デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 4ヵ月振りになりますかー(遠い目)。

 ということで久し振りです。七罪編突入となります息吹でございます。
 他の方々のssを読んでて、殆ど読み専になっていました。待ってくださっていてくれた方々、申し訳ありません。
 面白い作品見つけるとつい読んじゃいますよね。

 それでは、どうぞ。


七罪編
第72話


 <フラクシナス>のモニターから見える風景は、なんとも異様であった。

 通称「おばけランド」とかいう、天宮市の再開発対象外の廃園である。

 

「まあ確かに、そのあだ名も納得だよなぁ」

 

 それほどお化け屋敷自体は苦手ではないが、ここまで雰囲気出てると場合によっちゃ怖いかもしれん。

 

「出現した精霊は既に空間震発生ポイントから西に移動してるわ。すぐにASTも現場に到着するはず」

「そん時は俺が相手しとくから、士道は早く今回の精霊と接触してくれ」

『了解……っ』

 

 ということで、精霊さんのご登場である。

 時期は十月の中旬。世では月末に迫ったハロウィンに向けた準備がされており、商店街なんかは既に染まりきっていた。最近カボチャをよく見るぜ。

 無事万由里も学校に馴染み、今日は寄り道でもするかと耶倶矢や夕弦、狂三も誘ってブラブラしていた時であった。

 空間震。

 それからの反応は早かった。すぐに<フラクシナス>のクルーに連絡を取り、人目の付かないところで回収してもらう。なので、今は一緒にいた四人もこの場にいる。

 さて、時期といい場所といい、間違いなく今回の精霊はアイツか。

 

『な、なんだ……これ』

 

 ん、現場で何か進展があった様子。

 士道の視界とほぼ同じ映像を映し出すモニターには、先程とは違う、言っちゃなんだがそれはそれは悪趣味な場所へと様変わりしていた。

 

「……微弱ながら、周囲に霊波反応があるわ。詳しいことは分からないけれど、おそらく精霊の能力と関係あるんでしょう」

 

 さて、そろそろ俺も現場待機しとくかな。

 原作の流れでは確か、そろそろ精霊との接触アンドAST登場ってなってた筈。

 

「琴里、俺も向こうに行ってくるから、転送装置の起動頼む。場所は士道とある程度離してくれ」

「……ASTかしら?」

「ご明察」

「悪いわね、貴方にだけ荒事を任せちゃって」

「気にすんな。自分から進んでやってんだ。苦とは思わねえよ」

 

 誰かが傷付くぐらいなら、俺が進んで矢面に立つ。そこに何も疑問を感じない程度には、狂ってる自覚はあるんだがな。

 

「私たちは、行かない方がいい?」

「そうだな。お前達はここに居てくれ。……俺なら大丈夫だから」

 

 何か言いたげな耶倶矢、夕弦、狂三の三人。まあ、言いたいことは分かる。

 十中八九、いつかの俺の反転現象だろう。楓に合わせるなら、逆転、か。

 琴里も敢えてそこに触れないようにしてくれたんだし、俺の方からぶり返すのもあれだしなあ。万由里は知らないのかも。

 今回はあの人類最強もいないし、そこまでの死闘にはならない筈だ。

 

「――――大丈夫だから」

「……ん、信じる」

「……信頼。もう、いなくならないでください」

「……ふふ、では、お気をつけて」

 

 万由里はよく状況を呑み込めてないみたいだったが、話す機会はまた今度ということで俺は転送装置のある場所へと向かった。

 

 

     ◇◆◇◆

 

 

 眼帯を外し、霊力を解放する。

 <フラクシナス>が捕捉したAST達の前に迎え撃つように立つ。間も無くして、その姿も視認できる距離に奴等はやって来た。

 

「この霊波反応……〈ディザスター〉で間違いないようね」

「だから、俺にそんな大層な名前は無いんだがな……ま、いいさ」

 

 既に諦めた。

 

「さあてAST、少し俺の相手してくれよ」

「ちっ。総員、攻撃準備! 相手はあの〈ディザスター〉。倒すのではなく、勝つことを目的としなさい!」

 

 散開した隊員達。ぐるりと見渡して位置を把握し、警戒する。

 しかし、倒すではなく、勝つことが目的、ねえ。

 それだけ俺が危険視されてるのか、はたまた、何か別の作戦でもあるのか。まあ、少なくともこの場では負ける訳にはいかないかな。後ろに士道と、恐らく精霊さんもいるだろうし。

 

「こい、〈聖破毒蛇〉!」

 

