艦隊これくしょん―軽快な鏑矢―   作:オーバードライヴ/ドクタークレフ

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北方棲姫クリスマス限定グラ実装で勢い余って書いた。
勢いだけで書いた。うん。

注意事項です。
・『啓開の鏑矢』の時系列はガン無視。今回は時事ネタかつ《啓開の鏑矢》第三部のネタバレを含みます。
・無駄にネタに走る可能性大。
・キャラ崩壊あり、注意。「ながもん」な長門が苦手な人はちょっと注意が必要かもです。
・駄文、駄文、アンド駄文

それでもいい方は、抜錨の用意を。

その前に《啓開の鏑矢》内での北方棲姫のネタバレを

ある作戦で電が保護した北方棲姫――――ヒメ。ヒメは今横須賀で長門やビスマルクが参加する国際チーム”ヒメ事案対策本部”の監視下で過ごしています。

詳しい経緯は《啓開の鏑矢》第二部Chapter5を読んでね!(ダイレクトマーケティング)


よろしいですか?

それでは抜錨!


ほっぽ「……クリスマス?」

「なのです」

 

 北方棲姫……ここではヒメと呼ばれているその少女(と言っても年齢は全くもって不明なのだが)は首を傾げた。これはは電がそろそろクリスマスの時期なのですと話を振って、聞き返した後の動作であった。

 

「ソレッテタノシイノ?」

「いい子にしてるとプレゼントがもらえるのです。あとは美味しいケーキを食べたりいろいろするのです」

「ケーキ……! アノ甘イヤツ!」

「なのです!」

 

 嬉しそうなヒメはぴょんと跳ねる。ミトンのような手を振って電に飛びついた。

 

「クリスマス、面白ソウ! ヒメモシタイ!」

「なら今度一緒にパーティでもしましょうか」

「スル! イイ子ニシテプレゼントモモラウ!」

 

 ぶんぶんと楽しそうに腕を振る。電はその反応を見ながら笑った。

 雷もこっちにいるし長門さんもきっと協力してくれる。ドイツから来ているビスマルクやプリンツ・オイゲン、Z1達に教えてもらえ得れば本格的なパーティもできるかもしれない。美味しいものとかを用意してみんなで楽しくパーティができれば最高だ。用意もみんなで一緒やればそれもきっといい思い出になる。

 電はうきうきしながらヒメをみる。

 

「ヒメちゃんはもらえるとしたらどんなプレゼントが欲しいのです?」

「ゼロ!」

「ゼロ……なのです?」

 

 至極楽しそうに言うヒメ。

 初っ端から暗雲が垂れ込み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だめだ。許可できない」

「そんなっ!」

 

 腕を組んで目をつむった長門がそう言った。

 

「そんなも何もないだろう。ゼロ―――――零式艦上戦闘機を能力制限かつ友好的とはいえ、稼働機を渡すわけにはいかないのはわかるだろう」

 

 長門は目を細く開けた。

 

「友好的で害意がないとはいえ、彼女は“深海棲艦だ”。そして一般的には深海棲艦は“敵”だ」

「ヒメちゃんは敵なんかじゃありませんっ!」

「もちろんヒメ事案緊急対策本部(ここ)のメンバーはそれをわかってる。でも、艦載機は戦争の道具だ。それを“現状捕虜になっている敵兵”に渡すわけにはいかない」

 

 そう言われると電は黙るしかない。

 

「それに、ここで渡してしまうと危険になるのは電、お前だ。ヒメがお前を攻撃することはないとは思うが最前線に立つのはお前だし、深海棲艦に艦娘の艦載機を渡した張本人として裁かれかねん……それが廃棄処分か軍法会議か私刑かは知らんがね。部下がそういう状況になりかねないのを認めるわけにはいかん」

 

 しゅんと俯く電の頭に長門は右手を乗せた。

 

「だれもパーティが駄目ともプレゼントが駄目とも言ってないだろう。戦争に関係ないものを送ってやれ」

 

 そう言って長門は踵を返した。

 

「え、あ、ありがとうなのです!」

「礼を言うには早いぞ。しっかり準備してやれ。日にちはないぞ」

 

 後ろから飛んでくる声を感じながら長門は廊下の角を曲がる。

 

「いいお姉さんしてるじゃない、ナガト」

「ビスマルクか、立ち聞きとは趣味が悪いな」

「いいじゃないの、たまには」

 

