デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 新年明けましておめでとうございます&久しぶりです皆様。

 約二週間振りです皆様。新年一発目の投稿となります。
 宿題もあとはテスト用に詰め込むだけとなりましたので、今日、更新させていただきました。

 それでは、どうぞ。


第31話

「うん。なかなか面白かったよ、七海くん」

 声が聞こえた。

 聞き覚えのある声だ。

「いや~、まさかあんなことになるとは思わなかったよ」

 それに起こされるようにして、目を開ける。

 まず見えたのは、顔。

 次いで、黒。

 寝ているのであろう俺を見下ろす楓の顔と、背景の色だった。

 光は無いだろうに、物が見えるってのも、不思議だな。

「あ、起きた?」

「……まあ、な」

 両手をついて、身を起こそうとする。

「…………?」

 出来なかった。

 右手の感覚はあったものの、左手の感覚は無かったからだ。

 右手に押されるようにして、左に倒れる。

「ぷっ、何やってんの?」

「あ、ああ……左手の感覚が……」

 右腕だけで身を起こしつつ、ああ、と納得する。

 そういえば、

「左腕、無いんだっけ……」

 最早朧気だが、ぼんやりと覚えている。

 確か、エレンと戦っている最中に、左腕は無くなったんだっけ。

 ……戦っている、か。

 俺は、また。

「……護れなかったのか」

「誰かを護ろうとするなんて、随分おこがましい事を言うようになったね、七海くん」

 うるせ。

 大体、その原因はお前じゃないか。

 いや、違うか。

「そうだね。ボクが死んだことで君が何を思ったとしても、それは君自身の問題だよ。ボクは関係ない」

 思考を読むな。

 だがまあ、言ってることは正しいか。

 俺は、感覚の無い左腕に目を向ける。

「ああ、七海くんの左腕は、現実世界において無くなっているよ。まあ、この世界では闇っぽいものに包んであるから、傷口は見えないと思うよ。顔の右半分含めてね」

 言われて思い出す。

「……そういや、そうだったな」

 そういえば、自分で顔を掻き毟ったんだっけな。

 鏡が無いから確認出来ないが、まあ、そっちの方が良かったかもしれない。

 引っ掻き傷なんて、あまり見たくない。

「さて、そろそろ本題に入ろうというか、ちゃんとお話しようか」

 本題?

「別に君の信条なんてどうでもいいんだけどね、まあ、それを踏まえたお話さ」

「……一体、どんなことを話すつもりだ?」

 いや、訊かずとも分かっている。

 今話すことなんて、決まっているだろう。

「暗いなあ……まあ、しょうがないかな」

 呆れたように言いつつ、楓は話し出す。

「今回の件、君はどう償うつもりだい?」

 いきなり話の核心を突いてきやがった。

 まあ、そっちの方が気が楽、か……?

「償う、か。……どうするべきか」

「いや、それを訊いてるんだって」

 分かってるっての。

 しかし、まあ……。

「…………はあ」

「ああもう!自分で考え始めていきなり落ち込まないでくれるかなあ!?話が進まないじゃないか!というか、立場が逆転しているというか役が逆転してるよ!」

 言っている意味が分からん。

「本来、七海くんがツッコミ役じゃないか」

「いや、そんなことはないと思うぞ」

「ううん、絶対そうだね。ってか、それも一種のツッコミだね」

 そうかなあ……?二重の意味で疑問を覚えるぞ。

 ……話が逸れた。誰の所為だよ、まったく。

「どう考えても主な責任は君にあると思うな」

 うるせ。

 で、償い、な。

「…………はあ」

「ループすんにゃああぁぁぁっ!」

 ははは、冗談だ。ちゃんと考えてるから。

 といっても、答えは出ないがな。

 一番良いのは、

「あ、七海くんが死ぬ、っていうのは、ただの逃避だから償いにはならないよ?」

 言われてしまった。

「そうか?俺はあいつらを殺そうとしたんだ。その命をもって償うべきだろ」

「まあ、そこらへんは任せるよ。ボクも一応言っておきたかっただけだし」

 へいへい。

「……うん、大分戻ってきたね」

 戻ってきた?

「こっちの話だよ」

 そうかい。

 あ、また思考を読まれた会話になってしまった。

 なんか嫌なんだよなあ……。じゃあ何か話せよって結論になるか。

「自己完結しないでほしいなあ。ボクが割り込む余地がなくなっちゃうじゃないか」

 ほら、また。

「あ、そうそう。七海くんに言っておきたいことがあるんだった」

「何だ?って、結構今更だが」

「とりあえず、一つ目」

 一つ目、ってことは、二つ目以降があるのか。

 で、なに?

