デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 すみません。三週間以上も開けてしまいました。申し訳ありません。

 お久しぶりです。久々の更新です。ごめんなさい。
 学校行事で校外模試だったり、土曜授業だったりとした結果、更新がこんなに遅れてしまいました。

 今回はデート回です。
 ただ、最近書いてなかった所為か、所々おかしな点があるかもしれません。
 早く感覚が戻ると良いんですけど……。

 それでは、どうぞ。


第56話

「し、死ぬかと思いましたわ……」

「いやー、悪い。でも、あれだろ? 楽しかっただろ?」

「今のわたくしの台詞を聞いていましたの?」

 霊力で空中に浮くぐらいならいつもやってそうなのに、何を怖がっているんだか。

 まあ、かく言う俺も、昔のトラウマ思い出しちまったけどな。自業自得だ。

 痛む胸を掻きつつ、俺は狂三に手を差し出した。

「? 何ですの?」

「何って、お前、腰抜かしてんじゃん」

 翼を創ると霊力を使っちゃうから、風を生み出してなるべく静かに降り立ったんだが、地面に着地した瞬間、狂三はぺたんと座り込んでしまっていたんだ。

 可愛らしく女の子座りをやってる狂三は写真でも撮っておきたくなるが、キレられそうなので自重。

「う……、ありがとうございます……」

「あいよ」

 照れたように顔を赤らめながら差し出した手を掴んで、一気に立ち上がらせる。

「その、もう少し手を握っていてもよろしいですの?」

「ん? ああ、別にいいけど」

 今まで腰抜かしていた奴の手を離したら、また座り込みそうだし。

 何故かそっと身を寄せてくる狂三に微かな疑問を覚えつつ、大方同じ理由なんだろうと思いながら、俺は今後の予定を考えた。

「とりあえず、街の中心まで行こう。そこの方が、施設なり店なり充実してるだろうし」

「わかりましたわ」

 えーと、と中心の方角を視界で確認しながら、俺らは歩き出した。

 

 ということで、街の中心まで来た訳だが。

 時間があとどれくらい残されているか分からないので、本当はもう少し急ぎたかったんだが、狂三と歩調を合わせてたら結構時間がかかった。

 いやまあ、飽きなかったし、思ったより近かったのも幸いだったかな。

 普通の服になってくれた狂三の、もうそろそろ離してもよさそうな手を極力意識しないようにしつつ、俺らは歩いていた。

 何があるか把握しきれていないので、興味深いものがあったらとりあえず寄って行こうの方向性だ。

「どうする? お前が行きたい、もしくは見たいものとかあるなら、そこを目指すが」

「いえ、これと言ってはありませんわ。七海さんにお任せします。それに、こうして歩いているだけでも、わたくしは楽しいですもの」

 お、おお、面と向かって言われると恥ずかしいな。

 照れ隠しに顔を背けつつ、それじゃあ、と切り出す。

「……お前の服でも見に行ってみるか?」

 

 こういう店をブティックとか言うんだっけ。詳しくは知らん。

 街の商店街らしき通りに並ぶ店舗の一つの前に、俺らの姿はあった。

「よし、とりあえず入ってみようぜ」

 流石に下着類とかは売ってないだろうし。

 狂三もいるから、肩身の狭い思いはしなくて済むだろ。

 そして、入り口の扉を開けた俺が最初に思ったのは、意外と小さい、だった。

 へー、初めてこんな所来たけど、こんなものなのかね。

「わぁ……っ」

「―――――ッ!?」

 今隣から、有り得ない声がしたぞ!?

 なんだ、『わぁ』って、狂三か。狂三なのか今の声!