 ビスマルクはそう言うと長門の隣を歩く。

 

「実はナガトの好きなタイプでしょ? あのこ」

「な、何を言う!」

「えー、違うのー?」

 

 真っ赤になった長門を見てビスマルクは笑った。

 

「何を根拠にそんなことをいう!?」

「だって頭撫でてた時、頬蕩けてたじゃない」

「ぬ、盗み聞きだけなく盗み見とは……! 武人として恥ずかしくないのか……っ!」

「そういうの気にするのヤーパンの人たちの悪い癖よ。戦場はフェアじゃないわ。だから情報収集はしっかりしなきゃ、ね?」

「こ、の……っ!」

 

 拳を振り上げた長門から逃げるように先行したビスマルクがふり向いた。

 

「ナガトからのプレゼント楽しみにしてるんだから。喜んで受け取ってあげるわよ?」

「だれがお前に送るかっ!」

「ならイナヅマには?」

「だれが……! お、送らないとは言わないが……!」

「ほら脈あり」

「き、サマぁ!」

 

 大型戦艦二人の追いかけっこで基地が大騒ぎになるのはこの数分後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イナヅマ! メリークリスマス!」

「メリークリスマスなのです、ヒメちゃん」

「あたしもいるわよ?」

「イカヅチ、メリークリスマス!」

「メリークリスマス!」

 

 なんだかんだであっという間にクリスマスイブ。簡単なプチパーティは昼食に合わせて行われた。参加しているのは電雷姉妹に長門、同じ対策本部にいる夕張やビスマルク、プリンツ・オイゲン、Z1をはじめとした欧米組だ。

 

「イナヅマノ赤イ服、カワイイ」

「ありがとうなのです。サンタクロースのコスプレしてみました」

「ちょっとスカートの丈短いけどねー」

 

 雷と電はミニのワンピース型のサンタ服に皮のブーツに赤い三角帽。いわゆるミニスカサンタの格好をしている。

 

「サンタクロースッテ、プレゼントクレル人!」

「なのです! ヒメちゃんいい子にしてましたか~?」

「シテタ!」

「本当に~?」

「シテタヨ!」

「お姉ちゃん、あんまりからかわないで上げてほしいのです」

 

 腕を振って抗議するヒメを見ながら電はそう言って持ってきていた白い袋をさぐる。

 

「イナヅマ、もう渡しちゃうのかい?」

 

 そう声をかけたのはZ1、レーベだ。レーベは独特の明るいアッシュの髪を揺らして微笑んだ。

 

「正直あんまり自信がないので……期待で胸が潰れないうちに早く渡しちゃいます」

 

 電はそう言って不安げに笑った。

 

「イナヅマなら大丈夫。ちゃんとできてるじゃない」

 

 レーベに背中を押され、電が綺麗にラッピングされた箱を差し出した。

 

「いなづまサンタからのプレゼントなのです!」

 

 ヒメがそれに飛びつく。クスリと笑ったのはプリンツ・オイゲンだ。

 

「あーあ、あんなに目をキラキラさせちゃって……」

「いなづまサンタは駆逐艦なので艦載機は用意できなかったのですが……」

「開ケテイイ!?」

「どうぞなのです」

 

 そういわれると同時に包み紙を破いて中身の箱に向かうヒメ。電がちょっと残念そうな顔をした。

 

「ヨーロッパではあれが普通だよ?」

 

 レーベがそっと耳打ちをした。どうやらきれいに梱包するのは文化の違いらしい。

 

「ワアッ、オ人形サン! カワイイ!」

「ありがとうなのです」

 

 箱の中から出てきたのはテディベアだった。深緑のタータンチェックの服に赤い蝶ネクタイを締めたそのテディベアを見てヒメは目をキラキラさせた。

 

「ふふふ、実はそれ電の手作りなのよ?」

「イナヅマガ?」

「ちょ、お姉ちゃん、しっ!」

「いいじゃない、頑張ってたんだしさ。ちなみにやり方を教えてたのはレーベさんね」

「ぼ、ぼくはあんまり……」

 

 電の横で小さく頬を染めたのレーベ。

 

「レーベ、スゴイ!」

「でも作ったのはイナヅマだよ。ぼくはやり方を教えただけ。テディベアの服のデザインを考えたのもイナヅマなんだ」

「イナヅマモスゴイ!」

「ちょ、ちょっと恥ずかしいのです……」

 

