ということで、勉強なんてやってられるかー!!な息吹です。
前回で八舞編は終わりですが、今回は、まあ、その後みたいな回です。
一応、章的には美九編とさせていただきますが、実際に本編に入るのは、もうちょっと先です。
まずは、七海たちの生活を整えないと。
最後に+αで書いてはいますが、まあ、惰性ですね。はい。すみません。
そ、それではどうぞ!
プロローグという名の第12話
どさっ、と。彼女たちのすぐ
「え・・・?七海・・・?」
「心配。どうし、たんです、か?」
泣いている為か、やや途切れながら発せられる声。
そんな中、二人は『それ』を認識した。
『それ』とは即ち、
「驚愕。七海が、倒れています」
彼女たち――――耶倶矢と夕弦を今しがた救った少年、七海が倒れている姿だった。
何があったかは分からない。
ただ、どうすればいいかも分からない彼女たちは思う。
そういえば、あんまり喋ってなかった気がする、と。
まだ1日と経っていないが、なんとなく分かる。
もしもあの状況で、いつもの通りだったら、きっと彼は不敵に笑って、『どうだ、救って見せたぜ?』とでも言うのだろう。
だが、思い返せば、たった二言しか口にしていなかった。
「どどど、どうしよう!?夕弦、どうすんの!?」
「狼狽。とりあえず、生きていますよね?」
「えーっと・・・」
夕弦の言葉を受けて、七海の息を調べる耶倶矢。
その結果は・・・
「生きてはいる、けど・・・」
「疑問。けど?」
「・・・寝てる」
「呆然。・・・はい?」
「だから、寝てるの。七海は」
確かに聞いてみれば、規則正しい息遣いが聞こえてくる。時折
「嘆息。まったく、人をあんなに心配させておいて、寝てるとはどういう了見ですか」
「ま、まあ、我は最初から気づいてはいたがな。七海なら大事無いだろうと」
いつもの調子を取り戻し始めた耶倶矢の言葉に、夕弦がじとーっとした目を向ける。(もとより半眼ではあるが)
「指摘。そう言いながら、一番焦っていたのは耶倶矢ですが?」
「くかか、それは夕弦、此方の茶番に付き合っていたまでよ」
「疑問。たしか、その茶番とやらを始めたのは、耶倶矢の方だったはずですが?」
「き、気のせいであろう」
それを区切りに、二人は七海に視線を向ける。
「微笑。・・・ありがとうございます、七海」
「くく・・・なにか礼をせねばあるまい」
だけど、どんなお礼がいいのだろう?
ということで、二人で話し合った結果、
「ふん、あくまで礼であるからな。勘違いするでないぞ」
「質問。誰に向かって言っているのですか?」
「う、うるさいし!」
そんな会話をしながら、七海のもとへと近づく二人。
そして、
自分達を救ってくれた少年の顔に、自分達の顔も近づけて―――――
ちゅっ、と。軽い口付けをした。
そこは何もない空間だった。
いや、何かがあると言った方がいいのか?
立っている感じはするから、地面のような場所と、俺からしたら下方向への重力はある。
息が出来ているから酸素・・・いや、空気はある。
自分の体を見れるから、どこからか光もあるのかもしれない。
ただ、辺りを見渡せばなにもない闇だ。
それが俺が分かったことだ。
「ここは・・・?」
今更ながら、そんな疑問が湧き上がる。
不思議と恐怖は感じない。ただ、漠然とした不安がある。
「まったく、君も無茶するね、七海くん」
「・・・フルネームから名前に昇格したのか、神様の中の俺は」
足音も立てずに近づいてくる気配。
前よりも鮮明に聞こえてくる声の主は、勿論、
「いや、違うか」
振り向きながら、俺はその名前を口にする。
「久しぶりだな、楓。お前はもともとそう呼んでいた」
「!」
神様もとい、楓。本名、
この闇の中で、淡く輝いているようにも見える薄い青っぽい色の髪に、俺の言葉に驚いている表情。
その服は前の世界での、俺の中学時代の女子制服だ。
俺はその姿を見た瞬間、胸の痛みと共に、鼓動が速くなるのを感じた。
「・・・いつからだい?」
「最初から、と言いたいところだが、2回目の別れ際だ」
「どうして気づいたの?」
「お前の、最後の台詞に聞き覚えがあった」
