デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 もうすぐ夏休みです。入って三日後ぐらいには勉強合宿です。何でこんなことをするのか。
 テスト結果が返ってきたんですが、担任からも極端と言われました。
 現国ではクラス最高点取ったのに、英語お片方は赤点ギリギリ。何ということでしょう。

 それではどうぞ。


第58話

 夜も更け、あと半刻程で日付も変わるだろうという時間。

 結局一時間では終わらず、三時間程掛かってようやく終わった時間の譲渡。

 俺らはこれからのことを話していた。

「そうだな……、恐らくだが、今日中に俺は現在の時間軸に戻るだろう。何かやり残したことってあったっけ?」

「いえ、わたくしに訊かれても……」

「それもそうか」

 言って笑う。

 罪悪感は消えなくても、やはり満足感や達成感というのも生まれてしまうので、気は多少晴れた。

 我ながら現金なやつというか。

「ふわ……っ、……あ」

「ん、もうそんな時間になるのか」

 気が抜けたのだろうか。欠伸を漏らす狂三。

 微妙に顔を赤らめる狂三の頭をぽんぽんと撫でつつ、どうしようかと考える。

「お前、どこか旅館やホテルに泊まってるってことは……」

「いえ、基本的に寝泊まりは影の中ですわ。霊力があれば、極論お風呂に入る必要も無いですし。まあ、そんなことはいたしませんが」

 銭湯とかには基本毎日行ってるってことかな。

 どこからその金は入るのかという疑問は残るが、今はそれはスルーするとして。

 んー、と顎に手を当てて考える。

 というのも、本当、何かやり残していることがありそうで怖いんだよな。

「あ、七海さんも影の中に入れますわよ?」

「そういや、そんなこと言ってたな」

 丁度猫カフェに入る直前あたりだったかな。

 でもま、原作での過去に飛ばした時の霊力の燃費を考えれば、明日の朝まで俺がこの時間軸にいるかどうかは微妙なところだけど。

「ん、それじゃ、頼めるか?」

 ただただこの場に居るよりは、影の中の方が良いだろう。

 そう結論付けて、俺は狂三の提案に甘えることにした。

 どちらにしろ、もうすることは無いだろうしな。

「分かりましたわ。それでは、」

 そうして狂三は一歩下がり、両腕を広げて、こう言った。

「いっらしゃいませ、七海さん。――――わたくしの影の中へ」

 そして、景色は黒より深い、闇色に。

 

 とまあ、それっぽくしてみたけど、実際は普通に視線が下がっていって影の中に入っただけだ。

 狂三の仰々しい物言いも、聞いたところによると、言ってみたかっただけらしい。

 んでもって、

「……どうしてこうなった?」

 返答は、無い。

 何故ならば、この影に入って間も無く、狂三は俺を適当な場所に座らせると、自分は隣で横になり、胡坐を掻いた俺の太腿を枕代わりにして寝始めたからだ。

 俺がそれを認識する頃には早くも寝息を立てていたからな。さらにびっくりした。

『にゃはは、まあ役得とでも思っておけばいいんじゃない? それだけ懐かれた、信頼されたということで』

「……楓、またお前は」

『ん? 何だい?』

「……いや、何でもねえ」

 小さな声でそう零す。

 楓の何がそんなに楽しいのか分からないまである楽しそうな声を聞いていると、何か言う気も失せるってもんだ。

『おー、それはボクにとってお得だね』

「お前に向けて言った……考えていた訳じゃねえっての」

 にゃははー、という声を聞きつつ、重心を後ろに傾ける。

 真っ暗で遠近感どころか果てすら分からないが、取り敢えず俺のすぐ後ろは壁みたいになっているらしい。寄りかかれる。

 くーくー、と可愛らしい寝息を立てる狂三の頭に手を乗せ、俺も目を瞑る。

「……楓」

『何だい?』

「今、何時だ?」

『一一時四三分二九秒』

「…………外の状況は?」

『もうすぐASTの人達がここを見つけるんじゃないかな? 流石に、〈時喰みの城〉を長時間展開し過ぎたね。その間来なかったのはボクのお蔭な訳だし』

「そうなのか、そりゃすまなかったな」

 成程、道理で。

 さてと。もうすぐASTが来るんだって?