 左右から飛び出してきた二人に対し、一気に前へと進むことで彼女達の攻撃を避け、そして進行方向にいる奴に斬りかかる。

 しかし、相手もまた軍人。場数を踏んでいるのか、動揺は一瞬で、すぐに応戦してきた。

 ふむ。ここで回避を選択しないのか。

 となると、ここから展開される状況は、

 

「はッ!」

「だよなあ」

 

 視界を使って後ろを確認したところ、挟み撃ちするように向かってくる隊員が一人と、俺らを取り囲むように銃口やレーザーカノンの照準を向ける他の奴等。

 はん、完全に倒しにかかってるじゃねえかよ。

 身を左に傾け、同時に振り下ろされた刃を〈聖破毒蛇〉のそれぞれの刃で受け止め、押し返す。

 そこで、左後ろからのレーザーカノンによる援護。

 

「ちっ」

 

 已む無く上昇し、今しがた撃ったのであろう隊員に向けてレーザーを放つ。

 その前に。

 一気に下降して、振り下ろしされる一撃と胴薙ぎの一撃とを回避する。

 先程の二人だ。

 成程。今の流れで俺に対する作戦はある程度読めた。

 恐らくだが、精霊個人毎に予め決めていたのであろう戦闘方法が彼女等の中にあり、今は対俺用の戦闘なんだろう。なんせ、近付くことさえ危険な精霊に対し、接近戦を敢えてやる必要はない。だというのに、先程俺が斬りかかった隊員は応戦を選んだのだから。

 なんというか、考えられてるなあ。

 確かに、俺は遠距離攻撃はあまり使わない傾向にあることを自覚してる。が、向こうもそれを把握してくるとは。いやいや、凄い凄い。よく見てるもんだ。

 まあいいさ。今回の俺の目的はあくまで時間稼ぎ。時間がくれば、無理矢理圧し通ればいいんだよ。

 

『な……ッ、こっちにもASTが!?』

「……なんだと?」

 

 慌てたような琴里の声。どうやら士道達のいる場所にもASTが現れたらしい。

 ふむ。そうか、どうやら今回、向こうは最初から本来の標的となる精霊を挟撃する予定だったのか。それが俺の邪魔によって分断されたのか。

 身体の軸を捉えた一撃を〈聖破毒蛇〉でいなし、上、左下、右後方の三方向から放たれた援護射撃を『無限』を使って迎撃する。

 挟撃が本来の作戦なら、俺はここでコイツ等の相手をしといた方がいいかもしれんが、向こうに居るAST共も気になる。

 しゃあない。無理矢理向かわせてもらうとしますか。

 

「沈め、AST」

 

 『無限』を一条、真上へと放つ。

 分裂。

 降り注ぐ光の雨。AST隊員達は必死に逃げ惑う。

 か、は、はッ。頑張って維持していた陣形がいとも容易く崩れてしまったぞ?

 

「〈聖破毒蛇〉――――【小剣】」

 

 二振りのダガーで、満足に俺に反応出来ない隊員達を切りつけていく。

 急所ではないとは思うけど、素人判断なので違ったらゴメンね。

 傷口に霊力を流し込んで随意領域で塞ぎ難くし、全員の分を終えたらその場から離れる。そこそこ『無限』も広範囲に落としたし、場所にも気を付けたから、あまり離れられなくなってて楽だったぜ。

 さて、急がないとな。

 

 

     ◇◆◇◆

 

 

 視界を使って場所を特定し、急いで飛んできたまではいい。

 が、こりゃまたなんともファンシーなこって。

 つい先程〈フラクシナス〉のモニターに映ってたのは悪趣味なまでの元遊園地だった筈だが、今目の前に広がるのは似ても似つかない御伽噺のような様相。具体例を挙げるなら不思議の国のアリス(悪趣味ver)とでも言おうか。

 コミカルな音を立てて爆発(威力低そう……)を起こす人参ミサイルや、骨や笹を持った元AST隊員だと思われる可愛らしい犬やパンダのぬいぐるみ。

 そんなファンシー世界の元凶は間違いなく、あの空中を飛び回ってる魔女衣装の精霊か。

 七罪。

 天使〈贋造魔女〉に乗り、光を撒き散らしながら縦横無尽に空を駆けるその姿は、周りの景色や彼女のその美貌も相まって、魔女の戯れ、とでも呼ぶべきかという思いさえ湧く。

 まあ、その姿は偽りなんだけどな。

 原作知識通りの展開に少なからず安心を覚えるが、そうゆっくりしてもいられない。

 俺が飛び出そうとした、その時、

 

「―――――ッ!? 【防盾】!」

 

 振り向き、〈聖破毒蛇〉を盾の形に展開し、それでも足りない気がして更に『無・零』も発動する。

 直後に衝撃が襲ってきた。

 ガガガガガッと連続して襲ってくる衝撃は、相手が誰なのかを目視で確認する間すら与えてくれない。

 俺が感じたのは殺気。それも、今までと比べて余りにも異質な殺気であった。

 視界で相手を確認する。

 これは……まさか、精霊?

