デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 へっ、前回の後書きどおりにはいかなかったぜッ!

 ということですみません。後書きのとおりの話になりませんでした。
 じ、次回こそは、他の精霊たちの出番もあるはずっ!
 そんな風に悠長に書いてると、いつ誕生日回が終わるか分かったもんじゃないので。なるべく早く書き上げて行きます。

 それでは、どうぞ。


第36話 七海バースデーⅡ

 精霊マンションに着くと、扉の前に見覚えのある青髪の少女がいた。

「……真那?」

 疑問に思いながら声をかける。

 なにしろ真那は、今は〈フラクシナス〉で休養中の筈だから。

 あの日。俺が反転化した時に、大怪我を負ったからだ。

 精霊である八舞姉妹は結構早くに動けるようにはなったが、真那はあくまでも人間。回復スピードは劣る。

 だから、真那はここにはいない筈なんだがな……、どうしたんだろ?

「……何と言って入るべきなんでいやがりましょう?『お邪魔します』?『急にすみません』?」

「何してんだ?こんなところで」

「ひゃいっ!?」

 背を向けていたので後ろから声をかけたんだが、そんなに驚かんでも。

 実際に数センチは浮いたんじゃないかな。

 数度目を瞬かしている間に、真那はこちらに体を向けた。

「なな七海さん、い、今、お帰りでやがりますか」

「? まあ」

 何をそんなに動揺しているんだ?

 と、それよりも。

「お前、休んでなくていいの?」

 訊くと、少し落ち着いた様子で、真那は答えた。

「ええ、まあ。というより、結構前に外出の許可は下りてはいたんですが、出る理由がねーですし、今まで〈フラクシナス〉にいたに過ぎねーんですよね」

「そうなのか?」

「はいです。あ、それに私、DEMを辞めることにしましたです」

 へえ、この時期に辞めるのか。

 原作では、天央祭あたりじゃなかったっけ、それ。

 まあ、遅いか早いかの違いか。

「それで、その……」

「ん、何だ?っと、とりあえず上がっていくか?」

 指差しつつ訊くと、真那は少しきょとんとした顔をしたものの、一つ頷いた。

 ……あ、狂三いるけど、大丈夫かな…………?

 昇っていくエレベーターの中、遅まきながら、俺はそれに気付いた。

 

 