「七海くんってさ、自分の能力の使い道を一個だけ見落としてるよね」

「見落としてる……?」

 そうか?霊力ですら理解さえすれば創造/消去できるこの能力の、使い道?

 一体、何がある?

「ヒント。君の能力は、理解さえすれば何でも創りだせるっていうものだよね?」

「ああ、まあ。造りだすだけではないが」

「ヒント二つ目。君が今、失っているものは?」

 俺が今、無くしているもの……?

 何があるだろうか?

 まずもって、この世界に俺が持ってきたものという物が無い。である以上、失ったものなんて……。

「……あ」

 違う。一つだけ持ってきたものがある。

「気付いたみたいだね」

「……俺、自身……?」

 正解、と楓は言った。

 この世界で、この夢の中で俺が失っているもの。

 言い換えるなら、俺から失っているもの、だ。

 ある。

「左腕と、顔の右半分、か」

「うん。正確には、顔の右半分ではなく、表面付近右側、だね」

 大して変わらん。

 しかし、それが俺の能力とどう繋がる?

「もう言っちゃうけどさ。君の能力で傷や怪我の修復は可能なんだよ」

「は?いや、俺の能力は生物には使えないんだろう?」

「それは消すときだけ。創るのに問題はないよ。まあ、だからといって新たな生命を創るのは出来ないんだけど」

 そうなのか。

 どうやら俺は、勘違いをしていたらしい。

 傷の回復、いや、修復が出来るのなら、真那と戦った後の太腿の傷も治せたのか……。

「……で、それが一つ目?」

「そうだよ。そんじゃ二つ目」

 はいはい、次は何だ?

「君の右目のことなんだけど」

 右目?

 今言った俺の能力の使い方で、普通に治せるじゃん。

「まあ、そうなんだけどね。それじゃあ面白くない」

 面白くないて。

「ということで、右目はボクからプレゼントすることにするよ」

 字面だけ見ると猟奇的だなあ……。

 んで、プレゼント?

「そう。君が彼女たちを殺そうとした罰、証明、戒め、なんでも良いけど、そういうこと」

「……!」

 ……そういうことか。

 おそらく、楓はこう言いたいのだろう。

 君の信条に則って、ボクから罰を与えよう、ってね。

「よく分かってるじゃないか」

 まあな。

 で、右目はその烙印ってところか。

「そゆこと。でもまあ、左腕を戻すのも、右目を与えるのも、君が起きてからだね」

「だな」

 ということは、

「そ。そろそろおはようの時間だよ」

 やっぱりな。

 そんじゃ、

「じゃ~ね~」

「……またな」

 さてと、起きたら何処だろうか?

 

「ん……」

 目が覚めた。

 感覚的には、ついさっきまで起きていたのに、また目が覚めるという不思議なものだが、特段不快感があるわけでもない。

「ん、起きたかね」

「……令音さんですか」

 声の発生源に目を向けると、椅子に座った令音さんがいた。

 なにやら機械を弄っているけど、何の機械か分かんないのでスルーしておこう。

 居場所は見覚えがある。医務室だ。

「……俺、どれぐらい寝ていましたか?」

「約一週間だ。正直、このまま寝たままかと思ったよ」

「一週間!?」

 おいおい嘘だろ。そりゃ長過ぎだって。

 八舞姉妹の霊力を消したときだって、三日三晩だったんだぞ?

 ……あ、そうか。

「……消していたから、その分の負担が返ってきたのか」

「ん?どうかしたのかい?」

「あ、いえ」

 俺が反転体になっている間、とにかく消すことを主体とする戦闘方法だった。

 攻撃しかり、移動しかり。

 相手の攻撃を消したりもした。移動する際に、距離を消すことで擬似瞬間移動を再現した。

 それらの連続が負担となって、返ってきたわけか。

「……?」

 そういや、何で反転体時のことを覚えてるんだろ?

