というわけで、2日ほど遅れましたが更新です。
もとは金曜に更新しようと思っていたんですが、少し絶望というか、そんな感じの感情に襲われ、投げ出してしまいました。すみません。
いやですね。今月、デアラのアンコール3が出るじゃないですか。自分は、金欠なので正月明けに買うと思うんですが、やはり普通のやつです。
でもですね、どこかで見た限定版の表紙の絵(だと思われる)を見て、一瞬で沈みました。
そこにあったのは、皆さんは知っているかもしれませんが、狂三さんのサンタコスだったんですよ!
感覚的には吐血しましたね。可愛かったです。やばかったです。
でも、それを予約なんかしておらず、いや、金銭的理由で出来ず、身を削る思いで見逃していたんですが、まさか、こんな表紙だったなんて……!
これが最初の呟きに近づくわけです。(主にお金の部分)
というわけで、ここまで自分の愚痴につき合わせてしまい、すみません。ただ、どうしても誰かに言いたかったのです。許してください。
それでは、どうぞ。
ある陸上自衛隊駐屯地にて。
「日下部隊長、霊力反応が感知されました。恐らく、〈ディーヴァ〉」
「〈ディーヴァ〉!?場所は?」
「えーっと……」
少しの間をあけて、隊員の一人は霊力が感知された位置を告げる。
それを聞いた日下部隊長と呼ばれた女性は、一つ頷き、
「今ここにいない隊員も集めてちょうだい」
「わかりました」
そして、言われた隊員は各員に連絡を発する。
しかし、幸いにも殆どの隊員はこの駐屯地内にいるので、すぐに大半が揃う。
「よし、皆集まったわね。あ、折紙は?……そう、体調が優れないのね。わかったわ」
一人の欠員を除いて集まった面々に向かって、声を張り上げる。
「それじゃあ、行きましょうか!」
『了解!』
霊力反応があった場所へと、飛び出した。
それよりさらに前、とある建物の屋上。
そこには、三つの影があった。
「…………」
「む、むぅ……」
「沈黙。……」
七海たちが飛んでいった方を見ている狂三と、会話の糸口を掴めていない耶倶矢と夕弦であった。
最初は目で追えていた耶倶矢と夕弦だったが、その姿が見えなくなってからは、今のような気まずい沈黙の中にいた。
だが、会話の話題も無く、だから会話は出来ず、そんなこんなで今に至る。
「お、おい」
意を決して、といった風に耶倶矢が狂三に話しかけた。
呼ばれた狂三は、その視線と体を耶倶矢と夕弦に向けた。
「どうかしましたの?」
「貴様、名は何と申す?」
耶倶矢の後ろでは、夕弦が「応援。ファイトです、耶倶矢」などと言っていた。
狂三は、きょとんとした顔になり、すぐに、得心がいったという表情になる。
「あら、そういえば自己紹介がまだでしたわね」
彼女は、自身のゴシック調のドレスのスカートの裾を掴んで、
「時崎狂三ですわ。ご察しの通り、わたくしは精霊ですの。以後、お見知りおきを」
優雅に一礼。
釣られて、二人も紹介をする。
「我の名は八舞耶倶矢。万象薙ぎ伏す颶風の御子、八舞の片割れよ」
「同調。挨拶が遅れました。八舞夕弦です」
よろしくお願いします、とは続けなかった。
ようやく会話をし始めたわけだが、まだ自分たちとどのような関係になるかわからない、もしかすると敵対の可能性がある以上、そこまで馴れ馴れしくするつもりがなかったからだ。
「ひひっ、そう構えなくてもいいではありませんの。少なくともわたくしは、貴方たちと敵対するつもりはありませんわ」
「ふん、どうだかな」
そう言う耶倶矢だが、内心では、
(なにあれ、左目が時計のオッドアイとか、超かっこいいじゃん!羨ましい……)
なにを言ってるんだか。
「呼掛。時崎、さん」
「そんな他人行儀な呼び方は止めてくださいまし。狂三でいいですわ」
「承諾。では、狂三、一つ訊きたいのですが」
「なんですの?」
夕弦は、一つ頷くと、
「質問。七海と狂三は、一体どんな関係なんですか?」
それを聞いた狂三はしばし考えた後、いやに邪悪な笑みを浮かべた。
「そうですわねェ……一言で言うのなら、共に熱い日々を過ごした仲、ですわ」
「なん、だと……!」
「驚愕。それは、どういう?」
狂三は愉しそうに笑うと、
「ええ、わたくしの大事なものを奪っていただいたり、代わりに七海さんからもかけがえのないものを貰ったりしましたわね」
「お、おい、狂三と申したか。お主、本当に七海とどういう関係なの!?」
「詰問。本当のことを答えてください」
問い詰められる耶倶矢と夕弦を前に、狂三は、ひひっ、と笑った。
「……んぁ?」
なんだろう、音楽が聞こえる……。
俺は確か、真那と戦っていて、魔力処理を理解して、傷の手当の為に降りてきて、それから……?
