紙と筆ペンを持って何かを書き綴っている。

どうやら遺書か何かの様だが、多分、一斑の籤を引いてしまった事で、自身の運を使い果たしたとでも思ったのだろう。

そんな大袈裟な、と。冗談めかして笑いたいところであるが、そんな事が出来そうな空気でも無い。空気が重過ぎる。此処は魔界か。

だが、赤城だけは普段通りで、泰然自若とした様子で佇んでいる。流石は一航戦と言うべきか。

高雄もそろそろ限界だ。手汗が凄い。そろそろ呼吸が上手く出来なくなって来た時だった。

廊下の方で、「あぁ……!(歓声)」、「ヴォエッ(嘔吐)」という、種類の異なる低い声が幾つか聞こえたが、誰かがリバースしたらしい。

扉が開かれると同時に、「お ま た せ(王の帰還)」という、トーンの高い濁声が響いた。

高雄も、思わずえづきかけた。入って来たのは、何故か島風コスに身を包んだ野獣と提督、そしてカメラを構えた青葉だった。

扉が開かれたことで、外で待機中だった艦娘達が、ゾロゾロッと執務室内に入って来た。もう野次馬と呼ぶべきかもしれない。

提督は耳かきと綿棒を手に持って、施術ベッドにゆっくりと座ってから、高雄達に微笑みかけてくれる。

その微笑みに、高雄達の周りで張り詰めていた空気が、優しく解き解されていくように感じた。

 

「それじゃあ、始めるゾ。第一斑の奴らにも順番着いてるだろうから、

一番のヤツは、コイツの太腿に頭乗っけて横になって、どうぞ(怪しい笑顔)」

 

野獣の言うとおり、確かに番号札は渡されてある。高雄の番号は、一斑でも最後だ。

唾を飲み込んで立ち上がったのは、「は、はいッ!」上擦った声を出した朝潮だった。

彼は、「どうぞ。よろしくお願いしますね。朝潮さん」と、優しく微笑んでいる。あぁ……。島風コスの罪深さよ。

朝潮は、必死に彼の下半身から眼を逸らしたままで、施術ベッドの彼の隣に腰掛けた。既に、朝潮は限界みたいだった。

過呼吸気味になって、顔が赤色を通り越して青色になっている。しかし、生真面目な彼女は、此処でも全力だ。「し、失礼致します……」

消え入りそうな声で言いながら、朝潮は、彼の生太腿の上に、自身の頭を乗せる格好で寝転んだ。

無論と言うか、右耳を上に向けて、彼の下腹部に後頭部を向ける姿勢である。それでも、朝潮にとっては刺激が強かった様だ。

眼を見開いて、自身の左頬に感じる生太腿の感触に翻弄されている。というか、もう泣きそうな貌になっていた。

だが、こんなものは序の口だった。「……では、始めますね。まずは、マッサージをさせて頂きます」彼の囁き声が聞こえた。彼の声は良く通る。

それに、体の中に沁みこんで来る様だ。施術ベッドから離れた長椅子で聞いているだけで、背筋にゾクゾクとした甘い痺れが走る程である。

その悪魔染みた囁きを至近で受けている朝潮は、何かを必死に堪えるみたいに、眼をぎゅっと閉じて、ふーっ……、ふーっ……と息を殺している。

見れば、小刻みに肩やら脚やらが震えていた。彼は、そんな朝潮に容赦しない。優しく微笑みながら、朝潮の耳をくにくにとやり始めた。

「こうやって耳のツボを刺激すると、新陳代謝が高まって、耳垢が取れ易くなるそうです」彼のその言葉を、今の朝潮が理解出来ているとは思えない。

朝潮の体が脈打った。「っ……ぁ、はっ……! ふぅ、んんん!」切羽詰った甘い悲鳴を押し殺している。長椅子に座っている高雄達も、固唾を飲んで見守っている。

一方で、野獣と青葉は、二人してその様子をカメラに収めていた。写真は青葉。ビデオは野獣である。

しかし、誰もそれを咎めようとしない。そんな余裕が無いのだ。待機している野次馬の艦娘達も、その様子を食い入る様に見詰めている。

どれ位の時間が経っただろう。数分だった筈なのに、もの凄く長く感じた。そして、とうとう、その時がやって来た。

 

