デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 連続投稿ッ!

 いやー、書き上げられて良かったです。え。急展開? 気のせいですよきっとー。

 それでは、どうぞ。


第64話

「つまり士道には、この辺に、透明な球体が見えてるってことね?」

「あ、ああ」

 琴里が咥えていたチュッパチャップスで、モニターの中心あたりを指す。

 ランニングが終わった後、朝食の準備をしている途中で、突然琴里に呼び出された俺ら。丁度一緒にいた真那もいる。

 聞いたところによると、朝士道が目を覚ましてカーテンを開けると、昨日までなかった巨大な球体が空に浮かんでいたんだと。

 んで、どうやらそれは士道にしか見えないみたいで、俺や琴里、真那には見えないんだよなあ。

 しかし、嘘を吐いているようにも思えないし。

 という訳で、そろそろ俺が呼ばれた理由も察しがつくぞ。

「……七海」

「言われなくても分かってるよ。だが、モニター越し、観測機越しじゃ流石に直接は見えねえよ」

「でも、」

「そう結論を急かすな。『直接は』って言っただろうが」

 え、という疑問の声を置いて、俺は視界に映った情報を伝える。

「確かに、士道の言う球体は見えないが、ここからでも分かることはある」

「義兄様、何が見えているのでやがりますか?」

「観測機が観測したデータは視れた」

 ふむ、確かに、

「士道の言ってることは嘘じゃない。―――――誰か、モニターの映像を、霊力の観測結果に変えてください」

 俺が言った数秒後、モニターの映像が変わった。

 すると、そこには、

「……っ!? 霊力反応がある、ですって……!?」

 俺はそれに、無言を返す。もとより、返答を望んだ訳でもないだろう。

 士道の言う球体とやらは直接視えなかったが、代わりに、観測機が観測した情報を視ることは出来た。

 ふむ、俺の視界に、こんな弱点があったとは。

 物体越しに何かの情報を視る事は出来ても、媒体越しの何かの情報を視る事は出来ないのか。

 となると、カメラとかに写った写真や映像でも、視れる情報は限られるのかな。

 いや、今はそれより。

「令音さん、この霊力反応って」

「……ん、君の視た通りさ」

 令音さんは、琴里に視線を向け、

「琴里、これを見たまえ」

 何か手元の機器を操作する。

 すると、モニターに映った球体の霊力反応が、七つに分かれた。

「? 令音、これは?」

「どうやら、この球体は、皆の霊力によって出来ているらしい」

「皆の霊力……?」

 士道が疑問の声を上げる。

 そうだな、俺からも説明を入れておくか。

「ああ、皆、より詳しく言うなら、耶倶矢、夕弦、美九、狂三、十香、四糸乃、琴里の七人分の霊力が、それぞれ微弱ながらも観測されている。ふむ、耶倶矢と夕弦とで別の霊力反応を示すのか」

 てっきり、同一のものかと思ったが。

 一度明確にすると、確かにこれで丁度七人分だもんな。

 しかし、姉妹で別々だとするなら……。

「令音さん、この現象の理由って、精霊としての力がどうのこうのとかいうやつじゃなくて、もしかして」

「ああ。おそらく、彼女達自身、例えば、感情等が関係してるのかもしれない」

 やはりか。

 薄々そんなところじゃないかとは思っていたが、的中したな。

「……義兄様、つまり、どういうことで?」

「んー、分かりやすく言うなら、精霊達皆の何かしらの感情が集まった、ってことか。いや、これじゃ分かりやすくというより、まとめると、って感じだな。しかも、あくまで仮定だし」

 ぽけーとした表情の真那を見て、やはり説明不足だったかな、と思い直す。

 しかし、思えばこれ以外に分かっていることも無いしなあ。

 仮に、感情が集まるとして、精霊達が同一に持ち得る感情ってことになるよな、集まっているってことは。

 むむむむむ……、

「……もしかして、〈嫉妬〉?」

「へ?」

「え?」

「……ふむ」

 俺がぽろりと零した一言に、琴里、士道、令音さんが反応した。

 遅れて、他のクルー達も、ああ、と反応を示す。

「え、あ、いや、あくまでも、もしかして、だぞ?」

「いや、案外、的を射ているかもしれない」

 あれ、まさか令音さんからの賛同?