そう傷だ!せめて応急手当ぐらいはしておきたい!
って、あれ?俺は今まで何をしていた?記憶が無い……気を失ってでもいたのか?
だが、それなら血は流れ続け、終いには失血死でもするんじゃないか?結構深い傷だったし。直接は見てないから、推測だけど。
というより、まずもってこの音楽は何なんだ?どこか落ち着くような、安らぐような。
「……
微かな脚の痛みに眉を顰めながら、立ち上がる。見れば、適当に包帯が巻かれていた。
そして、音源に目を向ければ、その正体はすぐに知れた。
「美九……?」
「やーっと起きましたかぁ。あと少し寝たままだったら、置いていこうと思ってたんですけど」
霊装にその身を包み、大きなパイプオルガンのような物を後ろに屹立させた、美九の姿があったのだ。
「〈破軍歌姫〉……?もしかしてこの音楽は、【鎮魂歌】か?」
「なんで知ってるんです?人前でこれを使ったのは、今回が初めてですよー?」
「ま、まあ、俺にも色々あるんだよ」
それを聞いた美九は、訝しげな顔を作っていたものの、そのうち演奏をやめた。
ん?演奏?つまり、霊装と天使が顕現してる。演奏の為に霊力を使った。これが意味することとは……?
気になって、俺は美九に問いかける。
「とりあえず、有り難う。大分楽になった。一つ、訊きたいんだが、いいか?」
「私の【鎮魂歌】は、鎮痛作用しかありませんしー、別にあなたの為なんかではないので、感謝なんてしなくても結構ですよぉ。というか、しないでください」
そこまで男が嫌いですか。
あと、俺の質問に答えてもらってないいんだが。
ま、普通に訊くか。
「俺が気を失って、いや、美九が演奏を開始して、どのくらい経った?」
訊けば、彼女は少し唸ったあと、答えた。
「うーん、数えてないので正確には分かりませんけど、それほど経ってないと思いますよー?」
「そうか、有り難う」
詳しくは分からない、か。
……ちょっと不安だな。
多分、空間震警報は鳴っていないのだろう。もしあったのなら、今頃どこか別の場所に行っていたと思う。
だが、それが逆に不安になる。
今までなかったってことは、今からあるかもしれないということでもあるからだ。
どうしたものか……。
傷を負っている今の俺じゃ、どこまで戦えるか分からない。戦闘中に、傷が開いたり悪化すれば、それこそ面倒だ。
そんなことを考えている俺の耳に、
ウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ―――――――
という音が聞こえた。
「!しまった、時間をかけすぎた……!」
「うるさいですねー、もう少し静かに出来ないんでしょうかぁ?」
焦る俺とは対極に、のんびりとしたままの美九。
って、原因は多分貴方なんですが。
そうこうしている間に、
「目標補足!識別名〈ディーヴァ〉と、あれは……!」
おう?どうした?
