気力の問題上、今回はあまり双子の会話が書かれていません。
今回はデートというより、戦争と書いてデートと読むタイプの回ですので、ご容赦ください。
それでは、どうぞ。
そこかしこに傷を作った俺は、街の人の案内を頼りに、とある高校の前に着いた。
「ふん、ようやっと許せる気になった。次に我の、その、あれが貧しいなどと虚言を吐いた暁には、その身は煉獄に灼かれ、塵も残らぬと織れ」
「はい、気をつけます」
どうにか普通に会話できるぐらいには機嫌を直してくれた耶倶矢。
「質問。次は何をするのですか?」
「ん、ちょっと人待ち」
そろそろ学校も終わるだろうと思って、ここに足を運んだんだけど・・・
ここは、来禅高校。もう学校も終わり、ちらほらと下校をする生徒が見えるんだけど、
「何か見られている気がするな」
「そりゃ、お前らじゃ人目を集めるだろうな」
なにしろ、瓜二つの美少女だ。見られない方がおかしい。
「成程。つまり我らは、なにもせずとも注目されてしまう程の美貌も持ち合わせているというのか。くく、だがまあ、夕弦がいる以上、それは当然であるがな」
「否定。夕弦よりも、耶倶矢がいるのが大きいかと。事実、耶倶矢の方が見られていますし」
「そんな訳無かろうて。夕弦の方がそこらの人間の目を集めておる」
「否認。それは耶倶矢の勘違いです。耶倶矢の方が可愛いので、耶倶矢の方が注目されるに決まっています」
「ふふ・・・そんなことないし。夕弦の方がスタイル良いんだし、夕弦の方が」
「否定。そんなことはありませんよ」
・・・仲が良いな。
しかし耶倶矢、さっき自分でスタイルの話するなって言ったのに、自分から言ってるじゃん。
「・・・あ!」
そんなことしている内に、探していた人物を見つけた。
背は俺よりも高いが、顔は俺の方が女っぽい。ショック。
夜色の長い髪を持った少女を侍らせながら、校門を出てくる。
「む?遂に邂逅の時が来たか?」
「質問。あの人ですか?」
「ああ」
俺は二人にちょっと待ってるよう指示し、その少年のもとへと向かう。
「よう五河士道。ちょっといいか?」
それが俺たちと、五河士道、ひいてはラタトスクとのファーストコンタクトだ。
「え・・・?」
俺が名前を呼んだからか、驚いた表情になる五河士道。
しょうがない。会ったこともない人にフルネームで呼ばれたら、そりゃ驚く。
しかし、それを気にする必要はない。
そのまま歩み寄り、その耳に顔を近づける。
男になぞ興味は無いが、誰にも会話を聞こえなくするにはこれが一番手っ取り早い。
まわりのどよめきは気にせず、俺は語りかける。
「お前
というか、五河士道と十香が一緒にいる地点で、今が何年はともかく4月下旬以降だというのを知った。
「なんだって・・・?」
十香の名前を出されたからか、それを信じ切れていない様子の五河士道。
とっとと体を離し、俺は話す。
「ちょっと静かなところに案内してくれないか。ここは人が多い。あ。インカムはつけていいよ」
俺の台詞に不審と警戒の色を顔に浮かべるも、一応正しいことは理解しているのか、右耳にインカムだと思わしきものをつけた後、十香とも話す。
「悪い、十香。ちょっと用があるの忘れてた。今日は先に帰っててくれないか?」
「むう・・・別にいいが、なるべく早く帰ってくるのだぞ?」
「おう。お詫びに、今日はハンバーグでも作るか?」
「お、おお!それは
バイバイなのだーと言って駆け出した十香。
・・・餌付け?
