デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 やっとちゃんとしたヒロインとの会話に入りました。
 なにか不備や疑問がありましたら、ご指摘おねがいします。


第4話

 二人は、俺の前に降り立つと少し興奮気味に話しかけてきた。

「貴様、やりおるではないか。名は何と申す?」

「え?いや、東雲七海って、大分前に言ったんだけど・・・」

 うん。鬼ごっこ始める前に自己紹介しましたよね?聞いてなかったんかい。

「驚愕。すごいです。さっきのは一体なんなのですか?」

 今度は夕弦のほうだ。

 なんなのかって訊かれたら、それはそれで答えにくいな・・・

「まあ、俺の能力だ。簡潔にいえば」

「確認。その翼もですか?」

 翼?あ、まだ出したまんまだったな。両剣も。こっちは消しておこう。

 ・・・よし消えた。やっぱ、自分で創り出したものは簡単なんだなー。そして、二人の驚いている顔が可愛い。

 ・・・気にしないでくれ。

「さて、耶倶矢に、夕弦」

 気を取り直して。今はチャンスだ。

「む?なんだ?七海よ」

「質問。なんですか?」

 これがうまくいけば、さっきの『勝負』俺の勝ちなんだけど、成功するかな?

「ちょっと手を出してくれ」

 俺がそう言うと、少し疑問符を顔に浮かべながらも、耶倶矢が右手を、夕弦が左手を差し出してきた。

「失礼」

 先に断りをいれてから、俺は、彼女たちの手をそれぞれ掴む。

「おい、七海よ。一体我らに何をするつもりか?」

「いやー、ちょっと逃げられなくしてやろうかと」

「?」

 耶倶矢の質問に適当に答えながら、俺はイメージする。

 こんど創り出すのは、そうだな、鎖といこう。

 イメージが完了すると同時に、俺の手の辺りから、掴んでいたそれぞれ二人の手へと、鎖が巻かれる。俺の手と二人の手が、鎖で繋がれた状態になったわけだ。

 よし、作戦成功。これでもう逃げられない。

「懐疑。・・・なんですか、これは?」

 夕弦が巻かれた腕を上げながら訊ねる。巻かれてるから、俺の手も一緒に上がる。

「よし、二人とも、今から言うことをよく聞いてくれ。なに、大した話じゃない」

 俺は、それに答えず、話題の提示に試みる。乗ってきてくれるといいが。

 うん、何か言われる前に話しちゃえ。

「1つ。まだ俺らの『勝負』は終わってない」

「何を今更。当たり前ではないか」

 だよな、耶倶矢。まだ決着はついてないもんな。

「2つ。一時休戦と俺は言ったが、もう既に、再開している」

「疑問。しかし一度も、今から再開する、などとは言っていません」

 そう。今までの会話にそんな旨を伝える言葉はなかった。なぜなら、まずタイミングが合わなかったのもあるが、俺がそんな話を持ち込まなかったからだ。

「その通り。だけど、言う必要がないなら、言わないのは普通じゃないか」

「質問。どういうことですか?」

 簡単な話さ。思い返してみろよ。

「俺は、『あいつらを倒してくる』って言ったんだ。つまり、倒したら、休戦は終了って意味なんだぜ?」

「思考。・・・確かに、そうかもしれませんが」

「それは些か、暴論じみておるぞ」

 耶倶矢の言うとおり、これは、正論ではない。あくまで、反論がしにくいってだけの暴論だろう。

 だけどな、反論ができなければ、それは正しいってことなんだよな。

「そうかもしれないな」

「ならば・・・!」

「でも、『勝負』が再開してるのは変わらないんだよ、これが」

 そう、これを暴論だと認めたところで、反論がない以上、俺の言ったこと、つまり、勝負は再開したことになんら変わりはない。

「そして、最後。4つ目。勝負内容は『鬼ごっこ』。鬼が、つまり俺が逃げているお前らを捕まえたら勝ちという内容だった。そうだろ?」

「首肯。その通りです」

「これまで俺が言ったことの結論はつまり」

 俺は、そこで一旦言葉を区切り、二人の顔を改めて見回す。

「―――俺の、勝ちだ」

 流石にこの結論に思うことはあるのか、すぐに二人が反論してくる。

