デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

86 / 93
 原作読み返していて、いや七罪のこのネガティブ思考トレースって無理じゃね……? となる作者の図。

 七罪編後編二話です。話が進まないZE。
 たまに自分でも忘れる設定をちょろっと書くのいい加減止めなきゃなと思う今日この頃。

 それでは、どうぞ。


第84話

 〈フラクシナス〉の探査機に反応があったらしい。

 皆が幼くなってから数日が経った。

 その数日間、ずっと嫌がらせをされてきた俺と士道は、既に心身ともに疲れ切っている。精神面では執拗な七罪からの嫌がらせ。身体面では、幼女化された精霊達の最早子守り。大変。

 流石に社会的に死にそうなものは俺が打ち消して防ぐ、もしくは解決してきたが、そう何度も取れる手段ではない。

 僕だけの動物園は色々とアウトだと思う。

 ともかく。

 今はその七罪の居場所が分かったのだ。

 

「ッ。場所は?」

『すこしはなれたやまのちゅうふく! すぐにこっちでかいしゅうしててんそうするわ!』

 

 さらに説明を聞く限り、交戦中である可能性が高いらしい。

 士道の携帯から聞こえてくる琴里の声を聞きながら、状況を推測していく。

 確かに、今の今まで〈フラクシナス〉からの追跡を逃げ切っていた七罪が、急にこんなヘマをするとは思えない。何かしら緊急の案件があったと考えるべきだろう。交戦中とあったぐらいだし、一瞬ASTの存在が思い浮かんだが……こう言っては何だが、凡百のASTに、こちらでも追いかけることの出来なかった七罪を捉えることは出来ないだろう。だったら、考えられるのは……

 

「DEMの方か……?」

 

 DEMの魔術師達は一般のそれより練度が高いと聞くし、それならば納得できる。

 最悪なのは。

 

「アイツが出てきてなければいいけどなあ」

 

 エレン。

 人類最強。

 いくら強力な能力があろうとも未だに手が届かない高みにいる魔術師。

 彼女が出てくる道理は無いように思える。だが、彼女のさらに上から指示できる人物がいるのも確か。アイザック……だったか。どんな目的があるのかは知らない、というより覚えていないが、エレンが出てくる可能性は否定できない。

 さらに言えば。

 ――確かにそろそろ、そういう時期かもしれない。

 まだ原作の方の知識は残っている。もう何か月も前のことだから曖昧にはなっているが、確かに七罪とエレンが接触するイベントはあった。

 となると、やはり。

 

「チッ……琴里、交戦中の相手、多分あのエレンだ。俺も行く」

『うそでしょ!? かのじょがわざわざでばってくるなんて……こっちでもせいかくなしきべつはするけど、もしほんとうならどれだけいそいでもまにあわないかのうせいが、』

「行ってみなくちゃ分かんねえよ。……こっちは用意できた。できたよな? よし。回収頼んだ」

 

 途中で士道に目配せして確認。頷きが返ってきたところで携帯を返す。既に人目のない所に移動済みだ。

 それと同時に〈フラクシナス〉が俺達の頭上に到着したのか、一瞬の浮遊感。

 再度目を開けると、そこは見慣れた艦橋内だった。モニターには、既に自立カメラを飛ばしているのか、七罪やエレン達が交戦している映像が流れている。

 

「……すぐに目的の場所に着く。いつでも出れるように準備しておきたまえ」

「はい」

「エレンってことは……また、七海が戦うのか?」

 

 令音さんの言葉に俺が頷くと、士道が何かを懸念しているような目で俺を見る。琴里も、言葉にはしないものの、何か言いたげなのは雰囲気で伝わってくる。

 いやまあ、言いたいことは分かる。

 今まで俺がエレンと相対する度、何かしら俺はやらかしてきたからなあ。暴走したり、色々。

 だが実際、俺が出ないと被害が広がる、もしくは他の精霊に向いてしまう以上、現状俺が出るしかない。たとえそれが悪手だとしても。最悪ではない、可能性が高い。

 でもまあ、一度構えたら両者殺意たっぷりだからなあ。止まらない止まらない。

 

「大丈夫、大丈夫さ。今回は七罪の救出が主目的だ。少し時間を稼いだらすぐに撤退するさ。その時の回収はよろしくな、司令官?」

「え、ええ。まかせてちょうだい」

 

 だが今回は別に殺し合うつもりじゃない。あくまで七罪の救出が目的。

 向こうがそれを許してくれるかどうかはともかく、取り返しのつかないところまで行くことはないだろう。

 だから、さ。

 

