デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

13 / 93
 ・・・あれ?再来週の日曜更新する予定だったのにな~。なんでかな~?
 ということで、勉強なんてやってられるかー!!な息吹です。
 前回で八舞編は終わりですが、今回は、まあ、その後みたいな回です。
 一応、章的には美九編とさせていただきますが、実際に本編に入るのは、もうちょっと先です。
 まずは、七海たちの生活を整えないと。

 最後に+αで書いてはいますが、まあ、惰性ですね。はい。すみません。
 そ、それではどうぞ!


日常編
プロローグという名の第12話


 どさっ、と。彼女たちのすぐ(かたわ)らで、そんな音が聞こえた。

「え・・・?七海・・・?」

「心配。どうし、たんです、か?」

 泣いている為か、やや途切れながら発せられる声。

 そんな中、二人は『それ』を認識した。

 『それ』とは即ち、

「驚愕。七海が、倒れています」

 彼女たち――――耶倶矢と夕弦を今しがた救った少年、七海が倒れている姿だった。

 何があったかは分からない。

 ただ、どうすればいいかも分からない彼女たちは思う。

 そういえば、あんまり喋ってなかった気がする、と。

 まだ1日と経っていないが、なんとなく分かる。

 もしもあの状況で、いつもの通りだったら、きっと彼は不敵に笑って、『どうだ、救って見せたぜ?』とでも言うのだろう。

 だが、思い返せば、たった二言しか口にしていなかった。

「どどど、どうしよう!?夕弦、どうすんの!?」

「狼狽。とりあえず、生きていますよね?」

「えーっと・・・」

 夕弦の言葉を受けて、七海の息を調べる耶倶矢。

 その結果は・・・

「生きてはいる、けど・・・」

「疑問。けど?」

「・・・寝てる」

「呆然。・・・はい?」

「だから、寝てるの。七海は」

 確かに聞いてみれば、規則正しい息遣いが聞こえてくる。時折(うな)されているのは気になるが、なにか悪い夢でも見ているのだろうか。

「嘆息。まったく、人をあんなに心配させておいて、寝てるとはどういう了見ですか」

「ま、まあ、我は最初から気づいてはいたがな。七海なら大事無いだろうと」

 いつもの調子を取り戻し始めた耶倶矢の言葉に、夕弦がじとーっとした目を向ける。(もとより半眼ではあるが)

「指摘。そう言いながら、一番焦っていたのは耶倶矢ですが?」

「くかか、それは夕弦、此方の茶番に付き合っていたまでよ」

「疑問。たしか、その茶番とやらを始めたのは、耶倶矢の方だったはずですが?」

「き、気のせいであろう」

 それを区切りに、二人は七海に視線を向ける。

「微笑。・・・ありがとうございます、七海」

「くく・・・なにか礼をせねばあるまい」

 だけど、どんなお礼がいいのだろう?

 ということで、二人で話し合った結果、

「ふん、あくまで礼であるからな。勘違いするでないぞ」

「質問。誰に向かって言っているのですか?」

「う、うるさいし!」

 そんな会話をしながら、七海のもとへと近づく二人。

 そして、

 自分達を救ってくれた少年の顔に、自分達の顔も近づけて―――――

 

 ちゅっ、と。軽い口付けをした。

 

 

 そこは何もない空間だった。

 いや、何かがあると言った方がいいのか?

 立っている感じはするから、地面のような場所と、俺からしたら下方向への重力はある。

 息が出来ているから酸素・・・いや、空気はある。

 自分の体を見れるから、どこからか光もあるのかもしれない。

 ただ、辺りを見渡せばなにもない闇だ。

 それが俺が分かったことだ。

「ここは・・・?」

 今更ながら、そんな疑問が湧き上がる。

 不思議と恐怖は感じない。ただ、漠然とした不安がある。

「まったく、君も無茶するね、七海くん」

「・・・フルネームから名前に昇格したのか、神様の中の俺は」

 足音も立てずに近づいてくる気配。

 前よりも鮮明に聞こえてくる声の主は、勿論、

「いや、違うか」

 振り向きながら、俺はその名前を口にする。

「久しぶりだな、楓。お前はもともとそう呼んでいた」

「!」

 神様もとい、楓。本名、西原楓(にしはら かえで)

