デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 お、お久し振りでございます。はい。

 ということで、約半年ぶりですかね、こうやって更新するのも。
 おそらく、これを読んでくださっている皆様も、前回の話なんて覚えてないでしょう。自分もです。
 ようやく万由里編もおわりですかね。
 途中詰まって放置していたらもうこんなに時間が経っていたという……。
 何かしらバッシングは覚悟の上です。耐えれるかは別ですが。

 それでは、どうぞ。


第70話

 途中で中断せざるをえなかった万由里の霊力の理解を再開する。

 次はさっきみたいなヘマはしねえ。

 もとより半分以上は理解出来ていたから、残りもそんなに無いし、時間もそこまで掛からないはず。

「ねえ」

「どうした?」

 ふと、万由里から声をかけられた。丁度理解も完了したので、意識を万由里に向ける。

「どうして、私を助けようとするの? そんな回りくどい方法を取るより、あんた達ならもっと手っ取り早いやり方があるでしょ」

「そりゃあ、そうしたいからだろ」

 は?、と呆けた声が聞こえた。

 そんな、ぽかん、とされたところでこれ以上の説明なんてないんだけどな。

「うん。消えてほしくない、一緒にいたい、ただそれだけだと思うぞ? ここにいる奴ら全員お人好しだからな。おそらくそのことに何の疑問も持ってないだろうし」

 かく言う俺もその一人なんだろうなあ。

 狂三もそうだったが、どうしてそこまで自分は救われない、救われるべき存在じゃないと思い込むんだろうな。

 ふむ、ここで、どうしてそこまで自分を追い込むのかなあ、とか言ったら美九あたりに笑われそうだから止めとこう。

「なあ、その、なんだ」

 士道ならこういう時、こんな事言いそうだということで。

「俺らはいつだって手を伸ばしてやる。海の底だろうが地の果てだろうが空の彼方だろうが、俺らがいつでも手を伸ばしてやる。だから、お前も手を伸ばせ。お前がその手を伸ばしてくれなきゃ、届くものにも届きやしない」

 なんてな、と言って笑う。

 柄にもない、慣れないことはしない方がいいな。

「……そう」

 だけどまあ、万由里のこの笑顔が見れたから良しということで。

 さて、そろそろ仕上げとしますか。

 霊力の理解は済んであるわけだから、あとはその霊力をどうにかこうにかして、あの巨大天使との繋がりを絶つなりすればいい訳だ。

「さて、今からお前を救う方法を説明するぞ?」

 

 

 

「ホントにそんなことできるの?」

「まあ、俺なら可能」

 万由里が心配そうな声をかけてくれるが、俺は大丈夫大丈夫と、ひらひら手を振る。

 俺が今からやろうとしていることは簡単だ。

 要は、俺の霊力を万由里の霊力に挿げ替えるってことだ。

 その後、もともとあった万由里の霊力は消させてもらう。

 より正確に言うならば、俺の霊力を霊結晶の形で万由里に渡した後、暫くはそのままで過ごし、徐々に俺の霊力を万由里の霊力に変換していく、ってところだな。

「細心の注意は払うが、それでも何が起こるかはやってみなくちゃ判らない。少しでもおかしい、と思ったらすぐ言ってくれ」

「ん、了解」

 いくら俺には視界があるといえど、それでも霊結晶などの、精霊に関する部分は謎なことが多い。

 だから、注意しすぎて損、なんてことは無いはず。

「よし、それじゃ」

 俺を介して、俺が創り出した霊結晶と、万由里の霊力とを交換する。

 霊力のままじゃ不安定だから、こっちで霊結晶の形にしておこうかな。

 時間にしたら、数秒にも満たないごく短い時間だったと思う。

 あっさりと、あまりにもあっさりと、俺と万由里の霊力の交換は終わった。

「……もう終わり?」

「おう、こっちはな」

 万由里から抜けた霊力は今、俺の横で霊結晶としてふわふわ浮いている。

 しかし、まあ、綺麗なもんだな。

 澄んだ金色の結晶に、俺は目を奪われていた。非現実的で、宝石みたいで。

 だけど、そこから感じる膨大な力も、現実な訳で。

 そして、今なお万由里と、そして上空の〈雷霆聖堂〉との間に、霊力の経路も繋がったままか。

「てい」

 こんな危険な物は、とっとと消すに限る。

 あまりの情報量に、頭が酷く軋んだが、もとより覚悟の上。ちょっと予想以上だったけど。

 ふらついた俺に、万由里が手を貸してくれた。

「大丈夫?」

「まあ、なんとか」

 まだ仕事は終わってないから、倒れる訳にはいかない。

 上空を睨む。

 霊結晶を消した瞬間から感じた、明らかな場の霊力の流れの変動。

 〈雷霆聖堂〉の表面の眼球が全て、こちらを向いていた。

 かははッ、成程。自信の霊力の供給源に異常を感じたからこっちを見てるんだろうな。天使に意志があるかは知らないが。

「うし、万由里。最後の仕上げだ」

 霊力の供給は絶った。

 ならば後は、あれを徹底的にぶっ壊す!

