艦隊これくしょん―軽快な鏑矢― 作:オーバードライヴ/ドクタークレフ
女の子の男装って惹かれるものがあるんだ! な今回です。
注意事項です。
・『啓開の鏑矢』の時系列はガン無視。今回は時事ネタで時系列行方不明。一応MI作戦以降なので初霜とか出てきます。
・無駄にネタに走る可能性大。特に今回はn次創作要素多めで、いろいろリスペクトあり。
・キャラ崩壊あり、注意
・駄文、駄文、アンド駄文
それでもいい方は、抜錨の用意を。
それでは抜錨!
「ハロウィーン?」
「そ、お化けとかに仮装していろんな人のところに行ってトリックオアトリートって言うと。お菓子がもらえるの。お菓子がもらえない時はイタズラしてもいいってお祭りね」
“スウィング”と呼ばれる夕方から夜にかけてのシフトが終わった午後11時、雷はホットミルクに砂糖を入れながらそう言った。電は牛乳の膜を気にしながらもチビチビとホットミルクを飲む。
「面白そうなのですが、それっていつなのです?」
「10/31だから、明後日ね」
体がじんわりあったまっていくのを感じながら、ハロウィーンを想像する電。
「明後日までに間に合うのでしょうか」
「明日頑張れば何とかなるわよ。伊波少尉のところに行けばいろいろあるだろうし、そこまで本格的に幽霊に化けなくたって、いいじゃない。そ・れ・に」
しれーかんにイタズラ、してみたくない? と雷が囁いた。ピタリと動きを止める電。
明日以降の動きが決まった瞬間である。
「仮装に使う、布……ですか?」
朝一番で“魔窟”―――――正式名称艤装開発整備区画を訪ねた雷電コンビに、魔窟の主、伊波ハルカ少尉が半分寝ぼけまなこのままそう言った。どうやら部屋でいろいろやっていたらしい。
「んー、少し探してみるので中で待ちますー?」
「お、お邪魔しますです……」
魔窟のドアを開けると中の惨状が見て取れた。
「こ、こんなになってて作業は困らないの……?」
「んー? 困らないよ? これぐらいのほうが落ち着くんだ」
あきれ顔でそう言った雷にそうのおほほんと返すのがハルカらしい。
「あーもう! 見てるこっちが落ち着かないわ! 電、片づけるわよ!」
「は、はいなのです!」
「あ、危険物とかもあるから気を付けてね?」
「危険物とお菓子の箱がミックスされてるのはどうかと思うわよっ!?」
「私はどこに何があるか把握してるし私がいじる分には問題ないんだけどねぇ」
足の踏み場もないという状況一歩手前のこの“汚部屋”を前にして雷は腕まくりをするのだった。
「で、二人は何になるの?」
「なにに、というと?」
「ほらほら、バンパイアとかーウィッチとかー、お姫様ってのもありかもね~」
そんなことを言っていいながらハルカは奥の物品保管庫を漁っている。
「私はシーツ被ってゴーストでもいいんだけどね」
「えー、雷ちゃんもったいないなぁ、いろいろ面白そうなもの用意してるのに~」
「え、用意してるってなに……?」
ハルカはくるりと振り向いてにししと笑った。
「だって、無礼講で大人にお菓子をせびれる日だよ? 利用しない手はないじゃん」
「も、もしかして自分用に用意してるのです……?」
「それもある~。さ、サイズ合わせしましょうか、はーい電ちゃん、雷ちゃん、ぬぎぬぎしましょうね~」
あ、これ頼る人間違えたかもと思った雷だが、今更逃げ道はなかった。
そんなこんなで、ハロウィーン当日。
ウェーク島の
つまり夕方になにも起こらなければ、全員が基地内待機――――オフシフト同然である。もちろんそれを見逃す雷ではない。
「しれーかん! とりっくおあとりーと!」
1705WAKT、ウェーク島時間午後5時5分、司令官の仕事が終わったであろう時間であることを見越して司令官の部屋のドアを押し開けた。後ろには協力者の電以外の姉妹2人と睦月型4人、初霜・若葉も詰めている。
「お菓子くれないとイタズラするぞー! ってしれーかん?」
夕日が差し込む部屋をのぞき込むと司令の椅子は窓際に向いている。左手が肘掛に乗っている所から見てそこにいるのはいるらしいのだが、まったくレスポンスがない。
