デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 サブタイがもろ被りですね。

 ということで、時系列的に、ただの消化イベントです。
 まあ、今回は主人公ではなく、他の精霊たちをメインに書いていくつもりです。
 ついでに言えば、ちょっとした休憩回。
 流石に、連続はきついです……。

 それでは、どうぞ。


日常編Ⅱ
第35話 七海バースデー


 結局俺の霊力の性質は、『情報の有無を改変する能力』と殆ど同じものらしい。

 俺は、全ての解答欄が埋まった解答用紙を見つつ、思い出す。

 要は、理解したものを、しているものを創り出すか消すか。

 ただしそれに、攻撃性を帯びたものが俺の精霊としての能力という訳だな。

 攻撃性というより、普通に霊力と言ったほうがいいか。

 そんな益体もないことを考えていると、チャイムが鳴った。

 期末テストが終わったのだ。

 今日は、学校の難関の一つ、期末テスト最終日だったんだ。

 と言っても、俺にとってはそうでもなかったな。

 集められていく解答用紙をなんとなしに眺めつつ、軽く伸びをする。

「はぁい、皆さん、お疲れ様でしたぁ」

 集め終えた解答を手に、教卓から岡峰珠恵教諭、通称『タマちゃん』が声をあげる。

 だが、その間延びした声は、弛緩した教室内の空気を変えるには至らなかったようだが。

 しかしそれも、次の言葉までだった。

「今日はこれから、修学旅行の班決めを行いますよぉ」

 ふむ、修学旅行か。

 確か、七月十七日からの二泊三日だったっけ。

「それでは、一班五、六人で集まってください」

 五、六人?

 原作では、それより一人少なかったと思うんだが……。

 ああ、そうか。俺たちがいるから、その分のズレが生じるのかな?

 それでも、実質二人しか変わらないんだが。まあ、気にしてもしょうがないか。

「七海よ、勿論我らと共に行くのだろう?」

「請願。一緒の班になりませんか」

 両隣の耶倶矢と夕弦から、そんな声がかかる。

 少し離れたところでは、五河士道と十香も似たようなことを繰り広げていた。

「そうしたいのはやまやまなんだが、今回は無理なんじゃねえかな」

「な……、な、何故、そのようなことを申す」

「いやさ、ほら、男女が一緒の班ということは、寝室とかも一緒になるって訳だし」

「疑問。それがどうかしましたか?」

「まあ、その、若気の至りというかなんというか……」

 若干言葉を濁しつつだからか、どうも二人にはぴんとこないらしい。

 まあ、それならそれでいいか。

 だがそんな俺に、思わぬ方角からの攻撃が加わる。

「えーでも、ナナちゃんなら良いんじゃない?」

「ほら、女ですって言えば、押し通る容姿だし」

「耶倶矢ちゃんや夕弦ちゃんと分けるのも酷だしねー」

 あ、亜衣麻衣美衣!

