デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 ということで、狂三編第3話。中々話が進まない今日この頃。
 どうにかして話を進めたいのに、書きたい内容はもっと後、しかも殆ど1、2話に詰め込めそうなので、それまで間をもたせないといけないという。

 ど、どうにか頑張りますっ。

 それでは、どうぞ。


第53話

 とは言ったものの、これからどうすべきか。

 気分だけで道を選びながら、俺達はまたしてもぶらぶらと歩き回っていた。

「今度はどちらに向かわれているんですの?」

「特に決めてない」

 え゛、という絶句の声を聞きながら、苦笑いを返す。

「ほらさ、今から俺が何をすべきかが定まってないし、何より、この時間軸における俺の寝泊りする場所すら無い訳じゃん? だから、どうしようかなー、て」

 何というか、この世界に来たばかりのことを思い出すな。シチュ的に。

 やっぱ、宿泊施設を探すべきか?

「……七海さんがお泊りになられる場所なら、何とかなるかもしれませんわ」

「そうなの?」

 どこだろう?

 いや、普通に狂三が寝泊りしている場所か。

「わたくしの影の中ですわ」

 ……は?

 いやいや待て。影の中だって?

「マジ?」

 確かにお前の影の中は、ある種における別空間みたいになってた気がするけども。

「心配なさらずとも、取って食べたりはしませんわよ」

「いや、そういう心配は……してないと言えば嘘にはなるが」

 言われて気付いたその可能性。

 まあ、俺が何か言う前に狂三本人がそう言ったんだから、信じることにしよう。

 あれだな。やっぱり俺は、大概甘いな。

「……その件については後で話すとして、ホント、これからのことだよなあ」

 手っ取り早く事を進めたいのだけど、あまり焦っても仕方ないし。

 というか、マジで現在の方の狂三から連絡が来ないと、あとどの位この時間軸にいられるのかが分からない。

「…………あ」

 そんな風に話していた時、ふと見つけた看板。

 急に立ち止まってそれを見上げた俺を、狂三は訝しげな目で見つめてきた。

「どうかなされましたの?」

「あー、いや……」

 どうしたものか。

 ……ま、どうせだし、入って楽しむとするか。

「えと、ここに入ってみないか?」

 そうして俺が指差す看板には、

「『キャッツ&カフェ』……? 何ですの、ここは?」

 所謂、猫カフェ、って所だ。

 

 カラン、という鈴のような音と共に、俺らは店内へと入った。

 同時に、静かさと、微かな鳴き声を感じ取れるようになった。

 案内に来た店の人に促されて、俺と狂三は二人がけのテーブルへと連れてこられた。

 この店は、猫と触れ合えるスペースと飲食スペースを分けてはいないようで、他のお客さんを見るに、ただ猫と触れ合うだけも可能なようだ。

 ソフトドリンクサービスもあったので、それを利用し、二人分のお茶を取り敢えず持ってくる。

「へー、初めてこういう店に入ったけど……良いもんだな」

 早速足元にやってきた子猫(推定)を膝の上に移し、首元をうりうりと撫でてやる。

 気持ち良さそうに目を細めるその姿は、何時しかの狂三を彷彿とさせる。

「……狂三?」

 随分と狂三が静かなので、不思議に思って視線を移すと、

「じーーーーーーーーーー」

「うぉっ」

 軽く引いた。

 瞬き一つせず、俺の膝元の猫を凝視していたのだ。

 いや、これはこれでおかしいか?

 狂三なら、こういう動物達を見ると、真っ先に飛び付きそうなんだけど。あくまでも、俺の主観として。

「……撫でるか?」

 背中から抱えるようにして、その子猫を狂三の方へ向けてみる。

「い、いいんですのっ?」

「お、おう……ここはそういう場所だし……」

 何故か俺の了承を求めた狂三は、恐る恐る手を伸ばしていった。

 しかし……、

 ――――――ぐるるる。

「「……え?」」

 どちらかの腹の虫の音、では勿論無く。

 それは、俺が抱いている子猫から発せられた声だった。

 その声は紛れも無く、威嚇。敵対心を表す鳴き声だ。

「お、おぉ? 別に怖くないぞ?」

 慌てて膝の上に戻しつつ、額の辺りを撫でてみる。

 すると、さっきの声が嘘のように、先程と同じような表情になった。

 それを確認して、ゆーっくり狂三の顔を見てみると……、

「…………(ずーん)」

 お、落ち込んどる……!

