デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

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 八舞編エンドです。
 やや急展開、ご都合主義なところがありますが、気にしないでください。
 
 それでは、どうぞ。


第11話

「ほぅ・・・」

 思わずそんな言葉が出るほどに、この露天風呂は気持ち良かった。

 ありきたりな文章表現になるが、疲れがにじみ出る様な感じとでも言おうか。

「はぁぁぁぁ・・・」

 あまり人がいないことを良いことに、体を伸ばしてくつろぐ。

 微かに水音をたてながら、俺は縁に首を乗せるような体勢になる。足も伸ばして絶賛リラックスタイムだ。

 ただただぼーっとしているだけの時間。

「ほんと、色んなことがあったなぁ・・・」

 思い返せば、まだこの世界に来てから1日と経っていないんだよな~。

 こっちに来たかと思えばすぐに鬼ごっこ。途中でガチ勝負して、二人を助けると誓って、そのまま遊覧飛行・・・とはちょっと違うか。落ちそうになるのを助けてもらってデートみたいなのをしたり、遊園地で遊んで、旅館に来て、そして今。

 予想以上に疲れていたらしい体は、そんな思考と共に力が抜けていって・・・

 俺は、まぶたが落ちていくのに抵抗できずに、そのまま眠ってしまった。

 

「・・・ぅあ?」

 む、どうやら寝てしまったらしい。もとより少なかった利用者が、さらに少なくなっている。

 寝起きだからか、あまりはっきりしない頭で、そんなことを確認する。

 もうちょっと浸かっていたいが、そろそろあがるとしよう。

 そういや、耶倶矢と夕弦は?

 未練まがしく、未だに浸かった状態のまま周りを見渡してみる。

 両隣にある、温泉の湯とはまた違う温もりを刺激しないようにしながら・・・

 ・・・待て。両隣の温もり?

 ギギギと、錆びた歯車のように首を動かす。

 目に映るのは解かれた橙色の髪。意外と長い。規則正しい息づかいも聞こえてくる。寝ているらしい。

 よし、これだけで十分。落ち着こう。まずは落ち着こう。さあ東雲七海、どうやってこれを切り抜ける?

 ①常識的に、静かに起こす。

 ②驚いた風に、叫んで起こす。

 ③現実逃避(という名の願望)、このまま寝た振りor放置

 さあ、どうしよう。基本この3つだ。

 温泉に浸かってるはずなのに、冷や汗をかきながら考える。

 ・・・うん、どう考えても①が最良としか思えない。

 ということで、思い立ったが吉日だ。

「おーい、耶倶矢、夕弦、起きてくれー」

 どちらも、俺の肩に頭を乗せるような体勢なので、それぞれの手で頭を軽く揺する。

 最初に起きたのは夕弦の方だった。

「よう、起きたか?」

「放、心。これは・・・」

「俺の方が説明願いたいところなんだけど」

「要求。待ってください。今思い出しますので」

 この会話の所為か、今度は逆側からむずがるような声が聞こえてきた。

「む・・・ぅ、ぅん・・・」

「いやいや、寝るな。起きてくれ、耶倶矢」

「・・・え?」

 再び眠りにつこうとする耶倶矢に声をかけると、寝ぼけ眼でこちらの顔を見上げてきた。

 が、これもあり!と思う間もなく(結局思ってる)、その目が見開かれた。

「え、え?あれ?七海?なんでこんなことに?あれ?」

 顔に大量の疑問符を浮かべながら、体を離す耶倶矢。夕弦も、いつの間にか耶倶矢の方にやってきていた。

「思考。・・・確か、中の温泉を満喫した後こちらに来たのですが、七海が寝ているのを発見しまして」

 その言葉に、大量の疑問符を一気に『!』にしながら、耶倶矢が続けた。

「そう!それで隣に入ったら、いつの間にか寝ていて!」

「同調。そして今に至るわけです」

「・・・そうか」

 はあ、成程。状況は理解した。

 ま、それはあまり興味はないんだけど。

「それじゃ、そろそろ部屋に戻るか」

「クク・・・では、先に待っておるとしよう。あの誓い、忘れるでないぞ?」

 誓い?ああ、お前らを救ってやるってやつね。

「約束。必ず、夕弦たちが笑える世界にしてください」

「言われなくても」

 そうして二人が立ち上がる素振りをしたため、慌てて後ろを向き、気配がなくなったところで俺も立ち上がって脱衣所へと向かう。

 さあ、今日一番の大仕事だ。

 

