デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 特に書くことはないでしょうか。

 それではどうぞ。


第69話

 〈雷霆聖堂〉とか言われていた天使を一言で表すなら、圧倒的、だろう。

 近くに居るだけでも感じる霊力量もそうだが、目を見張るのは回復力。いくら破壊してもすぐに元通りになる。

 天使としてはイレギュラーな自己回復能力、ってところか。

「【無限】!」

 数条の霊力の光線を放つ。

 が、やっぱり効いてないか。

 向かう〈雷霆聖堂〉も俺の攻撃をただ喰らっているだけでなく、弾幕のように攻撃してくる。

 霊力の弾に遠隔操作してるらしき車輪の攻撃だ。

 だが、

「まだまだノーマルモードかなぁ……っ!」

 左右から時間差で挟みに来た車輪を〈聖破毒蛇〉で止め、弾く。

 再度、光線。

 ああでも、力は互角でもこっちが先にバテるかもしれねえ。

「七海、前に出過ぎ!」

「制止。待ってください、七海」

 っとと、耶倶矢と夕弦の声?

 霊力の光弾を切り捨て、声のした方に振り向く。

「どうした、二人とも。万由里達は?」

「下は美九とか狂三達に任せてる。十香はそこで戦ってるでしょ」

「説明。真那や琴里も後から合流するそうです」

 ふむ、と考える。

 確かに弾幕が薄くなったとは思っていたが、成程、見れば十香が孤軍奮闘してる。

 多少向かってくる分については、片手間でも凌げる程度。

「お前らは十香の援護を頼む。こっちはこっちで仕事がある」

「仕事……?」

「ああ。どうやら一度、万由里の所に戻らないといけないらしい」

「受諾。分かりました。街に被害が出ないように結界が貼られています。関係は無いでしょうが、一応」

 分かった、と返答して、高台に飛ぶ。

 途中で夕弦が言っていた結界があったが、まあ俺には意味を成さないし。

 降り立つ。

 近寄ってきた美九と狂三を手振りで制し、士道の下に歩み寄る。

「どうしたんだ、七海。急に戻ってきて」

「士道、お前は戦う意思はあるか?」

「は……?」

 時間が惜しいので、とっとと話を進めさせてもらう。

 ここに戻ってきたのは二つ理由があって、先に時間のかからない方を済ませてしまおう。

「戦う意思はあるか? 守る勇気は? 救う決意はあるか?」

「ま、待ってくれ。そんな一度に言われても」

 ん、そうだな。少し焦りすぎたか。

 一度深呼吸をして、真を作って。

「よし、それじゃあ単刀直入に、もっと分かりやすく訊こう」

 そうだ、たった一言でいいじゃないか。

「――――万由里を、救いたいよな?」

 ああ、この一言に集約されるじゃねえか。

 万由里を救う決意えお、勇気を、意思を。

 とりあえず俺は、士道にそれがあるかどうかを確認したかった。

 士道は俺の質問に目を丸くしたけど、すぐに真面目な顔になって、

「――――ああ」

「よし、よく言った!」

 それを聞くや否や、俺は士道の肩に手を置く。

 そして霊力を創り、渡す。

 数秒後、士道の背には黒のマントが掛けられていた。

「これは……?」

「俺の霊力を込めたマントさ。一応、霊力が途切れない限りはそれで飛べる。と言っても、俺と霊力の経路で繋がっている以上、途切れることはまず無いと思っていい」

 うーん、傍から見れば士道の黒歴史再来なだけだが、空気的に言える雰囲気じゃないな。自重しとこう。

「どうやら、俺とお前とじゃ今回の役割は違うらしい。ということで、選手交代だ。お前が戦いに行け」

「は、はあぁッ!? いや冗談を言ってる場合じゃないんだぞ! 戦う力が無い俺に、戦える訳ないだろ!?」

「そんなことないだろ?」

 士道の鼻先に指を突き付け、目を真っ直ぐ見据えて告げる。

「お前には戦う力はある。それに気付いていないだけだ」

「気付いてないだけって言ったって……」

「ごちゃごちゃ言ってる暇があったら、とっととその意思を示してこい!」

 なんか面倒になったので、襟首掴んで投げ飛ばしました。そりゃ。

 能力で加速やら色々付与した結果、予想以上のスピードで飛んで行った。

「うわあああぁぁぁぁぁ―――――ッ!?」

 まあ、落ちることは無い筈だが命運を祈っておこう。

 美九と狂三には、士道の援護を頼んでおくか。

 ではまたー、と緊張感無く去っていく二人を見送った後、俺は残った万由里に向き合った。

「……どういうつもりなの?」

「別に。ただ俺は、俺らは、お前を救いたいだけさ」

 さて。

「先に幾つか確認させてもらうぞ」

「なに?」

「あの天使と、お前は強力な霊力の経路で繋がっているな? だから、いくら破壊しても再生してしまう」

「……驚いた。よく分かったね、そんなこと」

「まあな」