「それでは、耳かきをさせて頂きますね。

痛かったら遠慮せずに、すぐに言ってくださいね?」

 

彼は微笑みながら囁いて、耳かき棒を構え、朝潮の耳の中にそっと滑り込ませた。

「……ふ、ぁ!」 朝潮の眼が見開かれて、次の瞬間には、その表情が弛緩し始める。

普段の凛々しさに溢れる朝潮の表情が、快楽に溶かされていく瞬間を、高雄達は目の当たりにする事になった。

 

「あ、あ、……! あ! し、司令か、……し、れ、……ぅぅううう、ふぅう……!」

「気持ち良いですか、朝潮さん? リラックスして下さいね」

色々とトロトロになってしまっているであろう朝潮のあの状態は、最早リラックスもへったくれも無い。

あれはもう、リラクゼーションの名を借りた、エステティック・バイオレンスとでも言うべき、一種の暴力だ。耳掻きって何だよ……(哲学)。

両耳の掃除が終わった頃。精も根も消耗し尽くした朝潮は、ぐったりとした様子で提督に頭を下げて、ふらふらとした足取りで執務室を後にした。

執務室に静寂が訪れる。何かを決心したかのように、短く息を吐き出した陽炎が、すっと立ち上がった。「次は、私の番ね……。司令! お願いします!」

 

表情を引き締めた陽炎は、傍にいる不知火と、野次馬の艦娘達の中から黒潮を見つけて、両者に視線を送った。

不知火も黒潮も、心配を通り越した悲愴な表情を浮かべている。まるで生贄に選ばれた姉妹を送り出すみたいな貌だ。

だが陽炎はそんな二人に、いつもの快活そうな笑顔を浮かべて見せる。流石はネームシップというべきか。何故か感動的に見える(錯覚)。

いや、冷静に考えれば、別にそんな事をする必要など全く無い。これは御褒美イベントなのだ。解体者選抜でも何でも無い。

高雄は、場の空気に飲まれ過ぎて、若干錯乱気味な思考を何とか正常に戻そうと努めつつ、陽炎の歩みを注視する。

「はい。どうぞ……、横になって下さい」微笑む提督は、徹底して無垢だ。邪念など欠片も無い。

陽炎は頷き、その身を施術ベッドに横たえる。頭を提督の太腿に預けて、深呼吸した。

 

「司令。私、マッサージは大丈夫だから。いきなり耳掻きからやっちゃって!」

陽炎の強がった声は、僅かに上擦って居た。

どうやら、じっくりと彼に耳に触れられると不味いと判断した様だ。

誰かが唾を飲み込む音がした。沈黙は無かった。彼がすぐに、快く頷いたからだ。

 

「分かりました。それでは、耳かきから始めさせて貰いますね……」

陽炎の右耳に、彼の手が触れる。耳掻き棒が、耳の中へ入る。「んっ……、く、ぅ」

 

漏れそうになる声を必至に堪える陽炎の表情は、女性の高雄から見てもかなり扇情的だった。

「いいゾ~これ(下衆)」という、ビデオカメラを回す野獣の呟きが聞こえたが、そんな事が瑣末に感じられる程、陽炎は頑張っている(?)。

「陽炎さん、痛くは無いですか?」彼の囁き声に耳朶を擽られても、唇と体を僅かに震わせるだけに留め、「ん、ぁ……、ぅ、うん、へ……、ヘーキヘーキ(震え声)」と返す。

荒くなりそうな呼吸を必死に抑えながら、陽炎は貌を引き攣らせて笑顔を作って見せた。

 

「し、司令も結構……、耳掻き、……はぁ、ん……。う、ぅ、上手いじゃん(擦れ声)」

健気な強がりが、陽炎の可憐さをより一層引き立てている。

どんな困難にも立ち向かう、凛とした彼女の強さが其処には健在していた。

 

「ふふ、有り難う御座います」

 

「あ、そうだ(悪魔の教示者)

 KGRUは今日帰投したばっかりだから、きっと疲れが溜まってると思うゾ(ゲス顔)」

 

陽炎の悶える姿をビデオカメラに収めながら、野獣が嘯いた。

 

「リラックス効果を高める為には、体の感度を高めるのが良いって聞いたゾ(適当)

