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まさか半年以上放置だったのに増えていたとは。嬉しさよりも驚きです。
ということで万由里編エピローグ。
ようやく終わりました。
次回は七罪か、鞠亜鞠奈か。
それでは、どうぞ。
「へい五河に東雲! 今日から俺の時代が始まるぜ!」
「あーはいはい、良かったな良かったな」
「おま、信じてないだろ」
「内容を言ってないのに何を信じればいいんだよ」
あ、そか、と殿町は一旦の落ち着きを見せる。
時刻は昼。士道は十香と、俺は八舞姉妹と狂三と席をドッキングさせて弁当を広げたところだった。
いつもはどこかしらに消えていく殿町が、今日は俺らに嘆くでも嫉妬するでもなく話しかけてきた。
ちなみに、狂三は夏休みが終わった二学期最初の日にこのクラスに転入してきた。
当初はその妖しげな美貌に惹かれた者、興味を持った者が多数いたが、俺と関係があると知ると皆どこか納得した様子で退いていった。
確実にあらぬ誤解を招いていると思ったのでそれを解こうと奮闘したが、当の狂三が何も否定しないので途中で諦める羽目となった。皆真実はちゃんと分かっていると思いたい。
そういや、その時はなぜか八舞姉妹がやけに必死だったな。
ともかく。
「それで、何がお前の身にあったんだ?」
「ふっふー、後輩から聞いたんだがな」
ふむふむ。
「実は今日、一年に転入生が来たらしい!」
「そうかお前との接点は無かった。残念だったな、諦めろ」
「即答ッ!?」
ひらひらと手を振ると殿町は悲鳴じみた声を上げた。うるさい。
「いや分かんないぜ? 今日来たばかりということは俺のことは何も知らない筈。今からなら俺の良いところだけを彼女に見せることができる!」
「お前に良いとこなんてあるのか……」
士道が小さく呟くが、殿町は聞いてないことにしたらしい。
らしい、と言うのは、殿町の目尻に光るものが見えたからな訳だが、まあ、俺も見てないことにしよう。
さて、その転入生のことだが。
勿論、先日の彼女だぜ。
「聞いたところによると、その転入生はここらじゃちょっと珍しいが金髪で、ちょっとツンとしたような無愛想さがまたいじらしい、そんな美少女らしい」
「やけに事細かな表現だな」
あながち間違ってないところがまたなんとも。
そのお前さんの後輩とやら、そんなに彼女を見てたってのかな。
他の女子達にバレて何や言われなければいいんだけどな。ま、俺には知ったこっちゃねえが。
「そんな転入生の名前は――――
「呼んだ?」
「うひょおぉっ!?」
「ぬ、漸く来おったか。ほれ、適当に己が座る席を見繕ってくるがいい」
うっせえぞ殿町。
置いといて。
「よう、遅かったな。質問攻めにでもあってたか? ほら、この席にでも座っとけ」
「ん、ありがと。大体間違ってないわ。言うほどのボロも出してない筈。美九や琴里が言ってた秘密兵器も使ったし、追いかけてくることもないと思う」
「納得。成程、アレを使ったのですか」
ん、それについては初耳なんだが、秘密兵器?
士道に説明をアイコンタクトで求めると、知らない、と返ってきた。
んー、夕弦が含み笑いをしてるのが気になるが、嫌な予感がするのでこれ以上は掘り下げないようにしよう。
万由里が自分の分の弁当(今日は俺が作った)を広げて、少し遅れての昼食を始める。
と、いったところで硬直していた変態が復活した。
「って、いやいやいや! え、何でお前らそんなに普通に飯食ってんの? その娘転入生の娘だよね、またお前らの知り合いなのかまたしてもお前らなのか少しぐらい俺にも春を分けてくれぇぇぇぇぇッ!!」
「んー、うるさいぞ、ヒロポンよ」
「がふぅっ」
十香の純粋な罵倒に撃沈した殿町。ご臨終なさった。
だから俺らは気にせず弁当の続きを頂くとしよう。今日は卵焼きにアボガド入れてみたぜ。初挑戦なんだが、万由里からの評価が気になる。
ちなみに、他の奴らからは好評だった。
十香も満足してたし、士道のお墨付きだ。
「あ、おいしい」
「そりゃ良かった」
口に合わなかったらどうしようかと思ってたが、杞憂に終わって良かったよ。
「うん? 『東雲』?……おい、まさか、嘘だろ……!?」
相変わらず復活早いな、殿町は。
そんで、遅まきながら気付いたわけですか。
「え、万由里ちゃんってコイツの妹なわけ?」
「従姉妹」
「余計アウトになった気がする!」
と言うことで。
今日から無事、俺の従姉妹として万由里は来禅高校一年に転入してきた。
最初は琴里と同じ所に入れるべきかとも思ったんだが、
『なるべく、七海や士道の近くがいい』
とのことだったので、多少心配は残るが、ここの一年生として入ってきたって訳だ。流石に二年と言うには見た目に無理があったらしいが。
タマちゃん先生は、まあ、うん。
まあ、常識は出来ているので、ある程度は放っておいても大丈夫だろうが、やっぱり一人にはあんまりさせたくないしな。
「どうだ、学校は?」
「騒がしい」
「バッサリ言ったな……」
騒がしいのは万由里が転入生だからってのが主な理由だと思うけど。
あ、でも美少女だし、しばらくはその喧騒も続くかもな。
「でも」
ん?