 驚いて連続瞬きをしている俺を余所に、狂三はやや興奮気味に、俺に顔を向けた。

「七海さんっ!」

「お、おうっ」

「ここから、自由に選んでみてもいいんですの……?」

「ま、まあ、気に入ったのがあれば、いくつか買ってやるつもりだが……」

「本当ですのっ!?」

 近い近い。顔が。主に顔が近い。

 空いている方の手で離れるよう示すと、はっ、となった狂三は静々と身を戻した。

 あれかな。やはり女の子はこんな所に憧れるものなのかな。

 …………。

 ――――常にASTに命を狙われていた身である狂三は、普通よりも、こういう所への憧れが強かったのかもしれないな。

 俺は目を輝かせている狂三の頭に、ぽん、と手を置いた。

「? どうかしましたの?」

「いや、何でも」

 なでなでなで……。

 そうして、猫のように目を細める狂三を見ていたんだが、俺は気付いてしまった。

 ――――周囲の視線の生暖かさに。

「……よし、狂三、好きなものを選べ」

「ん、分かりましたわ」

 そう言って、狂三は歩き出した。

 未だ手を離してくれないのは何故だか知らないが、まあいいや。

 楽しそうに、色んな服や装飾品を見て回る狂三。

 そんな笑顔が見られるなら、ここを選んだ甲斐もあったってもんだよ。

「七海さん七海さん」

「……あ、悪い。どうした?」

 そんな風に妙に悟ってたら、狂三の呼びかけに反応が遅れてしまった。危ない危ない。

「七海さんでしたら、どういうものがわたくしに似合うとお思いですの? 教えてくださいな」

「えーと……」

 そう言われると困るなあ……。

 つまりそれは、自分から見た相手、をそのまま表しちまうから、結構慎重にならねえと。

 狂三のことを考えていた所為で、朧気になってしまっている記憶を頼りに、似合いそうな物を探していく。

「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」

 うーん、と悩んでいると、ここの店員さんが声をかけてきた。

 よくある、売り込みたい店員、ではなさそうなので、そこまで警戒はしなくてもいいかな。

「いえ、こいつに似合いそうなのはどれかなー、と」

「彼女さんに似合いそうな服ですね。よろしければ――――」

 店員さんのその台詞に、慌てて待ったをかける。

「あ、その、彼女ではないですよ?」

「え? そうなんですか?」

 素で驚いている店員さんの視線の先には、繋がれた俺と狂三の手。

 って、いつの間にか手の握り方が変わってるっ!?

 あれだ。指と指を絡ませるやつ。『恋人つなぎ』とかいうやつ。

 つか、気が付かない俺って……。

「あの、狂三、そろそろ手を離してくれてもいいんじゃねえか?」

「え? どうしてですの?」

 ……素で返されたんだけどどうしよう。

「ほら、その、な? 周囲の視線とか、そういうのだよ」

「……つまり、七海さんは手を離してほしいんですのね?」

「まあ、そのまま言えば、その通りだが」

「それでは――――」

 すると狂三は、ずっと繋ぎっぱなしだった手を離してくれた。

 ふう、これで何とか大丈夫。

 と、思ってました。

「……狂三」

「はい?」

「悪化してるよな?」

 くすくすと笑う狂三に、俺は溜め息を返すしか出来なかった。

 一度は手を離した狂三。だが、次の瞬間には、今度は腕を組まれていた。

 確かにね? 手は繋いでないけどね? 何か違うよね?