「まさか、〈ディザスター〉……!?」
……またそれか。
俺には、東雲七海っつー、女っぽい名前があるんだが。
俺を視認したらしいAST隊員たちに、どよめきが走る。
「た、隊長、どうしますか?」
「どうするもなにも、やるしかないじゃない……!」
隊長と呼ばれた女性は、力んだ声で叫ぶ。
誰だっけ、見覚えがあるぞ?……確か、日下部、だったっけ。
「A班、B班は〈ディザスター〉と相対!C班は〈ディーヴァ〉をお願い!」
『了解!』
そんな掛け声の後、こちらに向かってミサイルやら機銃やらを撃ち始めた。
「!やばっ……!」
「わっ!!」
美九だけは逃がそうと、手を伸ばそうとした瞬間、美九の口から大音量の言葉が発せられた。
すると、こちらに向かってきていたミサイルやら弾丸が、一様に墜落したり失速したりしていた。
美九が扱う能力の一つ、音楽ではない、『声』か。
幸い、こちらには向けられてなかったので、俺は吹き飛ばされることなく、慌ててストップをかける。
「もうっ、折角可愛い娘がたくさんいるのに、これじゃ近づけないじゃないですかー」
「そ、そういう問題なのか?」
「少し黙っててもらいます?耳障りですよ?」
へいへい。
それじゃあ、こっちはこっちの仕事をしますよ。
「察するに、俺の方が敵は多いようだから、俺は俺で好きにやらせてもらうぞ」
「えーっ、あの人たちを盗るつもりですかぁ?」
「いや、俺がというより、向こうから来るんだが」
まあ、早いとこ移動しよう。
あまり近くにいると、美九も巻き込みかねん。
「こっちが片付いたら、助力ぐらいはさせてもらうぞ」
それだけ言い残し、俺は飛び出した。
翼を創りだし、美九から離れるように。
すると、おそらくA班とB班とか言われた隊員たちがこちらに来たので、ある程度の距離をもって相対する。
「あまり時間はかけたくない。とっとと終わらせる」
言い、手を向ける。
さてと、何を創ったものか。
……そうだ。今パッと思いついたことを試してみよう。
名前の出来については、気にしない。
「総員、行け!」
「はっ!」
愚直にも真っ直ぐ来る者や、回りこんで後ろに行こうとする者、遠距離から攻撃する者まで、色々な攻撃が向かってくる。
上手くいくかどうか分かんないけど、ちょっと楽しそうな技だ。俺はイメージする。
接近する隊員たちよりも先に向かってきたのは、やはりミサイル等の遠距離攻撃。
それらが当たる前に、俺は叫んだ。
「よし!こんなもんだろ!」
そして、能力を使う。
直後、向かってきていたミサイルや銃弾が直撃し、轟音と共に煙が俺を包んだ。
さらにその数瞬後、煙が晴れた。
その中心に立つ俺の姿に、接近してきた隊員含め、全員が驚きの表情をつくる。
まあ、しょうがない。何しろ今の俺は、
「れ、霊装……!?」
あ、言われた。
とまあ、そんなわけで、霊装を身に纏っているからだ。
正確に言うと、俺は精霊ではないので、自身の能力で精霊の力を使っただけだ。
その装いは、言うならばロングコートの前を開けたようなものだと思ってもらえればいいだろう。色は、漆黒。
それに加えて、既に顕現させていた翼もその形を少し変えていた。
小さなものでは、腕甲やブーツなんかもあるが、詳しく説明する必要はあまりないと思うので、割愛。
「へえ……初めてやってみたが、存外上手くいくもんだな。名前は……『
素材は、知らない。
大体、他の精霊、例えば美九の『神威霊装・九番』の素材だって、知らないだろ?
