デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 生存報告。

 約一ヶ月振りですね。もう12月に入ろうとしています。
 久しぶりに書いたので、読みにくくなってしまいましたが、早く直していきたいと思います。

 それでは、どうぞ。


第66話

 デート二日目(俺視点)。

 二人目の相手は、美九。

 忙しいだろうに、この日の為にオフを取ってきたんだとかなんだとか。

 俺なんかの為にそこまでしてくれるのは嬉しいが、普通に仕事のことが心配になる……。

 ま、まあ、本人が大丈夫って言ってるんだし、きっと大丈夫だろう。それしか信じれるものがないし。

「? だーりん、お口に合いませんでしたかー?」

「ん? ああ、いや、美味いよ。いつかは俺もこのレベルまで上手くなりたい」

 正直、緊張で味わう余裕なんて無いんだが。

 そうだな、街が見下ろせるぐらいに高く、かつ広い部屋で、純白のクロスが敷かれたテーブルが置いてある。まずはそれを想像してみてくれ。それだけで場違い感がすごいな?

 そんな場所に俺と美九と二人きり。たまに給仕さんが出たり入ったり。

 ……どうしよう、俺普通の私服だし、テーブルマナーとかも殆ど知らないしで、ここにいるべき人間じゃないと思うんだが。

 しかし、ぼーっとしてたのが気付かれたかと思った。実際、多少は気取られたみたいだし。

「本当は街にお出掛けしたかったんですけど、琴里さんたちから止められちゃいましてー」

「そりゃあ、お前みたいなトップアイドルと、俺みたいな一般人、しかも男とが一緒に歩いてるところを見られたら、どんなスキャンダルになるか分かったもんじゃねえしな」

 美九はその辺の意識が薄いところがあるから、割と心配なんだが。

 そういやいつぞや美九が来禅に来た時も、あの後物凄く問い質されたなあ。

「んー、それじゃあ、女の子となら問題無いですよねー?」

「……俺は女装なぞしねえぞ」

 先手を打っとこう。

 美九なら俺を女装ぐらいならさせてきそうだもん。言っといて間違いないはず。

「いえいえ、女装なんてしなくてもいいですよぉ、何言ってるんですかだーりん」

 ほ。うん、一応危機回避。

 いやー流石に女装は嫌だ。一度女体化したことある俺が言うのもなんだが、嫌だ。

 ……そういや、美九って、そのことは知らないよな?

 あれ、うん知らない筈。だって見せてないし。あの存在を知ってるのは耶倶矢と夕弦ぐらいな筈だし……!

「女()が嫌なら、直接女性になってしまえばいいんですよー。ほら、こんな所に来禅高校の女子制服が」

「……は、はっはっはー。何を言ってるんだ美九。なるつったって、どうすれば――――」

「知ってますよー、ねえ……『七霞』さん?」

 ……あっさりと希望は打ち砕かれた。

 

 聞くところによると、修学旅行から帰ってきた後、美九や耶倶矢達で思い出話をしていた時にこの存在を聞いたんだと。

 耶倶矢や夕弦からこの情報が漏れるのは予想外だったが、もういい。諦めよう。

 あーっていうか、人の視線が気になる……。

 美九は慣れているのかもしれないが、俺はただでさえ慣れない女性服のうえ、制服だから下はスカートだしと、もう気にならないほうがおかしい。

 女子って、こんな無防備な服を着るんだな。

 ……ああ? 下の下?……想像にお任せするよ。

 ヒントになるかどうかは分からないが、俺が着替える途中、着方が分からなくて美九に訊いたところ、彼女の毛細血管は耐えることが出来なかった、とだけ言っておこう。

「ふふー、楽しいですねぇ」

「お、俺は楽しくない……っ」

「七霞さーん?」

「……わ、わた、私、は、楽しくないよっ」

 くっ、美九の希望で一人称も変えないといけないしっ!

 これすらもデートプランに組み込まれていたのか……誘宵美九、恐るべし。

 今の俺の姿は、いつぞやの七霞と名乗った時の姿。身長自体は男の時と変わってないが、それでも女性となると、それなりに高い方、になるのかな。

 そういや、着替えて出てきた時、

『ぶっふぉっ!? こ、これは、私の想像を超える可愛らしさ……! 慣れないスカートを押さえる手とか内股になっちゃてたりとか赤面してるところとかもう全てが可愛いだからいただきまーす!』

『にゃあああぁぁぁぁぁぁッ!?』

 あの時の美九の目はヤバかった。ガチで逃げた。そして捕まるとは思わなかった。なんなのあの底力。

 ちなみに、その時美九が言った俺の状態は、今尚継続中。だって恥ずかしいし。

 せめてもの報いと恨めしそうな眼を意識して睨むと、なぜか手で顔を覆って逸らしちまった。ふ、流石俺の眼力。

 ……分かってるよ。どうせ出来てなかったんだろ。別にいいじゃないか現実逃避ぐらいさせろよー!

 こほん。

「あ、七霞さん、あそこに行ってみましょうよ。似合う服を探しましょー!」

「分かったよ、好きにしろよもう……」

「え、好きにしていいんですか!?」

「よし早く行こう!お……じゃない、私が見繕ってあげる!」

 俺には、どっちの似合う服、なのかを訊く勇気が無かった。

 だってよお、それで俺っていう答えが返ってきてみ? 体調不良がぶり返して三日間ぐらい寝込むよ、俺。

 

 す、すげえ、『ここから、あそこまで』を本気でやる人初めて見たわ、俺。

 服も着替え、男の姿に戻った俺は、一目のつかない路地裏で今日を振り返る。

 結局美九との買い物は、最終的にトラックに積み込むレベルのものとなったし……その九割方が服飾類なんだぜ?

