最近、中古で凛緒リンカーネイション買いました。楽しいです。
どうしてデアラってこうもヒロインが可愛いんでしょう。みんな可愛い。
割と或守はお気に入り。
それではどうぞ。
「ん、んん~~」
軽く伸びをすると、背中からボキボキ音がする。最近動いてなかったからなあ。イテテ。
夕弦との家デートから二日、今日は最後、狂三とのデートだ。
体調は完全回復。琴里からの外出許可も下りた。
何だかんだで、夕弦の看病は効いてたらしい。昨日の時点で大分良くなってた。
……まあ、結局寝てしまった俺が何か言える訳じゃねえが、昨日起きたらベッドの中に夕弦がいたのは気にしないでおこう。
ともかく。
今は狂三とのデートのことを考えればいい。
「お待たせしましたわ、七海さん」
「おう、別に待ってねえから気にすんな」
今日の狂三の服は、見慣れた、と言えば聞こえは悪いが、よく見るモノトーンのゴスロリっぽい服。
いや、いつもと同じ訳じゃねえぞ? ただ、よく似たような服の所為か、あまり真新しさを感じないのは確かだな。
「あら、少し残念そうですわね。もうちょっと趣向を変えた方が七海さんの好みでしたかしら?」
「え、そんなことは無いが……」
多少は思ったかもしれねえけども。
「別に、狂三は何着たって似合うだろうし、別に気にしなくてもいいんじゃね?」
「ふふふ、褒められていると受け取っておきますわ。でも、」
ずい、と狂三は身を乗り出してくる。
おおう、と身を仰け反らせる俺の顔を間近で見つめながら、
「他に言うべきことがあるのではないでして?」
「他に……?」
「ええ、今日はわたくしとのデートですもの。男性が女性と待ち合わせして最初に言うべき事と言えば……もうお分かりですわよね?」
あ、ああ、うん。多分理解した。
えーと、恐らく、
「似合ってるぞ、狂三」
「ふふ、ありがとうございます」
そう言うと、ようやく狂三は身を戻してくれた。
うーん、さっき『似合う』と言った記憶があるんだが。どういうことだろう?
今着ている服とその他、では区別しろってことかなぁ。
「え、えーと、今日はどこに行くんだ?」
「そう急かさなくとも大丈夫ですわ。時間はまだまだありますし」
ということで、狂三とのデートが始まった。
「なあ、狂三」
「はい、なんですの?」
「今も俺らの頭上には、でっかい透明の球体が浮かんでるんだよな?」
ふと、気になったことを訊いてみた。
視界を使ってない今の俺には見えないが、今こうして歩いている最中でも、士道だけが見えているらしい透明の球体は頭上にある筈なんだ。
「ええ、ありますわよ。不気味なほど静かで、やや不安にはなりますが」
「……ん?」
あれ、今の言い方じゃまるで―――――
「お前、アレが見えてるのか!?」
「? はい、見えていますわよ? 同じく、耶俱矢さんや夕弦さん、美九さんにも見えていると思いますけれど」
マ、マジか……、知らなかった。
琴里や令音さんから言われなかったってことは、伝え忘れていたか、二人も知らなかったからか。
今の狂三の台詞からすると、霊力が完全な状態の精霊には見えているってことだろう。
ああ、そうか。士道にしか見えていないってことは、士道との関りが強い方の精霊達、即ち、霊力が封印されている状態の奴らの方が重点的に見られたのかもな。
いや、それでも、狂三たちには何もしなかったって訳あるまいし、やっぱ忘れてたのかなあ?