 俺が視認したのは見たことのない、だが、確かに霊力と断言できる情報だった。伊達に何人もの精霊の霊力を視てきた訳じゃない。

 

『嘘、〈デビル〉!? ああもうっ、何でこんな時に限って揃っちゃうのよ!?』

「〈デビル〉……」

 

 まさか、そんな。

 〈デビル〉ってそりゃあ……鳶一折紙のことじゃねえか!

 

『逃げなさい七海! 貴方は彼女との相性があまりにも悪すぎる!』

「ここで逃げたら標的が士道達に代わるだけだ! 俺が引き離すから、お前らは士道の援護しとけ!」

『貴方、彼女のことも知って……?』

「話は後でな!」

 

 〈聖破毒蛇〉を両剣の状態に戻し、直後に迫ってきた幾つもの光線を斬り払う。

 一撃一撃が重くて持ってかれそうになるが、なんとか往なすことは出来るな。

 俺は彼女の気を引くように、『無限』を彼女に当たらないようにわざと外しながらこの場から離れるように飛ぶ。

 すると彼女は思惑通り、俺を狙って飛翔してきた。

 よかった。どうやら目の前の敵、彼女の場合は目の前の精霊を追い掛けるだろうという予想は当たっていたみたいだな。賭けの要素が強かったが、違ったら違ったで無理矢理引き離せばいいしな。

 最高速度では八舞姉妹とほぼ同速で飛べる俺の方が速いので、追い付かれないが引き離しすぎもしない絶妙な速度で、彼女の前方やや下を飛ぶ。

 攻撃は視界を使っているので分かる。が、流石に後ろを確認しながら前を視るのは不可能なので、今何処飛んでるのか分からなくなりそう。

 

「うおぃっ!?」

 

 危ねー! 今右にずれてなかったら頭吹き飛んでたぞ!?

 完璧に殺しにかかっている攻撃に俺は内心冷や汗ダラダラである。

 AST程に脅威として低い訳でなく、エレン程に憎むべき相手でもない。何だかんだで精神的にはまだ余裕があるのは相手が精霊だと分かっているからか。

 めっちゃ殺されかけてるけどな!

 少しずつ降下していって、建物の間を縫うようにして飛び回る。

 相手がここら一帯を一気に更地に変えるような攻撃をしてこない限りは、こうやって相手の視界から外れるように飛ぶ。

 相手の様子は此方からなら解るので、隠れて飛ぶこと自体はそれ程難しくない。

 

「っ。――――今か」

 

 たった今、相手が完璧に俺を見失った。緩慢な動きだが、周囲を探って俺を見つけ出そうとしてる。

 俺は霊力を霧散させ、精霊としてではなく、人間として隠れる。

 確か原作では、折紙は精霊の霊力を直接感知することが精霊化のトリガーになっていた。ならば、見つかった時の危険性は計り知れない程に上がるが、霊力は消しておくに越したことはない。

 息を潜め、視界で相手を観察する。

 暫くすると、相手は諦めたのか、霊力が消えていった。

 残ったのは一人の少女。

 ASTの武装をした、鳶一折紙。まさしく彼女だった。

 

『あ、あれ? 私、どうしてこんな所に? 〈ウィッチ〉や〈ディザスター〉は何処へ……?』

 

 あれー? という言葉を視界で捉えながら、ほ、と息を吐く。

 どうやら、取りあえずの危機は去ったみたいだ。

 あとは、彼女自身をどうにかしないといけないが……ダメだな。まずは七罪が先決か。折紙はその後にしないと士道への負担が大き過ぎる。恐らく折紙も士道に任せることになるだろうし。

 先ずは彼女がこの場から去るのを待って、琴里に連絡後、〈フラクシナス〉へ帰還。原作通りなら七罪が絡んでくるだろうから……。

 ――――ふむ。ま、頑張るとしますか。




 士道視点の三人称と言ったな? あれは嘘だ!

 いえ、次回からはそうなると思いますが。
 ということで書き方変えました。台詞と地の文で一行空けています。大分読みやすくなりましたね。
 今までの分の修正は正直メンド――えふんえふん。時間があればやりたいと思います。多分やらないです。

 そろそろ士道にも新しいヒロイン出さないととなった結果、七罪がそうなりました。美九に振り回される七罪もいいですが、四糸乃に浄化される七罪もいいと思います。どっちも好きです。むしろこっちが浄化されるレベル。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 次の更新いつになるかなー。(来年受験生)

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