「ほら、十香の為にも早く済ませちゃおう」
「・・・わかった」
そうしている間に、俺は情報を視る。
今回は別に、それほどの物を理解するわけでもないので、わざわざ瞑目する必要はない。
ただ、直接触れてないから、多少時間がかかるな。
・・・よし。
俺はそうして創り出したものを装着して、ちょっと人を待たせているといっていったん戻る。
連れてきた耶倶矢と夕弦を見て、最初は首を傾げていたものの、すぐに驚愕に目を見開いた。
っていうか、聞こえてるぞ。
「そうなのか・・・!?」
『ええ。多少の差異はあるけど、ほぼ間違いなく後ろの二人は精霊よ』
「そんな、それじゃ、彼は」
『今じゃ何も言えないわね。だけど、折角向こうから会話の機会を設けてくれたんだもの。これを活用しない手はないわ』
「・・・そうだな」
『こっちでも指示はするわ。くれぐれも、勝手に動いて相手の機嫌を損ねないでね』
「わ、わかってるっての」
っていう、会話がな。通信含めて。
ひひっ、と笑ってみることにするか。
そうして連れてこられたのは、希望通り人気の無い公園だった。
インカムで案内されてたから、五河士道自身は知らない場所みたいだけど。
「で、話って?」
入るや否や、すぐに切り出してきた。
というか、結構前に入ったらこちらから切り出しなさいという指示が聞こえていた。
「ん、別に人気が無い場所を選らんだのは、あんたと会話するためじゃない」
そして1度上を見上げ、次に五河士道を見て、
「とりあえず、耶倶矢と夕弦に向けている観測機を止め、俺達をフラクシナスまで連れて行ってくれ」
「『!』」
五河士道、通信、両方から驚きと狼狽が混じった声が聞こえる。
「おい、なんでフラクシナスとか、観測機とか知ってんだよ・・・!?」
『分かるわけないでしょ!?でも、ほんとにどうやって・・・?とりあえず、もう少し会話して、少しでも情報を引き出してちょうだい!』
「お、おう」
この会話において、俺は二人には黙っているよう言ってある。何か言われたらフォローが大変だしな。
「とりあえず、あんたが話したいことって何だ?」
「とぼけなくても良い。俺はお前らを知っている」
「・・・・・・」
黙りこむ五河士道。
「俺を敵対させたくないのなら、とりあえずフラクシナスに連れて行ってくれ」
なーに、
「俺はここで、五河士道を人質とすることも出来るぞ」
「!」
『ち・・・、まんまと騙されたのね』
息を呑む五河士道と、悪態づく五河琴里の声。
その通り。ちょっと騙させてもらった。人気が無いところを選んだのは、フラクシナスのことを考えてというのもあるが、もう1つの理由として、五河士道を1人にするってのもあったわけ。
「どうするんだ、琴里・・・?」
『どうするもこうするも、従うしかないじゃないの。いいわ。士道、今からフラクシナスに転送することを伝えて』
「おう」
お、承諾された。
「わかった、君を今からフラクシナスに連れて行く。一瞬の浮遊感があるから、気をつけて」
「だって、耶倶矢、夕弦。お前らもこっちに来い」
二人は俺の言いつけを守ったまま、つまり黙ったまま俺の傍につく。
それを複雑な目で見る五河士道。
そして、言われたとおりの浮遊感が、俺を襲った。
「おー、着いたな」
それが終わると、どこか分からぬ空間―――いや、フラクシナス内ではあるんだろうけど―――にいた。
そして間もなく、扉が開く。
なにか言われる前に、今度はこっちから口を開く。
「司令室で話そう」
「・・・ええ、わかったわ」
どこか悔しそうな声色のツインテ少女、琴里。
咥えた棒付きキャンディーが忙しなく揺れ動く。
「感謝するよ」
正体が分からない以上、出来る限りの要求は呑もうっていうのが見て取れる。
これなら、やりやすいかな。
そうして連れて歩かれることしばし。
たまに周りの情報を視て、大人しく・・・ないな。キョロキョロしている二人に観測機が回っていないか確認したりしていると、とある扉の前で止まった。
「ここが、司令室よ」
そう言って入っていく琴里に続いて、俺たちも入る。
さて、慣れない交渉タイムだな。
「とりあえず、あなたのことを教えてくれないかしら?」
司令席にすわり、こちらを見下ろす形となる琴里。
正直、その効果はあまり無いが。
「それじゃ、俺のことを教える代わりに、要求をいくつか。それさえ呑んでもらえるなら、全てを話そう」
「・・・言ってみなさい」
「1つ、俺らの住居の提供。
2つ、俺らの戸籍や、学校等の便宜を図ること。
3つ―――――」
そこで一息。
「俺らが精霊と接触する際、こちらからの要求が無い限り、不干渉であること。とりあえずは、この3つ」
「やっぱり、精霊は知っているわね・・・」
「まあな」
まずは、1つ。俺に関する情報と引き換えに、ここまでは呑ませる。
「最初の2つはともかく、3つ目は、容易に頷けないわ」
「だろうな。それじゃ」
そこで俺は、耶倶矢と夕弦を見て、また戻す。
「そこの二人を検査することを許容してやる。そして、これから関わるかもしれない精霊に対しても同じだ」
あくまでも、こちらが要求を通さないといけない。
だから、許容して『やる』。こういう言い方をする。
「大体、精霊を倒すことが目的なら、今頃この艦を墜落させてるっての」
「・・・それもそうね。いいわ、その要求を呑んであげる」
だけど、
「あなたのことに関する情報提供と、あなた含めた3人の検査はさせてもらうわ」
「ああ、それでいい」
とりあえず、すべき事は達成できたから、良しとしよう。
「それじゃ、俺のことを話そうか」
そう言って、俺は語りだした。
「俺の名前は東雲七海。能力は『情報の有無を改変する能力』だ―――――」
ifの方も含めての後書きとなります。
でも、流石に疲れましたね。
じつは『小説家になろう』というサイトでも1作品、オリジナルを書いてるんですが、そちらも更新しまして。
ふう、ほんと、メインとif、統合すれば良かったな・・・
後の祭り感が、いま、すごいです・・・
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
こっちはもう少し、この回が続きそうな気がします。