デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 狂三編突入。だけどプロローグなのですっごい短い。びっくり。

 ということで、長らくお待たせいたしましてすみません、ようやく狂三編が始まりました。
 この話はどの位続くのかは自分でも分かりませんが、どうか気長に付き合っていただけるのを願うばかりです。

 それでは、どうぞ。


狂三編
第50話(やっとこさのプロローグ)


 八月半ば。夏休みも大半が過ぎ去った。

 修学旅行から帰ってきた日の夜の、狂三の謎の言動の真意は分からないまま、一ヶ月が過ぎようとしている。

 俺は七月中に宿題を終わらせるタイプの人間なので、よく五河家にお邪魔して、皆してゲームで盛り上がったりお菓子を食べたりして過ごしていた。

 そんなある日のことだった。

「――――で、どうかしたのか、狂三?」

 狂三に言われて待機していた、名も知らない公園。その中で俺は、狂三に訊ねる。

「ええ、少し」

 今この場所には、俺と狂三しかいない。どうやら、他の奴らには狂三自身が二人きりにして欲しいと言ったらしい。

 たったそれだけの言葉であいつらが素直に引き下がるとは思わないが、結果こうして二人きりなんだから、他にも何かあったんだろう。

「ねえ七海さん」

「?」

 真面目な顔で俺の名を呼ぶ狂三に、俺は素朴な疑問を覚えた。

 どうかしたのだろうか。

「あの日……七月二十日の夜のこと、覚えていますの?」

「あ、ああ、覚えている」

 むしろあんな日のことを忘れれる方が凄いと思うが……。

「その時、わたくし、言いましたわよね? わたくしが助けを求めたとき、壊れかけた時、手を差し伸べてくれますの、と」

「ああ。だから俺は、当然、と答えただろ」

「……七海さん」

 あの時を思い出して顔が赤くなっているのを自覚しつつ、俺は首を傾げる。

 そんな俺を狂三は、何故か申し訳無さそうに見て、

「――――ごめんなさい」

「おいおい、いきなりどうした? 俺に謝らないといけないことでもしたのかよ」

 俺は笑い飛ばす。

 我ながら甘いとは思うが、余程のことじゃない限り、俺がこいつらに怒ることはまず無い。

 それなのに謝罪の言を述べてくる狂三が、おかしかったんだ。

 だが、すぐに思考も切り替わる。

「…………おい、どうした?」

 間を置いて、それでも動きが無いのを見て、俺は問いかける。

 ――――狂三は、その背に、自身の二倍はあろうかという時計を顕現させて、服装も、赤と黒のゴシック調のドレスへと変わっていったからだ。

 〈刻々帝(ザフキエル)〉に、〈神威霊装・三番(エロヒム)〉。狂三の、強大な力を持つ天使と、霊装。

 かちゃり、という音と共に、銃口が額に当てられる。

 狂三が、対象者にその能力を使う時のポーズだった。

「とりあえず、理由を聞こうか」

「…………」

 狂三は無言だった。

 ただただ、感情の見えない顔で、こちらを見つめるだけだった。

「…………」

 だから俺も、無言を返す。

 当てられた銃口が、微かに震えているのを感じたんだ。

 恐怖か、葛藤か。

 理由は分からないが、無意味ということではないだろう。

 だから、待つ。

「――――――――」

 ウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ―――――――

 ようやく口を開いた狂三の声と、遅まきながら鳴り始めた空間震警報が、重なる。

 しかし、銃口を当てられる程の間近にいる俺は、狂三の声が聞き取れた。

 だから、俺は。

「――――分かった」

 そして、俺の視界は捻じ曲がる。

 

 〈フラクシナス〉艦橋内は、騒然としていた。

 なんせ、急に狂三が、自身の精霊としての力を顕現させたのだ。そりゃ慌しくなる。

「! 司令!」

「どうしたの?」

「これを」

 短い問答の後に送られてきた映像には、狂三と七海の姿が映っていた。

 ただし、狂三の手には銃が、そしてその銃口は七海の額へと向けられていたが。

「おい、これ……」

「まだ何とも言えないわ。せめて、音声が聞き取れれば……!」

「おそらく、ナナの能力だろうね」

 そう、あの時七海は、周囲に会話が漏れないように能力を使っていた。無意味な雑音(ノイズ)をある一定以上の空間内に生み出し、二人の会話が聞かれないようにしていたのだ。

 だが、それは人間には聞こえない。

 機械には聞き取れて、だが人間の可聴域からは外れた音を発生させていたからだ。

「令音、何とか雑音は取り除けそうかしら?」

「……現状、なんとも言えないね。直接キャッチした音で、なおかつナナの能力だ。創り出す、という使用方法だろうが、どんな付加情報があるかも分からない以上、難しい」

 そう、と琴里は特に顔色を変えるでもなく聞いた。じっ、と映像が進むのを待つ。

 その場に居合わせている士道も、せめて自分に気付けることはないかと、注視する。

 すると、

『――――!?』

 突如、七海が消えた。

 ある一点を基準にして渦巻き状に捻じれながら、ものの数瞬でその場からいなくなったのだ。

「狂三が、引金を引いたのか……」

 呟く士道。

 察するに天使の能力を使ったのだろうが、どんな効力かまでは分からない。分かるのは、直前に何か一言二言、会話があったことぐらいだ。

 ほぼ同時に鳴り出した空間震警報も、程なくして止んだ。

「……とりあえず、八舞姉妹を現場に向かわせるわ。あの娘達なら、ASTが到着する前に退散することが出来るでしょう」

「ん、了解した。私から連絡を入れよう。少し席を外すよ」

 言って司令室の外へと出ていく令音を何となしに見やりながら、士道も琴里に声をかける。

「なあ、俺に何か出来ることはあるか?」

「そうね……、狂三からの事情聴取と、他の娘達への説明を手伝ってちょうだい」

「おう、分かった」

「それじゃあ、後は令音に任せておくわね。私はちょっと狂三に直接会いに行ってくるわ。ほら士道、行くわよ」

 さっさと令音の場所へと向かう琴里の背を追いながら、士道は考える。

 先程の映像、自分の見間違いでなければ。

「あ、う、えー……あ、う、い、え、か? ……なんて言ったんだ?」

 狂三の唇の動きで推測した母音を口にしてみる。

 考えるも、いまいち分からない。

 いつの間にか止まっていた足を動かして、琴里を追いかけた。




 しかし、流石に急展開&短すぎ、ですかね……。

 前半部分で急展開にしすぎたようです。反省です。猛省です。
 まあ、次回からはもう少し、ちゃんとした『ストーリー』になるよう精進いたしますので、生暖かい眼で見守ってやってください。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 今回も真那の出番は少なそうな予感……ッ!

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