「だが、我らは勝負の再開を認めてはおらんぞ!」

「そりゃな。認めてもらう必要ないし」

「反論。勝負はまだ、終わってません」

「お前らの手を見ても、同じことが言えるか?」

 そう言うと、二人は目線を自分の手に向ける。

 そこには、鎖で逃げられなく―――俺の手によって、捕まえられた自身の手があるのみだ。

「な?俺の勝ち」

 うーん・・・感じ悪いな、コレ。殆ど騙したも同然だし。

「・・・致し方あるまい。ここは我らの敗北を認めてやらんでもない」

「同意。そうですね。素直に手を出した夕弦たちも夕弦たちですし」

 お?意外と、すんなり引き下がったくれたな。

「しかし!」

 おう?なんだ今度は?

「次はないからな、七海!」

「宣言。次は夕弦たちが勝ちます」

 空いたほうの手で、ビッと俺を指差す二人。その動きはまるで間に鏡でもあるかのようにピッタリだった。

「ああ。いつでも相手になってやる」

 うん?よく考えれば、その台詞はまるで、これからも俺と一緒にいるって言ってるようなものだけど?

 ・・・いや、考えすぎだな。あの表情でわかる。あれはまったくの無自覚で言ったものだな。

「そ、それはそうと七海よ」

「あ?なんだ?」

 まだ言いたいことがあるのか?耶倶矢さんや。

「この、えーと・・・忌々しき鎖を解いてはどうだ?」

「請願。早くしてください。正直に言うと、結構痛いです」

「わ、悪い!」

 マジか、ずっと我慢してたのか?流石に人の感覚は分かんないからな、うっかりしてた!

 

 俺が鎖を消すと、二人は最初痛そうに手や手首をさすっていたが、俺が、話しかけると、それもやめて聞く体勢になってくれた。

「なあ、耶倶矢、夕弦」

「今度はなんだ、七海」

 う、まあ、何回も話しかけてるけどさ。

「いやさ、ちょっとお願いがあるんだ」

「質問。なんですか?」

 俺的には、ここからが一番言いたいことなんだけど、大分恥かしいな、これは・・・

 いや、意を決して、覚悟を決めて、言ってやろうじゃないか。

「俺と、一緒に過ごさないか?これから先を」

「・・・は?何言ってんの、あんた?」

 う!素が出るほど意味不明ですか、俺の台詞・・・

「疑問。説明を求めます」

 説明、ね・・・恥ずかしいな、改めて説明してくれとなると。

「いや、だからさ、これから先、俺と一緒に過ごさないかって」

「だから、何でって訊いてんの」

 耶倶矢、お前は一度もそんなことは言ってないぞ。

 って、そんなことは言わないで・・・

 つまり、俺がお前らを誘う理由ってことだよな?

「俺は、お前らを救いたいだけだ」

「懐疑。救う、ですか?」

「ああ。俺は、お前らを救える」

 正確には、救えるかもしれないってとこだが、そんなこと言えるわけない。

「俺の力で、お前らのその悲劇を、変えられる」

「悲劇?一体、何のことやら」

 耶倶矢・・・

「疑問。夕弦たちは、悲劇なんて知りませんよ?」

 夕弦・・・

 まあ、確かに、悲劇ではないかもしれないが・・・

「お前らは、やがて、どちらかが消えるんだろ?」

「「!!」」

 二人から同時に驚いている感じが伝わる。というか、顔を見ればわかる。

「お前らは、もともと一人の精霊だったが、何度目かの現界の時に二人に分裂した」

「なんで、あんたが知ってんの・・・?」

 耶倶矢の訝しげな声。もはや、あの芝居がかった口調でもない。

「その時には何故か知っていた。どちらかが主人格にならないと、両方が消えてしまうって。だから、今まで争ってきた。そうだろ?」

「驚愕。どうして知っているのですか」

 夕弦の声にも、俺は答えずに続ける。

「俺なら、その定められた悲劇を!どちらかが消えるなんて馬鹿げた事実を!消して、お前らを救える!そんなふざけた世界の理なんて、俺が消してみせる!」

 声を張り上げて、俺は叫ぶ。

「だから、俺と一緒に来い!耶倶矢!夕弦!」

 あと一押し。

 だけど、未だに驚愕と疑問から抜け出してない表情の、二人に向かってほかに何を言うべきなんだ?

