デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 美九編最終話です。

 今回はエピローグなので、文字数はとても少ないです。2000ちょっと。
 なんとか大団円で終わりました。いやーよかった。
 一時はいつ終わるんだろう美九編、とか思っていたんですが。

 それではどうぞ。


第34話とエピローグ

「それじゃあ、判決を言い渡すわ」

 時刻は夜中。場所は〈フラクシナス〉艦内、司令室。

 そんな台詞を、琴里は発した。

 今この室内には、俺、琴里以外にも、令音さんや神無月さんが琴里の横に控えていたり、それより少し離れて五河士道の姿がある。

 琴里を除けば、精霊たちの姿はない。

「ああ」

 その言葉に、俺は頷く。

 つい先程、俺は〈フラクシナス〉に回収された。

 あの後、美九はまた琴里に連絡し、その数分後には俺の姿はここにあった。

 一緒に行きたがっていた美九や八舞姉妹を説得したのは、令音さんらしい。

 さてと、俺は一体何をすればいい?

「……七海、あなたは――――」

 固唾を呑んで、次の言葉を待つ。

 さて、どれだけ酷い罰が待ってるかな、と。

 覚悟の割に、特に緊張してはいないが、それでも無じゃあない。

「――――これからずっと、未来永劫、何があっても、彼女たちの傍にいなさい」

「……は?」

「以上よ」

 いやいや、待て。以上で締めるな。

 は?ずっと傍にいなさい?そんな、それは、罰にはならないだろ。

 訳が分からないという顔で、俺は琴里を見上げる。

「……琴里、説明してやったらどうだ?」

「い、言われなくてもするつもりだったわよ」

 それが本当かどうかはともかく、やってくれるなら早く頼む。あ、あとナイス五河士道。

「いい?あなたはあの娘たちを傷つけたわ。だから、自分が傷つけた罪を忘れない為にも、ずっと傍にいなさい。そして、事ある毎に思い出しなさい。――――自分はそれを、失わせようとしたってことを」

「…………ああ」

 成程、理解した。納得もした。

 自分が壊そうとしたものを、一番近くで見続ける。

 確かに、罪を忘れさせない為には、最善の判断だ。

 これが、楓の言ってた、『君が死ぬ必要が無く、誰も悲しまない償い』、か。

 おそらく、琴里だけの判断ではないだろう。

 令音さんや五河士道たちとも話し合って、俺に課す罰を考えたのかもしれない。

 それこそ、判決を決める時複数いる、裁判官のごとく。

「……ありがとう」

「別に、感謝なんてしなくていいわ。それが最善と判断したまでよ」

 そのことに感謝してもいるんだがな。

「そ・れ・で、一つ訊いていいかしら?」

 うん?

 唐突の話題の転換に、無言で返してしまう俺。

 だが、一応催促とは受け取ってもらえたらしく、言葉を続けてくる。

「……どうして、美九があんなに上機嫌だったか、教えてくれないかしら?一応、映像はあるのだけれど」

「……マジで?」

「マジで」

 うわー、録られてたのかよ。美九は知ってたのかよ?

 しかも嘘は無意味という脅迫付き。誤魔化しも効かない。

 しかし正直に言うのも恥ずかしいので、逃げの一手を打つことにしよう。

「え、映像があるなら、その通りだっつの」

「一応確認したいのよ。それに、既に私たちは美九が極度の男嫌いって知ってるもの。それなのに、あなたと一緒にいたのに上機嫌、しかも自分の家に上がらせているときた。理由ぐらい知りたくもなるわ」

 つまり、何があったかよりも、何を話したかの方を聞きたいのかな。

 だがなあ、それも録音出来てると思うんだけどなあ……。

 そこで俺は気付いた。

 こちらを見下ろす琴里の表情が、にやりとした笑みであることに。

「……おい、まさかお前、わざと言ってないか?」

「あら、心外ね」

「そんな笑み浮かべたまま言われても、信憑性ゼロだぞ」

 言われた琴里は、その笑みを楽しそうなものに変えた。

 五河士道に目を向ければ、それに気付いたらしく、小さく手を上げてくる。

 言葉はないが、仕草はどう見ても、『すまん』だった。

 あれか。公開羞恥プレイ的なものでもさせる気だったのか、琴里は。

「まあ、もう遅いし、続きは明日にしましょう」

「続き?」

「ええ。あなたの事について、もう少し詳しく話し合いたいと思って」

 別に構わないが……。

「学校は?主に俺とお前」

「休みに決まってるでしょう。検査とか色々残ってんのよ、こっちも」

 ああ、そういえば、霊力を一時完全に取り戻したから、ちゃんと検査する必要はあるのか。

 それに、〈ファントム〉のことも思い出しただろうし、それもあるのかもしれない。

「なら、俺は帰っていいのか?」

「いいわよ。もう、暴れることはないでしょ?」

「当たり前だ」

 言い返し、俺は司令室を出て行く。転送装置のある場所に行くためだ。

 出る直前、声がかかった。

「……あの娘たちを、お願いね」

 俺はそれに、親指を立てた手を掲げ、応じた。

 

 マンションの前に送ってもらった。

 そのまま、俺たちが使っている部屋がある階へとエレベーターで昇っていく。

 そうして着いた部屋の扉の前で、しばしの逡巡。

 しかし、それも一瞬。

「……ただいま」

 部屋の鍵を開けて、呟きつつ。

 九割方寝てたとはいえ、一週間振りの我が家(?)だ。

 なんて理由ではなく。

 耶倶矢と夕弦、狂三に合わせる顔がないからという理由で、俺は入るのを躊躇い、声も呟きだったんだ。

 だが、そんな思考は、扉を開けると同時に吹き飛んだ。

 なぜなら、

「七海……っ!!」

「抱擁。……お帰りなさい、七海」

「無事で何よりですわ、七海さん」

 飛びつくように否、事実飛びついてきた耶倶矢に、その後に遅れて抱いてくる夕弦がいたからだ。その後ろでは、狂三が微笑んでいる。

 目を白黒させつつ現状を把握しようと三人を見渡すが、何も分からない。

 それでも、やっておくことは分かった。

 俺に顔を押し付けてその涙と声を隠そうとする耶倶矢と、耶倶矢程ではないにせよ、目元に涙を溜めている夕弦を撫でつつ。狂三に微笑み返して。

 

「……ただいま。みんな」

 




 ……なんか物足りない。

 さて、美九編の次は狂三編になるんですが、その前に消化しておきたいイベントがあるので、先にそっちの話を書きます。
 題して、『日常編Ⅱ』or『バースデー&スクールトリップ』。
 要は、誕生日回と修学旅行です。
 時系列的にもうすぐ七月なので、確か原作では修学旅行になっていた気がする為、時間的に先に書いてしまおうということで。
 あと、誕生日と言っても、勿論主人公の誕生日ですよ。
 ほら、『七』海ですから、誕生日はやっぱりあの日かなと。
 その後が狂三編です。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 ほんと、狂三編が中々来なくてすみません……。

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