 先よりも圧倒的密度を持った霊力の段幕を前に、俺は飛び出した。

 

 

 

 霊力の弾丸や車輪を避けたり切り捨てたりして、とりあえず俺は士道の近くに向かった。

 必然的に士道の近くにも攻撃がいくことになったが、俺が手を引っ張って一緒に避けるからそれでいいよね。流石に俺の方が飛行能力は高いし。

「もう万由里は大丈夫なのか?」

「ああ、お陰様でな。注意を引きつけてくれてありがとう」

「俺は別に、お前に言われたことをやってただけだから」

 弾丸を士道がマントで防ぎ、車輪を俺が〈聖破毒蛇〉で弾く。

 しかしまあ、決定打に欠けるな。

 霊力が完全じゃない十香達はともかく、おそらく俺らの中で一番火力があるだろう俺は攻撃出来る暇がないし、次点の耶倶矢と夕弦では決定打に欠ける。

「困ってる?」

「うお、って万由里か。どうした?」

 迫った車輪を弾く。

「さっきから逃げてばっかり。このまま時間稼ぎでもいいけど、他の精霊達が保つの?」

 いや、分かってるんだけどね。どうしようもないのが現状というか。

 あの天使を一撃で沈めることができる程度の火力を持ってるやつ、より具体的には霊力完全開放状態の十香、いやそれ以上あればいいんだけど。高望みか。

「結構ギリギリだろうな。俺が直接叩ければいいんだ、が……ッ。こんな風に、それすらも儘ならねえ」

「私に良い案がある」

 何だろうか。

 正直、持久戦に持ち込むにしても難しいからな。何か案があるってなら、教えてほしいところだ。

「先に訊いておくけど、あんた以外で〈雷霆聖堂〉を壊せる精霊っている?」

「恐らくだが、ない。霊力完全開放の十香でも分からんだろうさ」

 それを聞くと万由里は、そう、と素っ気なく返した。

「なら、賭けになってしまうけど、いや、やらなきゃ……」

「おい、それがどうしったてんだ?」

「今から私の言う通りにして。大丈夫。――――信じて」

 〈雷霆聖堂〉の弾幕攻撃があるからその顔を窺うことは出来ねえけど、その真っ直ぐな声だけは届いた。

 よし、お前に良い案があるってんなら、乗っかってやろうじゃないか。

「了解」

「分かった。俺達はどうすればいい?」

「まず、東雲七海。あんたは――――――」

 

 

 万由里の指示で、俺は二人から離れた。

 出された指示はこうだ。

『今から私は夜刀神十香の方へ行く。あんたは、攻撃を引き付けて、なるべく離れて』

 と、言われましても、このデカブツ、三百六十度の射撃してくんですけど。意味あるんですかね。

 まあ、打開策を万由里に完全に任せっきりな以上、俺は従うまでですけどね。

「お前は、こっちだけ見てりゃいいんだよ!」

 〈雷霆聖堂〉の脇を通り過ぎるついでに、攻撃を加えていく。

 道中、散開していた四糸乃や狂三、いつの間に戦闘に加わっていた真那達に、俺と十香から離れるようにアイコンタクト。

 十香達に近付くと、それだけ攻撃が激しくなる。俺と一緒にいるのは、消耗している彼女達にはちとキツいものがあるだろう。

 無尽蔵な霊力に物言わせて、注意を引き付ける。

 さあて、上手くやってくれよ……?

