1カ月半振りですか。話毎に間隔が開いていく恐怖。
もう流石に忙しくて、なんて言えませんね。
テスト結果に歓喜してたあの頃が懐かしい……。
それではどうぞ。
あー、頭が痛い……。
一日休んだのに余計体調が悪化するってどういうことだよ。
それだけ自身の体調管理が出来てなかったってことか。
昨日、琴里に日程はそのままで、って言われたんだが、流石にこれでデートには行けねえぞ……?
確か次は夕弦だったっけ。悪いけど、断るしかねえかな。
「呼掛。……七海? 起きてますか?」
お、噂をすればなんとやら。件の夕弦さんですね。
「ああ、起きてる。入っていいぞ」
数日延期してもらう旨を伝えないと。
が、そんな気はぶっ飛んだ。
「ッ!? 夕弦、なんて恰好してやがるッ!?」
「返答。ナース服、というものらしいです。看病するならこれを、と言われました」
「誰にだよ!」
いや、令音さんか、可能性として美九あたりだろうけども。
……看病?
よし、冷静になろう。
「えーと、今、看病って言ったか?」
「肯定。はい、言いましたよ」
「……まさか、琴里が日程はそのままって言ってたのって」
「首肯。今日は夕弦が看病してあげます。お家デートです」
成程。そういうことか。
それじゃあ、お言葉に甘えるとしますかね。確かに、それなら俺が無理をすることはねえな。
……大分気を遣わせちまってるかなあ。
「確認。最初は、服を脱がす……」
「待て、不穏な言葉が聞こえたぞ」
何をする気だ夕弦。何をされるんだ俺。
「催促。ということで、七海。服を脱いでください」
「……理由は?」
「説明。風邪を引いたときは体を冷やさないようにしなければならないと聞きました。そして、そのためには汗を拭くべきらしいです。ということで、汗を拭いてあげるので脱いでください」
「…………」
さて、なんと返すべきか。
折角の厚意を無下にするのもどうか、って感じだし、かといって素直に従うのは恥ずかしいし、むむむ。
「あー、いや、自分で出来るから。タオル貸してくれ」
うん、自分でやるのが最善策の筈。妥協点とも言う。
「否認。いえ、今日は夕弦が看病します。七海は何もしなくても大丈夫です」
「いや、看病たってそこまでやる必要は無いからな?」
「強行。ほら、早く脱いでください」
「だー分かった分かった! 分かったから自分でやるからお願いだから無理矢理脱がそうとするのやめて!?」
なんとか夕弦の手を振りほどき、しぶしぶ寝間着を脱ぐ。
まあ、恥ずかしいということの他に、あまり胸の傷跡を見せたくないってのもあったんだが、今更か。
夕弦も、もうそのことは知っている訳だし。
「ほら、これでいいか? 次は何をすればいい?」
「要請。じっとしていてください。今、体を拭きますので。何かあれば言ってください」
言って、夕弦が真っ白なタオルを持った手を伸ばしてくる。
そのまま拭き拭き。
俺の要求で背中側から拭いてもらってる。そのまま身を起こして腕、腹……。
ち、近い。色々当たってる。言えない。言えないが気になるんだよ。形状的に丸いやつ。
そして、一度夕弦は手を止めた。
まさか、俺が気にしてるのに気付いたか!?
と思ったら、違うらしい。
手を止めたのは……俺の胸の傷跡の手前だった。
「……あー、別に気にしなくていいぞ。痛むことはねえし」
心的要因で痛みを感じることはあるけども。
それだって、実際に痛んでる訳じゃねえだろうしな。いや、詳しくは知らねえが。
「承諾。分かりました。痛んだら言ってください」
そして、また手を動かす。
先程よりも力加減がさらに優しくなったのは、まあ、気にしないでおくか。
「……完了。終わりました。服を着てもいいですよ」
「おう」
いそいそと服を着る。
ふむ、本当は部屋着に着替えたいんだが、流石に無理だったか。
「確認。次は……おかゆ。林檎のすりおろしでも可……」
さっきから夕弦は何を見てるんだ?
背を向けてる夕弦の手元をこっそりと覗き見る。
えーと、可愛らしい字で『看病の五ヶ条』って書かれてる。筆跡から見るに……美九あたりかな。
ふむ、嫌な予感しかしねえな。
「退出。ちょっと用意してきますので、しばしお待ちを」
「わ、分かった」
そう言って夕弦は一度部屋を出て行った。
ふう、とそこで息を吐く。
やっぱりまだ本調子じゃねえみてえだな。たったあれだけのことに疲労してる。
いや、別に夕弦と一緒にいるのが疲れる、という意味ではねえけど……。
がちゃ、と再度扉が開く。
あれ、もう戻ってきたのか? にしては早いな。
「質問。七海」
「何だ?」
「おかゆと、林檎、どちらがいいですか?」
「えーと、じゃあ……林檎?」
「催促。七海、あーん」
「あー、む」
租借。もぐもぐ。
……あ、移った。
兎型にカットされた林檎を差し出す夕弦。あ、この場合の兎型ってのは、一般的な耳が出てるやつじゃなくて、本当に兎。食べにくいことありゃしない。あの純粋そうな目が俺を見つめてくるんだ……ッ!
ともかく。
「問掛。おいしいですか?」
「ん? ああ、おいいしいよ。ご馳走さま」
生の林檎においしいも何もないと思うけど。
いや、おいしいけどね?
あの生きているかのように精巧な兎型の林檎をなんとか食べた俺は、少し休むことにした。
デート中ってのは分ってるんだが、流石に、な。キツい。
「悪い、夕弦。少し休む」
「了解。無理は禁物です。どうぞ、お気になさらず」
ん、とだけ返して、目を瞑る。
おそらくこのまま寝てしまうだろう。
大丈夫、大丈夫、少しだけだから(フラグなんて言わない)。
……。
………………。
「呼掛。七海、もう寝ましたか?」
「……んー、眠いけど、どうかしたか?」
「不安。今日、夕弦は七海に無理をさせていませんでしたか? ちゃんと、看病できていましたか?」
殆ど眠りに落ちかけている頭で、考える。
いや、最早考えているというより、思ったことをそのまま言ってるだけか。
「まあ、正直、びっくりしたりはしたが、出来てたんじゃねえの? お前が俺を心配してくれているってのは伝わったし。独りでいるより、誰かと一緒にいた方がいいのも確かだ」
うん、そうだ。
「今日は楽しかったぜ。ありがとうな」
「苦笑。まだお昼過ぎですよ。デートは始まったばかりです」
「か、は、は、はッ。ああ、確かに、その通りだよ……」
「微笑。―――――お休みなさい、七海」
そんなことがある部屋の外、扉の前で。
少女はただ、声を聴いていた。
イヤリングは再度、橙色へと染まる。
短いなぁ!
書き方忘れてる、オリジナル話なんて書けない、ということが判明した今回。
脅威の3000以下。泣きそう。泣いてた。
しょうがないdolphin(合ってるかな?)に癒しを求めよう。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
もう既にマンネ(作者が言っちゃダメか)