デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 狂三編最終話です。

 ここで、前回言っていたアンケートを実施します。
 内容は、『皆様から見た主人公像』です。
 皆様から見て、主人公、七海はどう見えるでしょうか?、という質問です。
 活動報告の方にも出しておきますので、よろしければ、回答お願いいたします。

 それでは、どうぞ。


第61話 そしてエピローグ

 翌日、早朝。

 俺はいつも早朝ランニングをしている為、これまたいつも通り五時前位に目を覚ました。

 身を起こし、軽く伸びをして、ベッドから出る。途中、狂三の姿もあったので、布団を掛け直しておき、着替えの為にクローゼットを開け、る……。

 …………?

 何だろう、何か看過出来ない光景を見た気がする。

 もう一度さっきの行動を振り返ってみよう。寝起きの頭だが、それ位は出来るだろう。

 身を起こした。異常無し。伸びをした。異常無し。ベッドから出た。異常有り。布団を掛け直した。……何故?

「うおわああぁぁぁぁぁっ!?」

 物凄い遅れて、俺は絶叫した。

「ん……ぅ? 騒がしいですわよ、七海さん……。どうかなされましたの……?」

「く、くる、狂三!? お前、あれ、何でっ?」

 身を起こしたネグリジェ姿の狂三から慌てて目を逸らしつつ、その理由を問う。

 本当、何で狂三がここにいるんだ?

 あれか、大人の階段昇っちゃった的なあれなのか――――ッ!

「いえ、昨晩、七海さんが寝た後に、こっそり忍び込んだだけですわよ?」

「違った! 間違えた。どうして?」

「あら、言ったではありませんの。()()()()()()、わたくしの想いを受け止めてくださいまし、と」

 昨晩、というか、時間帯的には今日だな、それ。

 あー確かに言われたな。んでもって最終的にストレートに告白されたんだったな。

 ……言葉にしてみると恥ずかしい。

 昨日と今日の間の時間帯、俺は狂三に告白された。

 それはもうどストレートに。直球で。

 それで、まあ、何だ。き、キス、も、した。した、というより、された?

 ともかく。

「だけどお前、あれは結局オチがあったじゃねえか」

 その後、満足したのか狂三は身を離して、

 

『本来ならば七海さんにはわたくしだけを選んで欲しいところですが、それでは他の精霊さんに対して不公平ですわね』

『ということで七海さん』

『たった一言だけで良いですわ』

『わたくしのことを、好き、と言ってくださいまし』

 

「―――――それで俺は応えて、あれは終わったんじゃねえのかよ。お前も、その後は随分あっさりしてただろ?」

 ああそうだ。やっと鮮明に思い出してきた。

 そうだったなあ。俺が結構勇気を出して応えてやった割には、その後の狂三の態度があっさりしすぎて、少しだけ傷ついたのも思い出した。

「あら? そんなことありましたかしら? わたくしの記憶にはございませんわ。もしかすると、同じような言葉を言ってもらえたら、思い出せるかもしれませんわ」

「……おい」

 ふふ、と笑う狂三。こいつぜってーわざとだろ。

 がしがしと頭を掻く。

 暑さ以外の理由で顔が赤くなるのを感じながら、俺は逸らしていた目線を戻し、狂三を真正面から見つめる。

 そして、

「あー、その、何だ。……――――好きだ、狂三」

「ふふ、わたくしも、大好きですわ、七海さん」

 だーもう恥ずかしいよなあ!

 狂三も、言われて顔を赤くするなら、言わせなけりゃいいのに。

 まあ、わざとだと分かっててそれに応じる俺も俺か。

「ほ、ほら、俺は着替えるから、お前も部屋に戻れ」

「ええ、そうですわね。わたくしも満足いたしましたし、これでお暇させていただきますわ」

 それではまた後ほど、という言葉を残して、狂三は俺の部屋を出ていった。

 はー、と息を吐きながら、すとん、とベッドに腰掛ける。

 何だろう、起きてから十五分も経ってないのに、朝走るよりも疲れた気がする。こう、精神的に。

 いつまでもそうしている訳にはいかなかったので、のろのろとだが、ランニング用のパーカーとかに着替え始める。

『にゃはは、アツかったねー二人とも。これは夏の暑さにも負けないね? 雪にも勝っちゃうまであるね?』

 っ!?

 この感じ、この声……。

「楓、戻ってきてたのか? っていうかそれ、雨にも負けずじゃねえかよ」

『はいはいただいまー、君の愛しの神様、楓ちゃんのお帰りだね。あとそれ正解』

「いや、別に愛しではねえが……。まあ、お帰り」

 これは、早かった、というべきなのか?