 しかしまあ、よく霊力が途切れないもので。万由里との経路を消し去ってから、それなりの時間が経つというのにな。

 ぎょろり、と無数の目玉がこちらを向く。

 正直、めっちゃ怖い。近いし。

「んあ?」

 俺が幾度目かの攻撃を加えようとした時だ。

 突然、〈雷霆聖堂〉に変化が訪れた。

 目を閉じ、シルエットそのものが変質していく。

 圧縮。

 最初の頃のまだ大人しかった時のように、ただ色だけは黒く、球体と化す。

 しかし、変形はそれで終わらなかった。

 霊力が放出されると同時、また天使が顕現する。

 その形は、螺旋の円錐……というより、ドリルって言った方が分かりやすいか。

 そして、不審に思って視界を使った俺は、驚愕の事実を目にした。

 士道達の方に向いた先端。そこに、有り得ないまでの霊力が集束しているのだ。量だけで見れば、俺の普段の霊力量より多いか。

 飛ぶ。

 〈雷霆聖堂〉が変形した時点で弾幕は止んでる。最短距離で飛行し、士道達の前に躍り出る。

「士道! そのマントを使え! 俺の方でも止めるが、正直、消しきれなかった分が確実に出る! お前がそれから万由里と十香を守るんだ!」

 手を翳し、確実に維持出来るだけの範囲で創造する。

「な……!? 駄目、逃げて、七海! これは受け止めるような攻撃じゃない!」

「【無・零】!」

 俺が防御するのと、目の前の〈雷霆聖堂〉の光。

 同時だった。

 万由里は逃げろと言っていたが、そんなことしたらどんな被害が出るか分かったもんじゃない。ただでさえ規格外の霊力量が込められているってのに。

 後ろをちらっと見遣れば、士道が必死に消しきれなかった分のこの光から万由里と十香を守っているのが分かる。

 他の皆は、見えねえな。

「万由里とか言ったな! 此れは何だ!?」

「【ラハットヘレヴ】……、もし、不合格になった者がいた時、その人物を街ごと壊すための破壊の光。精霊の全霊力が混ざっている以上、普通は止めることなんて出来ないわ」

「か、は、は、はッ! おいおい、流石にふざけすぎじゃねえのかよ!」

 翼を広げ、霊力を放出してブーストをかける。じゃないと、あまりの威力に押し飛ばされる。実際、今なおジリジリと後退せざるをえないんだ。

 まだ霊力が戻っていない十香じゃ、手助けなんて期待しない方が良いか。

「――――って、……――んだ」

 小さく、声が聞こえた。

 それはどうやら士道が言ったらしいんだが、何て言ったんだ?

 って、うお!? 今皹が入ったぞ!?

 慌てて霊力を込め直すと同時、再度、後方から声が。

 しかし、今度ははっきり聞こえたぞ。

「俺だって……、俺だって、守るんだ!」

 ふと、小さく、しかし確かに、万由里のものと違う霊力が流れたのを感じた。

 それは、十香や四糸乃といった面々のもの。

「守る、俺だって守ってみせる。みんなを、万由里を!」

 その言葉と共に、一気に視界が晴れた。

 その様子はあまりに不自然で――――まるで、【ラハットヘレヴ】とやらを上下に両断したかのようで。

 視界切ってなかったから、まあ、ある程度どんな風かは予想付くんだけどさ。

 後ろを振り返ると、右手に握った()()を振り切った姿の士道。

 その右腕の先には、一振りの剣。

 〈鏖殺公〉

「か、は、は、はッ。上出来だ、士道」

「正直なところ、自分でもびっくりだ――――ってうわあッ!?」

「おおっと」

 ありゃ、俺が渡したマントが消えてる。流石にあれには供給が追い付いていなかったか。俺もそれどころじゃなかったし。

 もう一度マントを創って、士道に羽織らせてから、手を離す。

 そして、〈鏖殺公〉という戦う力を手にした士道のさらに後方。そこには、

「お、おお! シドー、力が完全に戻ってるぞ!」

「十香……って、ええっ!? おま、それ、霊装――――ッ!?」

 うむ! と元気に頷く十香。自慢気に胸を張る。

 ただ、何だろ。俺が知ってる十香の【神威霊装・十番】じゃないような気がする。事実、今の十香からは十香本人以外にも、他の皆の霊力が視える。

 士道も何となく感じているのか、不思議そうな顔をしていた。

「ちょっと士道! 大丈夫――――って、ええっ!? 士道、それ、〈鏖殺公〉……しかも、十香は十香で不思議な格好してるし。私達が力を戻したことといい、一体何があったってのよ?」

