気にしないで読んでください。
運命っつーのは、変わらないのかもしれないな。
俺は、空を飛びながらそんなことを考えた。
運命・・・『命』を『運』ぶ。それは天国か、はたまた地獄か。生であり、死のこと・・・なんて捻くれた解釈ではなく。
一般的な解釈としての運命だ。偶然の産物と言い直してもいい。
なんでそんなことを思ったのかって?簡単なことだ。思い返してみろよ。耶倶矢と夕弦との出会いから、言い方は悪いが口説き方まで、原作と酷似していただろ?
だから、運命。二人が救われるってことと、救われ方は変わらないってことだ。
うん?でもそれじゃさっきのASTや、これからの二人、そして本来なら二人を助ける筈だった士道の運命とかはどうなるんだ・・・?
『そう、だから運命は変わるんだよ。あくまでもそれは、偶然の産物なんだから』
!何だ?声が・・・って、この声はもしかしなくても・・・
『やあ。久しぶりだね、東雲七海くん』
やっぱり、あの神様(自称)じゃん!
俺はすぐに辺りを見回す。突然の俺の奇行に、耶倶矢と夕弦が目を向けてくる。
その二人になんでもないと手振りだけで伝え、そしてその声を意識する。
『どう?この世界に来て良かった?能力は?満足してくれた?』
一気に訊くな。何から答えればいいかわからん。
えーと、悔しいことにこの世界に転生させてくれて良かったとも思うし、能力も満足すぎるほどに強いよ。
『そう?それは良かった。なら、話を進めよう』
何の話に?
『そりゃあ、君の能力についてだよ』
ああ、あの『情報の有無を改変する能力』のことか。
『そう。詳しい説明をさせてもらおうと思ってここに来たわけだよ』
じゃあ、とっとと始めてくれ。俺も気になる。
『一気に話させてもらうけど、その能力の基本はもうわかってるよね?』
頭の中に流れてきた分なら。
『じゃあ、その補充説明になるのかな。えっと、創りだせるのは自分がその情報を理解しているものだけ。理解さえしたなら、意識しなくても普通に創りだせるようになるよ』
ふむ。つまり自分でもよくわかんないものなんかは、創りだせないと。
『そう。そして、基本的になんでも消せるけど、生命、生物はできないから』
何でだ?
『そうでもしないと、その能力はあまりにも危険だから』
言うならば、規制であり、保険であるということか。
『保険・・・とは少し違うかもしれないけど、まあそういう解釈であってるよ』
成程。話はそれだけか?
『最後、ここからが今一番重要なんだけど』
おう?何だ何だ。・・・・うん?今?
『さっき、自分がその情報を理解していないといけないって言ったよね?』
それが?
『今―――さっきもだけど―――七海くんが理解していないものも創ったでしょ?』
?何を創ったっけ?
『わかっていなくても話を進めるけど、いわばそれはボクからのサービスなわけだ』
待て。話が見えない。つまり、
『待たないよ。そして、サービスの有効期限はそろそろ切ろうと思うんだ』
・・・あ、もしかして。
『ようやくわかったみたいだね。では、ボクはそろそろお暇させていただくから、また機会があれば』
いや。いやいやいや。待って。それじゃ、このままじゃ俺は。
『じゃ~ね~』
あれ、今の既視感が・・・
直後、俺の体を浮遊感が包み込んだ。
「の、わ・・・あ、ぁぁぁああああ!?」
「え、ちょ、七海!?」
「衝撃。七海が消えました」
「いやいや夕弦!下!落ちてる!」
そんなこと話してないで早く助けてくれよぉぉぉ!?
それすらも喋れずに、ただ落ちていく俺の体。どうすればいい!?
よし、こんな時こそ冷静になって考えろ。
足場を創る?いや、着地時の衝撃で、体が大変なことになる。クッション的なものを創る?そういえば、前の世界のテレビで車のエアバッグで腕が折れたりするとか言ってた気がする。
なんてこと考えている内に、もう地面が!