 楓が何時戻ってきたのかは分からんが、それでも俺が現代に戻ってきてから、今着替えているこの時間の間に戻ってきたのは確かだ。

 だけど、過去で楓が何をしてたのか殆ど知らねえから、基準が分からん。

 ま、別にいいか。とっとと着替えよ。楓がいるけど……言ってもしょうがないから放置で。

『しかしまあ、君もおかしな人だね』

「あ? 何がだ?」

『きょうぞうちゃんのあの告白を本気だとちゃんと理解していながら、君はそれに本気の好意を返していない、いや、返せない、かな』

 ……どういうことだ?

 俺が本気の好意を返せていない? それは、さっきの会話を見た上で言っているのか?

 もし俺の言葉が本気じゃないとすれば、俺はあそこまで恥ずかしがったりしないだろうが。

『いや、君自身は本気なんだろうね。だけど、実際は違う』

「何が違うんだ」

『君の好きは、決してラブの意味じゃない。どうやっても、ライクの域を出ることが無いんだよ』

 なんじゃそりゃ。小学生レベルの恋愛とでも言うのか。ラブとライクの違いが分からない、なんて。

 大体、先も言っただろ?

『言葉にはしてないけどね』

「変なところで揚げ足を取るな」

 話の腰が折れた。

 気を取り直して。

 先も言ったが、そもそもライクの意で俺が言ったなら、俺はあそこまで恥ずかしがったりはしない。

 というか、狂三のあの言葉にそんな意味の言葉で返す訳が無い。

『そう、だから言っているだろう? 君自身は本気なんだろうね、って』

 だけどね、と楓は言う。

『君は誰も好きじゃない。厳密に言うならば、愛していない。先のきょうぞうちゃんの時の台詞も、いつかの八舞姉妹に向かって言った時も、君は自分自身の感情を錯覚しているだけ。確かにそれはライク以上に好きなんだろうけどさ、絶対に、ラブではない。どんなに想いが強くても、それがラブを通り越すまであっても、君の感情はライクでしかない。もう一度言うよ。――――君は誰も、愛していない』

 いつもの愉しげな口調とは正反対に、今の楓の声は真面目だった。

 その声を聞いて俺は、何を返せばいいのか。

 何を返すのが正解なのか。

 ただ否定するだけじゃ、すぐに言い返される。

 大体、俺自身がそれに確信を持てていないのだから。

 そんな筈無い。俺の想いは本物だ。――――本当に?

 俺はあいつらを愛していると言える。――――本当に?

『ま、別にいいけどねー!』

「……は?」

 今までの空気を一変させる楓の声に、流石に俺は思考を止め、呆けた声を返してしまった。

『たとえ君が誰も愛していなくても、それは今現在の話であって、将来は分かんないしね。それに、愛していないと言っても、好き合っているのは確かだし、意外と何も変わらないからね』

 おいおい。

 それじゃあ、今までの会話は一体何だったんだ。お前の珍しい真面目パートの意味はあったのかよ。

 あーあ、と思いながら、何となく思い至って時計を見る。

 ……五時三八分。

 もう、いつものランニングを終えている時間だった。

「……朝食の用意するか」

 俺はまた、着替えることにした。

 

『ま、本当は七海くんが誰も愛せない理由は分かっているんだけどねー』

 

 

 午前九時。

 俺と狂三は琴里に連れられて、フラクシナスに来ていた。士道もいるよ。

 あれから大変だったんだぜー?