 顔を真っ赤にする電を見てくすりと笑った雷。テディベアづくりに雷も協力したのだが、ここで水を差すのも野暮というものだろう。

 

「イナヅマ、帽子貸シテ!」

「? はい、どうぞなのです」

 

 そう言ってヒメに赤いサンタ帽をかぶせる電。それで嬉しそうにくるくる回るヒメを見て周りに笑みが弾ける。そんな駆逐チームの姿を見て微笑んだのは長門だ。

 

「上手くいったか」

「ナガトの采配のおかげよ」

 

 ビスマルクも笑った。

 

「これでヒメとレーベの接触ができたし好印象を持ってもらえたみたい。ドイツ派遣艦隊の代表としても礼を言うわ」

「私に言われても困る、電に言ってやれ。あいつが言わなきゃできなかった作戦だ」

「その申請も全部ナガトがやったのに?」

「さぁ、なんのことだかな」

 

 このクリスマスパーティ、実は軍の公式作戦としての認可が下りている。中央戦略コンピュータにもミッションナンバー付きで登録された正式な軍事作戦だ。

 

 

 北方棲姫の懐柔作戦“オペレーション・ウェヌス・エリュキア”。

 

 

 現状電のみにコミュニケーターが限定されているが、その打破を目的に、電以外の人物との友好的関係性の構築、そのためのイベントとしてのクリスマスパーティとして認可が下りた。プレゼントづくりにレーベを噛ませ、雷にはレーベが会話に加わるよう配慮するように伝えておいたのもそのためだ。また、他のメンバーもクリスマスプレゼントを用意してきて、それをツールにヒメとの距離感を縮めるように指示をしてある。ケーキもホールで用意した。

 

 要は北方棲姫をモノで釣る作戦だ。

 

「ここまで予算をかけたんだ。成功してくれるといいんだが」

「またそうやって自分に言い訳する。ナガトはもっと素直になった方がいいわよ? 必死に司令部に掛け合ったのもナガト。サンタ服の手配をしたのもナガト。全部あの子たちのためでしょ?」

「う、うるさいな」

 

 そっぽを向いた長門にビスマルクは噴き出した。

 

「そんなわかりやすい反応しちゃって。ナガトは素直で助かるわ。まあ、だからみんながついていくんでしょうけど、ほら、ナガトもプレゼント渡して来たら?」

「ほ、ほら。まだ向こうで盛り上がってるから……」

「そんな弱気にならずにいってきな……さいっ」

 

 物理的に背中を押された長門が前にたたらを踏む。その様子に気がついたのか駆逐組が振り返った。

 

「ナガト?」

「あ、あぁ、ヒメ。電からもらったのか」

「ウン! カワイイノモラッタ! コイツノ名前“レップウ”にする」

 

 そう自信満々にいった名前があまりにテディベアらしくなくて長門は噴き出してしまう。

 

「レップウヲ、笑ウナァ!」

「ひ、ヒメ! 私はそんなつもりじゃ……!」

「イナヅマガ作ッテクレタレップウヲ笑ウナ……ッ!」

 

 クリスマスの帽子をかぶったまま般若のような形相で睨むヒメ。背後の空間が揺らぎ、艤装が飛び出してくる。鳴り響く警報。

 

「ヒメちゃん、やめるのです!」

「長門さんとりあえず謝って! 早く!」

「すまなかった! この通りだ!」

 

 長門が腰を90度に折る。平謝りする連合艦隊旗艦という珍しい構図だがそれを気にすることができる大物はここにいなかった。がなる警報の中で時間が過ぎていく。

 ……結局電がなだめすかして長門のケーキ没収からのヒメのケーキ増量ということで決着がついた。その後はとりあえずトラブルもなく進んだ。

 

 

 

 その後、長門が独り物影で涙していたのをトラブルと呼ばなければという話ではあるが。

 

 

 

 




ほっぽちゃん 怒りのクリスマス
そういう雰囲気のグラフィックになってました。3-5行って大笑いしたのは初めてです。

感想・意見・要望・当鎮守府へのクリスマスプレゼントはお気軽にどうぞ。
もしかしたら艦娘たちからメッセージが届くかもです。

皆様よいクリスマスを。
作者は独りで家でウィスキー開けるつもりです。
メリークリスマス!(涙

それでは次の機会にお会いしましょう。

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