デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 活動報告の通り、ifルートを削除させていただきました。大変申し訳ありません。
 メインの方は残しますので、どうか、これからも、よろしくお願いします。

 それでは、どうぞ。


第21話

 俺が右腕を突き出せば、真那はそれを(くぐ)るように避け、肉薄する。

 自身のレーザーブレードを振りながらの接近に、慌てて身を下げ、雷を纏った足で蹴り上げる。

 それによりブレードを跳ね上げることには成功したものの、次に繋がらない。さらに離れる。

 しかし、その距離を一瞬で詰める真那。跳ね上げられた動きを利用して、大上段からの切り下ろしだ。

 俺は、脚と同様に雷を纏った腕を交差させ、頭上で構える。間一髪、ブレードを受けるも、下に叩き落される。

「ぐっ……!」

 制動をかけ、上に飛びつつアッパー気味に拳を放つ。

 だが、それも当たらない。

 あーもう!当たらねー!

 とにかく速い。なんとか追いついてる感じ。八舞姉妹との鬼ごっこの時とはまた別の速度に圧倒される俺。

 あの時はただ単に飛ぶだけだったが、今回は『戦闘』だ。動きが全然違う。

 速度だけなら、まだ耶倶矢や夕弦の方が上だろうが、元は一般人の俺には、戦闘なんてものは無縁だったもので、そういう動きが分からないんだ。

 言うならば、真那は『戦闘』しているのに対して、こちらは『動いて』いるだけというか、なんというか。

 なんとか数撃与えることは出来ているが、防がれてしまい、ダメージはあまりないようだし。

「……ハッ!」

 真那の軽い一息とともに、重い一撃が俺を襲う。

「が……っ」

 なんとか受けたものの、胸部を狙った一撃は、肺の中の空気を一気に押し出した。

 飛ばされて距離を開けた俺ら。そこに、真那からまたしても声がかかる。

 いや、今回は会話するためではなく、なんとなく気になったから訊いてみたと言う感じか。

「妙でいやがりますね」

「……何が、だ?」

「さっきからの攻撃、威力はあるみたいですが、動きが素人すぎじゃねーですか」

 あ~、まあ、そうだろうなあ。理由は先述の通り。

「しょうが、ないだろ。ちゃんとした戦闘訓練なんて、俺は受けたことはねーよ」

 痛みで、やや途切れながら俺は言葉を発する。

 よし、そろそろ痛みも抜けてきた。

 せーの、

「おらっ……!」

「……!」

 不意打ち気味の回し蹴りにも、真那は対応してきた。

 そうして、俺は無理矢理戦闘を再開させる。

 そうすることで、緊張を持たせ、不必要なことは考えないようにする。

 しかし、俺の目標は倒すことじゃあない。あくまでも、魔力処理を理解することだ。

 だが、それにはやはり真那に直接触れる必要があるわけで。だけど腕を掴めば振り落とされ。

 さて、どうしたものか……。

 ……!

 そうだ。動きを止める方法はあるじゃん。

 だけど、これをするのは遠慮しておきたいんだけど……。

 まあ、しょうがない。決して、真那に触れたいとかいう邪な気じゃない。

 でもやっぱり、それには接近する必要があるし。

「よっと」

 俺はブレードを避け、反撃するもそれも避けられつつ、考える。

 いや、考えても仕方ないんだ。当たって砕けちまえ。

 覚悟を決めた俺は、一気に真那に詰め寄る。

「!?」

 突然の戦闘スタイル変更に、驚きの表情を作る真那。

 しかし、流石というかなんというか、すぐにレーザーブレードを構える。

 だが俺は、それを打ち払ってさらに接近。

 もはや、戦闘をするには両者にとって近付き過ぎた距離。

 慌てたように離れようとする真那の腕を取り、引き寄せて、

「少し、大人しくしてくれ」

 抱き寄せた。

「な、なにしていやがるです!?放しやがれです!」

 もがく彼女を、さらに強く抱きしめる。

 丁度二の腕あたりに俺の腕を回しているので、顔の距離は近く、真那も満足に動くことが出来ない。

 だけど、まあ。

 それ、武器が当たらないという理由にはならないんだよなあ……。

 なんせ、

「ぐ……いた、痛い、痛いんだが、真那……ぅが!?」

「はーなーせー!」

 未だ持ったままのレーザーブレードが、俺の太腿あたりを切ったり刺したり。

 真那の為に雷を消したのが(わざわい)した。普通に傷つく。むちゃくちゃ痛い。

 今の俺からでは見えないが、ちょっとやばい量の血が流れてるんだろうなー……。

 下から悲鳴らしきものが聞こえたが、一体何だろう?

 そう思いつつも、理解は忘れない。

 痛みの所為か、集中が出来ず、思ったよりも時間がかかる。

 そうしている間にも、真那は暴れ……あれ?

 だんだん大人しくなっているような……?しかも、現在進行中?

 あ、暴れなくなった。

 どうした?

「う、う~……」

「……よし」

 なにか唸ってたようだが、どうしたんだろう?

 俺が理解し終え、身を放しても、真那は少しその場で動かないままだった。

「真那?」

 心配になって、名前を呼んでみる。

「……は、はい!?何でいやがりでありますでいやがるです!?」

「なんか口調が崩壊してる!?」

「はっ……!そ、それで、一体ななな、なんで、いやがる、いや、いやがりますか?」

 本当に、どうしたんだ?顔も少し赤いぞ?暑かったのか?

「いや、そろそろ戦闘も終了しないかと、思ったんだが……」

「りょ、了解したです。それでは、私の一時撤退ということで……」

 え?あ、おい。

 そう声をかける間も無く、びゅーんと何処かへと飛び去った真那。

 ……マジで、なにがあった?

