デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 来週は学校のテストー。

 そんな感じで、ここに書くことが特に無いので、早々に切り上げます。

 それではどうぞ。


第41話 来禅スクールトリップⅡ

「〈ディザスター〉に、〈プリンセス〉……〈ベルセルク〉や〈ナイトメア〉、〈ディーヴァ〉と〈ハーミット〉、〈イフリート〉までもが、同じ街にいる……」

 某国。

 エレンは一人、そう呟いた。

 見ているのは、一つのディスプレイ。ただし、自分よりも大きな、と前置きが必要だが。

 映るのは、一人の少年と、複数の少女たち。

 彼らは一様に、この世の物とは思えない衣装と、武器を携えていた。

 しかし、彼女が興味があるのは、最初の二人だけに過ぎない。

 つまり、〈ディザスター〉と、〈プリンセス〉。

 どちらも、強大な力を持つ、『精霊』、である。

「……ふふ」

 小さく、笑う。

 何故ならば、彼と彼女は。

 ――――強いから。

 〈プリンセス〉とは直接剣を交えたことは無いが、〈ディザスター〉とならある。

 最初は拍子抜けする程弱かったが、実際は違った。

 『反転体』と呼ばれる姿になった〈ディザスター〉は、いくら本装備ではなかったとはいえ、こちらを圧倒するまであった。

 こんなことは初めてだ。

 自分と、対等に戦えるかもしれない者が現れるなど。

「そろそろ、再び戦ってみたいものですね」

「ならば、行けばいいじゃないか」

「……せめて、ノックぐらいはしてくれませんか」

 扉が開く音も小さく、この部屋に入ってきた人物の名を呼ぶ。

「――――アイク」

「すまないね。つい、覗きたくなってしまって」

「誤解を招く言い方をやめてください」

 はあ、と嘆息しつつ、アイク――――アイザックの方に向き直る。

「それで、何の用でしょうか?」

「いやいや、そろそろエレンも退屈する頃ではないかと思ってね」

 どうやら、お見通しのようだった。

 即ち、強い者と戦いたいということが。

「どうだろう? もう一度、日本の天宮市に行ってみる気はないかい? そして再び」

 〈ディザスター〉と、戦ってきたらどうだい――――と。

 彼はいつも通りに、訊いてきた。

「いいのですか?」

「ああ、いいとも。大義名分として、〈プリンセス〉の監視、なんかはどうだろう」

 成程、それならばわざわざ日本に出向く理由が出来上がる。

 しかし、一つ、気になることがあった。

「ですが、どうやって対象に近づきましょうか……。一応、〈プリンセス〉の監視もやっておくべきでしょうし」

「それなら大丈夫みたいだよ」

 疑問で首を傾げつつ、次の言葉を待つ。

「どうやら近々、彼らは『修学旅行』というものに行くらしい。その行き先に紛れ込んだらどうだい?」

 なんとタイミングのいいことか。

 それならば、難無くかどうかはともかく、自然に近付くことが出来る。

 そして、〈ディザスター〉と〈プリンセス〉は同じ高校に通っていた筈である。

 であれば、〈ディザスター〉と戦う機会も、そのうち生まれるだろう。

「分かりました。ありがとうございます、アイク」

「気にしなくてもいいさ。なに、君なら負けることはないだろう?」

「――――はい」

 静かに、だが、確かな自身を以って、エレンは頷いた。

 

 ―――――それが、彼女の悪夢の始まりとは気付かずに…………。

 

 

「おお……!」

 十香は、その腕を大きく広げて、感動を表した。

「これが――――海か!」

 言って、更にその腕を広げようとする。

「はは、そういや、見るのは初めてになるんだっけ」

「うむ!」

 苦笑いの表情を浮かべている士道のその問いに、十香は大きく頷いた。

 そう、海。

「結構広いもんだな」

「ふん、我らにとってしてみれば、海など見飽きたものだがな」

「期待。それでも、七海と一緒なんですし、楽しくなりそうです」

 夕弦の言葉に、やや顔を赤くしながらも、耶倶矢は、

「……まあ、そりゃ」

 十香とは対照的に、小さく、頷いた。

 俺はそれを微笑ましく思いつつ、眼下に広がる藍を見渡す。

 今日は七月一七日。

 