 じゃけん、陽炎の感覚を鋭くして、より高いリラクゼーション効果を得ましょうね~(更なる高みへ)」

 

「先輩は物知りですね……。(誤った感服)

 分かりました。陽炎さん、少しだけお待ち下さい」

 

そう囁いてから、彼は短く文言を唱えた。

耳掻き棒を持っていない左手に、蒼色の微光を纏わせる。

その微光は、すぐに煙の様に霧散した。

だが代わりに、横たわる陽炎の額辺りに、一瞬だけ蒼い光球が浮かんですぐに消えた。

何が起こったのか。高雄や長門、不知火や赤城、野次馬達にもすぐには理解出来なかった筈だ。

だが、陽炎の様子がおかしい事にはすぐに気付いた。

今までの、余裕の振りをする演技や強がりは、もう何処にも無かった。

あれは提督達だけが扱える、艦娘の感覚を鋭敏化させる施術だ。「えっ? えっ!? な、何……! 何なの……!?」

赤い貌の陽炎は、怯えるみたいにきつく眼を閉じたままで、顎を震わせている。

自分の内から押し寄せる何かを、必死に押し留めようとしているかのようだった。

「どうだKGRUァ~。キモティカ=キモティーダロ? for iph●ne」

ビデオカメラを構えてニヤニヤする野獣を、陽炎は涙目で睨み付けた。

しかし、その眼に力は殆ど残っていない。快楽に吹き消される寸前の、儚い灯火だ。

「それじゃあ、続けますね(処刑宣告)」彼が、優しい手付きで陽炎の右耳にそっと触れた。

その瞬間、陽炎の体が一際大きく跳ねた。「ぅあ……!!? ぁ……こ、れ……、ヤバ……ッ!!?」

「じっとしていて下さいね~」彼は再び、優しい手付きで、耳掻き棒を動かし始める。

「司令! 待って! や、止め……!!」切羽詰った陽炎の声は、すぐに甘い悲鳴に代わることになった。

ぅはぁッ……、あぁあ!! はぁ! ぁあああ! ちょっ! し、しれぇ! 待っ……! 

あひぃっ……! 漏っ……、漏れっ……! 駄目ぇ!! い、イキスギィ!! ンアァアアアアアアアーーー(≧Д≦)!!!

 

高雄は見て居られなくなって、俯いた。

不知火と黒潮、長門は、“な、何だか凄いことになっちゃってるぞ……”みたいな貌で、呆然と彼の施術を見詰めていた。

赤城は、ふふふ……、と涼しげな大人の余裕を醸しながら、微苦笑を浮かべていた。翔鶴の方は、真っ赤な顔をしたままで、彼を凝視している。

流石の青葉も“うわぁ……”みたいな貌である。野次馬達の方からも、生唾を飲み込む音が何度も聞こえてくる。

「アーイイヨイイヨイイヨー(ご満悦)」野獣は相変わらずのゲス顔で、放送出来ないレベルに蕩けてしまっている陽炎にビデオカメラを向けている。

数分後。両耳を丹念に掃除して貰った陽炎は、自力で立ち上がる事が出来なくなり、不知火と黒潮に支えられて、自室へと戻って行った。

順番的に次は不知火だったのだが、余りの快感に前後不覚になってしまった陽炎が心配になったのだろう。

一人抜けて、順番が繰り上がる。「……次は私か」低く呟いたのは、ビッグ7の長門だ。

 

「お、NGT大丈夫か? 大丈夫か?(挑発)

 あ、そうだ(See Beyond) じゃあ、コレ」

 

あのピチピチの水泳パンツの何処から取り出したのか。

野獣は、彼に彫刻刀を手渡そうとした。長門が憤激する。

 

「貴様は私を何だと思ってるんだ! 私への扱いも、そろそろ許せるぞオイ!!」

 

「あ、そっかぁ(適当)」

 

「ふん……。この長門、耳掻きなどには絶対に負けん!!(ビッグ7特有のフラグ)」

 

ニヤニヤと笑う野獣に、長門はキッと睨み返した。

その8秒後。「ンアァアアアアアアアーーー(≧Д≦)!!!」

「イクの早過ぎィ!? お前の決意ガバガバじゃねぇか!?(全部録画中)」

 