『うん。どうするんだい? 確かこの影って、外から攻撃を受けると壊れてしまうんだよね?』

 ああ、原作ではそうだった筈だ。

 ……さて。

 俺は、狂三の頭の上に乗せていた手を、下に回す。そして、軽く、ゆっくりと持ち上げる。

 その下の脚をどかして、もう一度下す。

 幸い痺れてはないので、静かに立ち上がる。

『いいのかい? もしかすると、これでお別れかもしれないよ?』

「ああ、分かってる。狂三も、気付いていたんだろ」

 だから、俺の脚を枕代わりにしたんだろ。寝ていても別れに気付くために。

 ほら、突然枕を抜かれたら、意外と起きてしまうもんだろ?

「じゃあな、狂三。――――また、未来で」

 っと、そういや、これだけは残しておこう。

 俺は一枚の紙片を残して、その場から消えた。

 

 距離を消すの応用で影から抜け出た俺は、周りを見渡した。

 楓の言葉が本当なら、近くにいるはずだ。

 視界を使って、俺は探す。

 敵の情報を。

「――――いた」

 俺は霊装と天使を創り出して、敵の元へ飛び出した。

 そして、先手を取りに行く。

 〈聖破毒蛇〉を二刀流の形にして、振る。

 同時に八舞姉妹の風も一緒に創り出した、暴風の斬撃だ。

「……ッ!?」

「な、どこから!?」

 その他、数多の驚愕の声を無視して、俺は敵の中心にて止まる。

 両剣の形に戻した天使を右手に提げ持ち、俺は辺りを見据えて、口を開く。

「よおAST。俺ならここにいるぜ?」

『後処理、事後処理はボクがやっておく。今は君のその、異常なまでの敵愾心を晴らすんだね』

 そして、過去にて最後の仕事が始まった。

 

 

          *           *           *

 

 

「あなた達は、もう休んでもいいのよ? 後は私達がやっておくし」

「いや、そういう、訳には、いかぬ。七海が、帰るまで、待つは、我が使命で、あるからな……」

「半分寝てるじゃないの」

「否、定。そんな、ことは……」

 こくこく、と船を漕ぎ始めている耶倶矢に、体がゆらゆらよ揺れている夕弦。

 自分は割と慣れているから良いけど、と思いつつ、そろそろこちらから休ませてあげようと決める。

 しかし、そうでなくとも数分黙っていれば寝そうな気もするが。

 実際、美九は既にソファで寝てしまっているし、その際抱き枕にされた真那も、いつの間にか意識は夢の中である。

 あとこの家の中で起きているのといえば、自分と狂三だけ。一応、耶倶矢と夕弦を入れておくべきか。士道は既に家に帰してある。

「それで、まだあなたは七海を過去に飛ばした理由を話してくれないの?」

「ええ、お引き下さいな」

 もうすぐ日付が変わる時間帯になっても、狂三は日中に訊いた質問の内の一部は答えたくないらしかった。

 だがまあ、それは予測済みなので、それ程落胆するようなことはない。

 素直に、そう、とだけ言い残して口を閉じる。

「……もうすぐ、ですわ」

「え?」

 腕を組んで狂三が質問に答えない物があることについて考えていたところ、当の狂三から声がかかった。

「もうすぐ、七海さんが戻ってきますわ」

「……それは、本当なの?」

 ええ、と頷く狂三。

 それは皆が起きている時に言ってほしかったのだが、今それを言っても皆寝ているので、意味は無い。

 起こすのも憚れるけど、放っておいていいのかという葛藤の最中、狂三が制止の言葉を発した。

「ああ、皆様方は起こさないでくださいまし。あと、ある了承が欲しいのですけれど」

「……言ってみなさい」

「外に出る許可をくださいな」

「無理ね」

 即答した。

 起こさないで欲しい理由は訊かないでおいたが、そればかりは許可出来なかった。

 なんせ、もともと自分は狂三の監視のためにここにいるのだ。その監視対象を外に出すのは、流石に無理である。

「それでは、言い方を変えてみますわ」

「?」

「――――七海さんと、デートする権利をくださいな?」

 …………。

「……はあ、その方法、誰から聞いたのよまったく」

「ふふ、宜しいですの? まあ、といっても、外に出るのはあと数十分経った頃ですけれど」

「……監視は続けるから、出るときに声を掛けなさい。分かったわね?」

「ええ、その通りに致しますわ。安心してくださいませ」




 短っ!

 よくこの作品で起きる、戦闘シーンの直前は短くなる、が、話数版に大きくなった感じですね。
 久々に現在をほんの少しだけ書いたのに3000文字。本当少ないなぁッ。

 しかし次回は戦闘回。何だかんだで一番長くなりやすいもの。
 ふむ……主人公無双でも、少し描写を細かくしてみますか。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 過去狂三が全体的に緩い……。

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