「ふふ、七海さんがそう考えずとも、琴里さんたちにお任せしていれば自ずと何かしらの結果は出るでしょう。だから七海さんは、今はわたくしとのデートのことを考えていればいいんですの」
そして、狂三は腕を絡ませてきた。
「う……わ、分かった」
狂三とのデートではよくある、というか、他の奴らとのデートでもか。ともかく、よくあることではるが、全く慣れれる気がしないなあ。
いい加減、多少は慣れるようになった方が良いよな。
……努力はしよう。
「―――――着きましたわ」
「え、と……ここは?」
「勿論、猫カフェですわ」
いや、看板からして予想は付いていたけども。
「さ、早く入りましょう」
「お、おう」
入ってすぐ、微かにニャーニャーという鳴き声が。
あれだな。猫だな、うん。
「いらっしゃいませ」
「予約していた時崎ですけれど」
「時崎様ですね。本日は貸し切りです。どうぞお寛ぎになってください」
い、今おかしなワードが聞こえたぞ。
幻聴かな。貸し切り、って言葉が聞こえたような気がするんだ。
奥に入っていくと、一切の客がいないことが明らかになる。
「狂三、お前、まさか本当に貸し切りなのか……?」
「何を言っているんですの七海さん、当たり前でございましょう?」
おっと予想を上回る答えが返ってきたぞ。こいつ、当然、とまで言ってくるとは。
過去において俺が猫カフェに連れて行ったから、今もなおこういう場所が好きなのかなあ。しかし、ここまでになるとは思わなかったぞ。
「七海さん、これを」
狂三に手渡されたのは、猫耳カチューシャ。
……猫耳カチューシャ!?
「待て。俺にこれをどうしろと!?」
「え、着けていただくに決まっているではありませんの?」
言いつつ、当の狂三も猫耳着けてるし。
「いやいや、何を当然、みたいに言われても! 明らかに俺が着けるべきではないだろうが」
「まあまあ、美九さんの頼みもありますし、ここはひとつ、お願いします」
え、えー。
っていうか、美九の名前が出てきたぞ。夕弦の時もそうだが、アイツ他人のデートへの影響が強いな。
色々とアイツの願望が入ってるもん。夕弦のコスプレしかり、俺の猫耳も、多分。
「ほらほら、早く。ちゃんと写真に収めますから」
「余計に着けたくないわ!」
ということで、俺は足元にやってきた猫と戯れることにした。
放っておけば、そのうち諦めてくれるだろ。
「あらあら、フられてしましましたわ」
「…………」
「しょうがありませんわね。それでは、諦めることにしましょうか」
よし、諦めてくれたぞ。
ごろごろ、と体を擦り付けてくる子猫の顎を撫でる。
すると、左肩に重みが。
「ッ!?」
「こら、動いてはいけませんわ。この子が落ちてしまいます」
言われて横目に左を見てみると、ニャーとこちらを見つめるミニマム生物。ひげがくすぐったい。
俺が動けずにいると、右肩、膝の上、最終的には頭の上にまで猫を乗せられた。
「……おい、どういうことだ」
「猫耳が駄目だと言われましたので、せめてそれっぽくしようかと」
ぱしゃ、とシャッター音。撮られましたね。
あああ、くすぐったい。人懐っこいのか、頭を擦り付けてくるのはいいんだが、ものすっごいくすぐったい。
膝の上の奴も寝始めたり、服をよじ登り始めたり、色々カオスな状況になり始めたぞ。
「さて、美九さんの用事も済みましたし、わたくしも遊ぶといたしましょう」
「いや、まずは俺を助けてくれ……」
いつの間にか数匹増えてるし。
翌日、フラクシナスにて。
俺の分のデートは終わったから、暇になって士道とのデートを見させてもらうことした。
士道のデートも最終日で、十香との食べ歩きデートだった。今は休憩か何か、高台に二人はいる。
おお、おお、いい雰囲気だこと。
「ニヤニヤしてるところ悪いけど、あなたのデートも傍から見れば同じようなものよ?」
「マジか」
あんなに熱いのか。火傷しそうなんだけど。
悪化して爛れるレベル。危険。
「……ん?」
ふと、士道が不可解な行動をとり始めた。
いや、別に急に服を脱ぎ始めたとか、変な踊りを始めたとかではないぞ?
