この話か、次をみればわかるかと。
『情報の有無を改変する能力』だってさ。俺のこの世界に来たことによって生じた能力。
効果とかについては、頭に直接入ってきやがったからな。最初、少し焦ってしまった。
で、効果の説明といこう。
要は、何かを作り出したり、消したりするってことだな。『何か』を作り出すのは簡単。その作り出した『何か』を消すのも簡単。ただし、もともとあった『何か』を消すのはすっごい難しい。キツい。それが、規制。
しかも、作り出せるものは、自由自在。炎を纏った剣も良し。氷で出来た盾も良し。何でもありだ。
つまり、その、そこに『有る』という情報+その『付加情報』=作り出す『何か』だ。
なんで消すのは難しいのかは、知らん。規制かなんかだと予想しているが。
ということで、
「今からやるのは、『鬼ごっこ』だ」
勝負内容。それは、鬼ごっこだ。ルールはここでは割愛してもいいだろう。
「鬼ごっこ?本当にそれでいいのか?手加減はせぬぞ?」
「驚愕。夕弦達のことをあそこまで知っておきながら、それを選ぶとは」
あそこまでって。対して特別なことなんて無いけどな。
ま、元の世界で最新刊までの内容を知っているからな。一応。
「ああ。構わない。分かって挑んでる」
これで勝ちさえすれば、こちらの優位性を立証できる。
「ふん。我らに、速さでの勝負を挑んだこと、すぐに後悔してやるわ」
「承諾。では、開始しましょう」
うし、いっちょやるか。
「じゃ、俺は10秒待つ」
俺の予想が正しければ、こいつらは・・・
「我らにそんなに時間をやっていいのか?」
「ああ」
「了承。では、始めましょう」
ああ、『俺たちの戦争(デート)を始めましょう』ってな。
勝算は、微妙。勝率も、微妙。でも。0じゃぁない。
まずは1秒。
開始早々、二人は空中へと飛び立つ。流石、精霊界一の機動力。速え。
「あーー・・・」
過小評価してたつもりは無かったんだが。
本で読むのと生で見るのとじゃ違うってことかな。もうあんなに小っさい。
だけど、俺の推測どおりなら。
次に2秒。
まだ飛び続ける二人。対となる鎖付きの錠。
まるで、それは二人じゃなく、一人の八舞という精霊だ。
あ、そういえば、あいつらはもとより、同一人物なんだっけ。
こちらはまだ1/5しか経ってない。でも、動くのはルール違反。
3秒。
いきなり。そう、いきなりだ。彼女たちは止まった。
そして、顔を合わせてひとつ頷く。すると、こっちに戻ってきた。その間、約1秒足らずといったところか。
どうやら、俺の認識できる限界速度も引き上げられてるらしい。
元の世界じゃ、絶対に把握出来てないな。速すぎて。
それで、5秒。
彼女たちは言う。
「ふん。流石に我らが飛び続けると、貴様じゃ何処に行ったかも分からんだろう」
「首肯。ということで、ここで残りの時間、待ってあげます」
推測どおり。
彼女たちは、勝負は大好きだが、一方的なものは好まない。それが俺の推測したこと。
だから、ある程度経つと、戻ってくるだろうと踏んではいた。
だからこその10秒。彼女達が何かを話すのも込みでの時間。
9秒。
俺は何も言わずに、ただ、口端を上げてニッと笑う。
―――直後、背中から翼が生える、いや、顕現する。
八舞の対の翼が基礎になっていて、形は翼というより、装飾の域。
ところどころから、光の粒子のようなものが溢れるようになっていて、まるで、とあるゲームのようだ。
ま、それもイメージしていたから当たり前だがな。
「!なんだ、それは・・・!」
「驚愕。びっくりです」
へへっ、作戦成功って感じ?
さ、10秒経ったぞ?もう、スタートするからな?
そして、俺は地面を蹴って、二人への元へと飛び出す――――――!
0.5秒。まだ驚愕から抜け切れてない。
さらに、0.3秒程。こちらを認識したっぽい。目の焦点がこちらに合う。
そして、0.7秒程で逃げ始める。
ほう、反応速度がすげえ。こちらが飛び出して、あちらが逃げ出すの1.5秒だぞ?
そして、『鬼ごっこ』が始まった。
実力は僅差・・・だと思いたい。
だけど・・・
「ふはは!そんなものか!大見得切った割にはそうでもないな!」
「嘲笑。はやく追いついてみなさい」
くそっ、あいつらは話しかける余裕すらあるのに、こっちは追いかけるのに必死だってのによ!
けど、ここで必死こいてる姿みせる訳にはいかないしな。
「はっ!余裕ぶってる割にはぜんぜん距離が開かねえじゃないか!」
逆に言えば、差も埋まってないってことだけどな・・・
最初の0.5秒分の差。これが埋まらない。
つまり、二人と俺の速度は一緒ってことなんだが、それじゃ駄目なんだよなあ・・・
かれこれ一時間ぐらいか?この勝負。時計もないし、風景も嵐でわかりゃしないし。
どうやら、ここら辺一帯からはあまり離れないで、逃げているらしい。俺がいた場所が見える。
そんな時だ。知っているけど、あまり聞きなれない音・・・警報?それが聞こえた。
・・・あ、もしかして、
「総員、攻撃開始!目標、識別名〈ベルセルク〉!及び正体不明の精霊だと思われる者!」
やっぱり、ASTか!
となると、さっきのはやっぱり空間震警報!目標は俺らか!
しかし、何でここが分かった?・・・あ、そういやここら辺一帯で、勝負したんだっけか。
どうやら、速すぎてこちらを狙えてないみたいだが、一応、言っておくか。
「おい!二人とも!」
俺が、そう呼びかけると、
「む?何だ?」
「質問。何でしょう?」
よし、こっちに応えてくれた。
俺らは、未だ『鬼ごっこ』をしながら、叫ぶ。
「一時、勝負は中止!休戦だ!」
ASTがいるのに、勝負は続けきれない!あっちをどうにかしねえと!
「?何でだ?」
「疑問。意味が分かりません」
どうやら、あっちは分かってないらしい。
「あいつらを、どうにかしたい」
俺が止まると、向こうも、すぐに止まった。大体1秒後ぐらいに。
「あいつらは、ASTといって、精霊たちを殺そうとしている組織だ」
多分、二人ともあいつらのことを知らないだろう。説明も忘れない。
ということで、二人が何かを言う前に行きますか。
「お前らはここに居ろ。俺はあいつらを倒してくる」
勿論、嘘だ。別に俺がいなくても、二人なら何とかするだろうしな。
本当は、自分の能力をもっと練習したいだけだ。さっきから、翼の顕現と操作しかしてない。
俺はそう言い残し、すぐさま体の向きを反転させASTの元へ突撃する。
さ、本当の『勝負』を始めよう。
作中の『とあるゲーム』ですが、ヒントとしてはファではじまって、ルもしくはンで終わるゲームです。PSPとPCであります。
次の話で、正解が出る筈です。