「おそらく、シンやナナへの嫉妬心や、もしくは独占欲といったものが起因して、霊力が溢れ、それが一箇所に集まった……といったところだろう」

「え、嫉妬……、独占欲……?」

「……しかも、俺も入ってるのかよ」

 嫉妬、嫉妬ねえ。独占欲……、心当たりは無いんだけどな。

 ここは一つ、当事者でもある琴里に話を聞いてみるか。

「なあ琴里、お前に心当たりはあるのか?」

 っと、俺が何か訊く前に士道が質問しちゃったか。

 いや、別に訊くのは誰だって関係無いだろうし、別にいいか。それよりも、俺は答えを聞きたい。

「……士道」

「? どうした?」

 素で返す士道に、琴里が、

「少し、黙ってなさい」

「え、いや、答え……って、痛い! え、何で蹴られてんの俺っ!? 痛いって!」

「ふん! ふん、ふん!」

 お、おお、司令官はご立腹のようで……。神無月さんが羨ましそうに士道を見てる……。

 しかし、何で琴里はいきなり怒り出したんだ?

 不思議に思い、令音さんに訊いてみると、

「……ナナも、このことは訊かない方がいい」

 令音さんにまで言われた。何故だ。

 程なくして、一通り蹴って満足したらしき琴里が、席に戻ってきた。士道は足とか脛とか摩って痛そうだった。

「しかし、独占欲か……。一見そうには見えないんだけどなあ」

「確かに、表面上はそうだろうし、彼女達自身も意識はしていないのだろう」

 俺はそれを聞いて、琴里に視線を移した。

「……何よ?」

「いえ、ナンデモアリマセン……」

 こ、怖っ。

 視線で人を殺せるレベルだな、多分。言いすぎかな。

 ともかく、

「つまり、無意識下のそれらの感情が、今回の原因ってことなのか」

「ああ、だろうね」

「そ。それじゃあ話は早いわ」

 お、司令官復活?

「嫉妬や独占欲が今回の原因っていうのなら、それを取り除くまで。方法は、いつものと私達と変わらないわ」

 即ち、

「デートして、デレさせなさい!」

 

 令音はごく自然を装って、一度部屋を出た。

 そして、一人呟く。

「―――――〈システム・ケルブ〉、か……」

 

 

 その日の夜。

 五河家のリビングに、俺と令音さん、真那を含む計十人が集まった。

「ということで、近い内に皆には一人ずつデートしてもらうわ」

 何が、ということで、なんだよ。

 あれか。ツッコんではいけない系のやつだな? オーケー俺は何もツッコまない。

「おお! デェトか? デェトが出来るのだな!?」

「ええ、そうよ」

 目を爛々と輝かせる十香。嬉しそうだなあ。

「皆にはくじを引いてもらって、くじには番号が振ってあるから、その番号順にデートしてもらうわ。ただ、この場にいる全員分を一緒にしてあるから、引いた後に、士道側と七海側に分かれてちょうだい」