「だ、だま、れぇ……。

ひぐっ……! ぁあぅ、ぐっ! と、撮る、……な! ……ぁあ!(カメラ目線でトロ顔)」

 

「あの、野獣提督? ヌードとかでは無いんですけど……、その……、

さっきから大分ヤバい写真ばっかり撮れてるんですが、それは大丈夫なんですかね……?」

 

流石の青葉も、若干顔が赤いし、声が裏返りそうになっている。

いや、提督は別にやましい事など何もしていないのだが、与えられる感覚が強過ぎるのだ。

 

「コイツの耳掻きの練習に付き合ったYMTとMSSなんて、もっと凄い事になってたからね。

 NGTがちょっとアヘってるぐらい、ヘーキヘーキ! 大丈夫だって、安心しろよ~(屈託の無い笑顔)」

 

秘書艦であった高雄は、夕刻に入渠ドッグの状況について確認していたから、ドッグが二つ埋まっていたのを覚えている。あぁ、なる程。あれは、大和型の……(察し)

「えぇ……(困惑)」と、青葉が言葉を失っている間にも、長門への施術は続く。抵抗も、ものの数分だった。高雄も戦慄した。

彼の膝枕に抱きついたまま轟沈した長門は、野次馬の中に居た陸奥に抱きかかえられて、執務室を後にする。

何だか、羨ましそうな貌をした陸奥の横顔が、やけに色っぽく見えて印象的だった。

 

 

「その、……提督。や、優しくお願いします……」

次に彼の太腿に頭を預けたのは、イケナイ期待で貌も身体も強張らせきった翔鶴である。

震える声で紡がれたその声は、女性的な艶やかさと共に、不安感が見え隠れする初々しさが在った。

翔鶴の潤んだ瞳が、昏い蒼味を帯びた彼の黒瞳へと向けられる。彼は、にっこりと微笑んで頷いて見せた。

全てを許し、受け入れてくれそうな笑みだった。「はい。勿論です。肩の力を抜いて、気を楽にして下さいね」

それは、他所の鎮守府では、被害担当艦などと揶揄されたりする翔鶴が、ようやく掴んだ幸運の瞬間だった筈だ。

 

「SYOUKKはさぁ、実況っていうのは、した事ある? 今日はちょっとそれをして貰うから」

 

しかし、その束の間の幸運に割り込む存在が居た。ビデオカメラを構える野獣だ。

提督の太腿に頭を乗せた姿勢の翔鶴は、戸惑う様な表情を浮かべるものの、最早抵抗する術を持たない。

 

「マジ簡単だから、

ちょっと自分の身に起こってる事を、言葉に出してくれるだけでいいから(良心)」

 

「は、はい。えぇと、わ……、分かりました」

 

翔鶴は横になったままで軽く頷き、すぐに施術は始まった。高雄は、祈るしか無かった。

だが、マッサージを何とか耐え抜き、本番の耳掻きが始まる頃には、やはり翔鶴も限界だった様だ。

「て、提督ッ、……の、棒が、ぁ……、わ、わた…、私のナ、カをぉお……、や優しく、動いてまひゅ……ぅう!!」

溶かされつつある幸せそうな表情のままで、呂律の怪しい言葉を何とか紡いでいる状態である。

「あー、良いねぇ、道理でねぇ!(玄人気取り)」 野獣は満足げだが、青葉の方は流石に顔が赤い。

静まり返っている野次馬の艦娘達の方を見てみると、湯だったみたいな赤い顔で「あわわわわ……(背徳的興奮)」となっている瑞鶴の姿も見えた。

加賀も似たり寄ったりだ。こんな状況にありつつも、赤城は微笑ましいものを見るような表情で、高雄の隣で佇んでいる。

不意に、赤城と眼が合った。ギクッとした高雄を他所に、赤城は穏やかな表情を崩さないまま、また提督達を見遣った。

 

「艦娘達と提督が、互いに信頼と身を寄せ合い、

こんな風に触れ合う時間を持てるという事は、とても喜ばしい事ですね」

 

