今回はエピローグなので、文字数はとても少ないです。2000ちょっと。
なんとか大団円で終わりました。いやーよかった。
一時はいつ終わるんだろう美九編、とか思っていたんですが。
それではどうぞ。
「それじゃあ、判決を言い渡すわ」
時刻は夜中。場所は〈フラクシナス〉艦内、司令室。
そんな台詞を、琴里は発した。
今この室内には、俺、琴里以外にも、令音さんや神無月さんが琴里の横に控えていたり、それより少し離れて五河士道の姿がある。
琴里を除けば、精霊たちの姿はない。
「ああ」
その言葉に、俺は頷く。
つい先程、俺は〈フラクシナス〉に回収された。
あの後、美九はまた琴里に連絡し、その数分後には俺の姿はここにあった。
一緒に行きたがっていた美九や八舞姉妹を説得したのは、令音さんらしい。
さてと、俺は一体何をすればいい?
「……七海、あなたは――――」
固唾を呑んで、次の言葉を待つ。
さて、どれだけ酷い罰が待ってるかな、と。
覚悟の割に、特に緊張してはいないが、それでも無じゃあない。
「――――これからずっと、未来永劫、何があっても、彼女たちの傍にいなさい」
「……は?」
「以上よ」
いやいや、待て。以上で締めるな。
は?ずっと傍にいなさい?そんな、それは、罰にはならないだろ。
訳が分からないという顔で、俺は琴里を見上げる。
「……琴里、説明してやったらどうだ?」
「い、言われなくてもするつもりだったわよ」
それが本当かどうかはともかく、やってくれるなら早く頼む。あ、あとナイス五河士道。
「いい?あなたはあの娘たちを傷つけたわ。だから、自分が傷つけた罪を忘れない為にも、ずっと傍にいなさい。そして、事ある毎に思い出しなさい。――――自分はそれを、失わせようとしたってことを」
「…………ああ」
成程、理解した。納得もした。
自分が壊そうとしたものを、一番近くで見続ける。
確かに、罪を忘れさせない為には、最善の判断だ。
これが、楓の言ってた、『君が死ぬ必要が無く、誰も悲しまない償い』、か。
おそらく、琴里だけの判断ではないだろう。
令音さんや五河士道たちとも話し合って、俺に課す罰を考えたのかもしれない。
それこそ、判決を決める時複数いる、裁判官のごとく。
「……ありがとう」
「別に、感謝なんてしなくていいわ。それが最善と判断したまでよ」
そのことに感謝してもいるんだがな。
「そ・れ・で、一つ訊いていいかしら?」
うん?
唐突の話題の転換に、無言で返してしまう俺。
だが、一応催促とは受け取ってもらえたらしく、言葉を続けてくる。
「……どうして、美九があんなに上機嫌だったか、教えてくれないかしら?一応、映像はあるのだけれど」
「……マジで?」
「マジで」
うわー、録られてたのかよ。美九は知ってたのかよ?
しかも嘘は無意味という脅迫付き。誤魔化しも効かない。
しかし正直に言うのも恥ずかしいので、逃げの一手を打つことにしよう。
「え、映像があるなら、その通りだっつの」
「一応確認したいのよ。それに、既に私たちは美九が極度の男嫌いって知ってるもの。それなのに、あなたと一緒にいたのに上機嫌、しかも自分の家に上がらせているときた。理由ぐらい知りたくもなるわ」
つまり、何があったかよりも、何を話したかの方を聞きたいのかな。
だがなあ、それも録音出来てると思うんだけどなあ……。
そこで俺は気付いた。
こちらを見下ろす琴里の表情が、にやりとした笑みであることに。
「……おい、まさかお前、わざと言ってないか?」
「あら、心外ね」
「そんな笑み浮かべたまま言われても、信憑性ゼロだぞ」
言われた琴里は、その笑みを楽しそうなものに変えた。
五河士道に目を向ければ、それに気付いたらしく、小さく手を上げてくる。
言葉はないが、仕草はどう見ても、『すまん』だった。
あれか。公開羞恥プレイ的なものでもさせる気だったのか、琴里は。
「まあ、もう遅いし、続きは明日にしましょう」
「続き?」
「ええ。あなたの事について、もう少し詳しく話し合いたいと思って」
別に構わないが……。
「学校は?主に俺とお前」
「休みに決まってるでしょう。検査とか色々残ってんのよ、こっちも」
ああ、そういえば、霊力を一時完全に取り戻したから、ちゃんと検査する必要はあるのか。
それに、〈ファントム〉のことも思い出しただろうし、それもあるのかもしれない。
「なら、俺は帰っていいのか?」
「いいわよ。もう、暴れることはないでしょ?」
「当たり前だ」
言い返し、俺は司令室を出て行く。転送装置のある場所に行くためだ。
出る直前、声がかかった。
「……あの娘たちを、お願いね」
俺はそれに、親指を立てた手を掲げ、応じた。
マンションの前に送ってもらった。
そのまま、俺たちが使っている部屋がある階へとエレベーターで昇っていく。
そうして着いた部屋の扉の前で、しばしの逡巡。
しかし、それも一瞬。
「……ただいま」
部屋の鍵を開けて、呟きつつ。
九割方寝てたとはいえ、一週間振りの我が家(?)だ。
なんて理由ではなく。
耶倶矢と夕弦、狂三に合わせる顔がないからという理由で、俺は入るのを躊躇い、声も呟きだったんだ。
だが、そんな思考は、扉を開けると同時に吹き飛んだ。
なぜなら、
「七海……っ!!」
「抱擁。……お帰りなさい、七海」
「無事で何よりですわ、七海さん」
飛びつくように否、事実飛びついてきた耶倶矢に、その後に遅れて抱いてくる夕弦がいたからだ。その後ろでは、狂三が微笑んでいる。
目を白黒させつつ現状を把握しようと三人を見渡すが、何も分からない。
それでも、やっておくことは分かった。
俺に顔を押し付けてその涙と声を隠そうとする耶倶矢と、耶倶矢程ではないにせよ、目元に涙を溜めている夕弦を撫でつつ。狂三に微笑み返して。
「……ただいま。みんな」
……なんか物足りない。
さて、美九編の次は狂三編になるんですが、その前に消化しておきたいイベントがあるので、先にそっちの話を書きます。
題して、『日常編Ⅱ』or『バースデー&スクールトリップ』。
要は、誕生日回と修学旅行です。
時系列的にもうすぐ七月なので、確か原作では修学旅行になっていた気がする為、時間的に先に書いてしまおうということで。
あと、誕生日と言っても、勿論主人公の誕生日ですよ。
ほら、『七』海ですから、誕生日はやっぱりあの日かなと。
その後が狂三編です。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
ほんと、狂三編が中々来なくてすみません……。