「……そんな強く握りしめなくても、ちゃんと帰って来るさ」

「あ、いやっ、これはそんなつもりじゃ……!」

「ろうばい。いつのまに」

 

 服の裾を引っ張られる感覚がした。視線を移せば、未だ幼い姿のままの耶俱矢と夕弦が今にも泣きそうな顔で握り締めていた。

 言葉から察するに、無意識の行動だったようだが……無理もないのか。

 彼女達との付き合いもそれなりに経つ。その分、不安や心配を感じさせてしまったことも多々ある。信用が無いだとかいう話ではなく、単純にこうして俺が誰かと争うということ自体が二人にとって辛いものなのだと思う。

 それが分かっていても、俺は止まらないのだろう。

 現に、七罪を守るため、皆に危険が及ばないように、二人の心配を無視してでも戦うという覚悟ができてしまっている。

 独善的で。我儘で。

 そんな俺の在り方では、いずれ身を滅ぼすのだろう。

 

「ん……ここだ。やはりエレン……それに、周囲にもそれなりの数の魔術師がいるが……行けるかい?」

「了解――エレンや魔術師の相手は俺が、」

「いえ。まわりのウィザードさんがたはわたくしたちが。ななみさんはエレンさんとやらを」

 

 七罪の救出を士道に任せようかと口を開いたところ、狂三にそれを遮られた。

 その台詞に俺が眉を顰めるが、狂三はさらに続ける。

 

「なつみさんがせんとうちゅうならば、わたくしやみくさん、まゆりさんなどはもとのすがたにもどれるしゅんかんがあるかもしれません。もどれなくとも、わたくしたちならばあるていどたたかえますわ」

「危険だ。エレンもいる。皆を庇いながらじゃ流石に戦えない」

「……もうすこし、わたくしたちをしんらいしてくれてもよろしいのでは?」

 

 幼体化によって感情も表面化しやすくなっているのか、潤んだ瞳で狂三が見上げてくる。

 現場に出したくはない。だが、迷う時間もない。

 狂三の言葉通り、狂三や美九、万由里、それに八舞姉妹……つまりは、霊力が封印されていない精霊ならばもしかすると戻れる可能性もあるだろう。随意領域やワイヤリングスーツについては明るくないが、真那も戦える可能性はある。

 彼女達と一緒に戦地へ向かうか、俺一人で行くか。

 

「……ナナ」

「七海」

 

 令音さんの急かす声と、名前を呼ぶ士道の声。

 ……答えは分かり切っている。

 

「――士道達は七罪の救出。俺()でエレンと他の魔術師の相手をしよう」

 

 確認するように周りを見ると、力強い頷きが一様に返ってくる。

 大丈夫、大丈夫。

 自分自身に言い聞かせるように、心の内でだけそう呟く。

 そして、俺は令音さんに告げる。

 

「――お願いします」

 

 モニターには、幼くなったエレンだと思われる少女が自らの武装を構え直す瞬間が映っていた。

 

 

 

    ◇◆◇◆

 

 

 

「――に済みます。途中で死なないでくださいね」

 

 あらかじめ現場に展開していたマイクが拾ったエレンの声が、インカムを通じて届く。

 そして、既に目視できている。

 一気に間に転送してもらう訳にはいかなかった。そんな状態からエレンの相手をするには厳しすぎる距離だし、他の精霊達や士道を悟られても困る。

 だから、多少距離が出来ようとも若干離れた場所に転送してもらったのだが……

 

「来い、〈聖破毒蛇〉――その距離をこうも悔やむことになるとはな」

 

 甲高い、エレンの武装〈カレドヴルフ〉と俺が顕現させた天使〈聖破毒蛇〉とが激突した音が響く。

 ふむ、最後に見た映像では幼い姿に――恐らくは七罪の能力で――変えられていた筈だが……七罪には大きな裂傷が付けられ、エレン自身も元の姿に戻っている。七罪がダメージを負ったことで変身能力が一部解けた、ということだろうか。

 今俺は七罪を庇うように彼女の前に立ってエレンの攻撃を防いでいる。キッと睨めば、冷ややかな視線と共に、エレンは一度距離を取った。

 ちらりと後ろを見れば、怯え切った表情でエレンと俺を交互に見やる七罪の姿。

 

「……酷い傷だな」

「な、なんで、あなたが……こんな所に……」

 

 愕然としている七罪の姿を確認して、俺の冷静な部分が今なら耶俱矢や夕弦達の変身ならば解けるだろうという考えに至る。それと同時、エレンに対する怒りが沸々と込み上がてきた。

 殺意に身を任せてはいけない。あくまで救出が最優先。

 戦闘そのものは本気であろうと、最終的には撤退する。

 それはそれとして。

 ――一発くらいブッ飛ばさないと気が済まない。

 

