ということですみません。後書きのとおりの話になりませんでした。
じ、次回こそは、他の精霊たちの出番もあるはずっ!
そんな風に悠長に書いてると、いつ誕生日回が終わるか分かったもんじゃないので。なるべく早く書き上げて行きます。
それでは、どうぞ。
精霊マンションに着くと、扉の前に見覚えのある青髪の少女がいた。
「……真那?」
疑問に思いながら声をかける。
なにしろ真那は、今は〈フラクシナス〉で休養中の筈だから。
あの日。俺が反転化した時に、大怪我を負ったからだ。
精霊である八舞姉妹は結構早くに動けるようにはなったが、真那はあくまでも人間。回復スピードは劣る。
だから、真那はここにはいない筈なんだがな……、どうしたんだろ?
「……何と言って入るべきなんでいやがりましょう?『お邪魔します』?『急にすみません』?」
「何してんだ?こんなところで」
「ひゃいっ!?」
背を向けていたので後ろから声をかけたんだが、そんなに驚かんでも。
実際に数センチは浮いたんじゃないかな。
数度目を瞬かしている間に、真那はこちらに体を向けた。
「なな七海さん、い、今、お帰りでやがりますか」
「? まあ」
何をそんなに動揺しているんだ?
と、それよりも。
「お前、休んでなくていいの?」
訊くと、少し落ち着いた様子で、真那は答えた。
「ええ、まあ。というより、結構前に外出の許可は下りてはいたんですが、出る理由がねーですし、今まで〈フラクシナス〉にいたに過ぎねーんですよね」
「そうなのか?」
「はいです。あ、それに私、DEMを辞めることにしましたです」
へえ、この時期に辞めるのか。
原作では、天央祭あたりじゃなかったっけ、それ。
まあ、遅いか早いかの違いか。
「それで、その……」
「ん、何だ?っと、とりあえず上がっていくか?」
指差しつつ訊くと、真那は少しきょとんとした顔をしたものの、一つ頷いた。
……あ、狂三いるけど、大丈夫かな…………?
昇っていくエレベーターの中、遅まきながら、俺はそれに気付いた。
「う~~~ん……」
「思案。……どれにしましょう?」
大型ショッピングモール内。その一角。
瓜二つの顔に、同じ来禅高校の制服を纏った二人の少女がいる。
耶倶矢と、夕弦である。
今は、七日だという七海の誕生日に贈るプレゼントを選んでいるのだが……。
「ぬあぁぁぁぁもうっ決まらない!」
「制止。静かにして下さい。他のお客様の迷惑になります」
う、と言葉に詰まる耶倶矢。
だがまあ、正論だ。
大人しく、再度七海に贈るプレゼントを、耶倶矢は選び始める。
しかし、決まらない。
七海の好みなど、知らないからだ。
選ぶポイントになりえることと言えば、黒が好きなことくらい。しかしそれは、身に着けるプレゼントでないと意味は無い。
まだ会って一ヶ月強とはいえ、あまりにも知らなすぎるのではなかろうか。
二人はそう思うも、結局決まらないのは変わらない。
「……ねえ夕弦」
「返事。何でしょう?」
「プレゼント、決まった?」
「否定。……いえ、まだです」
顔を見合わせ、大きく溜め息を吐く。
思う感情は、自己嫌悪。
確かに、別れ際に言った台詞も、理由の一因ではある。
が、それよりも。
「……七海は、私達を救ってくれた。だから、こういう時に恩返しをしたいのに……ッ!」
「諫言。落ち着いてください耶倶矢。それは、夕弦も同じです」
これである。
恩返しの為に、七海が絶対喜ぶものを贈りたい、ちゃんと考えたい。
だから、こうも悩むのだ。
勿論、素直に七海を喜ばせたいという気持ちもある。
「……そうだよね。焦っても仕方ないし、じっくり考えよう」
「肯定。その通りです」
ということで、再度店内を見て回る。
一応、候補はあるのだ。
だが、それに七海は喜んでもらえるだろうかと考えると、どうも決めれない。
夕弦はパンダのストラップを手に取ってみたり、耶倶矢は指輪の方を見に行ったりと、何度も、何時間も悩む。結局、手にしたものを戻して、二人はまた集まるのだが。
「なかなか決まらないもんねー……。プレゼント選びって、大変……」
「肯定。まったくです」
そして、もう何度目になるかも分からない溜め息を漏らす。
「確認。もう、こんな時間ですか」
「え……、あ、ほんとだ」
「提案。……一度、帰りましょうか。選ぶのは、また明日にしましょう」
「……うん」
結局何も決まらないまま、帰ることになってしまう。
確かに、渡すのは当日でいいかもしれない。
それでも、今日、すぐに決められなかったことに二人は、どうしてもダウナーな気持ちになってしまうのだった。
そして、帰路に着く。
いくら日が高くなって、夕飯時に近いこの時間でも明るくても。
それに反するかのように、二人の心情は、深く落ち込んでしまっていた。
「俺の能力、出自、お前自身に施された魔力処理については、もう聞いてんのか。ほい、お茶」
「はいです。ですから、DEMを辞めようと思ったわけでやがります。あ、ありがとうです」
注いだお茶を渡し、今真那が座ってる所の向かい側のソファに腰を下ろす。
幸い、狂三はいなかった。
お陰で気まずい雰囲気にはならなくて済んだけど、何処に行ったかは気になる。
まあ、一日中部屋にいる訳も無いか。
んで、魔力処理も知ってるなら、今度琴里に聞いて、その処理の消しても問題無い所とかを教えてもらうか。
「それで?何か用があったんじゃないのか?」
「え、ええ、まあ。七海さんに、少しお願いがあるんですが……、いいでいやがりますか?」
「? 別に良いけど……俺?」
それに、お願いって何だ?
