頭を抱えたくなるような問題が、刻一刻と迫ってきています。
ということで、バースデーⅢ。駄文率高いですね。4話ぐらいで終えるつもりが、まだまだ終わりそうもないという、ね……。
それでは、どうぞ。
「はっ……はっ……はっ……はっ……」
翌日。まだ涼しさの残る七月の朝、荒い呼気を俺は吐く。
時刻は五時過ぎ……ぐらい。詳しくは分からん。
俺は今、絶賛走り込み中である。
理由は、自己鍛錬。
俺が目を覚まして数日経ってから、俺はこうして、朝は町内を走っている。
距離にして約十キロ。なかなか長いが、身体能力の上がっている今じゃ、ペース配分にさえ気を付けていれば、そこそこきつい、程度に感じる。
とまあ、そんなある朝なわけだ。
「
残り数キロというところで、突如として後ろからかけられた声に、俺は思わずバランスを崩す。
な、何だいきなり?
「朝から走力とは、いい心掛けでやがりますねっ」
「ま、真那!?何でここに……今五時過ぎだぞ?」
振り向けば、やはり真那がいた。ペースを落として、並ぶのを待つ。
「それを言ったら、義兄様もではねーですか」
「そりゃそうなんだけども」
軽口を叩き合いながら、真那の少し先を、先導するように俺は走る。
しかし、昨日の今日で、どうかしたのか?
「……で?また俺に何か?」
「いえ。ちょっと見かけたので、一緒に走ろうかと思いまして」
まあ、陸自のトップエースって呼ばれるぐらいなんだから、そこそこ鍛えてはあるんだろうけど。
でもだからと言って、わざわざ俺を見かけたからって。
……見かけたから?
「見かけたって、こんな朝早くに走ってる俺を?」
それじゃあまるで、俺に会うために朝早くから起きていたって風に聞こえるんだが。
「あ、そういうことではねーです。〈フラクシナス〉で映像を見たということでいやがります」
そういうことね。
でも、それでも一緒に走るという発想には至らないと思うけど、ま、考えても仕方ないか。
個人的には、それよりも言いたい案件はあるし。
「……んで、真那」
「何でいやがりましょう、義兄様」
「その『義兄様』っての、止めてくれねえかな?」
俺がそう言うと、真那は『がーん』とでも付きそうな表情になった。
「な、何ででいやがりましょうっ!?」
「いや別に、嫌という訳ではないんだけど」
でもまあ、一応言っておくか。
「お前の兄は五河士道なんだろ?別に俺は真那の義兄であることに不満は無いが、それでもお前の中での優先は、五河士道であるべきだ」
言い方が悪かったな。
俺が『義兄様』と呼ばれるのはいいんだ。
だが、昨日言ってた……にーさま階級?とやらでは、俺が一個下であるべきで、五河士道を一番にすべきだと思うんだ。
そう言い添えると、少し真那は考える素振りを見せた。
「……分かりました。今度、兄様と話をしてみるです」
「おう、そうしとけ」
そんな会話をしている内に、残り数キロをもうすぐ走破するみたいだな。スタート地点である精霊マンションが見えてきた。
ほんの少しだけペースをあげ、残りをダッシュ。真那も、やや遅れてはいたものの、付いてきていた。
……よしっ、ゴール。
走り終え、急に止まると身体に危ないので、近場をぐるぐると歩いて落ち着かせる。
持ってきてた携帯で時間を確認すると、大体五時半ぐらいだった。
「ふう……、で、どうする?家で飯食っていくか?狂三いるけど」
「むっ、〈ナイトメア〉でやがりますか……どうしましょうかね」
「俺的には、お前らに戦ってもらいたくないんだけど。これからも」
誰かに殺意を向けるなんて、向けられるなんて、気持ちのいいことじゃない。
「それは無理でいやがりますね」
しかし、真那は俺の言葉を一刀両断にした。
「……どうしてか、聞いても?」
「〈
「俺が止めるからな」
「……で、やがりましょう?」
まあな。当たり前だ。
でも、言ってる事は本当のことだしなあ。
「と言っても、ここ数年、〈ナイトメア〉が原因だと思われる殺人や行方不明はねーんですよね」
「そうなのか?」
「はいです。私が〈ナイトメア〉を追い始めた時には、アイツは誰も殺さなくなっていたでやがりますよ。あれ?追い始めて少ししてからでしたっけ?……ここら辺は曖昧ですね」
「…………」
俺は、無言だった。
また、だ。
――――狂三に対する、原作との相違点。
前聞いた分では、殺した数は数百人、『悪しき精霊』と呼ばれている、ということを知った。
そして今、ここ数年は誰も殺していないということを知った。
……どういうことなんだ?
どうして、ここまでの相違が出てくるんだ……!?
「……様?
