前回の話をもっと掘り下げたものです。
今回は、ちょっといつもと違うところがあります。
また、本編とはあまり関係しませんので、読まなくても結構です。
ただ、自分としては、七海と楓のためにも読んでいただきたいです。
それでは、どうぞ。
にゃっははー、今回はボクこと楓の想い出語りだよ。
まったく、七海くんにも困ったものだね。あれじゃボクが、精神狂った病んじゃってる人に思われるじゃないか。
え?何が言いたいのかって?本編の方が気になる?あれ、そんなことない?どっち?
ま、そこはそれ。作者さんがねー、もうちょっとボクの心証を良くしておきたいーとか、七海くんのフォローしておきたいーとか、そんな理由なんだよ。きっと。
じゃ、早速語ろうか。あの日、あの場所でなにあったのか、ホントのことを。
あの日は晴れていたね。もう、これから起こることを拒否するかのように。だって、ああいうショックなイベントは、雨なのが常だろ?
風も強くない穏やかな日。学校も終わって、放課後。
ボクも七海くんも、部活はやってないし、やったとしても引退した時期だからね。十数分したら来てくれたよ。
あの、屋上に。
今にして思えば、あの時は情緒不安定というか、色々大変なことになっていたんだろうね。
家から持ってきたナイフを両手に持ち、一歩踏み出せば真っ逆さまに落ちていく場所で、七海くんを待っていた。
数分後、扉が開く音が聞こえて顔だけ振り向かせた。
「!おい、楓っ!?」
いやー、あの時の顔は面白かった。驚きと疑問が混ざり合って、なんともいえない顔だった。
「七海くん、来てくれたんだ」
「来てくれたんだ、じゃないよ!早くこっちに戻ってきなよ!」
うーん、この時のボクと七海くんの口調と、今の口調は全く違うね。
ボクの場合は、神になってから、色々振り切れたりしてこんな風になっちゃったんだけど。昔じゃ考えられないね。
七海くんは・・・何があったんだろう?今度こっちに呼んだときに訊いてみよう。勝手に記憶を覗いたりしてもいいんだけど、それじゃ面白みがないしね。
「ねえ、お母さんもお父さんも、私が死ねば会えるかな?」
うわー。これはもう駄目だね。完璧に病んじゃってるね。手の打ちようなし。
どうやら、まだ七海くんはナイフに気付いてないみたいだ。まあ、ボクの陰になって見えないから、当たり前か。
うーん、ここは振り向くべきだったね。手は後ろにまわして隠して、面と向かって話したほうが画になっただろうに。
「馬鹿なこと言うなよ!お前が死んでも、おばさんやおじさんに会えるわけじゃない!」
おーう、格好いいこと言うね~、昔の七海くんは。まさしく主人公に相応しい。
でも、当時の私には届かなかったみたいだけど、ね。
「でも、お母さんもお父さんも死んでるんだよ?」
・・・ノーコメントで。もう、手の打ちようが無ければ、目の当て所もないね。
「だったらその分、楓は生きろよ!」
ははっ、ほんと、熱血だね~。あまりにも真っ直ぐで、眩しくて、目を背けたくなってくるよ。
きっと無自覚なんだろうし。ま、ボクは自然体の七海くんが好きだったからね。
うん?そうだよ?ボクは彼のことが好きだよ?大好きだ。愛してるといってもいいね。
まあ、七海くんはそれに気付いてなかったみたいだし、今も気付いてないみたいだけど。
主人公だったからね、彼は。主人公が鈍感なんて、よくあることだろ?
「違うよ」
首を振るボク。いったい、何が違うのやら。
「私は、会いに行く。だから」
ああ、これが狂ってる、病んでると自分で思う最大の原因。
やっと振り向いて、そのまま、どすっ、て。
「だから、一緒に死んで?」
意味ふめーーーーーい!!一緒に死んでとか、何処の心中だよ!なに、ヤンデレなの?当時のボク、ここまでだったの!?
ぐあー!!これはボクの黒歴史ー!!
・・・落ち着こう。まだ終わってない。
「が、ああぁぁぁぁぁああ!?」
痛みのあまり、叫ぶ七海くん。こうしていると、どうやら刺された場所に手を当てようとしていたんだね。無意識の内にやってるみたいだけど。
だけど、ボクは刺したままだから、ナイフの柄の部分。つまり、ボクの手に自分の手を置く形になってるよ。
「ねえ、何であの時逃げたの?何であの時向かっていかなかったの?」
恐っ!もう確定。当時ボクは病んでました。どうしようもないレベルでどうかなってました。認めます。
しかし、近いね。刺したからボクの体は自然前のめりになっちゃてるから、顔と顔が近い。
あ~あ。そのままキスの1つでもやっときゃ、さらにトラウマかなんか植え付けられたかもしれないのに。
「それ以外に、方法が、無かった、だろ・・・」
脂汗を流しながらも、どうにか声を紡ぐ七海くん。うん、まさしく正論だね。
でもやっぱり、ボクには届かなかったわけだ。
「・・・そう」
落胆してるのは何故だったっけ?
