デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 なかなか終わらないー♪

 ということで、修学旅行編5話目。中々終わりません。駄文率高すぎです。
 まさかここまで長くなってしまうとは……。

 先週の金曜日に、ネタ切れを起こして書けなかったので、少々遅れて、今日更新いたしました。
 というか、マジであとどの位かかるのでしょう?

 それでは、どうぞ。


第44話 来禅スクールトリップⅤ

 夜。

 あれから何時間後かに、俺は目が覚めた。

 が、他の奴らが起きなかったので、体感的には数十分間、そのままの体勢の維持を強制させられた。きつかった。

 まあ今は、来たる温泉の時間に思いを馳せるとしようかな。

 ちなみに、美九と狂三は、教職員用の部屋の一室を借りているらしい。

 まあ、一般生徒と同じ部屋割りだと、すぐにバレるかもしれないからな。

 さて。

 これで結構、温泉を楽しみにしている。

 いやあ、だってさ、温泉って気持ち良いじゃん?

 八舞姉妹と出会った頃に行った旅館にあった温泉も、中々気持ち良かったし。

 ……あの時の八舞姉妹の温度は、思い出さなくていい。

 ともかく。

「あとどん位なんだ? 入浴の時間まで」

「もうすぐだろ? 今、前の奴らが上がる頃だから、すぐだと思うけど」

「というか東雲、温泉楽しみにしすぎだろ」

「悪いか、殿町」

 いやいや、と殿町は手と首を振った。

「でもよ、ちょっと聞いてくれないか、五河、東雲」

「どうしたんだ?」

 士道が訊き返すと、殿町はちょいちょい、と手で招いた。

 何だ何だ。

 俺は士道と一度目を合わせ、殿町のもとに近寄る。

「ちょっと聞いたんだけどよ」

「何をだ?」

「それがな……」

 殿町はそこで、一旦言葉を区切った。

「早く言え」

「ぐぇ」

 が、俺が急かすように腹を小突いたら(強め)、珍妙な声を上げた。

 腹を擦りつつ、続きを言い始める。

「何すんだよ東雲……。ともかくだな、ここの風呂場には、ある秘密があるらしいんだよ」

「ある秘密?」

 士道が、首を傾げてそう言う。

 一方俺は、それで大体の見当が付いた。

 そういや、あんなことやってたな、原作で。

「そう、即ち……」

 またしても言葉を区切る殿町。ウザい。

 まあ、こいつだから、そこまで勿体振りたいってのは、分かる。

 だがな、いい加減言ってやれ。

 俺の思念が通じたのかどうかは知らないが、殿町は再度、口を開いた。

「――――どうやら、ここの風呂場の、男子側と女子側を区切る垣根の間に、少しの隙間があるみたいなんだよ」

「……で?」

「で、じゃないだろ五河! だって、それはつまり、その隙間からは、女子達がきゃっきゃうふふしてる桃源郷が見えるんだぞ!」

「……バレた時のことを考えたらどうだ?」

「ハッ! お前や五河みたいに、俺は、俺らは、美少女達にモテねえんだよ! 同居してねえんだよ!」

 殿町は、拳を握り締めて、熱弁を奮い始めた

「そりゃお前らは? それこそ一緒に風呂とか入ったこともあるだろうよ! 着替え途中にばったり遭遇して、きゃー五河さんのえっちー、とかなったんだろ!? 違うか!?」

 ごめん、それ、片方ずつあった。

 俺は八舞姉妹と一緒に温泉入ったことあるし、おそらく士道は、五月あたりに特訓という名目で、十香とラッキースケベイベントを体験しただろうし。

 俺らが気まずそうに顔を逸らしたのを見た殿町が、さらに大声を上げる。

「あったのかよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 そう叫んで殿町は、置いてあった座布団に顔を埋めて、呆れる程に泣き始めてしまった。

 俺と士道はアイコンタクトをして、結論。

 放っておこう、となった。

 

「次のクラスー、風呂の時間だぞー」

 とある男性教師の声がした。

 数分後。

 未だに泣き続けている殿町を尻目に、戻ってきた同じ班の奴らと駄弁っていた時だ。

 ようやく、という感想を俺は抱きつつ、入浴の準備をし始める。

 殿町も、『覗き(男の使命)』を果たすべく、復活した。

「それじゃ、先に行ってるから」

 一番に準備を終えた俺は、真っ先に部屋を出た。

 道順を覚えているかどうか心配だったが、勘で行ったら着いた。しかも、一番乗りっぽい。

 微かに優越感を覚えつつ、適当な籠の前に行って手早く服を脱ぎ、タオルを腰に巻く。

 がらがらがら、と戸を開けて、いざ温泉へ!