 ―――――修学旅行が、始まったのだ。

 

 

「それでは、皆いるか、点呼を始めてくださぁい」

 タマちゃん先生の言葉に、班毎の点呼を開始し始める。

 ものの数十秒でそれも終わり、全員で面白くも無い主任の先生から留意すべき事などを聞き、やっとの思いでまずは各自の部屋へと向かう。

 行く途中、皆の表情は、隠しきれてない『楽しみ』の色で染まっていた。

 それは、今から始まる修学旅行に対するものかもしれないし、お忍びで来るという、あるアイドルの存在にかもしれなかった。

 しかし、まあ。

「……はあ」

 俺は、例外かな。

 というのも、

「えーと、今九時ぐらいだけど、自由時間の時までには来るって言ってたし……」

 そう、そのうちお忍びで来るというアイドル――――美九の存在があるからだ。

 別に、来てほしくない訳じゃない。

 ただ単に、美九に会った生徒達が暴れたりしないかとか、そんな事を心配しているんだ。

「…………はあ」

 再度、溜め息を漏らす。

「おうおうおう、どうしたんだ東雲。元気ないじゃないか」

「うるさい、殿町……」

 俺の言葉を気にした風でもなく、はっはっはと、真横で笑う殿町。うん、普通にうるさい。

「まあまあ、ちょっと聞いてくれよ。ついでだ。五河も来い」

「何?」

「どうかしたのか?」

 殿町が士道を呼び、三人となって、歩きながら喋る。

「いやさ、ちょっと噂になってんだけどよ」

「何がだ?」

 噂? 何の噂なんだろうか。

「それが、今日来るというアイドルについてだよ」

「……ふーん」

 それを聞いて俺は、殿町に気付かれないよう、士道とアイコンタクトをとる。

 即ち、内緒にしておこう、と。

 士道含め耶倶矢と夕弦、十香は、お忍びのアイドルが美九だっていうことを知っている。

 だが、美九は、今人気爆走中のアイドルな訳でもある。

 だから、それについては黙っておこうという風に、話し合いの結果決まったのだ。

 大体、そんなこと言ったら、知り合いなのか、と勘繰られてしまう可能性もあるからな。

「それで? どんな噂なんだ?」

 士道が、殿町を催促する。

 それを受けた殿町も、何故か微妙に自慢気に話し出した。既に他の奴らは知っているのか、ボリュームは落とさないままだ。

「ああ、そのアイドルって――――『美九たん』じゃないかって噂だぜ」

 殿町の声で『美九たん』なるニックネームが出たことに少し寒気を感じたが、まあ、気にせず話を聞こう。うん。別に、ヤキモチなんて焼いてないからな。

「でも考えてみればそれに行き着くよな。わざわざ、スタイルが良くて歌が上手いっていうヒントを出したってことは、他のアイドルよりも優れているってことなんだろうし、となると、美九たんしかいないよな」