 どうしよう、余程ショックだったのか、物凄い落ち込んでるんだけど!

「あー、狂三?」

「……なんですの?」

 暗いわっ!

 なんて言える訳も無く。

「その、ちょっと待って」

 俺はそう言うと、膝上の子猫を落とさないように気をつけながら、座席を動かした。

 それは丁度、真正面にいた位置から、狂三のすぐ隣へ。

 近付いたことで、またしても威嚇もどきをし始めた子猫を何とか宥めながら、俺は狂三に話しかける。

「ほら、これなら俺もいるし、触れるんじゃないか?」

「あ、ありがとうございますですわ……」

 俺も一緒に撫でてるから、噛み付いたり引っ掻いたりするようなことは無いと思うが、大丈夫だよな?

 というか、何でこの猫はそこまで警戒するのか。疑問だ。

 そう思いつつ、狂三が伸ばしてきた手の行く末を見守ることにする。

 触る直前で一瞬止まったが、恐る恐る触れると……、

「ふ、ぁぁぁぁ……っ」

 恍惚、という表情をしながら、狂三は俺の膝の上の子猫を撫で始めた。

 最初は警戒していたこの猫も、撫でられる内に緊張を解いていく。

「な、なんて可愛らしいんですの……っ。七海さん、本当はこの子猫、人形か何かではありませんの……?」

「本物だっつーの」

 苦笑いしながら、その猫を狂三の膝に移す。

「ですわよね? 嗚呼、もふもふですわ。くりくりしていますわ。もう食べてしまいたい……」

「…………」

 なんですかこのかわいーせーぶつは。

 一心不乱と一生懸命の間みたいな感じで猫を撫でる狂三の姿は、大変可愛らしい。

 あれだな。写真撮ろうかな。

「ふふ、ここが気持ちいんですのにゃ? こっちはどうですかにゃ? にゃーにゃー?」

 ……●REC。

 夢中になりすぎて謎の猫言語を発し始めた狂三を、俺は取り出した携帯で録画し始める。

 じー。

「―――――はっ!?」

 あ、戻った。

「お帰り、狂三」

「ただいまですわ……ではなく! い、今、わたくし、どんな感じになってましたの!?」

『―――――どうですかにゃ? にゃーにゃー?』

 俺は録画していた分の映像を、画面を狂三に見せるようにしながら流す。

 それを見た狂三は、一気に顔を紅くして、

「消してくださいなっ! こんな痴態……一生の恥ですわ!」

「しーっ。店内ではお静かに」

 俺の言葉に、はっ、となった狂三だが、すぐに気を取り直して、

「か、貸してくださいなっ」

「あ」

 携帯を奪われてしまった。

 油断していたら、思ったよりも俊敏な動きで、狂三は俺の手から携帯を引っ手繰ってしまった。

 あーあ、という感想を思いつつ、俺は大声にすっかり萎縮してしまった猫を撫でる。

 まあ、奪われたと言っても、既に保存済みだし、咄嗟に電源を切ったしということなので。

 ちらりと、狂三を見やる。

「う、う~……」

 俺の携帯と睨めっこしながら、狂三は何か唸っていた。

 いや、電源位は付けられるだろ。

「な、七海さん……」

「何だ?」

「これ、どうやって扱うんですの……?」

 肩透かしというか、ずるっ、っていう感覚というか。

 微妙に涙目の狂三も珍しいなと思いつつ、ああそうかと、納得する自分もいることに俺は気付いた。

 そうか。携帯と言っても、スマホが普及し始めたのはそれ程前では無いから、過去の狂三が使い方を知らないのも無理は無い……のか?

 単に、スマホが普及し始めた後でも、狂三はそれを持っていなかったから、操作方法を知らないだけ?