「最後・・・ああ、あれか」
あの時の台詞は確か、
「『じゃ~ね~』だっけ」
「ああ」
「・・・なんでそれで、ボクだって思ったの?」
「あの言い方をするのは、お前しかいないからな」
「赤の他人だっていう可能性は?」
「ない。何年一緒にいたと思う」
「14、5年ぐらいだったかな?」
あの台詞は、俺が何年もずっと聞いてきた言葉だ。そう間違えるはずがない。
だからあの時、既視感を感じたんだ。
「俺からも1ついいか?」
「何かな?」
「いろいろ訊きたいことはあるが、これだけ訊く」
そこで1度区切り、
「なんで、お前がいる?」
俺と楓が一緒にいたのは、約15年間。ちなみに、生まれたときから一緒だった。
俺は高校生。15年といえば、中学3年ごろだ。
何で高校の分がないかって?それは、
「お前は、死んだはずだ」
「・・・ふふっ」
含んだように笑う楓。その姿も懐かしい。
「死んだなんて、酷いことを言うね。だって」
だって、
「君が殺したんじゃないか」
その言葉に、さらに胸は痛み、鼓動も速くなる。
これは、会えて嬉しいわけでも、恋愛感情でもない。
これは――――後悔と、怒りだ。
「・・・・・・」
俺は、何も言えない。
彼女が死んだのは、俺の所為。それは、事実なのだから。
数年前のことだ。当時15歳になったばかりの俺は、連続殺人事件に巻き込まれた。
その日は、俺の両親が出張で帰れないということで、西原家に泊まることになっていた。
いくらずっと一緒にいるとはいえ、同年代の男女が、とは思ったりもしたが、まあ楓だしいいか、という感じである。
その日の夜のことだ。
悲鳴と大きな音で、俺は目を覚ました。
貸してもらった布団から飛び起きて、その音源へと向かった。
そこで見たのは、
床に倒れている大人と、それを見下ろすもう一人の大人。そして、床に広がり、壁に散っているのは。
赤くて、紅くて、朱い、血液だった。
あまりの光景に、言葉を失う当時の俺。
すると、どたどたという足音と共に、楓がやってきた。
「どうしたの!?」
俺は咄嗟に、声を上げる。
「見ちゃ駄目!逃げて!」
しかし、遅かった。
彼女は、その光景を見てしまった。
「・・・え?」
そして、俺らの声に、犯人であろう大人がこちらを向く。
男だ。しかし、その目は光が無く、虚ろだった。
そして、その手に握られた大振りの刃物。
「く・・・っ!」
反撃、応戦するなんて馬鹿なことはしない。
すぐに楓の手をつかみ、玄関へと走る。
「誰・・・?どうして・・・?」
靴を履くのももどかしく、裸足のまま外へと飛び出し、近所の家へと突進する。
その家の玄関扉をばんばん叩いて、大声を出す。
「すみません!ちょっといいですか!すみません!」
すると、顔見知りのおばちゃんが出てきて、やや苛立たしげに口を開く。
「なーに?こんな夜中に・・・?」
しかし、俺たちの姿を見た途端、血相を変えた。
なんせ、パジャマ姿でどっちも裸足。一人は目を虚ろにして、もう一人はこの必死さ。なにがあったと思うだろう。
「七海ちゃんに楓ちゃん!?どうしたの、こんな時間に!?」
「すみませんこんな夜中に。だけど、警察を呼んでください!」
「警察・・・?」
「いいから!!」
「わ、わかったわ」
俺の剣幕に気圧されたのか、近くに置いてある電話の受話器を取る。
それを見届けて、極度の緊張から解き放たれた俺は、そのまま気を失った。
「どうやら、思い出しているみたいだね」
「・・・人の思考を読むな」
俺が半眼で告げると、彼女は言った。
「でも、もっと落ち着ける場所のほうがいいのかな」
そう言うと、楓は指をパチンと鳴らす。
すると、
「な、これは・・?」
一瞬にして景色が変わった。
さっきのどこか閉塞的な空間から、開放感のあるものになった。
どうやら、どこかの屋上らしい。
落下防止用のフェンスに、この屋上への入り口。貯水タンクなんかもあって・・・
「うぐ・・・!?」
俺は、あまりの痛みに胸を押さえる。
ここは、この景色は・・・!
「どう?懐かしいでしょ?」
「テメェ、何がしたい!」
ここは、あの場所じゃないか!