 ……ま、いいか。覚えてないよりはマシだ。

 俺の罪を覚えていられるからな。

「……さて」

 考える横、令音さんが声をあげた。

「とりあえず、今のナナの状況について説明しておこうか」

「は、はあ……」

 俺の状況、ねえ……。

 見たところ分かるのは、顔の右側と、胴体ごと左肩に巻かれた包帯ぐらいか。

「左腕と顔の処置はしてある。ただ、流石に失くした左腕と傷ついた右目の眼球の代わりは無くてね、そのうち義手なんかをどうするか決めるから――――」

「あ、そのことなんですけど」

「……なんだい?」

 俺は声を被せ、先程判明した能力の使い方について説明する。

「俺の能力で左腕とかは治せるんで、この包帯を取ってくれませんかね?」

「……別に構わないが、本当かい?」

 その質問に肯きつつ、包帯を外してもらう。

 なるべく断面は見ないようにして、っと。

 まあ、名前はいいか。特に思いつかないし。

「――――――」

 無言で目を閉じ、イメージする。

 思うのは、見慣れた左腕。

 右目は、後ででいい。楓が何か言ってたし。

 数瞬後。

「…………ほう」

 令音さんの驚いた声が聞こえた。

 閉じていた目を開け、左腕に視線を移す。

 あった。

 見慣れた左腕が、そこにはあった。

「よし」

 試しに動かし、手を握ったり開いたりしてみるが、特に違和感も無い。

 成功だった。

 あとは、右目なんだが……。

 俺は自分で包帯を外しつつ、令音さんにお願いする。

「すいませんが、鏡かなにかないですかね」

「ん、ちょっと待っていたまえ」

 そう言って、令音さんは部屋を出て行ってしまった。

 そうして、俺が包帯を外すのに悪戦苦闘している間に、令音さんは戻ってきた。

 今度はこっちが待ってもらいながら、ようやく外し終える。

「じゃあ、ちょっと貸してくれませんか」

 はい、という風に手渡された手鏡を持って、右目を映す。

 楓が何か言っていたし、一体何をしたんだろうかと思って見ると、

「お、おうっ!?」

 つい凝視してしまった。

 そこに映っているのは、確かに目だ。

 しかし、色が全く違った。

 本来白い部分が黒で、黒い部分が赤。

 不気味とかそういうのを通り越して、「うわっ……」って引くレベル。

「……うわー」

 現実に言ってしまった。

 まあ、そのぐらい衝撃だったのだ。

 だってさ、普通こんな色の目を持った奴なんていないだろ?そりゃびっくりするっての。

「……ん、どうかしたのかね」

「ええ、まあ……右目がこんなことに」

 顔を向けて右目を見せると、令音さんも驚いたようだった。

 ま、まあ、義手や義眼の心配も無くなったし、ちゃんと機能するし、気にしないでいいかな。うん。

 

 どうやら今はお昼らしい。つまり、八舞姉妹や美九は学校だ。狂三も他の人たちと一緒に来るつもりらしい。

 俺は〈フラクシナス〉内を当ても無く歩きながら、ぼんやりとしていた。

 既に服装は私服に着替えてある。

 その際、どこからか紛れ込んでいた眼帯があったので、令音さんも知らないらしく、楓からのアフターケアということで右目を隠させてもらっている。

 まあ、多少イタくなるとはいえ、普通に目を晒すよりかはマシか。

「さて、と」

 俺は周りに誰もいない及び何も無いのを確認して、あることを実行した。

 目を閉じ、周囲を『視る』。

 ……理解完了。

 数瞬後。

 俺は空中にいた。

 空気がうなる音が耳元で聞こえる。

 〈フラクシナス〉の床部分を消したからだ。

 俺が落ちていった後に全く同じ情報体を創りだした、つまりは元に戻しておいたので、何か不具合が生じることはない筈だ。

 そんなことをした理由は簡単。

「……やっぱり、命を奪おうとしたのならば、自分の命を以って償うことにするよ」

 誰に向けたでもなく、そう呟いた。




 そう言えば、前回がなんかあまり盛り上がらない理由が分かりました。
 大技を止める際の雄叫び的なものが無いからですね。キャラ上出来ませんが。

 ということで、大分短くというか本来の文字数に戻りました。
 次回からようやく美九と主人公を絡ませれそうな気がします。……次々回かな?
 そして三人称に慣れた所為か、冒頭の一人称がややおかしくなってしもうた……。

 ここでちょっとした暴露話。
 もともと美九編は、『主人公の目を変えたいな~』と『主人公を反転体にしたいな~』と『美九が時系列的に書きやすいかな~』というのが合体してできた話なんですよね。大分迷走もしましたが。
 その際にVSエレンも出てきたんですよ。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 今年も、どうかよろしくお願いします。

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