 ……とまあ、冒険風に言ってみたが、まあ、一般的な温泉だ。うん。

 横を見れば、女子側との区切りになっている垣根があるが、別に覗く気は無いし。

 俺はなんとなくで決めたシャワー台の前に行き、身体と頭を洗い始める。

 八舞姉妹との勝負の時、海でとことん泳いだので、髪が気持ち悪かったんだよなあ。

 ……女々しいとか言わないでくれ。結構気になるんだから。

 遅れてきた奴らが戸を開けてくる頃に洗い終え、さて温泉に浸かるかという時に。

 事件が起きた。

「…………ん?」

 ごしごし、と目を擦って、今見えたものを否定しようと再度見る。

 温泉に浸かる為に、方向上向かざるをえなかった垣根。その最上部。

 見覚えのある橙色の髪が見えたんだ。

 そしてそれは、見間違いではなかったらしい。

「か、耶倶矢!? 夕弦!?」

「うむ? その声は……」

「発見。見つけました。あそこです」

「落ち着いてんじゃねーよ! 早く戻れ!」

 バレるといけないので、小さく、だが強く、近寄りながら命じる。

 なんというか、その、こいつらの裸(多分)を、他の奴らに見られたくなかったんだ。

 ともかく。

 腹辺りで洗濯物のように垣根に引っかかっている二人を見る。

 一度俺は振り返り、そこそこ湯気が仕事しているのを確認した上で、俺は垣根を駆け登り始めた。

 二人が寄り掛かっている近くまで行き、丁度垣根が終わってる所に手を掛け、足を踏ん張り、向こう側を見ないようにする体勢だ。

 よし、この体勢なら、こいつらも、この向こうにいる女子達も見えない。男子から見ればすぐさまバレるが、まあまあ高いし、湯気も信じよう。

「何してるんだ!?」

「説明。七海を探していました」

「何故!? ホワイ!?」

「ふ、それはな……こうする為だ!」

「は?って、ちょ、おわあ!?」

 耶倶矢が溜めた後、俺は腕を掴まれた。そのまま、向こう側に引きずり込まれる。

 気付かれる気付かれないを考えず、本能的に叫んでしまった。

「くっ……!」

 向こう側に俺の身体が移った瞬間、二人は手を離して着地の体勢に入っていたので、それに倣って、俺も着地に備える。

 足を下に。地面に垂直に。

 だがここで、俺は誤算があった。

 ここは、温泉。入浴場。

 即ち――――足場が濡れているということに。

「にょわぁっと!」

 耶倶矢と夕弦が綺麗に着地するのを尻目に、俺は滑った足を何とかしようとする。

 結果、一応尻餅を着くようなことは無かったが、無様な声を上げてしまった。

 って、それよりも。

「何でこっち側に連れてきた!? 何考えてやがる!」

 俺は体勢を戻して、二人に詰め寄った。

 幸いにして、二人はタオルを巻いてたし、俺のタオルも取れていなかったので、まあ、良かった。

「何って、単なる勝負であるぞ?」

「しょ、勝負?」

「肯定。はい。初めは、この垣根の天辺に先に登った方が勝ちというものでした」

 その地点で色々おかしいとは思うが、とりあえずスルーしてやろう。

「……で?」

「うむ。登ったら登ったらで同時であってな。ならば第二試合ということで、先に、七海、お主を見つけた方が勝ちというものに変更したのだ」

「何でその発想が出たのかを俺は小一時間程問い質したい」

「鎮静。まあまあ。良いではないですか」

「よくねえよ……」

 はあ。まあ、理由は分かったが……。

 それじゃあ、

「……どうして、俺をこっち側に?」

「返答。それはですね――――」

 夕弦が答えようとするのと同時。

「あれー? 耶倶矢ちゃーん? 夕弦ちゃーん? そこにいるのー?」

「他にも別の人の声がしたんだけどー?」

「まさか、男子……!?」

 !

「やっべ……!!」

 声からして、亜衣麻衣美衣か。

 遂に、恐れていた事態に陥ってしまった。

 ここで見つかったら、俺は残りの学校生活を、変態のレッテルと共に過ごさなければならなくなる。

 男子からは英雄と、女子からは、……、…………何て言われるだろ? やっぱ普通に変態か。

 でも、普段の学校において、俺ってあまり男として認識されていないんだよなあ……。

 っとと。今はそれどころじゃない。

 ぺたぺた、という足音は、段々近付いてくる。

 この距離で垣根を駆け登る訳にも行かないので、慌てて辺りを見渡すと、数秒間はなんとかバレなさそうな物陰を発見した。

「二人とも、なるべく時間稼いでくれ!」

「承知した!」

「請負。任せてください」

 だ、大丈夫だよな?