「令音さん、皆に変身が解けるか試すようにい伝達を。俺は、エレンを」

 

 無線で令音さんにそう伝えると、俺はエレンを見据え、再度構えた。

 

「よう、人類最強。久しぶりだな」

「〈ディザスター〉……貴方が、こんな所にまで来るとは」

 

 互いに一歩踏み出す。

 彼我の距離は十メートルもない。俺とエレンの加速力なら、一息もあれば詰めれる距離。

 だから。

 再度の激突も、一瞬だった。

 

「――ハッ!」

「――フッ!」

 

 裂帛の声は短い。

 俺の天使、というより霊力は随意領域を無視とまでは言わずともそれごと切り裂くことが出来るので、攻撃に対して回避するか、濃縮した魔力で相殺するしかない。

 そして、攻撃面には優れていても、素体は人間。エレンのような存在から切り付けられでもしたら一溜りもない。俺の方も回避か打ち合いか。

 だが、純然たる事実として、俺は未だエレン程の戦闘能力を持っている訳ではない。そこらの魔術師に敗ける気はしないが、彼女は別格。今までの二度の戦いにおいて俺は両方とも勝ててはいないしな。

 真正面からやり合えば、時間稼ぎにもなるか怪しい。だから、小手先勝負。予測できない動きで撹乱しつつ、七罪から引き離そう。

 

「〈聖破毒蛇〉――【双刃】」

 

 迫るレイザーブレイド――〈カレドヴルフ〉だったか――を左に持つの剣で受け止め、反撃のために一歩踏み込む。

 

「っ?」

 

 エレンが息を呑んだ様子が間近に映る。

 まあそうだろう。互いに剣を打ち合ったということは、間合いとしては極めて近付いてしまっている。その上でさらに一歩踏み込んだのだ。攻撃するにしても動くにしても近すぎる距離。

 だが、そもそもそうやって手を読ませないのが目的。こういう状況において能動的か受動的かの違いは大きい。

 

「〈聖破毒蛇〉――【鋼拳】」

 

 二振りの剣を消し、両腕に腕甲のようにして天使を変形させて纏わせる。

 さらに一歩踏み込んだのはこのため。拳の方が、剣よりもさらに間合いは近い。

 右の拳を振るう。

 だが。

 

「甘いッ」

 

 逆手に持ち替えた〈カレドヴルフ〉に受け止められる。霊力と魔力の接触により火花のような閃光が散る。

 受け止められることは想定済み。むしろ回避される可能性も考えていた。

 次の一手。

 

「――【鋭爪】」

 

 拳を引き、爪を模した形態へ。空いた左手で回り込ませるように首を狙う。

 ここでエレンは一歩引いた。

 両腕の武装が変わったのは視線の動きから察するに確認された。下手に〈カレドヴルフ〉で受け止めては今度は右から来ると判断しての行動だろう。

 左半身を前に出すように、さらに一歩。

 次は、

 

「――【小剣】」

 

 ダガー。

 右手に握ったそれで刺突。狙いは心臓。

 本来ならば傷を増やして体力消耗を狙ったりしたいところなんだが、多少の傷では随意領域の力で治されてしまう。あまり意味も効果もなさそうだ。

 だから、回避前提、防御前提で一撃を。

 視線の先。エレンは身体を傾け、刺突した俺の右腕のさらに外側へと場所を移した。

 〈聖破毒蛇〉を持ち変えるにも、振り直すにもこの至近距離では難しい。

 だが、もとより当たらないことが前提。

 次。

 

「――【撃槍】」

 

 空いている左手。その掌を見せるように開き、天使を変形。

 槍。

 今までの小振りで密着した状態で扱うような武器から、一気に大型のものへと。狼狽えてくれたら僥倖。そうでなくとも多少の隙が出来れば良し。一撃は……当たらないだろうなあ。

 

「――――」

 

 エレンは無言だった。

 無言で、突き出されるように現出した槍型の〈聖破毒蛇〉を〈カレドヴルフ〉で往なす。

 いやー、ははっ。

 

「化物かよ……ッ!」

「小手先だけでどうにかなると思っていたのですか?」

 

 往なされ、空いた胴に〈カレドヴルフ〉が迫る。

 再度【小剣】に作り替えた〈聖破毒蛇〉を上から()()()()()止め、もう一方の手でエレンを直接掴もうと手を伸ばす。やはり、いくら魔力で直接作った刃といえど、側面は若干脆いか。こちらが突き刺すために霊力を気持ち強めに込めてようやく、と言ったところとはいえ、だ。