「嫌いじゃないわ。もうちょっと大人しくしてほしいとは思うけどね」
「そうかそうか。楽しそうで良かったぜ」
にっ、と笑いかけると、
「……ふん」
ツンとそっぽ向いて弁当に手を伸ばしはじめてしまった。
可愛い奴め。
「チクショーッ! お前ら揃いも揃って妹だとか従姉妹だとか言いやがって! いいもんね。俺だってすぐにモテてやる! 今に見てろよー!」
「分かったから早く飯食ったらどうだ。もうすぐ昼休み終わるぞ?」
「お、ホントだ。学食空いてるかなー?」
士道が諌めると、すんなりと殿町は去っていった。最初から絡まなければ良いのに。
学食って言ってたが、たとえ席が空いてなくても俺は知らん。自己責任だな。
「しかし、お主も難儀よの」
「何が?」
「解説。士道には十香や琴里が、七海には夕弦達がいますから。そう簡単にはあげませんよ」
「え……、いや、私は、そう言うのは――――っ」
「隠さなくても宜しいんですのよ? おそらく美九さんや真那さんも気づいてらっしゃいますし」
……ま、まあ、聞いてない振りしとくか。
俺が入れるような話じゃないみたいだしな。
さて、今度は卵焼きになに混ぜてみようかな。士道になんかネタ聞いてみるかな。
万由里が七海達のもとにやってくるちょっと前のこと。
万由里はクラスメイトから質問攻めにあっていた。
「ねえ、万由里ちゃんってどこから来たの?」
「県外から」
「綺麗な金髪ー。触っていい?」
「乱暴にしないなら」
「東雲って苗字だし、東雲先輩となんか関係あるの?」
「七海のこと? それなら、従兄弟だけど」
「ってことは結婚可能じゃん」
「話が急すぎない?」
何故、昼休みである今この時間にこのような質問に遭うのか。
というのも実は万由里、休み時間の度にクラスから居なくなっていたのだ。何をしていたかは知らない。時間が短いというのもある。
だがこの時間、流石に学習したクラスメイトは、なんとか万由里が教室を出る前に話しかけることが出来た、と言う訳である。
「あ、弁当。なら私達と一緒に食べない?」
「え……」
万由里が大事そうに抱えていた弁当箱。それを見つけたとある女生徒は万由里を誘う。
だが、万由里はここで答えを言い淀んだ。
しかし、ようやく転入生と話せていたからか、その呟きの意味を周り生徒が察することはなかった。
「私達いつもあっちで食べてるんだけどさ、ちょっと遅れたけど、今からお昼にしようよ」
「いや、私は」
「楽しみだなー、万由里ちゃんのお弁当。自分で作ってるの?」
「だから、そうじゃなくて、」
「良かったらおかず交換しない? 万由里ちゃんのおかず食べてみたい」
その女生徒に釣られて、また、やはり空腹もあり、集まっていた他生徒も解散の流れが生まれる。
つまり、目の前の女生徒を止めようとする人が居なくなったのだと万由里は察した。
しかし、彼女自身は、昼食は七海や士道と一緒がいいのである。
どうにかして断りたい。
ので、万由里は誘宵美九直伝、クラスで昼食に誘われたときの断り方を実践することにした。
「ね、ねえ」
「ん? どした?」
すー、と息を吸って、
「――――七海や士道が待ってるから。少しでも大切な人と一緒にいたいから、また今度誘って?」
少し照れ気味、はにかみ顔で、と言われたのだが、出来ているだろうか。
それを聞いた女生徒及びその他はしばらく呆然としていたが、
「う、うん、そうだよね! 好きな人と一緒にいたいよね! ごめん考えが足りなくて! 行ってらっしゃい!」
「ん。……ん? 待って、好きなんて言ってないんだけど」
「大丈夫。私達に任せて。絶対実らせてあげるから」
「あ、ありがとう? じゃなくて」
「しっかし東雲先輩が相手でしかも従兄弟かー」
「……き、聞いてくれない」
「そういや、お前休み時間の度に来てたけど、なんか用あったのか? 隠れてるみたいだったから話しかけなかったけど」
「……気付いてたの?」
「まあ、そりゃ」
現実にはこんないいクラスメイトいない。
実際の人間関係でこんなことする人いたら即孤立な気がします。
女生徒間の闇。
この世界観のクラスメイトは好い人ばかりですね。
次回についてですが。一応まだ書く気です。
おそらく七罪編でしょう。
鞠亜は原作でも出ましたし、正直、書く予定が無かったので話がまったく決まってないんですよ。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていてだきます。
会話文が多くなった今回でした。