「・・・それが、私たちを誘う理由?」

「ああ」

「確認。七海は、夕弦たちを救えるのですか?」

「ああ!」

 俺は、大きく肯く。さっきの、多分なんてことはない。絶対に救ってみせる。

「・・・ねえ、夕弦」

「応答。なんでしょう耶倶矢」

「私たちさ、いろんな勝負をしてきたじゃない?」

「返答。そうですね」

「それが、まさかさ、途中から乱入してきた人間に二人して負けて、挙句、そのまま救われようとしてるんだよ?私たちじゃ出来なかった結末を言われてさ」

「思考。・・・それでも、夕弦は良いとおもいます」

「なんで?」

「返答。それは・・・」

「いや、やっぱいい。言わなくてもわかるから」

 ・・・おお?なんか置いてけぼり感がする。

 いや、二人で話したいことだってあるんだろう。聞こえているが。目の前だし。

「ねえ、私たち、これからもずっと一緒にいられると思う?」

「思考。きっと、七海について行けば、あるかもしれません」

「だよね。私もそう思う」

 うん?話がまとまったっぽい?

「七海」

「なんだ?耶倶矢」

 今更、素が出てるなんて指摘することはしない。それは、あまりにも野暮というものだろう。

「私と夕弦、この先も一緒にいられる?夕弦と二人で、笑える?」

「・・・無理だな」

 耶倶矢、それはちょっと違う。これは傲慢かもしれないけど・・・

「憤慨。どういうことですか?さっきと言ってることが違います」

 夕弦も、落ち着け。

 俺は、さっきの耶倶矢の訂正の意もこめて、口をあける。

「俺は、お前ら二人が笑える未来なんて、創る気はない」

「なら、なんで・・・!」

「俺は、俺ら三人で笑える未来にしたい」

 ほんと、傲慢で、わがままで、欲深い願望だな。こりゃ。

 二人は、俺のその言葉を聞くと、ハッとした表情になった。

「だからさ、言ってるじゃん。『俺と』一緒に過ごさないか?って」

 言うことは決まった。最後の一押しといこう。

「三人で笑える、幸せな未来にしよう、耶倶矢、夕弦。いや、まあ、もっと増えるかもしれないけどさ」

 新しく、精霊に遭遇する可能性だって、ないわけじゃないしな。

「っていうかさ、正直に言って、大切な、大切だと思える人を救いたいだけなんだ」

 そう言って、今度は俺から手を差し出す。

 さ、どんな返事が聞こえてくるかね?

「・・・夕弦、私は決めたよ」

「同意。夕弦も決めました」

 そんな言葉が聞こえたと思ったら、さっきは意識しなかった柔らかくて温かな感触が、俺の手を包み込んだ。

「ふ、それではこれから先、世話になるぞ七海よ」

「請求。きっと幸せにしてみせてください」

 あーもう、そこまで言われたら、何が何でもやってみせたくなるじゃん。もとよりその気だけどさ。

「・・・ああ!」

 俺は、そう、笑って迎えたんだ。

 よし、まず最初にやるべきことは、

「とりあえず、宿探しと飯だな」

 そう言うと、二人は顔を見合わせて、やれやれといった表情で、

「ふ・・・全く、抜けておるな」

「早急。早く探しましょう」

 そう言って、飛び出した。俺も慌ててついていく。

 俺が見た、二人の表情は、笑っていた。

 ・・・な~んだ。笑えるじゃないか。ま。原作でも普通に笑ってたしな。




 最後のほうになるにつれ、主人公の台詞(地の文含む)が、「~~しな」や、「~~よな」とかが多くなっていますね。もう口癖じゃダメでしょうか?ダメですね。
 ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。次回も読んでいただけると嬉しいです。

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