メインの方は残しますので、どうか、これからも、よろしくお願いします。
それでは、どうぞ。
俺が右腕を突き出せば、真那はそれを
自身のレーザーブレードを振りながらの接近に、慌てて身を下げ、雷を纏った足で蹴り上げる。
それによりブレードを跳ね上げることには成功したものの、次に繋がらない。さらに離れる。
しかし、その距離を一瞬で詰める真那。跳ね上げられた動きを利用して、大上段からの切り下ろしだ。
俺は、脚と同様に雷を纏った腕を交差させ、頭上で構える。間一髪、ブレードを受けるも、下に叩き落される。
「ぐっ……!」
制動をかけ、上に飛びつつアッパー気味に拳を放つ。
だが、それも当たらない。
あーもう!当たらねー!
とにかく速い。なんとか追いついてる感じ。八舞姉妹との鬼ごっこの時とはまた別の速度に圧倒される俺。
あの時はただ単に飛ぶだけだったが、今回は『戦闘』だ。動きが全然違う。
速度だけなら、まだ耶倶矢や夕弦の方が上だろうが、元は一般人の俺には、戦闘なんてものは無縁だったもので、そういう動きが分からないんだ。
言うならば、真那は『戦闘』しているのに対して、こちらは『動いて』いるだけというか、なんというか。
なんとか数撃与えることは出来ているが、防がれてしまい、ダメージはあまりないようだし。
「……ハッ!」
真那の軽い一息とともに、重い一撃が俺を襲う。
「が……っ」
なんとか受けたものの、胸部を狙った一撃は、肺の中の空気を一気に押し出した。
飛ばされて距離を開けた俺ら。そこに、真那からまたしても声がかかる。
いや、今回は会話するためではなく、なんとなく気になったから訊いてみたと言う感じか。
「妙でいやがりますね」
「……何が、だ?」
「さっきからの攻撃、威力はあるみたいですが、動きが素人すぎじゃねーですか」
あ~、まあ、そうだろうなあ。理由は先述の通り。
「しょうが、ないだろ。ちゃんとした戦闘訓練なんて、俺は受けたことはねーよ」
痛みで、やや途切れながら俺は言葉を発する。
よし、そろそろ痛みも抜けてきた。
せーの、
「おらっ……!」
「……!」
不意打ち気味の回し蹴りにも、真那は対応してきた。
そうして、俺は無理矢理戦闘を再開させる。
そうすることで、緊張を持たせ、不必要なことは考えないようにする。
しかし、俺の目標は倒すことじゃあない。あくまでも、魔力処理を理解することだ。
だが、それにはやはり真那に直接触れる必要があるわけで。だけど腕を掴めば振り落とされ。
さて、どうしたものか……。
……!
そうだ。動きを止める方法はあるじゃん。
だけど、これをするのは遠慮しておきたいんだけど……。
まあ、しょうがない。決して、真那に触れたいとかいう邪な気じゃない。
でもやっぱり、それには接近する必要があるし。
「よっと」
俺はブレードを避け、反撃するもそれも避けられつつ、考える。
いや、考えても仕方ないんだ。当たって砕けちまえ。
覚悟を決めた俺は、一気に真那に詰め寄る。
「!?」
突然の戦闘スタイル変更に、驚きの表情を作る真那。
しかし、流石というかなんというか、すぐにレーザーブレードを構える。
だが俺は、それを打ち払ってさらに接近。
もはや、戦闘をするには両者にとって近付き過ぎた距離。
慌てたように離れようとする真那の腕を取り、引き寄せて、
「少し、大人しくしてくれ」
抱き寄せた。
「な、なにしていやがるです!?放しやがれです!」
もがく彼女を、さらに強く抱きしめる。
丁度二の腕あたりに俺の腕を回しているので、顔の距離は近く、真那も満足に動くことが出来ない。
だけど、まあ。
それ、武器が当たらないという理由にはならないんだよなあ……。
なんせ、
「ぐ……いた、痛い、痛いんだが、真那……ぅが!?」
「はーなーせー!」
未だ持ったままのレーザーブレードが、俺の太腿あたりを切ったり刺したり。
真那の為に雷を消したのが
今の俺からでは見えないが、ちょっとやばい量の血が流れてるんだろうなー……。
下から悲鳴らしきものが聞こえたが、一体何だろう?
そう思いつつも、理解は忘れない。
痛みの所為か、集中が出来ず、思ったよりも時間がかかる。
そうしている間にも、真那は暴れ……あれ?
だんだん大人しくなっているような……?しかも、現在進行中?
あ、暴れなくなった。
どうした?
「う、う~……」
「……よし」
なにか唸ってたようだが、どうしたんだろう?
俺が理解し終え、身を放しても、真那は少しその場で動かないままだった。
「真那?」
心配になって、名前を呼んでみる。
「……は、はい!?何でいやがりでありますでいやがるです!?」
「なんか口調が崩壊してる!?」
「はっ……!そ、それで、一体ななな、なんで、いやがる、いや、いやがりますか?」
本当に、どうしたんだ?顔も少し赤いぞ?暑かったのか?
「いや、そろそろ戦闘も終了しないかと、思ったんだが……」
「りょ、了解したです。それでは、私の一時撤退ということで……」
え?あ、おい。
そう声をかける間も無く、びゅーんと何処かへと飛び去った真那。
……マジで、なにがあった?