俺が返事をしても、真那はしばらくの間、その場から動かなかった。
あるとすれば、何を考えているのか、急に目を逸らしたり、もじもじと体を揺するだけ。
……本当、何?
自分の分のお茶が空になったところで、ようやく真那が口を開く。
「……た、立ってください」
言われた通り、その場に立つ。
「……そのまま、目を瞑って、動かないでください」
疑問しかないが、まあ、目を瞑る。
しかし、何がしたいんだろうか。
『視界』で何をしようとしているか視てもいいんだが、バレたら怒られそうだし、止めとこう。
……何分経っただろうか。
長くても五分はないと思うが、いい加減、声をかけるなりなんなりしてくれませんかね。
そして。
そんな事を思っていると。
「……!?」
突如として、暖かな感触が生じた。
思わず、目を開ける。
そして知る。
「ままま、真那……!?」
「め、目を瞑っていてと言ったでやがりましょうッ!」
「お、おうっ!?」
慌てて目を瞑る。顔は天井を。
俺は、今見えた光景を思い出す。
「な、何してるんだ?」
「抱きついてるんですが、それが何か問題でもあるでいやがりますかっ!?」
「たくさんあると思うけどなあ!」
そうなのだ。
暖かな感触とはつまり、真那自身の体温。
理由は不明だが、真那は今、俺に抱きついているのだ。
よーし、落ち着け、俺。いくら想定外でも、冷静になれば答えは見えてくる。……と思う。
大丈夫。状況は把握している。やるべきことはその理由を考えること。
……って、それが分からねえんだろうが!
あーもう、何がどうなってるんだ?
「……あのー、真那さん?」
「何でいやがりましょう?」
顔も押し付けているのか、もごもごとくぐもった声だ。同時に、おそらく口辺りがあるのであろう箇所に、くすぐったい感覚を得る。
「その、一体何故、こんなことを?」
「…………」
答えは無かった。
が、真那はその身を離してはくれた。
身振りで座っていいと示されたので、大人しく座る。真那も、先ほど座っていた場所に戻っていった。
そして、真那は口を開く。
「ということで、お願いがあるんですが」
今のがお願いじゃなかったのね。
真面目な表情を作る顔を真っ赤にしながら、真那は続ける。
「七海さん、私の――――
「よーしまずは落ち着こうじゃないか俺、そして真那。今の言葉、よ~く思い出してみよう」
何だって?『にーさま』?
兄様なのか義兄様なのか。……いや絶対『義兄』の方だろうけども。
「別に、思い出さなくても、ちゃんと分かってるですよ」
「じゃあ、何でそんなことを?」
「……理由が、欲しかったんです」
理由?
「〈ベルセルク)や〈ディーヴァ〉は――――」
「八舞耶倶矢、八舞夕弦、誘宵美九」
そう言うと、真那はなんとも言えない顔になった。
まあ、何気に名前を大事に思ってる節があるからな、真那は。
「……耶倶矢さんや夕弦さん、美九さんは、七海さんと一緒にいる理由があるでやがりましょう?」
「そうか?」
「あるんです」
断言するならあるのだろう。
それで?
視線で続きを促すと、再度真那は言葉を発する。
「だから、私も、七海さんと一緒にいてもいーという理由が欲しかったんでやがります」
「んなの、いたいから、じゃ駄目なのか?」
「確かな理由がいいんですよっ」
確かな理由、ねえ。
別に、お前が俺と一緒にいたいってなら、俺は構わないのに。
……そういうことじゃないのかな?
「〈フラクシナス〉にいたのも、それを考えていたからなんですよね」
「んで、そうして見つけた理由が、義妹になること?」
「はいです」
「……お前、五河士道は?実兄」
「話はしてあります」
マジで?学校ではそんなこと言ってなかったのに。真那に口止めでもされてたのかな。
「……確か、実妹の方がつえーに決まっていやがります、とか言ってなかった?」
「そんな覚えはねーでやがりますが……」
あ、これは原作の話だ。
「と、ともかく、お前はそんな風に思っているんじゃなかったか?」
「……已むも無し、でいやがります」
「あっさりだなあおい」
そんなに簡単に改めますか。
というか、
「なんでそこまでして、俺?五河士道とかはどうするんだよ?」
「にーさま階級では、七海さんが一番、兄様がそれと同じ、もしくは一個下ということで納得したです」
紛らわしい。そして分からん。何だにーさま階級って。
あれか。俺≧士道、みたいな?
……それこそ何でなんだよ。
「という訳で、どうでいやがりますかね?」
「何が、という訳、なのか分からんが」
でもまあ、
「別に、俺は構わないが、五河士道や琴里とかには話しておけよ?」
「当たりめーです」
ったく、どうしてこうなった?
俺がいつ、言い方は悪いが真那の好感度を上げたんだよ。会ったの、一……いや、二回じゃねえか。
真那はその後帰って行った。おそらく、〈フラクシナス〉にだろう。
程なくして耶倶矢と夕弦が帰って来たんだが、なんとなく。
落ち込んでいる、みたいだったな。
真那さぁぁぁぁンッ!!??
書いてるうちに何故か真那が攻略終了してました。あら不思議。
真那は実妹でこそ、という方には、本当に申し訳ありません。
あれですね。一応『≧』はありますけど、気休めにもなってませんね、はい。
そして、八舞メインとか言いながら出来ませんでした。ごめんなさい。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
なんか敵を増やした気がします……。(比喩(暗喩?)表現)