 ……普通にバレてるじゃん、美九。

 いやまあ、別に隠そうとしているのは俺と士道だけなんだけども。他の三人は、言われたから、っていう面が強いし。

「まあ、会ったら分かるだろ」

 俺はそう締めた。

 さて、ほら、あの部屋じゃないのかな。俺らが使う部屋って。

「お、ここか」

 部屋番号を確認し、入室。とりあえず今からは、実質の自由時間となっている。

 というのも、行き先を変更したお詫びにということなのか、今回の修学旅行、個人の自由時間が大幅に設けられているんだ。更に、水着も自由。

 原作ではどうだったか覚えてないが、嬉しいことではあるし、別にいいか。

「さて、勿論海に行くよな?」

 殿町が訊いてくる。

 ここで、『泳ぐよな?』という台詞が出ないあたり、本当の目的が見え見えだ。

「ああ、そうだな」

 士道は、十香が心配なのか、それに賛同する。

「俺は、少し休んでから行くよ。先に行っててくれ」

 俺はというと、美九からの連絡がいつでも来ていいように、少し部屋で待機することにした。

 ま、すぐ来るだろ。

「オーケー。じゃ、着替えたら俺ら行くから」

 そう言って、殿町は大きめのタオルと水着を取り出した。

「って、ここで着替えんのか?」

「え? 他にどこで着替えんだよ」

 訊いた士道は、それもそうかという表情で、バスタオルやらを取り出す。

 ……俺も用意は済ませておくか。

 男の裸体なんて見たくも無いので、俺は視線を自分の荷物へと落とした。

 

 士道達が行ってから数分後。

 プルルルルッ、と携帯が鳴った。

「……やっと来たか」

 俺はそう呟き、それに出る。

「もしもし、美九か」

『はいー、そうですよー。今そちらに着いたのでぇ、連絡しましたー』

「そうか。分かった。迎えに行くよ」

『いえいえ、一応、先生方を経由してから、七海さんに迎えに来てもらうことにしますー』

「? 俺をピンポイントで指名して大丈夫なのか?」

『大丈夫ですよー。だってぇ――――』

 そこで、少し間が空いた。

 何だ?

『――――今変わりましたわ』

「……へ?」

 この声は……。

「狂三!?」

『ええ、そうですわ。ということで、わたくしがいますので、そこらへんは大丈夫でしてよ?』

「いや何がというわけなのか分からないんだが。と、それよりも、どうしてお前も一緒なのかが分からないんだが!?」

『簡単なことですわ』

 狂三は、一度そこで一息ついて、

『今わたくしは、美九さんの臨時マネージャー(・・・・・・・・)として、同行しているんですの』

「そうなの?」

 はい、という答えが返ってきた。

 ……そ、そうだったのかー。

 確かに、天宮市に留守番させておくのは心が痛んだが、来禅の生徒ではない以上、そうせざるを得なかったんだよな……。

 一度、来禅に編入させてもらえばとは言ったんだが、今はいい、と言って断られたんだよなあ。

 今は、って、どういうことだろう?

 ともかく。

『わたくしの知人だからという理由で、七海さんに、耶倶矢さんや夕弦さんをお呼びいたしますわ』

「分かった。それじゃ俺はもう少し待っているから、先生が来たら行くよ」

『はい、お待ちしておりますわね――――それじゃあだーりん、少し待っててくださいねー』

 最後に美九に返したのか、そんな声がした。

 さて、俺も着替えるとするかな。

 一応、誰もいないが下半身をバスタオルで隠しつつ、俺は水着に着替えた。シンプルな、黒の海パンだ。

 ただし、胸の傷を隠すために、上から薄手のシャツを着ている。こっちも黒。

 そうして待つこと更に数分。

 こんこん、と扉がノックされる音が聞こえた。

『東雲くんいますかぁ?』

 やや早足に近付き、扉を開く。

「はい、どうかしましたか?」

 何も知らされていないという体でそう訊きつつ、やっと来たか、という感想しかない。

 来たのは、タマちゃん先生。まあ、担任だしな。

「えぇと、その、東雲くんあてに連絡があったんだけど……」

 俺は無言で続きを促す。

「えー、今から東雲くんは、八舞の双子ちゃんたちを連れて、ここに行ってください」

 そう言って、タマちゃん先生は地図を取り出し、場所を示した。

 えーと、どうやら、海を挟んだ向こう側か。

 この或美島は三日月のような形をしているので、丁度その先端同士の向かい側に、美九達はいるようだった。

 ははーん、さては〈フラクシナス〉の転送装置を使ったな?

