いやー長かった。何話ぐらい開いたでしょう?次は美九編と言いつつ、5話以上開いてますね。
お待ちになってくださっていらした皆様。ここまで我慢して読んでいただき、有り難う御座います。
それでは、どうぞ!
第18話(プロローグの役割も兼ねているかもしれない)
夜。ただし、真夜中。
それぞれの部屋に戻り、既に消灯している時間。
あれから、なんとなく気まずいというか、恥ずかしいというか、そんな感情に襲われ、一人部屋に退散。
しばらくして落ち着いたところで風呂に入り(耶倶矢と夕弦は既に入っていた)、そして、おやすみと言ってまたもや部屋に。
その数時間後のことだ。
俺は、夢を見ていた。
「夢だなんて酷いなー七海くん。ここは、今は、ある種の現実なのに」
「……誰だって、現実から目を背けたい時ぐらいあるに決まっているだろ」
そうだろ?
「楓、今度は何の用だ?」
真っ暗で、何かがある空間。
前、俺が気を失っている間に来た空間だった。
「べっつに~?ただ、ちょっとしたプレゼントとでも思って」
「プレゼント?」
「そう、プレゼント。贈り物。ボクから君へのお祝いだ」
お祝い?
「……今更訊くが、なんかお前、成長してないか?」
ふと、思ったことを訊いてみる。
そうなのだ。この前ここで会ったときよりも、幾分か背や胸なんかが成長してる気がするのだ。
……別に、やましい気持ちなんてないよ?
「ふふん。もしボクが生きていたら、君と同じ年齢の時、どんな風になるか変更した結果だよ。どうやらボクはこんな感じになるみたいだね」
やや自慢げに、そう言う楓。
ふーん。俺と同じ年齢ねー。
微かな胸の痛みは消えないが、それでも会話は続ける。
「ま、それはともかく、七海くん」
「何だ?」
「早速、プレゼントを渡そうじゃないか」
そう言うと、楓は右手を突き出してきた。
どうしたらいいか分からなかったので、とりあえず、握手するように握ってみる。
直後、
「う……!」
鋭い痛みが、俺の右目を襲った。
反射的に右手で目を押さえようとするも、楓は手を放してくれない。すぐに左手に交代する。
押さえた所為でさらに暗くなった右側の視界。しかし、それを否定するかのように、俺には『それ』が見えていた。
「これは……?」
俺が見えているのは、橙色の、魔方陣のような……図形陣?なんじゃそりゃ。よくあるような円形、ではない魔法陣とでも言おうか。
正六角形が重なっているような陣の中心。何か模様のようなものがある。
見たままを称するならそれは、弓だった。
ん?橙色で、弓……?
「おい、楓、これは、」
「気付いた?そう、君が救った八舞姉妹を表した模様だよ。ふっふー、ボクが三日かけて作った模様だよ?褒めてもいいんだよ?」
「いや、お前、俺今そんな状況じゃねえから……」
右手は拘束され、左手は動かせず。(右目が痛い)
しかも、痛みは未だ継続中。謎が解けたなら、早く終わらせろよ。
「んー、そうだね。そっちは一旦終わろうか」
そんな声が聞こえたかと思うと、その模様(?)は少しずつ消えていった。
しかし、直後にまた襲われる。
次は何だよ!?
「今度は、これ。他の人達の分も考えてあるけど、今はこれだけかな」
次に見えたのは、赤の、何だこれ。斧?
成程。
「はい。終わり」
楓が言うと、その通りに痛みは終わった。同時に、模様も消えていく。
「……もしかしなくても、俺が精霊、というより、その能力なんかについて理解したとき、それに対応した模様が痛みと一緒に来るんだな?」
「大正解」
しかし、三日ねえ。暇な神様、略して
「……暇神様なんて、失礼な呼び方をしないでほしいな」
う、そういや思考読まれてるんだっけ。
「今回はこれだけ。それじゃ、そろそろおはようだ」
「何でわざわざ呼び出した?」
「にひひ、だって、こういう事があった方が、なんだか『っぽい』じゃないか」
どういう意味だよ。
「それじゃ、」
「結局、何がしたかったのか分からんが、」
二人、声を合わせて。
「じゃ~ね~」
「またな」
そして、世界は光に包まれた。
数日後。
え?経過が早い?まっさか。大体、今日まで何もなかったぞ?あったとすれば、夜刀神十香と四糸乃の精霊としてのどうちゃらを理解したくらい。
ちなみに、十香は黒やレモンみたいな色が使われていて、模様は剣。四糸乃は青色で、模様は怪獣。というか、まんま
昨日まで検査ばっかりで、結構耶倶矢と夕弦と一緒にいられる時間も少なくなってたし。まあ、フラクシナスのクルーだって、急いでくれてんだろうけどさ。
今日は、ようやく、と言うほど待ったわけではないが、学校に行けるようになったらしい。
ということで、六月三日という微妙な日に、俺ら三人は来禅高校に転入することになったわけだ。
一応、監視の意味もあるのか、事前に聞かされた話では、五河士道と同じクラスらしい。
ふむ、となると、十香や鳶一折紙とも一緒のクラスなわけで、そして耶倶矢と夕弦の原作との相違が出てきたということか。二人はもともと隣のクラスだった筈だろ?