確か、意気地無し、とでも思ったのかな?無責任というかなんというか・・・はあ。
やっとその身を離したボク。ナイフも抜かれたから、刺した場所から血がもっと出てきたよ。
「それ、は・・・?」
「家にあったんだ。この為に持ってきたの」
変なところで計算していますよ彼女。誰でしょう?はい、昔のボクです。
この為って、ほんとに心中するつもりだったんだね。
「だから、今度こそ」
今度こそって、マジに殺しにきてますね。
ナイフを大きく振り上げる。
すると、咄嗟の動きか、七海くんの腕が動いた。
ここ。これこそが、七海くんの最大の後悔の瞬間。
その腕は、ナイフを庇う動きではなく、その動きの根幹。つまりボクの体勢を崩すように動いた。
そして、その手は、ボクの体を突き飛ば――――――
こんな風にしたらわかるだろう?
そう、七海くんはボクを突き飛ばしたわけじゃない。
ボクはその腕を避けるために、体を捻った。
でも、足場が悪い所為で体勢を崩し、そのまま真っ逆さまってわけ。
そして、ここから先は、今だから知りえる話。
ボクが落ちていったあと、七海くんはその目を閉じて、倒れこんだ。失血によって気を失ったのかな。
直後、屋上への扉が開け放たれた。
勝手について来た生徒。まあ、名前はどうでもいいので、女生徒Aさんね。
え?だめ?わかったよ、彼女の名前は、えーっと、確か・・・
そう!確か、宮原さん・・・だったはず。
覚えてないよそんなの。神だからって全知全能だと思うなよ。中にはそんなのもいるらしいけど。
その宮原さん、まあ、七海くんに恋をしてた人だね。
なんで知ってるのかって?ふふん、女子中学生の情報網なめんなよってことだよ。
きっと、普段誰も寄り付かない屋上に行く七海くんをみて、色々思うことがあったんじゃない?
あ、今回は宮原さんだけど、七海くんが好きな人は沢山いたよ。今はどうかな。あ、今って言っても、前の世界の話ね。
まあ、見た目は悪くない、っていうか、女顔で可愛いし、初心だし、優しいし、文武両道な彼だったからね。ボクとしても気苦労が絶えなかったよ。当時はそれどころじゃ無かったみたいだけど。
あ、でももう初心では無いのかな?どうだろ。
ま、優しいところとか、女顔なところとかは変わってないみたいだし、ちょっとクールさとでもいうのかな?それが備わった今の七海くんも好きだね。
・・・長くなってしまった。話を戻そうか。
宮原さんは七海くんに駆け寄りながら、
「東雲くん・・・って、きゃあっ!?」
ふふ、勝った。ボクは姓ではなく名で呼ぶからね。
駆け寄った彼女が見たのは、血を流す七海くんの姿。悲鳴も上げるだろう。
「どど、どうしよう・・・」
意味も無く周りを見渡す。
「そうだ!先生、先生呼んでこないと・・・!」
そうそう、早く行くんだ。どっちみち助かるとはいえ、一刻を争うんだから。
とまあ、こんな感じなわけだ。あの後はいいだろう。先生が来て、救急車が来て、運ばれて手術して、まあそんな感じ。
ボク?ボクは偶然通りかかった生徒に発見されて、七海くんと一緒に運ばれたみたいだね。
脅威の生命力をみせた七海くんと違って、ボクは死んじゃったみたいだけど。
いやー、まさか生きていたとは。人間ってすごいね。
ではでは、ボクの思い出語りに付き合っていただき、有り難う御座いました。
どうやら、七海くんもやっとお目覚めのようだし?ここら辺でさようならとしましょう。
以上、七海くんを想うあまり、転生して、七海くんだけの神様になっちゃった結果、七海くんの願いを叶えてあげようという粋な神様となった、西原楓の思い出語りでした!
じゃ~ね~。
はい、ということで本当はこんな事があったというわけです。
今回の視点は、いつもと違って、あの神様(自称)です。
本編をお待ちしている方、すみません。前書きの通り、七海と楓のためにも、書いておきたかったのです。
次は、ifの方を更新致します。メインは、しばしお待ちを。
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
・・・if、どんなこと書こう・・・?