 いやー、さすがトップアイドルってのを実感したね。

 買った物のなかには、いつ着ることになるか分からない『七霞』に合わせた衣服もあって……俺、また女体化しねえといけないの?

「ん……っ」

 とと、少しふらついた。

 やっぱり体調は万全じゃなかったか。今日の疲労(その殆どが精神的なものなんだが)もあって、そろそろ休むべきか?

「今日は楽しかったですか? だーりん」

「あ、ああ。楽しくはあったが……。もう七霞にはなりたくない」

「えぇー。折角可愛かったですのにぃ」

「少なくともその言葉で俺は喜ばねえぞ」

 一応褒め言葉、なんだろうが。身体的には女とはいえ、俺は男だ。可愛いと言われて喜ぶような感性も持っている訳じゃないし。

「それじゃぁ、そろそろ帰りましょうかー」

「ああ、そうだ、な……?」

 俺が一歩を踏み出した瞬間、視界がぐらついた。

 立つことすら儘ならない揺れるような感覚、平衡感覚は崩れ、視界はぼやけ、自分がどんな動きをしているのかさえ把握できない。

「だーりん!?」

 俺を呼ぶ声がする。

 だが返答する暇なく、俺は倒れていった。

 

 

「風邪と疲労、正確には、それによる体力の限界、ってところかな」

「すまん、俺の体調管理のミスだった」

 自室。ベッドの上。

 どうやら俺は、自分でも思っていた以上に体力が消耗していたらしいな。

 今の俺の現状を思う。

 あのあとすぐ、ラタトスクの関係者が俺を運んで、検査というか診察。これといって大事になるようなものではなかったので、安静するようにとだけ言われてそのまま帰宅という訳だ。

 で、今はその結果を皆に説明しているところ。部屋には俺と令音さんの他にも、耶倶矢、夕弦、狂三に美九に真那、あと士道と琴里がいる。

 時刻的にも夕食時だろうに、わざわざ来てくれたことには感謝しないと。

「はぁ~、よかったです。もしかして相当無理させちゃってたのかと」

「実際、もうしたくないからな」

「くく、主も虚弱よの。たかだかその程度、七海なら早く治してみせよ」

「通訳。大丈夫? 本当に大丈夫? キツかったら言って? 何でもしてあげるから、と、耶倶矢は言っています」

「そ、そこまでは言ってないし!」

「解釈。つまり、その程度ということですね。大丈夫ですか、七海。してほしいことがあったら言ってください」

「ちょ、アンタも言ってんじゃん!」

「あ、頭に響くから、少し静かに頼む……」

 大人しくなった。

 はあ、ひどい倦怠感に、喉の渇き、頭痛に発熱。典型的な風邪の症状だが、こうもキツいとはな。

「義兄様、水をどうぞ」

「悪い、真那。ありがと」

 持ってきてくれた水を飲む。普通に冷えていて、今の体には心地良い。

 ふー、と息を吐き、力を抜くと、想像以上に疲労していることに逆に驚く。

「お疲れのようですわね、七海さん」

「んーまあ、否定は出来ねえな。ちょっとこのまま休むから、もし俺が寝てしまっても、気にしないでくれ」

「了解いたしましたわ」

 ちょっと休むだけ休むだけ。目を瞑るだけだから……。

 

 くー、くー、と規則正しい寝息が聞こえ始めるのに、そう時間はかからなかった。

「皆さん、お静かにお願いしますわ」

 狂三の言葉に、皆も七海が寝ていることに気付く。

「あれ、寝ちゃった? どうしよう、明後日のこととか決めておきたかったんだけど」

「別に明日でもいいんじゃないか? 今は寝かしとこうぜ?」

 士道の提案に、琴里は頷く。実際、少しでも休んでもらうことの方が優先。

 大事をとるなら、七海のデートを一日延期して、先に士道のデートを終わらせるべきだ。

 そのことを七海に訊いておきたかったのだが、寝ているならば休ませよう、という判断である。

「本来なら、次の七海の相手は夕弦よね?」

「肯定。はい」

「おそらくだけど、一日延期になってしまうのだけれど、いいかしら?」

「承諾。別に構い……」

 夕弦はそこで、台詞を区切った。

 じっ、と七海を見詰め、間が空くこと数秒。

「訂正。いえ、当初の予定通りの日程でお願いします」

「え? でも、七海の体調を考えると、」

「自信。大丈夫です。七海には無理をさせませんから」

 そこはかとなく胸を張る夕弦。

「……まあ、そこまで言うのなら、任せてみるけど」

 もともと精霊たちのやりたいことをやらせる、という名目でのデートなのだ。強制までしてそれを止める理由は無い。

 一抹の不安は残るが、ここは夕弦を信じることにした琴里であった。




 むむ、場面転換が多い、且つまたしても文字数が。(即ち急展開)

 次回予定の夕弦デート回は、本来とは全く違うオリジナルデートとなります。
 まあ、この拙作に折紙さんがまだでてきていない以上、原作通りのデートになるはずがないということです。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 ちなみにテスト三日前。

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