 本当は別の武器の形に新しく変形すればいいのだが、そうなると今の俺では集中力や注意が散漫になってしまう。その一瞬の間は、練習中やそこらの魔術師ならともかく、相手がエレンとなると命取りになるだろう。

 直接殴ってもダメージは無いだろうから、体勢を崩すにしろ動きを制限するにしろ、一度掴んでしまった方がいいかもしれない。

 

「ッ」

 

 ……エレンの〈カレドヴルフ〉を握っていない方の手で掴まれ、阻まれたが。

 束の間の膠着。

 辺りには、風が吹き荒び、奮い立つような行進曲が流れ、銃声が鳴り響く。

 ふむ。今しがた〈聖破毒蛇〉が刺さったのは、美九の〈破軍歌姫〉もあったからかもな。

 ともかく。

 もうそろそろ小手先だけで通用しなくなるぞ……?

 

「〈ベルセルク〉、〈ディーヴァ〉、銃声ということは〈ナイトメア〉ですか。それに、観測したことのない霊波まで。精霊が三人、ないし四人が相手とあっては、他の魔術師では厳しいですか」

 

 目を細めるエレン。その視線は、真っ直ぐ俺を射抜いていた。

 

「……〈パンドラ〉ではないのですね」

「? あー。か、は、はッ。残念だが、違うね」

 

 楓のことか。

 そういえばアイツはエレンに勝ったのだったっけな……。マジでどうやって勝ったんだ。

 

「さて、どうする? 直にお仲間さん達は戦闘不能になると思うぜ? 多勢に無勢だ。お互い、引いた方がいいと思うが?」

「多勢と思っている側が引いた方がいいと思っている時点で、貴方も私以外の魔術師を戦力に勘定していないのでしょう? それに、私一人でも貴方と、後ろの精霊を殺すことくらいは……おや?」

 

 す、と一瞬だけ逸れたエレンの視線。その表情には、不審が読み取れた。

 ちっ。バレたか。だが、どうせバレることは避けられなかった。結果として成功しているのだから、俺の役目はここまでだ。

 そう思うと同時、インカムから通信が入る。

 

『七罪の回収が完了したわ! そこから離脱して!』

「了解!」

「何を――」

「――【竜麟】そして――【脚甲】」

 

 違う武器の形への同時変形。

 【小剣】を一度消し、すぐさま腕を覆うように尖った鱗なような装甲に変形する。【小剣】状態で止めていた〈カレドヴルフ〉を受け止めるため、そして掴まれていた腕を離させるため。

 同時に、爪先から膝辺りまでを覆うような装甲に。装甲と言うには、目的が防御ではなく攻撃に向いているのだが。

 別の形への同時変形は難しい。どうしてもイメージに拠るところがある以上、天使は一つ、という思考が働いてしまう所為かどうにも慣れない。

 だが、時間を掛ければなんとか。そして、そのための時間は十分にあった。

 先の膠着時間。

 あれだけの間があれば、一手分くらいなら同時変形も可能だ。

 刺さるまいと手を離し、身も引いたエレンに、身体を回しながら跳躍してからの回し蹴り。身体能力が上がっているということが意外と分かる動きだな。

 

「ちっ……」

 

 下がる距離をさらに広げることでそれを躱すエレン。防御を選択しなかったのは、腕の【竜麟】のように棘に変形するのを警戒してか。

 だが、それだけの間合いが開いてしまえば。

 

「――【防盾】!」

 

 割と最近にも変形させた盾の形にし、それをエレンへと押し飛ばす。

 目的は勿論、攻撃を防ぐためなどではない。今は攻撃されていないし、エレンの動きを予測した訳でもない。

 目隠し。

 それなりの速度で飛ばしたが、弾くなり斬り付けるなりして〈聖破毒蛇〉は無力化されるだろう。攻撃及び防御目的に変形させていないので、耐久力は紙同然。

 だが、一瞬でも俺を視界から外せたのなら。

 

「――今!」

 

 直後、慣れた浮遊感と共に、俺はその場から離脱した。




 この話投稿時点で、以前の【逆刀】を【小剣】に変えています。

 ダガーとかナイフって逆手に持つと絵面はかっこいいですが普通そう持たないよねと思い、逆、の字やめとくかとなった結果です。
 拙いながらに戦闘シーン書いてはみますが、どうにもざっくりとこういうことが起きている、という書き方が出来ません。いちいち一動作を書いてしまう。の割に文章力が無いので読みづらい。文章量の割に時間進まない。などなど。

 しかし、ううむ……原作で新しく判明した設定とかどうしまっしょかねー……。


 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 動きに合理性が無いって?……その場のノリで書いているので許して(´・ω・`)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。