「って、痛つつ……」

 やばい、主に血がやばい。

 よ、よし、なんだかよく分からんが、戦闘も終わったので、俺も一旦帰ろう。

 いや、その前に手当てをしよう。うん。

 結局、どちらが勝ったのかも曖昧なまま、一度俺はあの、天井に穴を開けてしまったコンサート会場に向かった。

 

 地面……ステージに降り立つと同時、倒れた。

 理由としては、まあ、傷の所為。あと失血。

「ふーん。ざまあ見ろですねー。いきなりあんなことしたから、きっと神様から天罰が下ったたんでしょう。しかもあの女の子も帰しちゃいますし、ほんと、何やってんですかぁ?というか、何で戻ってきたんですかぁ?そのまま何処かへ行って、野垂れ死んでしまえば良かったんですよぉ」

 何故かは知らないが、なんと美九はまだステージにいた。服装は、霊装から普通のステージ衣装に変わっているが。

 ステージに溢れる血に汚れないためか、俺に近づきたくないからか、ある程度の距離をもって彼女は罵る。

 だが実際、俺はそんな状況じゃないんだが。

「美九……頼む……。救急、道具かなにか……持ってきてくれ……」

 流石に、血を流しすぎた、か。意識が、朦朧としてきた……。

「嫌ですよー。なんで私があなたみたいな男なんかに、そんなことをしてあげないといけないんですかー?大体、それでどうやって手当てするつもりなんですぅ?私、近づきたくないですし、あなたもそろそろ限界じゃないですかぁ」

「いい、から……。適当に、持って……きてもら、えば、こっちで……なんとか、する」

「なんとかって、どうするんですぅ?」

「その時……考え、る……」

 駄目だ……もう、思考が、まとまらない……。

「馬っ鹿じゃないですかー?その時、って、え?まさか、ほんとに限界だったんですかぁ!?――――――」

 あ、れ?なんて、言ってん……だ……?…………。

 

「あのー、本当に死んじゃったんですかぁ?」

 遠巻きながら、声をかけてみる。

 反応は、……あった。ほんの少し指が動いた。気がする。

 どうしようか迷った後、

「……まあ、目の前で死なれても後味が悪いですしねー」

 なんで自分がこんなことをしてるのかを疑問に思いつつ、救急道具を取りに行く。多分、いつも使う所にあった気がする。

「あ、これですねー」

 それを持って、戻る。

 血の前で、もう一度声をかけてみる。

「ほら、道具を持ってきましたよぉ?後は自分でどうにかするんですよねー?」

 反応は、先程より小さな同じ動作。

 つまり、その場から動かない。

 ならしょうがない。うん。自分でどうにかするって言ってたんだし、私はもう帰っていい筈。ここで帰ってもなんの責任もないし、この男の自己責任だし……。

「……あー、もうっ!仕方ないですねー!」

 やや苛立たしげに声を荒げ、意を決して血の海を歩く。

 未だ流れているのか、自分の足跡はすぐに血に埋もれて見えなくなった。

「まったく、何でこんなことをしているんでしょうね……?」

 腹が立ったので、とりあえず蹴ってみる。

 反応はあまりなかった。なんかムカつく。

「あ、ここですかぁ……うわぁ……」

 流石に引いた。体感的には数十センチぐらい引いた。

 切り裂かれたズボンから見える傷は太腿のやや下。膝よりも少し上あたりにあり、そこら辺は惨たらしいことになっていた。

 大きな刺し傷と、幾重もの切り傷。切り落とされていないのが不思議なほどだ。

 成程。この血も、さっき空から降ってきた血も、ここからか。

 そう納得し、でも動けなかった。

 なんせ、こんな酷い傷なら、もはや病院に診てもらった方が得策である。

 しかし、

「こんな男の為にそこまでするのもなんですしねー」

 それを言えば、応急処置をしようとしている今も、大概おかしい状況だが。

 だがまあ、さすがにそろそろ始めよう。

「えーっと、どうすればいいんでしょうかぁ?」

 分からないので、とりあえず邪魔なズボンを強引に裂く。そしてポイ。

 (あらわ)になった傷口から血を拭い、適当に包帯を巻いていく。正しい使い方なんて知ってる筈がない。

 加減が分からないし、する気もないので力いっぱいきつく巻く。

「ぐ……!」

 微かに呻き声が聞こえたので、咄嗟に力を抜いてしまう。

 ……なんででしょう?

 何回目かも分からぬ疑問を心に、包帯を巻き終える。

「さ、もうこれでいいですよねー?これ以上やってあげる必要も義務も無いのでぇ、私はもう帰りますよー?」

 言って、背を向け歩き出すも、途中で止まる。

 ……はあーっ。まったく、しょうがないですねー。

「ここにずっと倒れられても困りますし、第一、私もこれじゃ外を歩けないですしー」

 しゃがんだ所為もあって、美九の衣装のスカートやその他諸々は、既に真っ赤に染まっている。

 本当は、ステージ衣装ではない私服があるが、まあ、建前である。

「目が覚めるまでですからねー?」

 そして、

「――――――『神威霊装・九番』」

 一度、霊装になり。

 言う。

「――――――〈破軍歌姫(ガブリエル)〉、【鎮魂歌(レクイエム)】」

 演奏が、始まった。




 今回、真那がややキャラ崩壊おこしましたね。気にしないでください。
 ようやくVS真那も終わり、やっと美九をメインに話が書けますね。狂三のお話は、まだまだ先です。
 
 前書き、活動報告の通り、ifルートを削除いたしました。申し訳ありません。

 それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 そろそろ八舞姉妹との会話も入れたいな……

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