「あれ、しれーかん? トリックオアトリートだって、聞いてるー?」
顔を見合わせてからゆっくりとデスクの方に寄っていく。雷はデスクの横を回り込み……。
「ねぇ、しれーか―――――――っ!?」
自分の司令官の顔が腐ったような緑色に変化しているのを知る。第一種制服から覗く手も皮膚が硬質に変化したのか、真っ黒で所々緑色に変色していた。そして、その目がぐるりと回り雷を捉える。
「〇△♨ ◇●▼□*×~~~~~~~!」
雷が声にならない叫びをあげながら飛び退くと、椅子からよろよろと立ち上がった司令官だったものがゆっくりと雷を追いかけていく。その腕を振り回しながらのっそりと近づくグールをみて例外なく駆逐艦一同、硬直。
最後尾にいた初霜たちも恐怖におののいて一歩下がったところでその肩にいきなり手が置かれ、跳ね上がる。慌てて振り向くとコートの奥に浮かび上がる骸骨の空虚な目の穴が初霜を見ていた。
「い、いやぁああああああああっ!」
その叫びに驚いて駆逐艦一同が慌てて振り返る。髑髏はニヤリと笑うとコートを広げ何かを振り上げる。
「い、いやぁああああああああっ!」
悲鳴の合唱に髑髏はその振り上げたものを見せつけた。
「はいっ! どっきり大成功~!」
髑髏はいつの間にか姿を切り替えたかのように見え、手にはピンク色メインの看板でドッキリ大成功と大書されていた。
「い、伊波少尉~!?」
「へへへ、手が込んでるでしょ? 伊波少尉謹製の特別ホログラムですよー。大佐ももういいですよ~」
「いきなりこんな特殊メークさせたと思ったら……」
そう言うとグール化していた司令官が変装用のマスクをはぎ取った。べりっという音と共に緑色の膜がはがれいつも通りの司令官の顔が戻ってくる。
「あー、まだ剥がさないでくださいよー、もー。みんな揃っての撮影まだなのにー」
「呼吸用の穴開いてるとはいえこれなかなかきついんだぞ」
そういいながらも月刀航暉司令は手袋状のゴムもぺりぺりと剥がしてデスクに投げ捨てた。
「し、司令官も変装、なの……?」
「伊波少尉の提案でね。で、最初に一発驚かせてやれってことでこうなった」
「もー、一瞬本気で司令官が腐ったかと心配したじゃないっ!」
そう言うのは暁である。
「で、暁はあれか、宝塚の男優か? 案外タキシード似合うんだな」
「と、当然よっ!」
黒のタキシードにボウタイ、腰の絞られた服装は正式なタキシードモデルで、白い手袋に黒の革靴を合せたフル装備だが如何せん身長が低く頭身が低いせいでコスプレにしか見えないところがあれである。まぁ、実際コスプレでしかないんだけれども。
「弥生ちゃんのお姫様とセットなんですよー?」
ハルカはそう言って後ろで目立たないようにしていた弥生を押し出した。純白のドレスに包まれた彼女はどことなく頬を染めながら暁の横に収まる。
「二人そろって結婚式で花束渡す感じだな」
「そんなこと……ないし……」
「私はそれでもいいわよ?」
暁はそう笑いながら、弥生の方を見て笑う。それを見た弥生が頬を軽く染めながらついと横を向いた。頬が染まっているあたり、実は満更でもないのだろう。
「じゃーん、吸血鬼だぞー!」
そう言って司令官の腕に飛びつくのは雷である。マントにスタンダップカーラーのシャツ、確かに吸血鬼という感じではある。
「噛みつくなよ、ここで吸血鬼になったら生娘の血が足りなくなるからなぁ」
適当にあしらっていると航暉の目にある子が止まる。
「ほら。生娘ならあそこに」
「あ、そーね!」
がばっという擬音が似合う動作で飛びかかったのは……赤ずきんに扮した睦月である。
「ひやぁ! って、なんでオオカミじゃなくて吸血鬼に食べられてるですっ!?」
「ふははははっ!」
「笑い方が悪役ねぇ、バンパイアさん?」
「そういう如月はチャイナレディか?」
「ふふふ、このスリットのせいでなかなか足元がスースーするんですけど、ね」
