いつも通りの風景。いつも通りの時間。俺、東雲七海は学校へと歩いている。
特に何もない、平日の朝。ちらほら見えているのは同じ学校の生徒だろう。名前は知らないが。
これもまたいつも通り、イヤホンを付けて音楽を聴きながら、本を読みつつ登校。ちなみに読んでいるのは、『デート・ア・ライブ』というタイトルの本。ライトノベルと言われるものだ。
そんなこんなで学校に着いたんだ。そのときは、何も知らないで。
朝、朝礼を右から左に聞き流しながら思う。
『つまらない』と。
何も起きない、何もない。そんな現実。
常々そう思う。本の世界に行けたらな・・・なんて。
流石に、自分TUEEEEEの夢見がちな中二病なんて卒業どころかかかってすらないし、あったとしても諦めてる。
それでも、ラノベ読者としては、どうしても比べてしまう。例えば、今朝読んできた本の世界観に行けたならなんて、ほぼ毎朝考えてる。
『じゃあ、行けば良いじゃないか』
?何だ?何か聞こえた気が・・・周りを見渡してもなんか喋ったような奴はいないし・・・。幻聴?
やっべ、俺なんか食ったけな?一人暮らしなんで料理は自分でするが、今朝は、トーストとか、そんなもんだったぞ?
『連れて行ってあげるよ。君の望む世界へ』
俺の望む世界?そんなのいきなり言われても、ぱっと思いついたのは今朝の『デート』の天央祭コンテストの八舞なんだが・・・
『わかった。その世界だね?時間や、あっちでの君の立ち位置までは運任せだから。よろしく』
は?待て、運任せ?大分酷だなおい!つーか今更だがあんた誰だよ!?しかも俺は何も承諾してない!
『でも、それを望んだのは君。この世界に飽きたのも君。だからボクが来た』
う、そうなんだけどさ。だけど、声的に女か?神様気取りの不可思議ちゃんよ?
『まあ、実際神様であってると思うよ』
はぁ?
『そろそろタイムリミット。向こうの世界でも楽しみなよ』
あ、ちょ、テメ、勝手に消えるな。
『じゃ~ね~』
いきなりフランクになりやがった!?軽いなオイ!!
そうして、意識がブツリと途切れた。
・・・そういや、あの(自称)神様と俺って、どうやって話してたんだ?俺は、言葉を口に出してないし・・・。テレパシー?
と、それで、気がついたらこうなっていたんだ。つまり、冒頭に戻る。
気がついたらって表現も変か?しかし、なんか、ハッってなったらこうなってたしなぁ~。ま、良いだろ。
さて、そろそろあいつらに自己紹介かな。第一印象は大事だぜ?
「俺は東雲七海!それで!えーと・・・。・・・・・・・・・」
やべ、他に何言えばいいんだ?
そんな風に迷っていると、向こうから来てくれた。
「ふん、誰かと思えばただの女々しい一般人ではないか。我らの決闘の邪魔をしおって」
先に話しかけてきたのは耶倶矢。スレンダーな方だ。しかし、耶倶矢。女々しいつーのは流石に失礼だぞ?否定が出来ないのは悔しいが。
「愚行。夕弦達の邪魔をするとは、愚かなことです」
その次は夕弦。半眼の方。耶倶矢と同じようなこと言っている。
「なはは。どちらも負ける気の決闘なんて、つまらなくないか?」
さ、ここいらで揺さぶりをかけてみますか。
「な、なにわけの分からんことを言いおるんだ。貴様は」
「訂正。負ける気なんてありません。勝つ気しかありません。本当です」
やっぱりな。耶倶矢は、少し目を逸らしているし、夕弦の強すぎる反論は逆に疑わしくなる。
まだまだ、聴いてみるか。
「何勝何敗何引き分け?」
すると、二人の顔が目に見えて驚きに変わる。なんでそこまで、って顔だ。
しかし、似てるなー。表情の違いは耶倶矢の方がわかりやすいけど、顔だけなら激似だもんな。
「・・・25勝25敗48引き分け、だ」
耶倶矢が答える。結構僅差だ
・・・?48引き分け?俺が知っているのは49だった筈だけど・・・
あぁ、成程。これが、あの(自称)神の言ってた。時間は運任せ、ってやつか。
「じゃ、俺の乱入ということで、これは無効試合な」
「憤慨。流石にそれは勝手すぎます。怒りますよ?ぷんすかです」
お、夕弦さんの子供言葉。生で聞けるとは。あとは、耶倶矢の中二病ネーミングかな。おっと、それどころじゃない。
「じゃあ、俺と『勝負』しよう」
勝負、という言葉に彼女達の目つきが変わる。
もしかしなくても、やる気満々ですね。はい。
「くかか、我ら颶風の御子、八舞に勝負を挑むとは」
「余裕。こてんぱんにしてあげます」
おー、すっげぇ。手加減する気は無いみたいだな。ま、いらないけど。
こっちも、使ってみたいんだ。この世界に来て気がついた瞬間、頭に浮かんできた俺の能力ってやつ?なかなかすごいと思うよ?
『情報の有無を改変する能力』ってさ。
やっと、能力が出てきました。名前だけですが。
あと何話か溜めております。