十香を一旦置いて、虚空に向かって話しかけ始めたのだ。
遂に過去の黒歴史再現か……。
「士道は何をしてるんだ?」
「さあ? インカムは外してあるから、訊くにも訊けないし……、どうしたのかしら」
なになに……、
『君は一体?』
『俺に、何か用なのか?』
『は……? 器……?』
うーん、独り言にしか聞こえないんだが。
『え、七海を?』
ん、俺の名前が聞こえたぞ。
すると士道は携帯を取り出して、誰かに電話をかけ始めた。
すぐに近くで着信音が。
琴里かよ。
「もしもし、士道? どうしたのよ、十香を放ってまで。え、七海を……? まあ、分かったわ。後でちゃんと説明しなさいよ」
「何て?」
「さあ? 私にもよく分からないわ。ただ、七海を呼んで欲しいってだけ。ということで、近くに下ろすから、よろしく」
「あ、ああ」
言われるままに転送装置を使って、俺は高台に下ろされた。
士道は……あ、いたいた。
「どうしたんだ、士道。お前のデート中じゃなかったのかよ」
「悪い。だけど、この話には七海も必要らしいからさ。えーと、この娘、見えるか?」
「…………すまんが、誰のことを言ってるのか分かんない」
やっぱりか、と士道は納得したように呟く。
そしてまた、虚空に向かって話しかける。
「どうすれば七海にも君が見えるようになるんだ?――――――成程、分かった」
何が分かったんだよ。
「それじゃあ七海、霊力を創り出してくれないか? 霊装は大丈夫だから、霊力だけ」
「? 別に構わねえけど」
ということで、右目の眼帯を取って、霊力を身に宿らせる。
とりあえず言われるままに、霊力だけ。見た目の違いとしては、右の紅い目ぐらいか。
「創ったけど、これがどうし―――――ッ!?」
少女が、いた。
輝くサイドテールの金色の髪、どこのか分からない制服、澄ましたような顔をした可愛らしい少女だ。
見た感じ俺らより、一つ二つ下ぐらいか……?
「初めまして、東雲七海。私の名前は万由里」
「万由里……か。ああ、初めまして」
「そう構えなくてもいいわ。別に私は敵対するために存在しているんじゃないから」
「そう、なのか」
肩の力を抜く。
一応すぐにでも反応できるように、と思ったが、杞憂で済んだようだ。
「士道、彼女は?」
「ん、説明するわ。私の役割は―――――」
ということで、話を纏めると。
彼女は敵対する気はなく、敢えて言うなら『監視者』である。
霊力が一ヵ所に集まると、それが器として相応しいかを見極めるために存在している。
相応しくないと思われた場合、それを破壊する役割もある。
そして、今回は俺と、士道がその対象。
結果―――――
「おめでとう、あんた達は器に相応しい」
「……相応しい、と言われてもな」
イマイチ実感沸かねえんだけど。
「霊力が一ヵ所に集まれば、っていうのは、俺には当てはまらないんじゃ?」
「そんなこと言われても。私は私の役割を果たしただけだし」
「……まあ、仮説は立ってるから気にしないけど」
俺の霊力は、皆の霊力から創られてるから、ってところだろ。
確かにある意味では一ヵ所に集まってると言えなくもないか。
「それで? 晴れて俺らは命を取り留めた訳だが、これからどうなるんだ?」
「別に、何もない。今まで通り、あんたたちは日常に戻ればいい」
「俺らじゃない、お前のことだよ、万由里」
「私……?」
そう、万由里のことだ。
万由里は自分を、役割があるから、と言った。
それじゃまるで、その役目を終えたら、こいつは。
「お前はどうなるんだ。ただ消えていくだけ、なんて言うなら、俺は全力で止めにかかるぞ」
「……まさしく、その通りだけど」
「は……? おい、万由里、そんなの聞いてないぞ!」
士道が慌てて叫ぶ。
俺が来る前に士道は説明を受けたはずなのだし、その時に聞いてなかったのか。
むむ、自分が消えてしまうことを受け入れているようで、消えないことを諦めているようで、少し腹が立つな。