「仲が良いんですね」

「あー、そういうことにしといてください」

 否定する気も失せたので、適当に流す。

 そうして、やれやれと頭を振っていると、

「……?」

 ふと、ピンとくる服を見つけた。

 ただ、あまりよく見えなかったので、狂三と店員さんを連れて、俺はその場所へと向かう。

「なあ狂三、こういうのも着てみたらどうだ?」

 そうして俺が手にするのは、白基調の甘ロリドレス。

 原作で読んだ狂三の黒歴史の一つだな。

 今の時間軸がそれより前である以上、黒歴史化することはないと思うが、ま、見てみたいだけだな。

「ふむ、たまにはそういうのも面白そうですわね」

 少々お待ちくださいな、という言葉とを残して、狂三は店員さんも連れて試着室へと向かった。

 とりあえず、腕が離れてくれたのは嬉しい誤算。

 いや、別に腕を組みたくないとかではねえけどさ。

 ……暇だし、他にも探してみるか。

 そうだな、さっきの服に合いそうな小物とかでもいいかな。

 そうして色々見て回り、手に取ってみた衣装や小物をそろそろ両手で持った方が楽な気がしてきた頃に、狂三たちは戻ってきた。

「ふふ、どうですの? 七海さん」

「おー、狂三って黒とかのイメージがあったんだが、やっぱりこういうのも似合うな」

 原作に酷似した、フリルやレース満載の白基調ロリータドレス。

 狂三の私服って、基本黒基本のモノトーンだから、大分新鮮。

「そうだ、これとかも持ってみてくれ」

 ほい、と原作で読んだ狂三と同じような小物を手渡す。

 狂三も何だかんだで楽しんでいるのか、くるくる回っていたのを止め、素直に受け取ってくれた。

「こうですの?」

 特に何も言ってないんだが、狂三はポーズを決め始めた。

「とってもお似合いですよ、お客様」

「あら、嬉しいことを言ってくれるんですのね」

 確かに、お世辞でも何でもなく、今の狂三は可愛いと断言できる。

 が……、

「思うんだが、その格好で堂々と街中を歩く気にはなれねえな……」

 いや、俺が着るという意味ではないぞ?

「わたくしは構いませんわよ?」

「それはそれで俺に対する精神ダメージがでかいから止めてくれ」

 傍から見れば、コスプレか何かと思われてもおかしくない格好の美少女を侍らせてる少年の図を思い浮かべてみたが、中々に目立つ。悪い意味で。

 確かに俺の見た目は女っぽいが、絶対に間違われる、という訳でもないし。

「ほら、こんなのも着てみてくれ。見てみたい」

 狂三が試着している間に選んでみた服を、一着は狂三に渡し、残りは店員さんに頼む。

「七海さんがそう言うのなら、着替えないといけませんわね」

 そう言うと狂三は、今にもスキップしそうな足取りで、試着室へと向かっていった。

 つか、選んでて思ったんだが、この店、結構ファンシーなもの多いな?

 

「本当に良かったんですの? それなりに高かったですわよね?」

「良いって良いって。俺はお前が楽しめただけで十分」

 ひらひらと手を振って答える。

 あれから結局、3着の服と、その他小物類を色々買った結果、割と高額の所持金が飛んでいった。

 先のブティックを出て、腕を組まれるのは既に諦め、俺たちは次の目的地を目指した。

 といっても、明確な場所が決まっている訳ではないので、やっぱり、気になったら寄っていこうの方針だ。

 肩にかけた袋の紐を直しながら、俺はぼやく。

「んー、少し腹が減ってきたな……」

 そういや、今の時間軸(こっち)に来てから、ジュースを二本飲んだだけか。

 その後にASTとの戦闘もあったし、腹減るのは当たり前だな。

 でも、がっつり食事を摂りたいという程でもなく……、うーん………。

「なあ狂三」

「何ですの?」

「ちょっと、そこで何か食べようぜ?」

 俺が指差した先の公園には、屋台……いや、バンとか言ったっけ。スイーツ系統の物を売っているバンがあった。

 メインはクレープ、ソフトクリームも売ってますよ、みたいな感じだな。

「そうですわね……丁度小腹も空いてきたことですし、よろしいんではないですの?」

「よし、じゃー決まり。行こうか」

 腕を組んだまま、俺らはそのバンの前へ移動した。

 見れば、結構豊富な種類のクレープがあるようだった。ソフトクリームの方は数種類しか無いが、まあ、そんなものだろう。

 いらっしゃいませ、という挨拶に愛想笑いで返しつつ、俺は立掛けられてあるメニューの書かれた看板に視線を移した。

「……決まったか?」

「……バナナとチョコレートシロップと生クリームか、苺とクリーム」

「は?」

 何だって?

「バナナとチョコレートシロップと生クリームか、苺とクリーム。七海さんなら、どちらを選びますの?」

 おう、やけに真剣に睨んでるなと思えば、そんなことか。

 ……甘いもの、好きなのかな?