 この闇の中で、淡く輝いているようにも見える薄い青っぽい色の髪に、俺の言葉に驚いている表情。

 その服は前の世界での、俺の中学時代の女子制服だ。

 俺はその姿を見た瞬間、胸の痛みと共に、鼓動が速くなるのを感じた。

「・・・いつからだい?」

「最初から、と言いたいところだが、2回目の別れ際だ」

「どうして気づいたの?」

「お前の、最後の台詞に聞き覚えがあった」

「最後・・・ああ、あれか」

 あの時の台詞は確か、

「『じゃ~ね~』だっけ」

「ああ」

「・・・なんでそれで、ボクだって思ったの?」

「あの言い方をするのは、お前しかいないからな」

「赤の他人だっていう可能性は?」

「ない。何年一緒にいたと思う」

「14、5年ぐらいだったかな?」

 あの台詞は、俺が何年もずっと聞いてきた言葉だ。そう間違えるはずがない。

 だからあの時、既視感を感じたんだ。

「俺からも1ついいか?」

「何かな?」

「いろいろ訊きたいことはあるが、これだけ訊く」

 そこで1度区切り、

「なんで、お前がいる?」

 俺と楓が一緒にいたのは、約15年間。ちなみに、生まれたときから一緒だった。

 俺は高校生。15年といえば、中学3年ごろだ。

 何で高校の分がないかって?それは、

「お前は、死んだはずだ」

「・・・ふふっ」

 含んだように笑う楓。その姿も懐かしい。

「死んだなんて、酷いことを言うね。だって」

 だって、

「君が殺したんじゃないか」

 その言葉に、さらに胸は痛み、鼓動も速くなる。

 これは、会えて嬉しいわけでも、恋愛感情でもない。

 これは――――後悔と、怒りだ。

「・・・・・・」

 俺は、何も言えない。

 彼女が死んだのは、俺の所為。それは、事実なのだから。

 

 数年前のことだ。当時15歳になったばかりの俺は、連続殺人事件に巻き込まれた。

 その日は、俺の両親が出張で帰れないということで、西原家に泊まることになっていた。

 いくらずっと一緒にいるとはいえ、同年代の男女が、とは思ったりもしたが、まあ楓だしいいか、という感じである。

 その日の夜のことだ。

 悲鳴と大きな音で、俺は目を覚ました。

 貸してもらった布団から飛び起きて、その音源へと向かった。

 そこで見たのは、

 床に倒れている大人と、それを見下ろすもう一人の大人。そして、床に広がり、壁に散っているのは。

 赤くて、紅くて、朱い、血液だった。

 あまりの光景に、言葉を失う当時の俺。

 すると、どたどたという足音と共に、楓がやってきた。

「どうしたの!?」

 俺は咄嗟に、声を上げる。

「見ちゃ駄目!逃げて!」

 しかし、遅かった。

 彼女は、その光景を見てしまった。

「・・・え?」

 そして、俺らの声に、犯人であろう大人がこちらを向く。

 男だ。しかし、その目は光が無く、虚ろだった。

 そして、その手に握られた大振りの刃物。

「く・・・っ!」

 反撃、応戦するなんて馬鹿なことはしない。

 すぐに楓の手をつかみ、玄関へと走る。

「誰・・・?どうして・・・?」

 靴を履くのももどかしく、裸足のまま外へと飛び出し、近所の家へと突進する。

 その家の玄関扉をばんばん叩いて、大声を出す。

「すみません!ちょっといいですか!すみません!」

 すると、顔見知りのおばちゃんが出てきて、やや苛立たしげに口を開く。

「なーに?こんな夜中に・・・?」

 しかし、俺たちの姿を見た途端、血相を変えた。

 なんせ、パジャマ姿でどっちも裸足。一人は目を虚ろにして、もう一人はこの必死さ。なにがあったと思うだろう。

「七海ちゃんに楓ちゃん!?どうしたの、こんな時間に!?」

「すみませんこんな夜中に。だけど、警察を呼んでください!」

「警察・・・?」

「いいから!!」

「わ、わかったわ」

 俺の剣幕に気圧されたのか、近くに置いてある電話の受話器を取る。

 それを見届けて、極度の緊張から解き放たれた俺は、そのまま気を失った。

 

「どうやら、思い出しているみたいだね」

「・・・人の思考を読むな」

 俺が半眼で告げると、彼女は言った。

「でも、もっと落ち着ける場所のほうがいいのかな」

 そう言うと、楓は指をパチンと鳴らす。

 すると、

「な、これは・・?」

 一瞬にして景色が変わった。

 さっきのどこか閉塞的な空間から、開放感のあるものになった。

 どうやら、どこかの屋上らしい。

 落下防止用のフェンスに、この屋上への入り口。貯水タンクなんかもあって・・・

「うぐ・・・!?」

 俺は、あまりの痛みに胸を押さえる。

 ここは、この景色は・・・!

「どう?懐かしいでしょ?」

「テメェ、何がしたい!」

 ここは、あの場所じゃないか!