オレンジ色がベースの花柄のチャイナ服とシニヨンにまとめた髪でいつもと違う快活さをだした如月がその場でクルリと回った。腰の括れ近くまで脇のスリットが切れ込み、長く垂れたスカートがくるりと風に舞う。
「ならそんな破廉恥な人は私が石にしてしまおうか」
フードを外し、現れたのは銀の髪を蛇のようにまとめた(本当にどうやったのかわからないが……)響で、結構ノリノリだ。それに乗っかってしまったというような顔をする如月。
「はうっ!?」
「そんくらいにしときな、如月ねーちゃん。みているこっちが恥ずかしい」
気だるくそう言うのは望月だ。……ジャックオーランタンの被り物のせいで顔が見えないために声で判断した形だ。
「でっかいの被ってて大変じゃない?」
「ほんとはこれ初霜のだったんだけどねー」
「は、初春型でその仮装は不吉ですっ!」
そう言うのは黒い三角帽をかぶった初霜だ。マントもあるし魔女といった所だろう。竹ぼうきが手に入らなかったのか回転ほうきを持っているところが後一歩である。
「で、その相方の若葉は……なんじゃそりゃ、ヤンキーもどきか?」
「アウトローと言ってくれ。」
ココアシガレットを加え、サングラスで決めた若葉はどこか似合っていてそれがどこか笑えてしまう。
「どちらかといえば西〇警察のノリかな?」
「レミントンのショットガンでも持とうか?」
「洒落にならんぐらい似合いそうだから却下だ」
あたりを見回すと一人足りないいことに気がつく。
「そういや、電は?」
「はぁ……いつまで隠れてるやら、ほら電、ご指名よ」
雷がそう言うと廊下の方から頬を赤く染めた彼女が出てくる。
「……ほう?」
「第二種制服、結構似合うでしょ?」
ハルカが及び腰になっている電を無理矢理前に連れ出した。一番小さなサイズの制服なのだろうが男性用である。サイズが合ってないため袖口から指先だけがちょこんと覗いている。ズボンも裾が余っているのを無理矢理はいたのだろう、だぼっと余っている。それでも飾緒と短剣まで下げた本格仕様だ。
「に、似合いますか……?」
「想像以上に似合ってて正直びっくりした、でも一つ足りないかな」
航暉はそう言うとコートかけにより、そこにかけてあった制帽をとると電にかぶせた。
「ちょっと大きいけどこれでフル装備だな」
だぼっと目元まで隠してしまった帽子を電は袖から覗く指先でぎゅっと握った。頬がかぁと赤くなるのを姉三人は見逃さなかった。ニヤニヤ顔を隠さない三女にうらやましそうに目を細める次女、長女は溜息をつきながらも満足げだ。航暉が電に向けて敬礼の姿勢を取る。それを見て電が慌てて敬礼の姿勢を取る。
「電少将、着任おめでとうございます」
「……ほえ?」
電は慌てて階級章を確認する。階級章はまさかの少将、ハルカの方をみると笑っていたので確信犯だろう。
「ご命令を、提督?」
航暉がいじわるな笑顔を向ける。
「と、とりっくおあとりーと、なのです!」
電が顔を真っ赤にしながらそう叫ぶと、司令室は笑い声に包まれた。
航暉が用意していたお菓子を渡して、航暉がまさかのトリックオアトリート返しを実施、ちゃっかりお菓子を用意していたハルカ以外が大パニック。それをチャンスと見た如月が暴走したりしたが、そのあたりはまたいつか話すとしよう。それを超える大事件が次の朝に起こったのである。
「あれ、俺の服、こんなに大きかったか?」
航暉は朝起きて動きづらいことに気がついた。妙に服がダボついている。寝ぼけているがどこかおかしいと本能が警鐘を鳴らしている。
「あれ、周りのものが大きい……?」
部屋を見上げて気がつく。昨日の記憶と比較して、すべてのものが1.5倍以上大きくなっている。
「……んじゃなくて、俺が縮んだのか!?」
11月1日、月刀航暉受難の一日が始まった。
つづく……?
続くかどうかは完全に未定、でもやりたいと思ってました。こっちものんびり書くかなぁ。
それでは読者の皆様にオーバードライヴ鎮守府よりハッピーハロウィン!
感想・意見・要望はお気軽にどうぞ。
それは、次の機会にお会いしましょう。