「……ハッ。す、すまん。ちょっと考え事してた」
「そうでいやがりますか」
とりあえず、いつか狂三に聞いてみるか。
「んで、どうする?朝食、一緒に食おうぜ?」
「……まあ、どうしてもと言うなら」
「ん、分かった。くれぐれも、戦闘を始めないでくれよ?」
「分かってるに決まってるでやがりましょう」
六時。
そろそろ狂三が起きてくる時間だ。八舞姉妹は、朝食の少し前に起こしに行く。
あの後家に戻った俺らは、順にシャワーを浴びて、並んで朝食の準備をし始めた。
真那は着替えを持ってきていなかったらしいので、とりあえず上は俺のシャツを貸して、下はそのままで我慢してもらっている。
〈フラクシナス〉に連絡して持ってきてもらおうと思ったんだが、真那が、
『朝ご飯の準備の方が先決ですっ』
と言ったので、成り行きでそのままの格好だ。
個人的には、汗もかいただろうし、着替えればいいのにと思う。
というか、サイズの違いの所為で、一見すると裸ワイシャツに見える。サイズを間違えて買ってしまった、俺でも大きいものを貸してしまったというのも、一因ではあるだろうけど。
「……あら?今日は特殊なお客様がいらっしゃいますのね」
「お、起きたか狂三。おはよう」
狂三が起きてきた。
おはようございます七海さん、という言葉を聞きつつ、残りの用意を終わらせていく。
でも、狂三と真那からは目を離さない。
……お、この卵、黄身が二つ入ってやがる。
「……〈ナイトメア〉」
「ふふ、おはようございますわ、真那さん」
既に着替えている狂三は、自身の服のスカートの裾を軽く摘んでみせる。
完全にわざとやってるようにしか見えん。
ったくよお。
「お前ら、喧嘩はすんなよ」
「あら、心外ですわ七海さん。わたくしは別に、そんなことをするつもりはありせんもの」
「大丈夫ですよ義兄様。真那も、自制していますから」
義兄様、という言葉に狂三が眉を
「ほら、もうすぐできるから、真那はテーブルの上にあるものを片付けてくれ。適当に寄せるだけでいい」
「了解でやがります」
「狂三は、耶倶矢と夕弦を起こしてきてくれ」
「わかりましたわ」
はあ、とりあえず分けることは出来たけど、どうせすぐに戻ってくるしなあ。
そんで、耶倶矢と夕弦にも真那のことを話しておかねえといけないし。
今日の朝は、なんか長く感じるよ……。
学校。
真那に合い鍵を渡して、俺と耶倶矢、夕弦は学校へと向かった。
正直、狂三と真那を二人っきりにはさせたくなかったんだが、その為に学校を休むわけにもいかない。
一応、強く念押しはしておいたけど、大丈夫かなあ?
……ま、なるようになるさ。
それよりも先に、話しておきたい奴がいる。
「なあ五河士道、ちょっといいか?」
「? 七海?」
先に来ていた五河士道だ。
「昨日、真那が来たんだが」
単刀直入に俺が言うと、五河士道は、ああ、と言って何かを思い出したようだった。
「そういや、ちょっと前に話したな。ってことは、もう知ってるのか?」
「知ってるも何も、既に終わっていますけども」
「あ、あははー……」
苦笑いする五河士道。
やはり、お前は知っていたのかよ。真那がやりたかったことを。
「とりあえず、そのうちお前の所に来る筈だから、ちゃんと話しておいてくれよ」
「え、どうして俺の所に来るんだ?」
「俺がそう言っておいたから」
そう言い残し、じゃあな、と手を振って席に戻っていく。
席に座って、ぼーっとしていると、
「!……っと」
突然、携帯からメールの着信音が小さく聞こえた。
やべっ、マナーモードにしてなかったか。
慌てて取り出し、受信したメールを開く。本来は持ってきては駄目なんだろうが、先生の目が無い今がチャンスだし、持ってきてる奴は他にもいるし。
そんなことを思いつつ確認すると、差し出し相手の欄には、『美九』と書かれていた。
「なんだろ……?」
疑問に思いつつ、本文を確認。件名にあった『愛しのだーりんへ』という文はスルーしておこう。
「――――へえ」
内容を要約すると、こうだ。
どうやら、今日の午後はオフなので、良ければ遊びに来ないか、ということだな。
何か色々と装飾されていた文だったので、簡潔にまとめさせてもらった。
「んじゃあ、分かった、放課後遊びに行く、と」
小さく呟きながら、返信する。
今美九は、先月に顔出しを解禁したことから、人気急上昇中のアイドルとなっている。
そんな忙しい中、オフというのなら遊びに行くのもいいだろう。
そうだ、耶倶矢と夕弦はどうすんのかな。
俺は隣で十香と歓談していた二人に声をかける。
「なあ耶倶矢、夕弦」
「む、どうした?」
「返事。何でしょう」
「放課後、美――――あー、そうだな、遊びに行かないか?」
この場で美九の名をそのまま出すのは危ないと思ったので、咄嗟に言い直す。
まあ、遊びに行かないか、でも合ってる筈だ。
「くく、確かにそれもまた一興かもしれぬ。が、今日も我らは赴かねばならぬ場所があるゆえ、我らはそちらに向うことにしておる」
「遠慮。今日も買い物に行きたいので、やめておきます」
「ん、そうか。分かった」
また今日も買い物か。
……俺のプレゼント選びか?
もしかして、昨日からずっと悩んでいるのか?だから、選ぶのが今日に持ち越されたのかな。
別に、そこまで悩まなくてもいいのに。
それじゃあ、美九の所には、俺が一人で行くか。
んじゃ、と言って、二人は十香と、いつの間にか増えていた亜衣麻衣美衣たちとの歓談に戻る。
俺は、亜衣麻衣美衣に無理矢理会話に入れられたりしたな。
そうして、今日も学校が始まっていく。
お、終わらない……。
次が美九登場と、狂三と真那に七海の誕生日を知らせること、ですかね。
そして、その次回が誕生日会やって終わり、の筈です。予定では。
ですがこの世には、予定は未定という格言が……すみませんちゃんとやります頑張ります。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
バースデーが終わっても、修学旅行が待ち構えてるぜッ!