俺の後悔と怒りの、始発点であり根源。
「ほらほら、思い出してごらん?まだまだ続きはあるでしょ?」
ああそうだな。あの事件はあくまで、始まりだもんな。
それから数ヶ月後だ。結局、あれから1週間後に犯人は捕まった。
事件は連続殺人事件とされ、被害者数は10数人。
今までの間に、西原夫妻の葬式などもあった。
とりあえず、楓は東雲家が預かっている。
そんなある日のこと。
俺は楓に呼び出された。屋上に来てくれということだ。
放課後、そこに行くと、既に彼女の姿はあった。
ただし、フェンスの向こう側に、だが。
「!おい、楓っ!?」
ここのフェンスは、大して高いものではない。乗り越えるのは簡単だろう。
だけど、普通乗り越えない。乗り越えるというのは、つまり、
「七海くん、来てくれたんだ」
「来てくれたんだ、じゃないよ!早くこっちに戻ってきなよ!」
こちらに背を向け、顔だけを向けてくる。
俺は、その背中に向かって駆け寄る。
「ねえ、お母さんもお父さんも、私が死ねば会えるかな?」
「馬鹿なこと言うなよ!お前が死んでも、おばさんやおじさんに会えるわけじゃない!」
「でも、お母さんもお父さんも死んでるんだよ?」
「だったらその分、楓は生きろよ!」
違うよ、と彼女は首を振る。
「私は、会いに行く。だから」
そう言うと、彼女はやっとこちらに振り向き、
どすっ、と、そんな音が聞こえた。
「だから、一緒に死んで?」
その声に、刺されたという実感と、痛みを認識する。
「が、ああぁぁぁぁああ!?」
「ねえ、何であの時逃げたの?何であの時向かっていかなかったの?」
未だ刺した状態のまま、至近距離で彼女は尋ねる。
「それ以外に、方法が、無かった、だろ・・・」
「・・・そう」
落胆したように、彼女は言うと、その身を離した。
同時に、その手に持っていた大振りのナイフも離れる。
「それ、は・・・?」
「家にあったんだ。この為に持ってきたの」
ナイフが離れたことで、さらに刺された胸から血を流しながら、その声を聞いた。
「だから、今度こそ」
大きく振り上げられたナイフに、咄嗟に動いた腕。
それは、自然な動きではあった。だが、場所が悪かった。
そのナイフを避けるために、俺は、ナイフ本体ではなく、それを持った人を押し離したのだ。
そう、楓の体を。
俺に押された彼女の体は、そのまま後ろに倒れていって―――――
そこから先は、知らない。
そして、その屋上がここだ。今見えているこの風景だ。
「あの後、勝手に付いてきていたらしい一般生徒が、倒れた七海くんを見て駆けつけたところ、既に君は気を失っていて、その傷を見たその生徒が先生に報告。救急車を呼ばれたみたいだね」
「・・・お前は?」
「ボクは、君の陰になって見えなかったんじゃない?」
「そうか」
「そして、事件は投身自殺という風に処理されたみたいだね」
「・・・そうか」
?そういえば、なんでお前がそれを知っている?
「ボクは神に昇格したからね。その後を知るぐらい、造作も無いね」
訊かずとも、勝手に喋ってくれた。
「そして見たところ、その胸の痛みは、心因性かなにか?」
「・・・まあな」
あの後、俺が目を覚ましたのは病院の一室で、説明を受けたところギリギリだったとかなんとか。そこらへんは覚えてない。
そして、その刺された傷は、昔のことを思い出したりするとなぜか痛むようになった。
傷跡の場所は、丁度心臓部分。温泉のときはにごり湯だったから、耶倶矢と夕弦は知らないはずだ。
しかし、何でわかる?
「何でわかるかって?そりゃ、その姿を見ればわかるよ」
確かに、胸を押さえて苦しんでたらわかるか。
「それに、ここはボクの空間だから。なんでも出来るしなんでもわかる」
「そうかい」
ふむ、だから心を読まれるわけだ。
「さて、積もる話もこれくらいにして、そろそろおはよう時間だよ?」
「あ?」
「それじゃ、じゃ~ね~」
あ、と思う間もなく、俺の視界は光に包まれた。
・・・結局、楓がいた理由を聞いてないんだけど。
「みなさ~ん、今日はありがとうございました~」
その声に、きゃー、という歓声が返ってくる。
それは、ある意味壮観な図だった。
まず、この場にいるのは全員女性。
その女性たちが、一様にステージに向かって手を振っているのだ。
その目の先にあるのは、同じように手を振り替えしている少女。
紫紺の髪に銀色の瞳を持つ、スタイル抜群の少女の名は、誘宵美九。
「さ~て、今日はどの娘をお持ち帰りしましょうか~」
その呟きは、黄色い歓声にかき消されていった。
・・・ノーコメントでお願いします。
最後の方の意味不明さと惰性さについては、ノーコメントでお願いします!
自分でも「うわー」とは思ってるんですよ?ただ、気力が、持たなくてですね・・・
えー、活動報告ではちょっと空くとか言ってたのに、更新しちゃいました。
そ、それでは、次回も読んでいただくことを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
よろしければ、ifも読んでください。