「あー、じゃあ、俺がバナナとチョコとのやつ買うから、」

「生クリームをお忘れですわ」

「…………」

 言い直そう。

「俺がバナナとチョコと生クリームの方買うから、お前は苺とクリームのやつ頼め。それで半々だ。流石に二個は厳しいだろ?」

「ん、そうですわね。それがいいですわ」

 よし、じゃあ決まり。

「えーと、すみませーん」

「大丈夫だよ、聞こえていたから」

「え、あ、はい。じゃあ、お願いします」

 はーい、という店員のお姉さんの言葉を聞きつつ、確かにこんな目の前だと聞かれるものかと考える。

 まあ、気さくな店員さんで良かったなー、って位か。

 狂三と特に意味の無い話をしていると、程なくして頼んでいた分のクレープが出来上がった。

「はい、お待ちどうさま」

「ありがとうございま……?」

「ふふ、私からのサービス。彼女さんと一緒に食べてね」

 ウインクと共に渡されたのは、()()のクレープ。

 うん、あれだね。気さく過ぎるね、あの店員さん。

 というか、やっぱり俺らは恋人のように見えるのか……。悪い気はしねえけど。

「良かったですわね」

「そうだな」

 どれから食べる? と訊いて、苺とクリームの方を渡しながら、近くのベンチに俺らは腰掛けた。

 俺は、溶けそうだからという理由でバニラアイスとかが入っている、サービスされた分のクレープを食べながら、もきゅもきゅとでも言うべき様子でクレープを食べる狂三を見ていた。

「まあっ、美味しいですわ……!」

「お、そりゃ良かった。なら、こっちも食うか?」

 今しがた食べていた、2/3程が残ったアイス入りクレープを示す。

「良いんですの?」

「おう。代わりに、そっちのも数口くれ」

 両者が納得してところで、それぞれが食べていたものを交換する。

 はむ、と俺に渡ってきた分のクレープを齧ってから、俺は気付いた。

「……これ、間接キスじゃね?」

「っ! ……ッ!? ん、ん!げほっ、ごほっ!」

「お、おうおう、大丈夫か?」

 慌てて二つのクレープを片手に移して、狂三の背中をさすってやる。

 胸元を苦しげに押さえていた狂三も、少しして平静を取り戻した。

「い、いきなり、何を言い出すんですの……」

「悪い。その、悪いことしちまったかなと思って」

「? どうして、七海さんが?」

「いや、お前がそういうのを気にするなら、俺なんかとで悪いなー、と」

 ん? でも、俺が言った後にむせたってことは、既にクレープを口にしていたということで、つまり言うまで意識していなかった?

 ……男としてラッキーなんだろうが、それと同時に、男として意識されていないってことなのかなぁ。

「あー、どうする? 一口ずつしか齧ってないし、戻すか? あんまり関係無いだろうけど」

 口をつけてしまったってのは変わらないし。

 俺がそう提案すると、狂三は少し考えた後、小さく首を横に振った。

「いえ、別にこのままでいいですわ。意識しなければいいんですもの。そう、これは自分の食べかけであり、決して間接キスとかではないのですわ」

「……まあ、お前がそう言うのなら良いけどよ」

 顔を真っ赤にして言う台詞じゃねえよなあ。

 という言葉は口にせず。

 気まずさの為か、それ以降会話が途切れてしまった空間に、咀嚼音だけが小さく聞こえていた。

 それでも、美味しいものは美味しいのか、狂三の方が早く食べ終えたので、余った最後のクレープを狂三の目の前に持っていく。

「食うか?」

「……半分こにしましょう」

 その提案に則って、今度は普通に半分に分けて食べた。

 

 ……食い終わった後、口の横にクリーム付けている狂三という貴重な光景が見られたぜ。




 狂三が何かとあざといです。

 今回の話の中で、ブティックなるものが出てきましたが、自分は一度も行ったことがありませんので、勘で書いてます。
 なので、本当はこんな感じと言われても、そうだったんですかとなってしまうだけです。
 俄かですらない適当描写。
 実際にああいう服が置いてある店があるのかは知りません。

 次の話でややシリアス気味にするつもりです。
 今度はもっと早く更新します!

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 主人公、所持金いくら持っていたんでしょう?

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