 と言っても、視界を使っていたからこそ知り得た情報だけど。

 もともと霊力的な繋がりがあったのは視えていたが、俺が攻撃して〈雷霆聖堂〉を破壊する度にその箇所の霊力の流れが強くなったのが視えたんだ。

 それが二度三度と続けば、流石に察するってもんだ。

「ってことは、お前もしくはその経路自体をどうにかすれば、あいつは止まるんだな?」

「ええ、でしょうね」

 ん、それが分かったなら十分だろ。

「でもどうするの? 私を救うってことは、消したくないってことなんでしょ? でも私を生かしたままじゃ、〈雷霆聖堂〉は止まらないわよ」

「大丈夫、俺に任せとけって」

 そうだな、シチュエーション的には、耶倶矢と夕弦の時に似てるかな。

 誰かが消えないと何かが救えない。消えることが運命づけられた存在。

 うん、挙げてみればそれこそ酷似してるな。

 それなら、俺がやることもあの時と同じようなもので良い筈だ。そりゃ多少差異はあるだろうけど。

「とりあえず霊力を理解しないといけないから、ほら」

 言って手を伸ばす。

「……?」

「ったく、手を取るんだよ。握手だ握手」

 しょうがないのでこちらから掴みにいくことにした。

 手を握った一瞬、万由里が肩を上げたような気がしたが、まあ今はいいか。

 そして視界を使う。

 ふむ、最初から分かってはいたがそもそもの霊力量が桁違いだな。保有量で見れば、俺を除く精霊随一?

 が、残念。俺にとって重要なのは量ではないんだなあ。創るときには多少影響するが。

「む……」

 軽い頭痛が襲ってきた。

 ありゃ、あまり関係しないとは思っていたが、流石に量が多すぎてキツくなってきたか。

 そして、そんな風に時間が掛かっていたこと、集中していたから気付かなかったのかもしれない。

 俺の視界だって、全てが等しく視える訳じゃない。

 普通の視界と同じように、俺の意思によってある程度鮮明に視えたり不明瞭になったりすることはある。

 例えば、今の俺は万由里の霊力に集中していたから、彼女の霊力については鮮明に視えていた。

 逆に、あまい意識していなかった背後のことは、それ程視えている訳じゃなかった。

 だから。

「七海っ」

「―――――ッ!?」

 背中に強烈な衝撃を受けると共に、俺の意識は刈り取られた。

 

 

 

「う、あ……?」

「目が覚めた?」

 軋む頭を押さえながら倒れていた身を起こすと、そこは上空だった。

 そして、格子上の、これは……〈雷霆聖堂〉?

 バッ、と立ち上がり、〈聖破毒蛇〉を生み出す。どうやら霊装は消してなかったからそのままみたいだな。

 慌てて状況確認。

 どうやらここは、〈雷霆聖堂〉の真下に位置する場所らしい。

 んで、皆は俺らを助けようとしてくれるのか頑張って近付こうとしている様子。ただ、どうも思い通りに近付けないらしい。

 士道は……どうやら、マントを使った盾役として戦っているようだ。

 いや確かに俺の霊力上、その使い方は決して間違っては無いが……。

 これは、予定変更をせざるを得ないか。

 本当は万由里の霊力を理解しておきたかったんだが、ここから脱出することが先決だな。

「万由里、伏せとけ」

 手振りでしゃがむようジェスチャーすると、万由里は言われた通りその場に蹲った。

 頭も押さえてて可愛らしい。おっと違う。

 俺は〈聖破毒蛇〉の柄を掴んで、最後に万由里が伏せているのを確認してから、構えた。

 斬る。

 俺らを閉じ込めていた檻は、それだけで半分になり、重力に引かれた下半分と俺らが落下する。

 予めそれを予想していた俺は、翼を生み出し、万由里の腕を引いて皆の元に飛び出した。

「大丈夫か、二人とも!?」

「ああ、なんとかな! 悪い、しくじった!」

 折角選手交代だとか言ったのに、当の俺がこのザマじゃなあ。

 さて、しょうがない、ここは一つ俺から助言しておくか。

「士道、今から俺が言うことを反芻して戦ってみろよ」

「何だ?」

「戦うのならば剣を取れ。護るのならば盾を取れ。想いを形に創り出せ」

 ん、こんなところか。

 原作での本来士道が使える筈の力のことを考えれば、結構的を射た表現だと思うけど。

「それじゃ俺は高台の方に戻ってる。耶倶矢! 夕弦! 俺らの護衛を頼む!」

 さて、目処は立った。もう一頑張り。




 戦闘回前半。

 次回で士道のあの台詞が出てくるはずです。
 今回は殆どヒロインがでてこなかったなあ。

 それでは次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 ああもう万由里はオリ主側でいいかな。

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