しみじみとした様子で語る赤城に、高雄はちょっと混乱した。赤城には、あの凄惨な光景がどんな風に見えているのだろうか。

いや、まぁ確かに。その言葉は間違っては居ないとは思う。しかし、絵面だけ見たら、とてもじゃないがそんな解釈は出来そうに無い。

今だって、翔鶴が「ふ……、ぅぁ! てい、と、く…! そ、其処は……!」悶えながら実況しようとしている姿は、平穏とは程遠い。

耳掻きって何だよ……(深淵への問い掛け)。高雄が現実から眼を背けようとした時、翔鶴が右耳だけで限界を迎えた様だ。

野次馬の中から慌てて飛び出して来た瑞鶴が、満たされた様な貌のまま気絶している翔鶴を抱かかえながら、ペコペコと提督に頭を下げている。

 

「Fooooo↑!! (良い映像が一杯撮れて)キモチィー↑!!

 でもそろそろ急がないと、このペースじゃ夜が明けちゃう、ヤバイヤバイ……(タスク管理)」

 

瑞鶴達の背を見送った野獣は、ぶつぶつ言いながらビデオカメラを執務机の引き出しに片付けて、手に耳掻き棒を持った。

それから、提督と同じ様に施術ベッドに腰掛けて、野次馬達の方へと向き直った。「俺も耳掻きしてやるからさ、お前らの為に(優しさ)」

野次馬一同が、えっ……、と言うのを、高雄は聞き逃さなかった。隣に居た青葉だって、信じられないものを見るような貌で、島風コスの野獣を凝視している。

 

「あ、……あの、野獣提督も、なさるんですか?(恐怖)」青葉が、深刻な貌で野獣に訊ねた。

サロンと化している執務室が、水を打ったように静まり返った。誰も動こうとしない。

そりゃそうだろう。島風コスの野獣に耳掻きをされるなど、拷問に近い。

「先輩の耳掻き、気持ち良さそうですね」凍りついた様な空気の中、提督が少しだけ楽しそうに笑った。「お、そうだろ(何処と無く誇らしげ)」

 

「まぁ、俺も元帥のはしくれだし、艦娘の心身のケアも、ま、多少はね?」

 

何故か得意げな貌になった野獣は、施術ベッドに腰掛けたままで、室内をゆっくりと睥睨した。不穏な空気が漂い始める。

 

「まぁ、俺も元帥のはしくれだし、艦娘の心身のケアも、ま、多少はね?(たいせつたいせつ!)」

 

「いや、別に二回言わなくても……」

顔を不味そうに歪めて言い澱む青葉に、野獣は微笑みかけた。

 

「それじゃあ特別に……、AOB! お前からやってやるよ(大サービス)」

 

「冗談はよしてくれ(タメ口)」

今まで聞いた事が無い程低い声で、青葉がキレ気味で答えた時だった。

高雄の隣に座っていた赤城が、穏やかで、それでいて嬉しそうな貌で、すっと挙手した。

何が起こるのか、もう予想出来ない。執務室は静まり返ったままだ。ただ、提督だけが微笑んでいる。

 

「青葉さんが辞退されるのでしたら、私がお願いしても宜しいでしょうか……?

耳掻きの順番的にも次が私でしたので、問題は無いと思いますし……、その……」

 

少しだけ気恥ずかしそうに言いながら赤城は、野獣から視線を逸らした。高雄は驚愕する。

普段から纏う雰囲気こそ優しげではあるものの、立ち居振る舞いは厳格な軍人である赤城が、もじもじと言い澱む姿が、余りに可憐だったからだ。

不覚にもドキッとしてしまった。いや、それよりも驚愕したのが、そんな初々しい態度を向ける相手が、野獣だという事実である。

度肝を抜かれたのは、どうやら高雄だけでは無い様だった。野次馬達の方からも、どよめきが起きていた。

 

野次馬達の中に居る加賀も、魂が抜け落ちた様な貌で、野獣と赤城を何度も見比べている。明らかに眼が死んでいた。

それから「赤城さん。赤城さん。赤城さん。赤城さん……」と、低い声で呟きながら、ガッシュガッシュと凄い勢いで腕立て伏せを始めた。

加賀にとって今の執務室の光景が、どれほど衝撃的だったのか。高雄は推し量る事が出来そうに無い。

周囲に居た野次馬達も、加賀のことを気の毒そうに見守っている。

現実に心を破壊されまいと必死に抵抗する加賀を、一人にはしない。

そんな決意を顔に浮かべた飛龍と蒼龍が、加賀に並んで腕立て伏せを始めた。

残酷だが、優しい世界が、其処には在った。

 