「うむ、此奴らもこう申しておろう。我らとを分断せしめるものなど、この世には存在せぬのだからな」

「いやだからな、そういう問題じゃないんだって」

「強引。別にいいじゃありませんか。大丈夫です。しっかり女の子を教えてあげますから」

「やめんか!」

 はあ、ったく、どうしようか。

 助けを求めて五河士道に目を向ける。

 十香にこれまた似たような説明をしていた五河士道は、視線に気付くと、こちらに歩み寄ってきた。

「山吹、葉桜、藤袴、ちょっといいか?」

「ん?どうしたんだね五河くん」

「十香ちゃんをほっといて私たちに話しかけるとは、いい度胸ね」

「用件を早く言いなさい」

 三人の流れるような言葉に、最初は引き気味だった五河士道だが、口を開く。

「その、十香と同じ班になってやってくれないか?」

 そうお願いする五河士道。

 それを聞いた三人は、一様に頷いた。

「おうともよ!任せときなさいって」

「もとよりそのつもりだったし」

「そして耶倶矢ちゃんと夕弦ちゃんも加わって、はい班完成」

 ん、さらりと耶倶矢と夕弦も加わったな。

「ま、待て、お主ら、我らを裏切るつもりか!?」

「説明。耶倶矢、最初から七海とは一緒の班になれませんよ」

「な、なんだと……!」

 いや、そこまで驚かんでも。

 というか夕弦は、最初からそれが分かってて、どうして俺を誘うんだよ。

 と、俺もとっとと班に入れてもらうか。

「なあ五河士道」

「ん?」

「俺をお前らの班に入れてくれないか?」

 少なくとも、十香と耶倶矢と夕弦が一緒にいる以上、俺らも一緒にいた方がいいだろう。

 言外にそんな意味を込めつつ訊くと、

「ああ、そうだな。別にいいだろ?殿町も」

「おう。俺は構わないぜ」

 殿町いたのか。

 まあ二人は仲良いみたいだし、決まってて当然か。

 その後、他に三人を引き入れつつ、修学旅行の班決めは終わった。

 

 七月上旬。教室にて。

 丁度俺らが転入してから約一ヶ月。教室内での扱われ方も決まってきた。

「ナナちゃん、ここ、どうするの?」

「ここ、だけ言われても、どこだよ」

「この数式。やり方教えて?」

「あー、これか。えーとだな……」

 ナナちゃん。それが俺のあだ名となってしまった。

 誰が言い出したかは分からんが(多分、亜衣麻衣美衣あたり)、いつの間にかそれが定着してしまった。男子からはあまり呼ばれないが、女子からは殆どこう呼ばれる。

 そして、俺の役割も決まってきた。

「ナナちゃーん、次こっち教えてー」

「教科は?」

「化学ー」

「あ、ナナちゃん、終わったらこっちよろしく。教科は古文ね」

 へいへい。

 ……とまあ、こんな感じ。分かるかな?

 要は、教師役。

 つい先日、先生に当てられて、数学の授業中に先生が出した問題を解いたんだが、どうやら結構難しいものだったらしい。

 その際、『東雲は頭いい』という風に思われたらしく、とある生徒に頼まれて分からないというところを教えてやったんだ。

 それが始まり。

 その生徒が俺を吹聴したらしく、気が付けば、昼休みなんかに勉強を教える役を得てしまった。

「と、これ。分かった?」

「……ナナちゃんって、字体が可愛いね。丸字で。女の子みたい」

「金輪際教えんぞ」

「あははー、ごめんごめん。うん、分かったよ。ありがとー」

 はあ。

 教えること自体はそこまで嫌いじゃない。だが、数が多い。

 これじゃ、耶倶矢や夕弦と話せる時間が減るじゃないか。

 一応、俺に用事がある場合はそちらを優先してくれているらしいが、それでも普通はこれだしなー。

 俺は古文の勉強を教え終え、次に呼ばれたところへと向かう。

 ちなみに、教えてと頼まれるのが多いのは、順に、数学、現代文、化学かな。

 ……どうでもいいか。

 そしていつも、そうしている内に、昼休みが終わる。

 今回も、通算十数人目で、予鈴がなった。

 溜息を吐きつつ席に戻ると、隣からペットボトルのお茶が渡されてきた。

「慰労。お疲れ様です、七海。どうぞ」

「夕弦か……。うん、ありがと」

 素直にそれを受け取り、蓋を開けて口に含む。

 そろそろ暑くなってくるこの季節、ずっと喋りっぱなしだったのもあって、渡された冷たいお茶は美味しかった。

 喉を鳴らして、一気に半分以上飲み干す。

「んくっ……ふう」

 手の甲で口元を拭い、ペットボトルの蓋を閉める。

 鞄にそれを入れながら、ふと思ったことを訊いてみる。

「あれ、耶倶矢は?」

「説明。ちょっと前に出て行きましたよ。すぐに戻ってくると思います」

 そうか。

 まあ、何もないならそれでいい。

 俺が次の授業の準備をしていると、程なくして耶倶矢も戻ってきた。

 さて、と、午後も頑張りますか。

 

 放課後、帰る準備をしていると、五河士道が声をかけてきた。

「七海、ちょっといいか?」

「ん、何だ?」

「その、今度の日曜日、空いてるかな?」

 日曜日?