冷静になろうとしつつも、結果、終始焦りっぱなしだった俺を助けたのは、風だった。
そして、そのままゆっくりと地面へと降り立つ。
「まったく七海よ、一体何をしておる?我らの手を煩わせた代償は高いぞ?」
「安堵。いきなり落ちていったのでびっくりしました。無事でよかったです」
声につられて上を見ると、耶倶矢と夕弦が降り立つところだった。
「す、すまん。助かった」
どうやら、さっきの風は二人の力みたいだな。
「ふん。勘違いしてもらっては困るが、我らは別に善意で助けたわけではないぞ」
「引継。夕弦達はまだ助けてもらっていません」
つまり、まだ完全に信用したわけではない、とか、そんなとこなのかな。
・・・それはそれでショックだな。
「で、一体なにがあったのだ?」
「は?」
「要約。なんで落ちていったのですか?」
ああ、成程。理由の説明をしろと。
「・・・翼が消えた。理由はまあ、気にせんでいい」
「納得。そうでしたか」
ふう、理由の言及をされないでよかった。正直、めんどかった。
そこで俺は気付く。気付いてしまった。
「耶倶矢、夕弦」
「なんだ、七海」
「着替えろ」
そう、二人は霊装のままなのだ。当たり前といば当たり前だが、そろそろ人も出てくるだろうし、さすがにその格好はまずい。
「な、我らが神聖にして邪悪なるこの霊装を愚弄するか!」
「どっちだよ。じゃなくてだな・・・」
なんて説明したものか。
「その格好じゃ、人目を引きすぎるから、この世界の普通の格好になってくれってことだ」
「疑問。たとえばどんなものですか?」
「そうだな・・・」
俺は女子のファッションとかは全くわからんしな。どうしたらいいんだろう?
そこで目に付いたのはコンビ二だった。
そうだ。あそこなら。
「ちょっと待ってて」
そう言ってコンビニへと駆け出す俺。
十数秒後、俺が持ってきたのは・・・
「これを読んで、好きなものに着替えてくれ。確か、お前らは視認情報で服を変えれたよな?」
女性向けファッション雑誌が数冊。一応、宝石を創りだして、それをレジには置いといたけど・・・
「ふん。我の目に適うものがあればいいがな」
「待機。少し待っててください」
そして、十数分後。ちらほらと人の姿が見えてきたころ。
それが早いのか遅いのかわからんが、二人して雑誌を覗き込んでは、互いにこれがそれがと言い合っていたので、その割には早いのではなかろうか。
結果、二人の格好はというと。すまん。二人とも。俺が女性のファッションに疎い所為でよくわからんが、これだけは言っておきたい。
「ん、まあ、似合ってるんじゃないか?」
正直、恥ずかしい。少し目を背けてしまうのも許してくれ。
まあ、耶倶矢が、髑髏や十字架が多用された痛々しいものじゃなかったことに驚くね。持ってきた雑誌には無かったのかな。
「くかか。当たり前であろう。だが・・・」
「感謝。ありがとうございます。ですが・・・」
「「どっちが似合っておる(いますか)?」」
・・・えーっと、これはあれだな。どちらかを選べば選んだほうに怒られるという、あれ。
「どっちも似合ってるじゃ、ダメか?」
俺がそう言うと、二人して溜息をつき、
「はあ・・・まったく、優柔不断だな、七海よ」
「落胆。どうしようもないですね」
「う・・・そこまで言いますか、普通・・・」
じゃあ、どうしろってんだよ。ほかに答えがあるのなら教えていただきたいね。
俺が心の中で、愚痴っていると、
「確認。七海は着替えないのですか?」
「は?何で俺まで?」
「我らの服装に対して、その格好は目立つのではないか?」
言われて思い返せば、今の俺の服装って、学校の制服なんだよな。
「じゃあ、宿の前にどこか買い物しに行くか」
飯も兼ねて、どっかに大型ショッピングモールとかあるといいんだけど。
「承諾。わかりました。どこまでいくのですか?」
「行くとなるならば、早く行くぞ、七海よ!」
最初の神様(自称)と七海の、会話が長すぎますね。
私服の描写については、こちらの勉強不足によりできませんでした。深く反省しております。
しかし、言い訳をさせてもらいますと、二人にどんな服装が似合うのかわからないというのもありまして・・・すいません。わかっていたとしても、服の描写は結局無理です。
これから先も、私服の描写は多分ないと思いますので、読んでくださっている皆様、何卒、ご容赦ください。
これを許して、次もまた読んでいただくことを心より願います。