ただ、霊力の形として、今まで理解している分の霊力を込めて創っているので、ところどころ似ている部分はあるかもしれない。
ふむ、しかし色が漆黒だから、一見すると反転体にも見える。俺にそんなことは起きないだろうが。
「で?どうする?まだやるか?」
固まったままのAST隊員に向けて呼びかけると、ハッとした表情になって、すぐに攻撃態勢となった。
……遅いなあ……。
「は、はあぁぁぁぁ―――――ッ!」
自分を叱責するかのように声を上げながら、一人の隊員が向かってくる。それに釣られるように、他の奴らも来た。
最初の隊員のレーザーブレードを、右手で掴んで受け止める。
「……!」
驚愕の色を浮かべるそいつを、投げ飛ばす。
「ぐあっ!」
「お、おわぁ!?」
投げた先いた別の隊員に受け止められ、そいつは止まった。
すぐに、また別の奴らが群がって来る。
「灼け、『
俺の周りを、割れるような音と共に雷が貫いた。
『雷霆』。神話上では、ゼウスあたりが関与してたっけな。
雷をイメージして出てきたのがこれだったので、まんま引用させてもらった。
近づいていた隊員を一気に戦闘不能にした雷は、他の奴らを射竦めるには、十分な威力があったらしい。見れば、明らかな恐怖を顔に浮かべていた。ころころと表情が変わる奴らだ。
まあ、これもまた、仕方ないことかもしれないな。
ずっと精霊と戦ってきた奴らだ。どれだけ精霊が強いか知っているからこそ、俺の力を恐れているんだろうし。
だがまあ、それなら好都合。最後の一発といこう。
俺は、片手を頭上に掲げ、イメージする。
内容は、言うならば光。ただし、霊力を創らせてもらうが。
主としては、十香あたりか。他にも、色々込めさせてもらう。
別に、俺の必殺技的なものではない。ただ単に、イメージがしやすいだけで、これから使うことはあまり無いだろう。
というわけで、
「……行くぞ」
「!そ、総員、防御態勢をとれ!」
予感めいたものでも感じたのだろうか、リーダー的な奴が命じる。
それに従い、他の奴らは防御態勢をとった。のだろう。
いやさ、多分防性随意領域でも展開させたんだろうが、俺からじゃわかんねえし。
ともかく、一発ドカンとやっちゃいますか。
技の名前は、
「【
頭上の手を、振り下ろす。
その手のさらに上にあった光が、無数の線となり、敵を撃った。
いわば、それはレーザーというものだろう。
その光の数から、無限と訳される(意味する?)『アイン・ソフ』という名前にしたが、なかなか威力がある。
展開していた随意領域を貫き、光が突き刺さる。致命傷にはならないよう、威力は大分抑えたつもりだ。
「うぐ……っ」
「うあぁぁぁ!」
痛みと声を堪える者、墜落する者など、様々な反応が見られる。
さて、決着は着いたと思うし、戻るか。
「じゃ、俺は戻るんで、後は好きにすれば?ただし、」
一応、念押ししておくか。
「お前らは戦闘不能として、この戦闘において手出しはするなよ。いいな?」
返事を聞かず、俺は飛んだ。
視線の先では、美九も頑張っていた。
あれ?なんか長い……。ま、良いことでしょう。
作中に出てきた主人公の霊装(便宜的に『霊装』とさせていただきます)についてですが、なんとなく自分の中では固まっているんです。どんな感じかは。
ただ、それを文章で説明するとなると、こちらの力量不足により、全く出来ませんでした。
結果、大変分かりにくいものとなってしまい、すみませんでした。
ただ、霊装を創ったとだけ思ってもらえれば、十分話は分かると思うので、それだけ覚えておいていただけると……。
また、『無限(アイン・ソフ)』というのもありましたが、一応、実在する(?)言葉です。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
ほんと、狂三さん可愛かったなあ……。はぁ…………。