 言っていたとおり、耶倶矢と夕弦は既に部屋にいた。

 何故か浴衣姿だったが、きっとこの浴衣を着ている客でも見て、自分たちも着てみたくなったんだろう。

 俺はそう結論付けて、部屋に敷かれていた布団の一つに座り込む。

「耶倶矢、夕弦、ここに座ってくれ」

 そう言って示すのは、俺のすぐ目の前。

 二人は特に何も言わずに、大人しく座ってくれた。

「手、貸して」

 そうすると、それぞれ手を出してくれたので、その手を掴む。

 それじゃ、とっとと始めよう。

 目を閉じ、集中。視覚ではないもので、『視る』感じ。

 意識を、彼女たちに向ける。

 俺の能力の応用、発展型。その情報を『理解』する。

 効果としてはそのまま。相手の情報を理解するための力。こうしないと、創ることも消すこともできないからな。

 あくまでも応用なので、もう1つの能力っていうわけじゃない。

 相手の情報と全く同じ情報を頭の中で組み立て、それを理解することで、創れるように、消せるようになるって感じだと思う。

 まあ、普通はここまでしなくてもいいんだろうけど。

 俺が今理解しようとしてるのは、耶倶矢と夕弦の霊結晶(セフィラ)。直感だが、これを理解すれば、絶対に救えるという自信があった。

 そうして、俺の意識は二人だけに注がれていく。

 イメージ的に、二人の中に入ったとでも言おうか。そうした途端、猛烈な頭痛が俺を襲う。

「うぐ・・・!」

 我慢するために眉間に皺を寄せ、手に力が入っているのが分かる。

 だけど、これじゃ駄目なんだ。それすらも分からないぐらい集中しないといけないのだから。

 既に、二人の声は聞こえない。意識すれば声という情報を理解できるだろうが、そうすることもできない。

 俺はさらに集中することで、その頭痛を我慢することにした。

 俺が今『視て』いるのは、なんとも表現できないものだ。色のような、形のような。抽象的のような、実物のような。そんな感じのもので、なにがなんだか分からない。

 だが、それでも理解しないと。なにがなんだか分かんないのなら、片っ端から調べてみればいい。

 そうして、俺の意識はさらに奥深くへ・・・

 

 どのくらい経っただろうか。1時間かもしれないし、1分かもしれない。この状態じゃわからない。

 少しずつではあるが、理解する効率も上がってはきている。似た感じのものがあるから、その分の理解が早くなっているのだ。

 それでも、まだ見つかっていないものがある。そう、俺が消すべきものである、二人の同一化の部分。

 見つからないなら、さらに奥に潜るまでだが。

 そうするに連れて、俺が理解している内容は、二人の根本的なものになっていく。

 これは・・・天使か。

 ここは・・・霊装。

 元が同一人物であるためか、二人の霊結晶の情報は、ほとんど一緒だ。むしろ、二人で一つの部分すらある。

 そうしたさらに奥で、俺はついに見つけた。

 ・・・ここだ!

 同一化。絶対に抗うことのできない根幹部分。

 俺は、これを、消す!

 これが消えるイメージをする。

 それでも・・・消えない。

 なっ!?何でだ?なんで消えない!!

 焦りだけが募っていく。

 落ち着け。冷静になれ。それが俺のモットーなんだから。

 問、能力の発動条件は? 解、それを理解していること。

 問、どうすれば発動しやすい? 解、方向、イメージを実際に表すこと。

 ・・・?

 問、イメージを、表すとは?

 

 解、言葉にすること。

 

 これは、少し危険性を帯びる。

 なぜなら、言葉を口にするには意識をその分浮上させないといけない。

 ・・・それでも、

 俺は、意識が少し離れていることを意識しながら、言葉を口にした。

 

消失せよ(ロスト)

 

 

 俺がそれと同時に、俺は目を開けた。

「・・・どうだ?」

 目の前の瓜二つの顔をした彼女たちに問いかける。

「む・・・おかしな違和感があるな。それ以外には、特にこれといった感じはせぬが・・・」

「首肯。でも、わかります。七海は、夕弦たちを救ってくれたんだと」

「クク・・・大義であったぞ、七海」

「・・・ああ」

 俺の言葉数は少ない。

「確認。これで、夕弦達は、ずっと一緒なんですね」

「ん・・・確かに、もうどっちかが、消えること、なん、て・・・っ」

 その声が、少しずつ濡れたものに変わっていく。

「質、問。耶倶矢?どうして、泣いて・・・?」

 それを疑問に思う声も、途中で止まる。

「疑、問。どういう、こと、でしょう・・・?」

「ふん・・・夕弦、だって、泣いてる、し・・・」

 ・・・俺が言葉をかける雰囲気じゃないな。

 未だに続く頭痛を堪えながら、俺は二人の姿を見続ける。

「ねえ、夕弦」

「返答。なんで、しょう?」

「・・・ごめん、泣かせて」

「・・・承認。いいです、が、夕弦も、いいでしょうか?」

「・・・うん」

 そうして、二人は、嬉しさからくるのであろう涙を、二人して抱き合って、零し続けた。

 途切れていく意識の中、それが俺の見たことだった。

 それを見て思う。

 

 ・・・よかった。俺は、誰かを、救えたんだって―――――




 こんな感じです。
 
 実は今日テストでして、結果が散々なことが目に見えているため、レッツ、リアルエスケープということで。
 
 書くことがあまりないため、この辺で終わらせていただきます。

 次回からは美九編です。新しく書くifは、四糸乃ともう1人も決まりました。誰かはお楽しみで。

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