 俺の後悔と怒りの、始発点であり根源。

「ほらほら、思い出してごらん?まだまだ続きはあるでしょ?」

 ああそうだな。あの事件はあくまで、始まりだもんな。

 

 それから数ヶ月後だ。結局、あれから1週間後に犯人は捕まった。

 事件は連続殺人事件とされ、被害者数は10数人。

 今までの間に、西原夫妻の葬式などもあった。

 とりあえず、楓は東雲家が預かっている。

 そんなある日のこと。

 俺は楓に呼び出された。屋上に来てくれということだ。

 放課後、そこに行くと、既に彼女の姿はあった。

 ただし、フェンスの向こう側に、だが。

「!おい、楓っ!?」

 ここのフェンスは、大して高いものではない。乗り越えるのは簡単だろう。

 だけど、普通乗り越えない。乗り越えるというのは、つまり、

「七海くん、来てくれたんだ」

「来てくれたんだ、じゃないよ!早くこっちに戻ってきなよ!」

 こちらに背を向け、顔だけを向けてくる。

 俺は、その背中に向かって駆け寄る。

「ねえ、お母さんもお父さんも、私が死ねば会えるかな?」

「馬鹿なこと言うなよ!お前が死んでも、おばさんやおじさんに会えるわけじゃない!」

「でも、お母さんもお父さんも死んでるんだよ?」

「だったらその分、楓は生きろよ!」

 違うよ、と彼女は首を振る。

「私は、会いに行く。だから」

 そう言うと、彼女はやっとこちらに振り向き、

 どすっ、と、そんな音が聞こえた。

「だから、一緒に死んで?」

 その声に、刺されたという実感と、痛みを認識する。

「が、ああぁぁぁぁああ!?」

「ねえ、何であの時逃げたの?何であの時向かっていかなかったの?」

 未だ刺した状態のまま、至近距離で彼女は尋ねる。

「それ以外に、方法が、無かった、だろ・・・」

「・・・そう」

 落胆したように、彼女は言うと、その身を離した。

 同時に、その手に持っていた大振りのナイフも離れる。

「それ、は・・・?」

「家にあったんだ。この為に持ってきたの」

 ナイフが離れたことで、さらに刺された胸から血を流しながら、その声を聞いた。

「だから、今度こそ」

 大きく振り上げられたナイフに、咄嗟に動いた腕。

 それは、自然な動きではあった。だが、場所が悪かった。

 そのナイフを避けるために、俺は、ナイフ本体ではなく、それを持った人を押し離したのだ。

 そう、楓の体を。

 俺に押された彼女の体は、そのまま後ろに倒れていって―――――

 

 そこから先は、知らない。

 

 

 そして、その屋上がここだ。今見えているこの風景だ。

「あの後、勝手に付いてきていたらしい一般生徒が、倒れた七海くんを見て駆けつけたところ、既に君は気を失っていて、その傷を見たその生徒が先生に報告。救急車を呼ばれたみたいだね」

「・・・お前は?」

「ボクは、君の陰になって見えなかったんじゃない?」

「そうか」

「そして、事件は投身自殺という風に処理されたみたいだね」

「・・・そうか」

 ?そういえば、なんでお前がそれを知っている?

「ボクは神に昇格したからね。その後を知るぐらい、造作も無いね」

 訊かずとも、勝手に喋ってくれた。

「そして見たところ、その胸の痛みは、心因性かなにか?」

「・・・まあな」

 あの後、俺が目を覚ましたのは病院の一室で、説明を受けたところギリギリだったとかなんとか。そこらへんは覚えてない。

 そして、その刺された傷は、昔のことを思い出したりするとなぜか痛むようになった。

 傷跡の場所は、丁度心臓部分。温泉のときはにごり湯だったから、耶倶矢と夕弦は知らないはずだ。

 しかし、何でわかる?

「何でわかるかって?そりゃ、その姿を見ればわかるよ」

 確かに、胸を押さえて苦しんでたらわかるか。

「それに、ここはボクの空間だから。なんでも出来るしなんでもわかる」

「そうかい」

 ふむ、だから心を読まれるわけだ。

「さて、積もる話もこれくらいにして、そろそろおはよう時間だよ?」

「あ?」

「それじゃ、じゃ~ね~」

 あ、と思う間もなく、俺の視界は光に包まれた。

 ・・・結局、楓がいた理由を聞いてないんだけど。

 

 

「みなさ~ん、今日はありがとうございました~」

 その声に、きゃー、という歓声が返ってくる。

 それは、ある意味壮観な図だった。

 まず、この場にいるのは全員女性。

 その女性たちが、一様にステージに向かって手を振っているのだ。

 その目の先にあるのは、同じように手を振り替えしている少女。

 紫紺の髪に銀色の瞳を持つ、スタイル抜群の少女の名は、誘宵美九。

「さ~て、今日はどの娘をお持ち帰りしましょうか~」

 その呟きは、黄色い歓声にかき消されていった。




 ・・・ノーコメントでお願いします。
 最後の方の意味不明さと惰性さについては、ノーコメントでお願いします!
 自分でも「うわー」とは思ってるんですよ?ただ、気力が、持たなくてですね・・・

 えー、活動報告ではちょっと空くとか言ってたのに、更新しちゃいました。

 そ、それでは、次回も読んでいただくことを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 よろしければ、ifも読んでください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。