「あ、良いっスよ(快諾) 

赤城に耳掻きしてやるなんて久ぶりだからなぁ。

よし! じゃあ(耳掻き棒) ぶちこんでやるぜ!」

 

「ふふ、普通にお願いします」

赤城は照れ笑うみたいにはにかんで、静かに施術ベッドに横たわる。

野獣の太腿に頭を預けた赤城は、自身の全てを委ねるかのように、そっと眼を閉じた。

耳に掛かった赤城の髪を、手櫛で梳いた野獣の手付きも、信じられない位に優しいものだった。

安らいだ様な、静かな呼吸音が聞こえる。赤城のものだ。加賀の腕立て伏せのスピードが上がった。

 

「Foooo↑ 気持ち良いかAKGァ!」

 

「はい、……とても」 眼を細める赤城は、本当に幸せそうだった。

何だこれは、たまげたなぁ(素)という感想しか出て来ない。

加賀が、腕立て伏せからスイッチして、今度は凄まじい勢いで腹筋を始めた。

呆然と立ち尽くしていると、提督と眼が合った。

 

「では……、赤城さんの次は、高雄さんですね」

彼が、微笑みながら頷いてくれた。そう言えばそうだった。

とうとう、来た。私の番が。「は、はい。お願い致しましゅ……」

噛んでしまったが、まぁ良い。誰も気にしていない。

誰も彼も、赤城と野獣に気を取られている。実際、高雄だって気になる。

気にはなるのだが。施術ベッドに横になると、そんな余裕も吹き飛んでしまった。

左頬に感じる。少しひんやりした、瑞々しく弾力のある太腿の感触。涎が出そうだ。

しかし、堪える。堪えた瞬間、耳朶に軽く吐息が掛かった。甘い痺れが、脳天を突き抜けていく。

 

「マッサージからさせて頂きましょうか? 

それとも、もう耳掻きだけの方が宜しいでしょうか?」

 

彼のウィスパーボイスが、脳を溶かしてくる。身体が脈打ってしまう。

あぁ^~、駄目になるぅ^~(思考停止)。高雄は、崩壊し掛ける理性の中で、色々と覚悟した。

怖気にも似た快感に、身を委ねそうになった時だ。

 

「野獣提督……。次の作戦が、『MI作戦』、と言うのは、本当でしょうか?」

不意に、赤城の声が聞こえた。彼女らしく無い、微かに震えた、強張った声だった。

横になったままの高雄には、今の赤城がどんな表情で居るのかは見えない。

「お、そうだな」と、無駄に明るい感じで答えた野獣の声も、よく聞こえた。

ほんの少しだけ、執務室の騒々しさと言うか、熱気の様なものが引いて行くのを感じる。

 

「AKGが身構えるのも理解出来るゾ。色々と在ったし、まぁ多少はね?

 作戦名にしてみても、単に“運命を覆そう(迫真)”的なノリを表しているだけだゾ」

 

「……運命とは、覆らないから“運命”と呼ぶそうですよ?」 本か何かで読みました。

そう冗談っぽく言葉を付け足した赤城の声は、やはり微かな震えが在った。

高雄は顔を上げた。手を止めた提督も、赤城と野獣に視線を向けている。

腹筋からスクワットへとスイッチしていた加賀も、

それに付き合っていた飛龍と蒼龍も、その動きを止めて、野獣を見詰めていた。

 

「そんな風に言うヤツも、まぁ確かに居るんだよなぁ……(諸行無常)」

野獣は、野次馬を含めたそれらの視線を受け止めながら、再び室内をぐるっと見回した。

 

「でも、“運命”なんて言う訳の分からないモンに、黙って頭下げるなんておかしいダルルォ!?