「って、痛つつ……」
やばい、主に血がやばい。
よ、よし、なんだかよく分からんが、戦闘も終わったので、俺も一旦帰ろう。
いや、その前に手当てをしよう。うん。
結局、どちらが勝ったのかも曖昧なまま、一度俺はあの、天井に穴を開けてしまったコンサート会場に向かった。
地面……ステージに降り立つと同時、倒れた。
理由としては、まあ、傷の所為。あと失血。
「ふーん。ざまあ見ろですねー。いきなりあんなことしたから、きっと神様から天罰が下ったたんでしょう。しかもあの女の子も帰しちゃいますし、ほんと、何やってんですかぁ?というか、何で戻ってきたんですかぁ?そのまま何処かへ行って、野垂れ死んでしまえば良かったんですよぉ」
何故かは知らないが、なんと美九はまだステージにいた。服装は、霊装から普通のステージ衣装に変わっているが。
ステージに溢れる血に汚れないためか、俺に近づきたくないからか、ある程度の距離をもって彼女は罵る。
だが実際、俺はそんな状況じゃないんだが。
「美九……頼む……。救急、道具かなにか……持ってきてくれ……」
流石に、血を流しすぎた、か。意識が、朦朧としてきた……。
「嫌ですよー。なんで私があなたみたいな男なんかに、そんなことをしてあげないといけないんですかー?大体、それでどうやって手当てするつもりなんですぅ?私、近づきたくないですし、あなたもそろそろ限界じゃないですかぁ」
「いい、から……。適当に、持って……きてもら、えば、こっちで……なんとか、する」
「なんとかって、どうするんですぅ?」
「その時……考え、る……」
駄目だ……もう、思考が、まとまらない……。
「馬っ鹿じゃないですかー?その時、って、え?まさか、ほんとに限界だったんですかぁ!?――――――」
あ、れ?なんて、言ってん……だ……?…………。
「あのー、本当に死んじゃったんですかぁ?」
遠巻きながら、声をかけてみる。
反応は、……あった。ほんの少し指が動いた。気がする。
どうしようか迷った後、
「……まあ、目の前で死なれても後味が悪いですしねー」
なんで自分がこんなことをしてるのかを疑問に思いつつ、救急道具を取りに行く。多分、いつも使う所にあった気がする。
「あ、これですねー」
それを持って、戻る。
血の前で、もう一度声をかけてみる。
「ほら、道具を持ってきましたよぉ?後は自分でどうにかするんですよねー?」
反応は、先程より小さな同じ動作。
つまり、その場から動かない。
ならしょうがない。うん。自分でどうにかするって言ってたんだし、私はもう帰っていい筈。ここで帰ってもなんの責任もないし、この男の自己責任だし……。
「……あー、もうっ!仕方ないですねー!」
やや苛立たしげに声を荒げ、意を決して血の海を歩く。
未だ流れているのか、自分の足跡はすぐに血に埋もれて見えなくなった。
「まったく、何でこんなことをしているんでしょうね……?」
腹が立ったので、とりあえず蹴ってみる。
反応はあまりなかった。なんかムカつく。
「あ、ここですかぁ……うわぁ……」
流石に引いた。体感的には数十センチぐらい引いた。
切り裂かれたズボンから見える傷は太腿のやや下。膝よりも少し上あたりにあり、そこら辺は惨たらしいことになっていた。
大きな刺し傷と、幾重もの切り傷。切り落とされていないのが不思議なほどだ。
成程。この血も、さっき空から降ってきた血も、ここからか。
そう納得し、でも動けなかった。
なんせ、こんな酷い傷なら、もはや病院に診てもらった方が得策である。
しかし、
「こんな男の為にそこまでするのもなんですしねー」
それを言えば、応急処置をしようとしている今も、大概おかしい状況だが。
だがまあ、さすがにそろそろ始めよう。
「えーっと、どうすればいいんでしょうかぁ?」
分からないので、とりあえず邪魔なズボンを強引に裂く。そしてポイ。
加減が分からないし、する気もないので力いっぱいきつく巻く。
「ぐ……!」
微かに呻き声が聞こえたので、咄嗟に力を抜いてしまう。
……なんででしょう?
何回目かも分からぬ疑問を心に、包帯を巻き終える。
「さ、もうこれでいいですよねー?これ以上やってあげる必要も義務も無いのでぇ、私はもう帰りますよー?」
言って、背を向け歩き出すも、途中で止まる。
……はあーっ。まったく、しょうがないですねー。
「ここにずっと倒れられても困りますし、第一、私もこれじゃ外を歩けないですしー」
しゃがんだ所為もあって、美九の衣装のスカートやその他諸々は、既に真っ赤に染まっている。
本当は、ステージ衣装ではない私服があるが、まあ、建前である。
「目が覚めるまでですからねー?」
そして、
「――――――『神威霊装・九番』」
一度、霊装になり。
言う。
「――――――〈
演奏が、始まった。
今回、真那がややキャラ崩壊おこしましたね。気にしないでください。
ようやくVS真那も終わり、やっと美九をメインに話が書けますね。狂三のお話は、まだまだ先です。
前書き、活動報告の通り、ifルートを削除いたしました。申し訳ありません。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
そろそろ八舞姉妹との会話も入れたいな……