「まあ、空いてるけど……」

「それじゃあ、その日、家に来てくれ」

「どうしてだ?」

「七海の誕生日パーティーをやろうって話になってんだよ」

 誕生日……。

「あ、そういやもうすぐ俺、誕生日じゃん」

「忘れてたのかよ」

 いやーははは、そういえばそうだった。

 数日後の七月七日は、俺の誕生日だ。原作では、『狂三スターフェスティバル』の日だな。

 まあ、当の狂三が俺と一緒にいる以上、あのイベントは起こらないか。

 残念だと思うぐらいには、あれはいい話だったけどなあ……。

 ともかく。

「ありがとう。わかった。もし詳しい日程とか決まったら、追って教えてくれ」

「ああ」

 そう言って、両者別れを告げる。

 帰る方向は一緒なんだが、微妙に時間がずれるので、まあ今言って問題はない。

 俺は耶倶矢と夕弦に視線を戻す。

 すると、

「七海よ、お主、またそのような大事なこと、我らに黙っておったのだな」

「憤慨。どうして、七海はそういう事を言ってくれないんですか」

 耶倶矢と夕弦に詰め寄られた。

 え、大事なこと?まさか、俺の誕生日のことか?

 てっきり、二人には五河士道や十香あたりから聞かされたと思ってたんだが。

「というかお前ら、誕生日ってのを知ってるのか?」

 少し声を落として、小さく訊く。

 こういう行事については、お前らあんまり知らないと思うんだが。

「当たり前であろう。要は、この世にてその産声をあげた日のこと。して七海は、それが七日なのだろう?」

 言い方は大仰だが、まあ合ってるか。

「既知。そして誕生日には、その人にプレゼントを渡すものだと聞きました」

「聞きました?誰にだ?」

「首肯。テレビです」

 テレビかい。ドラマとかアニメであったのかね。

 俺は帰る用意を終え、鞄を持った。

 そのまま教室を出ながら、会話を続ける。

「提案。では今から、七海へのプレゼントを買いに行きましょう」

「くく……そうだな。今日(こんにち)の黄昏は、そうして(とき)を潰すのも悪くない」

「つーことは、今から買い物か。わかった。どこに行くんだ?」

 いやー、嬉しいね。聞いたその日にプレゼントを買いに行くなんて言ってくれるなんて。

 だが、俺が言うと、その場に沈黙が訪れた。

 え、何?何かまずいこと言った?

「七海よ、こういうのは本来、本人が共に居合わせては駄目なのではないのか?」

「そうか?」

「否認。今日は夕弦たちだけで行きます。七海は先に家に戻っていてください」

 ……え。

 俺、いらない子?一緒じゃ駄目っすか?

 まあ確かに、こういうイベント事のプレゼントは、渡す本人に中身は内緒というのが普通か。

 それじゃあここは大人しく、引き下がるべきだな。

「まあ、分かった。それじゃあ俺は、一足先に家に帰ってることにするよ。なに、別に付いて行ったりはしない」

 それじゃあお楽しみにならないしな。別に、付いて行くフラグじゃねえからな。本当だぞ。

「請負。任せておいて下さい。びっくりするプレゼントを選んできます」

「かか、なに、我らが直々に選んであげようというのだ。半端な物を渡すわけがなかろう」

 おうよ。

「そんじゃ、じゃあな」

「移動。それでは」

「くく、首を洗って待っておるがよい」

 それ、使い方間違ってるぞ、耶倶矢。




 さしあたって、次回は八舞姉妹メインの、他の精霊たち登場、ですかね。

 私立の受験まで、あと約20と幾許か。
 やべえっす。マジで勉強に力入れねえと。
 といいつつ書いてるんですけどね。今。

 今回のバースデー回は、はっきり言ってあまり面白いものでは無いかと思いますが、狂三編までの温存ということで、どうかお願いします。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 うあ、トライさんの台詞が頭から抜けねえ……ッ!!

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