 八舞姉妹、美九、真那。この四人を相手するの。琴里や士道の助けが無かったら、俺は今でもあの四人に捕まっていたかもしれん。

 ともかく。

 今は目の前に集中するか。

 今日は、最近事ある毎に連れて来られた司令室ではなく、飲食スペースらしき、まあ簡単な休憩場所だった。

「―――――えーとつまり、七海は、あなたを救う為に過去に行っていて、あなたも、救ってもらう為に過去に飛ばした、ということでいいのよね?」

「ええ、その通りですわ」

「……どうして最初からそう言ってくれないの……ッ」

「お、落ち着け、琴里」

 語気を荒げる琴里に、それを諌める士道。

 俺は、琴里のその言葉を聞いて、小さく狂三に訊く。

「お前、言ってなかったの?」

「ええ、まあ、はい。そうですわ」

「どうして?」

「それは……」

 ここで狂三は答えを言い淀んだ。

 何だ? 何か答えにくい質問だったか、今の。

「なあ狂三」

「はい?」

「どうしてそれを言ってくれなかったか、教えてくれないか?」

 ちょっとばかし気が立っている琴里に代わって、士道が質問してきた。

 それは今しがた、俺が放った質問と全く同じ内容だった。

 俺、士道、琴里から見据えられた狂三は、観念したように首を振ると、

「……ではありませんの……」

「え?」

 小さすぎて聞こえなかったらしい。まあ、隣に座っている俺ですら聞こえなかったし。

 俺がもう一度言ってくれと促すと、今度はもう少し大きな声で、

「は、恥ずかしいではありませんの……」

『……は?』

 狂三以外の三人の言葉が重なった。思考も被っているかもしれん。

 顔を赤らめ、目を逸らし、口元を手で隠しながら、顔も少し逸らす。

 いち早く復活した琴里が、さらに疑問をぶつける。

 だがそれは、俺も士道も思っていた疑問だった。

「な、何が恥ずかしいのよ?」

「その、なんと言いましょうか、」

 狂三は少し間を空けて、

「人に自分の恋の話をするのは、恥ずかしいことだとは思いませんこと?」

「あー……成程、そういう事ね」

 狂三の声を聞いて、琴里は納得したようだった。

 そう、琴里()、な。

「……なあ士道?」

「……どうした?」

「……乙女心って、難しいな?」

「……そうだな」

 男は男で、理解出来ないなりに納得することにした。

 よく分からないけど、きっとそういうものなんだろう、と。

「ん、そうね。そういうことなら、もうこれ以上は詮索しないわ。ごめんなさいね、連れて来ちゃって。戻りましょうか」

「え、いいのか?」

「いいのよ。ほら、早く行くわよ」

 士道は何か言いたそうだったが、琴里が席を立ったので、それに倣った。

 俺らも俺らで、もう終わりということなので、琴里達に付いて行くまで。

 琴里が狂三に何か話しかけている後ろで、俺と士道は顔を見合わせ、肩を竦める。

 結局、俺にも士道にも何がなんだか分からなかったが、

「あなたって、意外と純真なのね」

「あらあら、意外と、とは失礼ですわね」

「あ、気に障ったかしら?」

「ふふ、いえお気になさらず」

 ……ま、結果オーライ。目の前で狂三が笑っているなら、それで良し、だ。

 

 

 

『そしてここでボクの登場!』

 

『にゃはー、これで終わりだと思った? 終わらないんだよねーこれが』

 

『と言っても、すぐに退散するけどね』

 

『とりあえず、七海くんが現時点で誰も愛せない理由だけ話しに来たんだよ』

 

『七海くんは、死に対して敏感だ』

 

『直接的な死でなくても、殺意や、敵意といったものもこれには含まれる』

 

『その理由は、まあ、ボクだね』

 

『ボクの死を間近で体感してしまった所為で、さらに言うなら、ボクの両親もかな。その死を感じた所為で、七海くんは死に対して敏感になった』

 

『死んでいい人間なんていない、とでも言うのかな。そんな感じ』

 

『これはまあ、八舞姉妹の時や、過去でのASTとのバトルでよく現れている』

 

『そして、愛せない理由も、ここにある』

 

『要は、怖いんだろうね』

 

『また、失うかもしれない、って』

 

『なんたって、ボクと七海くんの初恋の相手は、それぞれ七海くんとボクだから』

 

『だから、怖くて、愛せない』

 

『異常なまでのASTとかへの敵愾心も、なのに、それに反する精霊達への大きな好意を持つのは異様と言うべきだし、それが混在している七海くん自身が、その人格が、異質なのかもしれないね』

 

『まあ、ヒーローでなくても、主人公にはなれるかな』

 

『とまあ、これが七海くんが誰も愛せない理由だね』

 

『長くなったね。それじゃ、じゃ~ね~』




 狂三からまだ幼さが抜け切れてない気がします。

 なんか、間違った純真、とでも言うんでしょうか。
 実際にこんな奴いねえよ! と言うのが一番しっくり来ますね。
 またの名をキャラ崩壊とも言います。これが模範解答です。

 狂三編と、その次に、日常編Ⅲは挟みません。
 時系列的には天央祭なんですが、
 ・美九が既にいる。
 ・反転体は七海で回収済み。
 ・どんなことあったか詳しく知らない
 ・絶対冗長になる
 の理由で、飛ばします。
 なので、次回からは七罪編です。作中でかるく2ヶ月ほど経っちゃいます。
 そして、いつもの七海一人称ではなく、士道中心の三人称で書こうと思います。

 前書きの通り、アンケートです。
 活動報告、もしくはメッセージにて回答お願いいたします。
 期間は……いえ、決める必要無いですかね。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 七海、七罪……紛らわしいっ! 

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