作戦名だけでネガティブになるなんて甘ぇんだよ! “運命”なんざ俺が黙らせてやるから、見とけよ見とけよ~(概念への突入)」

 

力強く言った野獣は真剣な貌になって、自身の膝の上に乗せている、赤城の貌を覗きこんだ。

流石にその剣幕に圧されたのか。赤城が怯むみたいに息を飲み込む。

しかし、野獣はすぐに相好を崩して、嫌味の無い少年みたいな笑顔を浮かべて見せた。

それから、ぐしぐしと乱暴に赤城の頭を撫でくりまわす。

 

「とは言っても、深海棲艦も強くなってるからなぁ……。

ヤバイと思ったら帰って来いよ(空気) 俺にとっての“赤城”と“加賀”は、

お前らしか居ないって、それ一番言われてるから(絆への確約)……他の奴らだってそうだゾ」

 

野獣は、遠巻きに見ている野次馬達をもう一度見回して、疲れたみたいに肩を竦めた。

 

「俺達提督は、艦娘と妖精が居てくれて、初めて“提督”なんだよなぁ……。

 お前らが居なきゃ、俺は“元帥”でも何でも無いって、ハッキリ分かんだね。

 だから轟沈なんかしたらもう許さねぇからなぁ? 頼むよー(自己中)」

 

良い事を言おうとしているのに、その言葉の端々に利己心が垣間見える言葉だった。

だからこそか。こうした偽善にも似た虚飾に紛らわすしかない野獣の本心が、其処には隠れているのだろう。

野次馬の艦娘達も、お互いに顔を見合わせているし、加賀も黙ったまま俯いている。

横になったままの赤城も、「……はい。野獣提督」と、静かな声で応えるのが聞こえた。

「急に真面目な事を言うと、何だか普通の人みたいに見えますね……。野獣提督(辛辣)」

 

「ファッ!? あのさぁ……、AOB……。

お前の冷静な分析から来る鋭い言葉は、結構傷付くんだよなぁ……(しょんぼり先輩)」

 

先程までの様子から一転して、もう野獣は、普段通りの“野獣”へと戻っていた。

 

提督は、そんな野獣を眩しそうに眼を細めて見詰めて居る。

彼の表情は微かに苦しげだった。彼の眼差しに在るのは、尊敬と敬服。

そして、僅かな自己嫌悪だろうか。「あの一つ……、お聞きしたい事が在ります」

言葉を紡ぐのも精一杯だったが、彼だけに聞こえる小さな声で、身を起こした高雄は呟いた。

 

「……はい、何でしょう?」 

彼も高雄に合わせ、囁き声で返してくれた。

施術ベッドに座り直し、高雄にゆっくりと向き直る。

その瞳に、野獣に向けて居たであろう感情は消えて居た。

蒼味掛かった彼の黒い瞳は、虚ろに見える程に濁りが無い。

高雄はその瞳を見据え、唾を飲み込んだ。

 

「この鎮守府に居る“愛宕”についてです。

……過去に何が在ったのか、教えて頂けませんか?」

 

高雄は、一つ呼吸をしてから、彼の方を見詰めたまま言葉を紡ぐ。

 

「勿論、今で無くても構いません。提督の御都合が悪いのであれば、何時までも待ちます。

 ただ、……こうしてお声を掛けさせて頂ける好機が、今しか無いように思えたのです」

 

彼以外の誰にも、この声は聞こえて居ない筈だ。それでも、慎重に。彼に訊く。

常に秘書艦が傍に控えている彼に、こうした込み行った話を聞くのは、意外と難しい。

彼が、殆ど話そうとしないからだ。彼は、艦娘達に提示する過去を、恣意的に選別している。

それは恐らく、彼自身では無く、艦娘達を思っての事に違い無い。世の中には、知らない方が良い事も少なく無い。

特に、深海棲艦などと戦っている、本営の思惑に繋がる様な事なら尚のこと。余計な詮索は比喩でも何でも無く、命を縮めるだろう。

しかし、高雄はどうしても気になった。この場に居ない姉妹艦の、思い詰めた様な微笑みが脳裏を過ぎる。今しか無いと思ったのだ。

奇妙な熱気のようなものが渦巻く今の執務室で、過去の話へと耳を傾けようとしているのは、恐らく、高雄だけだ。

少しの沈黙を返した後。彼は困ったように微笑んだ。

 

「分かりました……。では、今晩の12時に、工廠の裏に来て頂けますか?」

 

やはり彼も、高雄にだけ聞こえる声で言う。

抑揚の無い澄んだ声音には、微かな熱が篭っている様に感じられた。

 

 


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