ということで、教室の前で俺らは待機しているのが今なわけで。あれ?なんかおかしくなった。
「くく……幾許か緊張しておるようだな、七海。なに、心配することはない。我らが共ならば、万難も乗り越えれようぞ」
「首肯。夕弦たちがいれば大丈夫です。安心してください」
「大袈裟な。というか、お前らが俺の心配の種なんだけど」
何言い出すか分かったもんじゃないからな。
『――――――今日はなんとぉ、転入生がいるのですー』
お?そろそろかな?
『それではぁ、入ってきてくださぁい』
タマちゃんに呼ばれて、扉を開けて入っていく。
計三十近くの視線に晒されながら、教卓の横に並ぶ。俺からして、右に耶倶矢、左に夕弦がいる。
……って、なんでわざわざ俺を間に挟むの?折角俺が先行したのに。
「それでは、自己紹介をお願いします」
「はい」
俺は返事をしつつ、黒板に名前を書き連ねていく。
えー、こっちの向きだと、左から、
『八舞 耶倶矢 東雲 七海 八舞 夕弦』っと。
チョークを戻して手を払いつつ、俺から切り出す。ここら辺は、事前に話している。
「俺は、東雲七海。一応言っておくが、男だ。これからよろしく」
言って、礼。疎らな拍手が返ってくる。
ほれ、次はお前らの番だぞ。
俺が視線でそう伝えると、各々が自己紹介を始める。
「く、くく……我の名は、万象薙ぎ伏す颶風の御子、八舞の名を持つ者の片割れ、八舞耶倶矢!愚かな人間共よ、我らと共に叡智を学べる事に感謝するがよい!」
「紹介。八舞夕弦です。よろしくお願いします」
尊大な口調で胸を張って言う耶倶矢と、落ち着いた口調で一礼する夕弦。あまりにも対照的すぎる。色々。
そして、教室内に静寂が訪れる。
「……七海、なんか、おかしなこと言った?」
「うん。おかしなことしか言ってなかった気がするが、まあ気にしない」
袖を引っ張ってくる耶倶矢にそう返しつつ、これをどう切り抜けるか考える。
そうだな、なんかインパクトのある紹介をすればいいかな?
そう考えていると、タマちゃんが席を示してくれた。
「それじゃあ、あそこの席に座ってくださぁい」
あそこ、には席が三つ空いていて、丁度人数分。謀ったな?
ま、いいか、と席の近くに行く。途中、五河士道に軽く礼をしておく。
……ん?なんか違和感が。
なんだろうと思いつつ、席に座ろうとすると、
「七海よ、お主はこちらに座するがいい」
「要求。七海は真ん中に座ってください」
なぜだろう、いつの間にか真ん中の席に。
そして、俺を挟むように隣に座る二人、もはや、もう、通例ですね。
早くも男子の嫉妬の目線と、女子の面白そうという視線を一身に浴びつつ、俺の学園生活は始まったわけだ。
……待て。まだ考えることはあるだろう。
そう、さっきの違和感の正体とか。
だが、そんな思考を遮るかのようにチャイムが鳴った。鳴り終えると同時、俺らの元に生徒が集まってくる。
なんだ、なんだなんだ。
「ねえねえ、前はどんなところにいたの?」
「前、か……。ふっ、それは人知を超えた理を持つ世界。天より高く、地より深く、
「夕弦さんたちと東雲くんって、知り合いなの?」
「返答。知り合いというより、一緒の家に住んでます」
「待て待て待てお前らー!ちょっと待て、いいから待て!な!?」
きゃーという言葉を無視しつつ、二人に話す。
が、あまりの喧騒に気付いてもらえない。
「だーもう!一気に噂は広がるっつーのに!」
まったく、これからどうなることやら。
さて、前書きにもありましたとおり、今回から美九編です。
ただし、今回はまだ出てきませんね。次回から出てきます。気力があれば。
しかし、来週はもうテスト。実際問題、来週は更新出来るか危ういです。そろそろ本気でテスト勉強もしないといけないですし。提出物とか、色々。
さて、最後の方、主人公が言っていた違和感、皆様は分かりましたか?よく考えてみてください。一度ある組織と敵対した主人公、それを知っているであろう彼女が、一言も台詞が無かったですよね?
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
大丈夫。きっとヒロインが2人ぐらい増えても大丈夫。自分を信じろ。