「う~~~ん……」

「思案。……どれにしましょう?」

 大型ショッピングモール内。その一角。

 瓜二つの顔に、同じ来禅高校の制服を纏った二人の少女がいる。

 耶倶矢と、夕弦である。

 今は、七日だという七海の誕生日に贈るプレゼントを選んでいるのだが……。

「ぬあぁぁぁぁもうっ決まらない!」

「制止。静かにして下さい。他のお客様の迷惑になります」

 う、と言葉に詰まる耶倶矢。

 だがまあ、正論だ。

 大人しく、再度七海に贈るプレゼントを、耶倶矢は選び始める。

 しかし、決まらない。

 七海の好みなど、知らないからだ。

 選ぶポイントになりえることと言えば、黒が好きなことくらい。しかしそれは、身に着けるプレゼントでないと意味は無い。

 まだ会って一ヶ月強とはいえ、あまりにも知らなすぎるのではなかろうか。

 二人はそう思うも、結局決まらないのは変わらない。

「……ねえ夕弦」

「返事。何でしょう?」

「プレゼント、決まった?」

「否定。……いえ、まだです」

 顔を見合わせ、大きく溜め息を吐く。

 思う感情は、自己嫌悪。

 確かに、別れ際に言った台詞も、理由の一因ではある。

 が、それよりも。

「……七海は、私達を救ってくれた。だから、こういう時に恩返しをしたいのに……ッ!」

「諫言。落ち着いてください耶倶矢。それは、夕弦も同じです」

 これである。

 恩返しの為に、七海が絶対喜ぶものを贈りたい、ちゃんと考えたい。

 だから、こうも悩むのだ。

 勿論、素直に七海を喜ばせたいという気持ちもある。

「……そうだよね。焦っても仕方ないし、じっくり考えよう」

「肯定。その通りです」

 ということで、再度店内を見て回る。

 一応、候補はあるのだ。

 だが、それに七海は喜んでもらえるだろうかと考えると、どうも決めれない。

 夕弦はパンダのストラップを手に取ってみたり、耶倶矢は指輪の方を見に行ったりと、何度も、何時間も悩む。結局、手にしたものを戻して、二人はまた集まるのだが。

「なかなか決まらないもんねー……。プレゼント選びって、大変……」

「肯定。まったくです」

 そして、もう何度目になるかも分からない溜め息を漏らす。

「確認。もう、こんな時間ですか」

「え……、あ、ほんとだ」

「提案。……一度、帰りましょうか。選ぶのは、また明日にしましょう」

「……うん」

 結局何も決まらないまま、帰ることになってしまう。

 確かに、渡すのは当日でいいかもしれない。

 それでも、今日、すぐに決められなかったことに二人は、どうしてもダウナーな気持ちになってしまうのだった。

 そして、帰路に着く。

 いくら日が高くなって、夕飯時に近いこの時間でも明るくても。

 それに反するかのように、二人の心情は、深く落ち込んでしまっていた。

 

 

「俺の能力、出自、お前自身に施された魔力処理については、もう聞いてんのか。ほい、お茶」

「はいです。ですから、DEMを辞めようと思ったわけでやがります。あ、ありがとうです」

 注いだお茶を渡し、今真那が座ってる所の向かい側のソファに腰を下ろす。

 幸い、狂三はいなかった。

 お陰で気まずい雰囲気にはならなくて済んだけど、何処に行ったかは気になる。

 まあ、一日中部屋にいる訳も無いか。

 んで、魔力処理も知ってるなら、今度琴里に聞いて、その処理の消しても問題無い所とかを教えてもらうか。

「それで?何か用があったんじゃないのか?」

「え、ええ、まあ。七海さんに、少しお願いがあるんですが……、いいでいやがりますか?」

「? 別に良いけど……俺?」

 それに、お願いって何だ?

 俺が返事をしても、真那はしばらくの間、その場から動かなかった。

 あるとすれば、何を考えているのか、急に目を逸らしたり、もじもじと体を揺するだけ。

 ……本当、何?

 自分の分のお茶が空になったところで、ようやく真那が口を開く。

「……た、立ってください」

 言われた通り、その場に立つ。

「……そのまま、目を瞑って、動かないでください」

 疑問しかないが、まあ、目を瞑る。

 しかし、何がしたいんだろうか。

 『視界』で何をしようとしているか視てもいいんだが、バレたら怒られそうだし、止めとこう。

 ……何分経っただろうか。

 長くても五分はないと思うが、いい加減、声をかけるなりなんなりしてくれませんかね。

 そして。

 そんな事を思っていると。

「……!?」

 突如として、暖かな感触が生じた。

 思わず、目を開ける。

 そして知る。

「ままま、真那……!?」

「め、目を瞑っていてと言ったでやがりましょうッ!」

「お、おうっ!?」

 慌てて目を瞑る。顔は天井を。

 俺は、今見えた光景を思い出す。

「な、何してるんだ?」

「抱きついてるんですが、それが何か問題でもあるでいやがりますかっ!?」

「たくさんあると思うけどなあ!」

 そうなのだ。

 暖かな感触とはつまり、真那自身の体温。

 理由は不明だが、真那は今、俺に抱きついているのだ。

 よーし、落ち着け、俺。いくら想定外でも、冷静になれば答えは見えてくる。……と思う。

 大丈夫。状況は把握している。やるべきことはその理由を考えること。

 ……って、それが分からねえんだろうが!

 あーもう、何がどうなってるんだ?