 ――――ここからは、あくまでも推測だが。

 恐らく、過去(いま)は、現在から見て少なくとも七年以上前。黒歴史が発動していないから、五、六、七年前では無いのだろう。

 となると、ASTがあの時やってこなかったのは、まだ精霊についての見解、及び精霊に対抗する為の技術がまだ発達していない、ってことなんだろう。

 さらに、五年以上前ならば、琴里もまだ精霊になっていない時期だ。

 そして、狂三についての、原作との相違点。

 

 ――――『殺した数は数百人、多くても四桁はいかねーです』

 

 俺の時間感覚でいう数ヶ月前の、真那のそんな台詞が思い起こされる。

 俺は、未だこちらを上目遣い気味に見上げる狂三を見返す。

 

 ……関係無い。

 

 たとえ何年前だろうが、狂三がどんなことをやっていようが、俺のやることは変わらない。

 ただ、救う。それだけ。

 まずは、操作方法を教えてやるか。

「えーとだな、まず電源を付けるところからか……?」

 ま、言われたとおり動画を消しても、予めバックアップは取るがな!

 

 

           *           *           *           

 

「〈ナイトメア〉ッ!!」

 一度七海達の家のリビングにやってきた琴里達一行を迎えたのは、そんな真那の怒りの声だった。

義兄(にー)様に、何をしたんでいやがりますかッ!? どこにやったでいやがるんですかッ!?」

「あらあらあら」

「少しは落ち着きなさい、真那」

 狂三も胸倉を掴んで詰め寄る真那を止めたのは、琴里だった。

 身長差の所為で、胸倉を掴むという寄りは、胸元を持つと言うべき体勢だった真那が、琴里の声で正気に戻る。

「琴里さん……ですが、こいつはっ」

「それを含めて今から話すわ。美九はいるの?」

「え、はい……そこのソファで優雅に紅茶を飲んでいやがりますが……」

 確かに、見れば美九の姿があった。

 やけに落ち着いているなとは思ったが、真那がいるにしては変に落ち着いていたので、やっぱりそんなことは無いかもしれない。

「耶倶矢さんと夕弦さんは、〈ナイトメア〉をどうも思わないんでやがりますか?」

 琴里と狂三の後ろにいた二人に、真那は問いかける。

「ふ……そう短絡的になるでない、真那よ。今は狂三がどうよりも、七海についてその思いを馳せるべきではないか?」

「む……」

「静穏。七海は大丈夫そうなので、琴里の話を聞いて上げましょう」

 本来ならば一番感情を爆発させそうな二人にこう言われては、真那も素直に引き下がる。

 その一方では、琴里が美九に話しかけていた。

「今、大丈夫かしら? 美九」

「あ、琴里さん、こんにちはー。大丈夫って、何がですかー?」

「……随分と、落ち着いているのね」

 感心したように、琴里はそう漏らした。

 それを聞いた美九は、えへへー、と笑う。

「だって、だーりんのことですし、また誰かに、おそらく狂三さんに、その手を差し伸べにいったんですよね? でしたら、私が心配することなんて、何も無いじゃないですかー」

 強い、と琴里は思った。

 令音に頼んで、あの場にいなかった人達に軽い事情説明のメールをしておいてとは頼んでいたが、真那はやはり激昂したし、最初は、今は大人しい八舞姉妹も怒りを露にしたというのに、だ。

 美九は、信頼からか、何の曇りも無く、心配無い、と言ってのける。

「これが、愛の力、ってやつなのかしらね」

「? 何か言いましたかー?」

 何でもないわ、と返しつつ、柄にも無い思考を振り払う。

「さて、取り敢えずあなた達に、今回の事情説明を始めるわね――――」

 琴里はソファに座りながら、あの場にいなかった二人を見ながら口を開いた。




 狂三のこんな姿を書きたかっただけです。はい。

 なので、直後の微妙なシリアス化は気にしないでください。

 ほんの少しだけ(言葉通り)、真那と八舞姉妹を書けました。
 ……真那だけでも、過去に送り飛ばそうかな。
 ほら、八舞姉妹や美九、士道の霊力を使って、どうにか一人分だけでも飛ばせるようになった、的な?
 ……これ、書くとしたらネタバレっぽくなってますよね。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 狂三編がどれだけ続くは、神のみぞ知るというやつです。

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