「仕方ないでしょ。私はそういう風に決められている存在なんだから。今更、何を思ったりしないわよ」
あらら? 今の言葉を聞くに、消えることを惜しんではいるのか。
「だから、私は役割を終えたし、そろそろ―――――」
「―――――っ!? 【無限】!」
突如。
街の方から、いや、正確には街の上空から感じた『何か』に向かって、俺は霊力の光線を放つ。
見れば上空で、透明な『何か』はぐにゃりと形を変えている。それ向かって、光は伸びる。
貫く。
「おい、どうしたんだよ七海!? 急に攻撃をしたりして!」
「士道、万由里、逃げろ。今回は―――――ヤバい」
「ヤバいって、何が……っ!?」
士道も気付く。上空の『何か』に。
貫いたはずのその『何か』は、全く意に介していないように変形を続けている。
そして。遂に。
硝子が割れるように、その透明な『何か』は可視化する。
大きく、黒い球体。それに二対の翼と、同じく二対の尾のような鎖。
ああ、理解した。こいつは、この霊力は、
「嘘、〈
「万由里、教えてくれ。あれは何だ」
「シドー! どうしたのだ、突然空にでっかい何かが出てきたぞ! む? そやつは一体誰なのだ?」
十香が士道の元に駆け寄ってくる。遅れて、耶倶矢や夕弦、四糸乃、狂三まで集まってきた。
って、お前らいたのかよ。
「お前らは何でここに?」
「くく、四糸乃がどうしても彼奴が気になると申してな、これもまた一興と追うていたのだ」
「懐疑。それよりも、一体あれは……?」
あれ、十香に万由里が見えている?
俺がここに来た時は見えていなかったし、ずっとこの場にいた十香にも、万由里は初めて見えたようだから、何か条件があるってことか。
いや、それよりも、まずはあの『何か』、否、万由里と同じ霊力を感じる〈天使〉の正体は知らないと。
「万由里」
士道が名を呼ぶと、ピクッと少し肩を跳ね上げてから、彼女は口を開いた。
「……あれは、〈雷霆聖堂〉。さっき言った役割の時、対象が器に相応しくないと判断された時にその対象を破壊するためのもの」
「破壊って、でも、俺らは器に相応しいって……っ!」
「私にも分かんないわよ! どうして、〈雷霆聖堂〉、何で……ッ!?」
所持者である万由里にすら原因が分からない異常事態。
俺はただ、黙って〈雷霆聖堂〉とやらを見据えていた。
先程の俺の攻撃は、咄嗟ではあったとはいえ、全く効いていなかった。
そして、思わず迎撃、攻撃を選んでしまう程の圧倒的な霊力量。俺が最初に万由里に対して身構えてしまったのも、同じ理由だったっけ。
今更のように、空間震警報が鳴り響く。士道は、携帯にかけてきた琴里と話し込んでいる。
そして。
〈雷霆聖堂〉の、眼が開く。
「―――――チィッ!!」
舌打ちを一つして、一瞬で霊装を構築。飛び出す。
『七海!?』
幾つかの名前を呼ぶ声がしたが、構ってられない。
黒い球体部分に浮かんだ無数の眼球。それらは一斉に、同じ方向を向く。
即ち、俺を。
飛び出してきて正解だった。眼が開くと同時に、嫌な予感がしたんだ。
下の街への対策は、きっと〈フラクシナス〉の方でやってくれるはず。
なら俺は、本体を叩くまで。
「来い……〈聖破毒蛇〉!」
時系列的には書けないこともないけども。
ということで、万由里編もクライマックス間近。予定では、あと2、3話程度かなと。
戦闘、後日談、程度に。
実際、ケルビエルと主人公、どちらが強いのかよく分かりませんよね。
霊力さえあればいくらでも再生するケルビエルに、消失の霊力を持つ主人公。
そこはかとない、いたちごっこ感。
相性的には主人公なんでしょうが、主人公が先にバテる可能性も無きにしも非ず……。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
或守、凛緒なら書けないこともないぞ。どうする、自分……?