 一抹の不安を覚えつつ、その物陰に俺は飛び込んだ。

 同時、会話が聞こえ始めた。

『あれ? 二人だけ?』

『もう一人いなかった?』

『声がしたんだけど』

『気のせいではないか?』

『否定。ここには、夕弦達だけしかいませんでしたが』

 よし、なんとか持ちそう。俺はその間に、やることをしよう。

 とりあえずの打開策は考えてあるので、早くしよう。時間は限られている。

『本当かねー?』

『隠してないかねー?』

『嘘はいかんぞー?』

 誰だよお前らっ。

 出そうになる突っ込みを飲み込んで、意識を集中させる。

 声すら意識しなくていい。

 意識するのは――――視るのは、俺自身。

 俺自身の何か、を消すのはそれ程負担にはならないので、すぐに出来るだろう。

 まずは、染色体を創り出す。

 男性には本来存在しない、二つ目のX染色体。視たことは無いが、理解しているので、なんとか創り出せた。

 次に、Y染色体を消す。

 これで、性別上において俺は、〈女性〉になった。

 後は、筋肉量や脂肪量、骨格や脳構造なんかも消したり創ったりで調整して……。

「……よしっ」

 これで、俺は、本当の意味で、見た目も全て、〈女子〉となった。

 顔自体は殆ど変えていないが、胸の大きさとか、お腹や太腿辺りの筋肉量。髪の長さも、さっきまでとは違う。

 ……勿論、『アレ』は付いてません。

「す、すみませんっ。その、彼女たちには、内緒にしてって頼んでたんです」

 声帯の形も変えたので、どこか高く聞こえる声。

 俺は、『罪悪感に負けて、その姿をさらした少女』を装って物陰から出てきた。

「お?」

「ほ?」

「へ?」

 同じように口を開けながら、亜衣麻衣美衣は俺を見てきた。

 う、うぅ……結構、恥ずかしい……。

 視線を下にする訳にはいかないので、横に逸らす。

「お、おお? 君可愛いねー。うちのクラスじゃないみたいだけど、どなた?」

「ええと、その、あの……」

「もしかしてずっと入ってたの? それなら、バレない内に上がった方がいいよ?」

「え、あ、はい。そうですね」

「ん? でも、どっかで見たことあるような気が……」

 美衣のその言葉に、少しだけ、ビクッと肩が跳ねる。

 大丈夫。バレる筈が無い。

 髪の長さを調節して、右目部分は前髪で見えなくしてあるし。

「……お主、七海か?」

「耶倶矢か。ああ。まあな」

「驚愕。まさか、女の子になってくるとは……」

 静かに近付いてきた耶倶矢と夕弦に、小声で大まかな説明をする。

 その間、三人に横から凝視されたけど、なるべく気にしない振り。

「そ、それじゃあ、お……じゃない。私は上がりますので……」

 説明を終え、そろそろと逃げようとする俺。

 が、

『……あー!』

 不意の大声に、過敏になってる感覚が反応してしまった。先程と同じように、ビクッ、っと肩が跳ねる。

 な、何だ一体……?

「分かった。どこかで見たことあるなと思えば!」

「あなた、もしかして」

「ナナちゃん……東雲ちゃんの親戚じゃない?」

 …………えーと。

「え、ええ、まあ、はい」

 咄嗟に、肯定の返事をしてしまった。

「名前は?」

「し、東雲、な、な、な……」

 名前? そうだな、七だから……。

「……七霞(しちか)、です」

 まあ、これで良いか。

「内緒で付いてきたの?」

「いえ、それは、その」

 そうだな、ここは……。

「今日お忍びで来られる、アイドルのマネージャー、です」

 ということにしておこう。

「じゃあ、そのアイドルって、誰?」

「それは、ええと」

 多分、教えちゃ駄目だから……。

「内緒、です」

 俺がそう言うと、三人から、えー、という不満気な声が上がった。

 俺は一歩後退り、耶倶矢と夕弦に向き直る。

「……俺が理由を作るから、お前らは俺の擁護に回ってくれ」

「うむ。任せるがいい」

「了解。分かりました」

 その返事を聞いて、俺は再度、三人の方に体を向ける。

「それでは、そろそろ時間なので、お……じゃない。私は退出させていただきます」

「えー、もうちょっといいじゃーん」

「遊んでいこうよー」

「洗いっことかしようよー」

「弁護。七霞さんも、お仕事があるのでしょう。ここは帰らせてあげませんか」

「そうだな。なに、我らがお主らと戯れてやらんこともない。ほら、(はよ)う行くぞ」

 すまん。恩に着る……!

 俺は二人に片手を上げて謝りながら、女子風呂を退出した。

 

 ……身体を戻して、なんとか帰ってきた男子風呂では、殆どの男子どもが、なんか沈んでいた。気持ち的な意味で。

 聞くところによると。

 覗けたはいいけど、湯気で何も見えなかったらしい。




 女体化した意味を問いたい……!

 きっとこう思ってる人は少なくない筈。
 答えは、自分も分からない、です。
 あれです。士道くんも士織ちゃんモードがあったんだから、七海も似たようなモードがあってもいいじゃないかということで。

 なかなか終わらない修学旅行。まだ作中では、一日と経っていないんですよ。
 まあその分、二日目は一気に過ぎて、三日目は……どうなるんでしょう?

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 まだまだ書くことはたくさんあるぞー。

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