「それが、俺にもよく」

「七海さぁぁぁぁん! 大丈夫ですか怪我はありませんか個人的にお疲れ様ということで抱き付きたいんですがいいですか!?」

「待て美九。今お前の所為で空気が一気に弛緩したし、割りと冗談に付き合ってる暇無いんだうわやめろホントに飛び付いてくんじゃn」

 ぞろぞろと、〈雷霆聖堂〉の動きに一旦の停滞が見られたからか、散開していた奴等が集まってくる。

 まさかの八舞姉妹すら追い抜いてきた美九に抱きつかれながら、〈雷霆聖堂〉の情報を視る。

 ふうん、確かに、少しは間があるみたいだが、すぐに復活しそうだな。その間に万由里から説明してもらうか。

「で、万由里。十香に何したんだ?」

「私の霊力を渡して、他の精霊の霊力も混ぜていたの。と言っても、時崎狂三や八舞姉妹とかだけだけど」

「お前の……?」

 俺が鸚鵡返ししてしまうと、万由里は短く、そう、と返した。

「さっきまでの夜刀神十香は、霊力が殆ど無かったから、代わりとして私の霊力を使ってもらうつもりだった。まあ、結果は途中で霊力を取り戻してくれたお陰で、期待以上ね」

「……ということは?」

「今の夜刀神十香なら、〈雷霆聖堂〉を完全に破壊できる」

 それを聞いて、ニィッと口角を上げる俺。

 今なら、火力も十分。俺もいるし、士道も〈鏖殺公〉で援護可能。なんなら、弾幕止んでるし、追撃も出来る。

 これなら、反撃に出れる!

「そうか」

「なに思ってるか知らないけど。誘宵美九の所為で色々台無しになってるわよ」

 うん、そういうのは言わなくて良いんだぜ……。

 

 

 

 俺と士道で一気に前に出る。

 〈雷霆聖堂〉は【ラハットヘレヴ】で倒せないと判断したのか、今度は物量で攻めることにしたらしい。絶え間なく雷が迫ってくる。

 だが、その程度で止まるわけにはいかないんでね。

「露払いは私達でやっておくから、士道達は本体を!」

「くく、さあて、今宵の宴もいざ終幕といこうか。ただ無稽に大きいだけの観客など、疾く去るがよい!」

「援護。色々ツッコみたい所はありますが、今は置いてあげます。七海、士道、十香、――――任せましたよ」

「ああ、任された!」

 十香が一際速く疾駆する。

 おいおい、俺らで攻撃の隙を作るってんのに、お前が前に出ちゃ駄目だろ。

 いや、それだけ使命感かなんかに燃えてるってことなんだろうな。

 前に出るならそれより速く飛べばいいだけ。士道連れて加速するか。

 士道に一声掛けてその手を掴み、飛翔する。

 いくらある程度は慣れたとはいえ、こと飛ぶ技術に関しては流石に俺の方がまだ上だからな。

「いくぞ、七海! 〈鏖殺公〉!」

「おう! 〈聖破毒蛇〉!」

『はあああぁぁぁぁぁッ!!』

 二人同時に霊力の斬撃を放つ。

 それらは真っ直ぐ飛んでいき、元の姿の翼に相当する部分の付け根を切り払った。

 ガクン、と〈雷霆聖堂〉の高度が下がる。

「が、あああぁぁぁぁっ!?」

 こっちもこっちで限界か。

 今の悲鳴は士道。

 なんせ、初めて使った天使で霊力の斬撃――――【最後の剣】擬きを打ったんだ。そりゃ身体に響くわな。

 琴里の霊力の炎が身体を覆っているので肩を貸したりは出来ないが、護衛ぐらいはやっといてやるか。

 片方の翼を大きくさせて士道を覆い隠し、逆の手で〈聖破毒蛇〉を構える。先の悲鳴を聴いてしまった十香には、〈雷霆聖堂〉を壊すことを優先させよう。

「やれ、十香!」

 十香は一つ頷いて、両手に持ったそれぞれの剣を構えた。

 ……って、二本?

 あ、あー、あれ、万由里の霊力で作られるな。さっき渡してた万由里の霊力、それが顕現したもの。つか、天使っていうことかな。

「〈鏖殺公〉! 〈滅殺皇〉!」

 その二振りの剣を投擲する。

 そして、やっと。

 十字に切り裂かれた〈雷霆聖堂〉。

 完全に破壊した結果、もう再生することもない。

 最後に爆発を残して、〈雷霆聖堂〉は消滅した。




 気がついたら真那を出す機会が無くなっていました。

 書くにあたって、実際の映画に比べてカットしたシーンや改変したシーンが多々あります。
 士道君の「消えるための命なんて~」とかの台詞も出来れば入れたかったんですけど。
 そして途中からの圧倒的ご都合主義。ヘッ。

 次回は、友人からの頼みで鞠奈を書けと言われましたので、時系列的にも凛緒リンカーネイション編でしょうか。
 別の友人からは七罪を、とも言われてるんですが……、時系列が、はい。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 さて、次は一体いつの更新になることやら……。

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