「……あのー、真那さん?」

「何でいやがりましょう?」

 顔も押し付けているのか、もごもごとくぐもった声だ。同時に、おそらく口辺りがあるのであろう箇所に、くすぐったい感覚を得る。

「その、一体何故、こんなことを?」

「…………」

 答えは無かった。

 が、真那はその身を離してはくれた。

 身振りで座っていいと示されたので、大人しく座る。真那も、先ほど座っていた場所に戻っていった。

 そして、真那は口を開く。

「ということで、お願いがあるんですが」

 今のがお願いじゃなかったのね。

 真面目な表情を作る顔を真っ赤にしながら、真那は続ける。

「七海さん、私の――――義兄(にー)様に、なってもらえねーでしょうか」

「よーしまずは落ち着こうじゃないか俺、そして真那。今の言葉、よ~く思い出してみよう」

 何だって?『にーさま』?

 兄様なのか義兄様なのか。……いや絶対『義兄』の方だろうけども。

「別に、思い出さなくても、ちゃんと分かってるですよ」

「じゃあ、何でそんなことを?」

「……理由が、欲しかったんです」

 理由?

「〈ベルセルク)や〈ディーヴァ〉は――――」

「八舞耶倶矢、八舞夕弦、誘宵美九」

 そう言うと、真那はなんとも言えない顔になった。

 まあ、何気に名前を大事に思ってる節があるからな、真那は。

「……耶倶矢さんや夕弦さん、美九さんは、七海さんと一緒にいる理由があるでやがりましょう?」

「そうか?」

「あるんです」

 断言するならあるのだろう。

 それで?

 視線で続きを促すと、再度真那は言葉を発する。

「だから、私も、七海さんと一緒にいてもいーという理由が欲しかったんでやがります」

「んなの、いたいから、じゃ駄目なのか?」

「確かな理由がいいんですよっ」

 確かな理由、ねえ。

 別に、お前が俺と一緒にいたいってなら、俺は構わないのに。

 ……そういうことじゃないのかな?

「〈フラクシナス〉にいたのも、それを考えていたからなんですよね」

「んで、そうして見つけた理由が、義妹になること?」

「はいです」

「……お前、五河士道は?実兄」

「話はしてあります」

 マジで?学校ではそんなこと言ってなかったのに。真那に口止めでもされてたのかな。

「……確か、実妹の方がつえーに決まっていやがります、とか言ってなかった?」

「そんな覚えはねーでやがりますが……」

 あ、これは原作の話だ。

「と、ともかく、お前はそんな風に思っているんじゃなかったか?」

「……已むも無し、でいやがります」

「あっさりだなあおい」

 そんなに簡単に改めますか。

 というか、

「なんでそこまでして、俺?五河士道とかはどうするんだよ?」

「にーさま階級では、七海さんが一番、兄様がそれと同じ、もしくは一個下ということで納得したです」

 紛らわしい。そして分からん。何だにーさま階級って。

 あれか。俺≧士道、みたいな?

 ……それこそ何でなんだよ。

「という訳で、どうでいやがりますかね?」

「何が、という訳、なのか分からんが」

 でもまあ、

「別に、俺は構わないが、五河士道や琴里とかには話しておけよ?」

「当たりめーです」

 ったく、どうしてこうなった?

 俺がいつ、言い方は悪いが真那の好感度を上げたんだよ。会ったの、一……いや、二回じゃねえか。

 

 真那はその後帰って行った。おそらく、〈フラクシナス〉にだろう。

 程なくして耶倶矢と夕弦が帰って来たんだが、なんとなく。

 落ち込んでいる、みたいだったな。




 真那さぁぁぁぁンッ!!??

 書いてるうちに何故か真那が攻略終了してました。あら不思議。
 真那は実妹でこそ、という方には、本当に申し訳ありません。
 あれですね。一応『≧』はありますけど、気休めにもなってませんね、はい。

 そして、八舞メインとか言いながら出来ませんでした。ごめんなさい。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 なんか敵を増やした気がします……。(比喩(暗喩?)表現)

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