「質問。夕弦と耶倶矢は、どうすればいいのでしょう?」

 夕弦が手を上げて質問する。

 俺にはイマイチ質問の意図は分からなかったが、琴里や令音さんには伝わったらしい。

「ん、今回は一人ずつにしてみてはどうだい? 丁度、くじも七人分ある」

「確認。どうしますか、耶倶矢」

「くく、これもまた一興だろうて。よいのではないか?」

 おお、八舞姉妹を一人ずつに出来たんだ。

 まあ確かに、二人同時にデートしたとして、どちらかに一切の嫉妬を抱かせないっていうのは、流石に非現実的だったからなあ。

 こっちとしては、不謹慎だが、素直に助かった、って思うべきなのかな。

「それでは、一人ずつ引きたまえ」

 令音さんが、くじ箱を差し出す。

「私はこれだ!」

「我はこれだ!」

 直後に、十香と耶倶矢が真っ先に引く。

「それじゃあ、私はこれでー」

「わたくしも引きますわね」

 次いで、美九と狂三。

「あ、あの、私……も」

「行動。残り物には福があると言いますし」

「それじゃ、最後のが私のね」

 そして、四糸乃、夕弦、琴里が引いた。

 結果、

「く、くく、くふふはは! 見よ! やはり我こそが始原の一を取るのに相応しい!」

「んー、二番ですねー」

「さ、三番、です……」

「確認。四番でした」

「ふふ、五番目ですわ」

「あら、私が六番なのね」

「むう……七番、最後か」

 順に、耶倶矢、美九、四糸乃、夕弦、狂三、琴里、十香の順に決定した。

 で、これをさらに俺と士道とで分けるんだっけ。

 ……んんー、何か、色々と間違ってる気がしてならん。

 その間にも、話はどんどん進むし、固められていく。

「じゃあ皆、それぞれでデートプランを立てて、今回の順番通りにデートするわよ。最初は、士道が四糸乃と。七海が耶倶矢とね」

「かか、お主らも不幸よのう、我の後になるとは」

「憮然。どういう意味ですか」

「無論、我が考える究極にして至高にして完璧のデートプランの後では、七海とて、面白く感じまいて」

「あらあら、そんなに自信があるようですけれど、強がっているだけではありませんでして?」

「そうですねぇ。耶倶矢さんて、強がりなところがありますし」

「首肯。確かに、その通りですね」

「くっ、言わせておけば……!」

 仲の良いことで。

「む? 今回は私達ででぇとぷらんとやらを考えるのか?」

「……一応聞いておくけど、意味分かってるの?」

「勿論!」

「ほ、ならいいわ……」

「全くだ!」

 あ、こけた。

「十香さん、デートプランというのは、つまりですね……」

『要はー、士道くんとしたいことを考えれば良いと思うよー?』

「ふむ、シドーとしたいこと、か……」

 ナイスアシスト、四糸乃。

 ……あれ? 話は進んでも、内容を話したのって、琴里の最初の言葉だけ?

 いやまあ、雑談も大事だけどね?

「なあ、琴里。今回インカムは……」

「んー、外しといて良いんじゃない? 別に士道の好きにしても良いけど」

「そうだな……いや、止めておくよ」

「あら、どうして?」

「インカムとか無しで、純粋にお前らが考えるデートをしてみたいからな」

「……そ」

 あら格好良いこと言ってる。琴里も微笑んでる。兄妹良い感じ?

 しかし、デートプランは向こうが考える、ねえ。

 実際これは、フラクシナス内で、どうすればより嫉妬等の感情を解消できるか、を話し合った結果だ。

 曰く、当の彼女達が好きなことをすれば、解消できるのではないか、とのこと。

 確かに、一理あるということで、こういう形になったんだな。

「さて、最初のデートは二日後からよ。一応、七海と士道とで一日ずつ日をずらすから」

 つまり、俺のデートと士道のデートの日は交互になるってことか。

 ま、これといった不都合がある訳じゃないし、良いんじゃねえのかな。

 夜になって少し冷えたのか、軽く寒さを覚える腕を摩って、俺はそんな風に考えた。




 さて、次回からデート回ッ!

 といっても、七海とヒロイン精霊とのデートだけで、士道サイドのデートは書きません。
 もし見たいという方がいらっしゃれば、映画を見るか、DVDやブルーレイを待ちましょう。
 最後の方、耶倶矢の「究極にして~」の部分は、順番を覚えていませんでしたので、判明しだい直します。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 多少の差異には目を瞑ってください。お願いします。

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