「……何でですか?」

 一応、俺は何も知らないということにしてあるので、訊いておく。

「うーん……教えられないですねぇ」

 コケた。

 ま、いいが。

 おそらく、連絡したのが、今日来るアイドルだっていうことを伏せておきたいんだろう。広めないために。

「まあ、分かりました、いってみます」

「はぁい、特例ということにしておきますのでぇ、多少時間を過ぎても大丈夫ですからね」

 それは、気遣ってくれているととるべきか、やっぱり守らなくちゃいけないのかととるべきか。

 ま、いいか。

 俺は持って来ていたスポーツバッグを手に(必要最低限の物だけを抜き出して入れてある)、部屋を後にした。

 

「ふむ、して美九と狂三は、今向かう先におるというのだな?」

「ああ。正確には、途中で転送装置を使わせてもらうんだけどな」

「理解。分かりました」

 あれから耶倶矢と夕弦を探し、というか群がられていたのを連れ出し、俺は人目の無い所へと歩いていた。

 二人は、原作で見たのと同じ、白のレースに黒地の水玉と、その逆の黒のレースに白地の水玉模様の水着だった。

 正直、恥ずかしくて見てられない。

 顔が赤くなっていることを自覚しつつ、そろそろかとインカムをバッグから探し出す。

 その途中。

「お、おい、七海よ」

「? どうかしたか?」

「一言。何か言うことがあるとは思いませんか」

 言うこと? 何だろう?

 俺の疑問が分かったのか、二人は微妙な表情になった。

 な、何だよ、一体。

「ほら、その、あれだ!」

「あれで分かるか」

 俺はエスパーじゃねえ。……あ、能力持ってたな。

 ともかく。

「示唆。ほら、夕弦たちを見て、思うことは無いんですか」

 お前らを見て思うこと……?

 …………ああっ!

 成程な。それならそう言えばいいのに。

「くく……どうやら、気付いたようだな」

「首肯。そのようですね」

「ああ」

 つまり、

「――――似合ってるぞ、耶倶矢、夕弦。超可愛い」

 これの筈だ。

 俺がそう言うと、二人して顔を赤らめた。

「ふ、ふんっ。当然であろう。我ら万象薙ぎ伏す颶風の御子、八舞の名を持つものぞ。その美貌は世の凡人が見惚れて当たり前なのだ」

「感謝。ありがとうございます。とても、嬉しいです」

 どうやら正解だったっぽい。よかったよかった。

 目を逸らしながら強がる耶倶矢に、本当に嬉しそうに微笑む夕弦。

 うん、やっぱり可愛いな。

「……っと、そういやインカム探さないと」

 俺の方も、照れ隠しにわざわざ言葉を発しながら、再度インカムを探し始める。

 程無くして、見つかった。

 それを右耳に付け、通じるか確認。

「あー、通じてるか?」

『はい、大丈夫ですよ。通じてます』

「……神無月さん?」

 通信にでたのは、どうやら神無月さんのようだった。

 そういや、今日から琴里は〈ラウンズ〉とやらの集まりだったっけ。

「……まあ、お願いがあるんだけど」

『転送装置ですね?』

「どうして分かった?」

 俺はまだ、何も言ってないぞ。

『まあ、美九さん達を送ったのは私たちですし、彼女達が何をしてほしいかなども聞いてますしね』

 ああ、つまり、既に俺を呼び出す方法とかは知っていたんですね。

「それなら話が早いな。頼めるか?」

『別にいいですよ。十秒後に、一旦呼びます。大丈夫ですか?』

「おう」

 俺はインカムに向けていた意識を、耶倶矢と夕弦に向ける。

「えと、今から転送装置を使わせてもらって、目的地に行くからな?」

「うむ。承知」

「同調。はい、分かりました」

 さて、残り数秒。

 そして、転送装置使用時の浮遊感が、俺らを包んだ。




 ――――アイクの口調が分からん……っ!!

 序盤の二人の会話については、ノーコメントでお願いします。
 
 修学旅行において、『自由時間大幅増』と、『水着自由化』については、独自設定です。なぜなら、そっちの方が都合がいいから。
 ただし、『水着自由化』は、原作でどうだったのかが分からなかったので、一応、ということで書いておきました。
 なので、それが判明したら、少し修正入れておきます。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 えーと、美九の水着は、アンコール3の口絵にします。

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