デート・ア・ライブ  ~転生者の物語~   作:息吹

10 / 93
 2週間近くもあいてしまいました。すみません。
 これからは、極力1週間で書き上げれるように努力いたします。
 お詫びといってはなんですが、今回はいつもよりちょっと長めです。決して、その所為で遅くなったわけではありません。お詫びなんです。
 
 ifの方は、とりあえず四糸乃は確定しそうです。あと一人は、七罪あたりでしょうか。まだ決まっていません。
 追加としては美九ですね。
 次回で、アンケート終了とさせていただきます。よければ、活動報告の方にお書きください。よろしくお願いします。


第9話

「くかか、ほれ、次は我の番だな。着いてくるがいい」

 さっきのアトラクションを出る直前で腕を離し、そのまま出てきたわけではあるが、元気だな。あいつ。

 耶倶矢に言われた通りに彼女に着いていくと、先ほど乗ったメリーゴーラウンドを過ぎて少し離れたところに彼女は立ち止った。

「次は―――――これだ!」

 背後にバーン!!みたいな効果音を付けそうな感じで、無駄に格好よく指差す先にあったのは、

「へぇ~、耶倶矢はこれでいいのか?」

「応とも!先程通ったときに、これと決めておったのだ」

 何て言うんだっけなこういうアトラクション。まあ、有り体に言うならば、ウォーターアトラクションだな、絶叫系の。急流すべり?少し違うか。

 なんか楽しそうなものから乗っていこうつーことなのかもしれないな、耶倶矢は。

 まあ、楽しいことは間違いないだろうし、別にいいんだけど。

「それじゃあ、とっとと並ぼう」

 意外と人が多いので、結構待たされそうな気がするけど、まあ、二人と一緒なら飽きることもないだろう。

 そうして並んでる間にも、歓声や水が叩かれる音などが聞こえてきている。耶倶矢がいまかいまかと待ち望んでいる姿に夕弦と二人で和んでいたりしてると、存外早く俺らの番がきた。

「くかか!ようやく我らの番だな!待ちわびたぞ」

「ほら、早く乗るぞ」

 俺がそう注意すると、やや憮然としながらも大人しく着いてきた耶倶矢。

 そうして、3人で乗り込む。

 俺らが乗っているやつは、円形の複数人乗れるやつで、俺を真ん中にして両隣にそれぞれ耶倶矢と夕弦がいる。

「じゃあ行きますよー」

 従業員さんの声に押されるようにして、俺らが乗っているヤツが発進する。

 水路上を滑っていくと、やはりどんどんスピードを上げていく。

 最初は余裕ありそうに笑っていた耶倶矢の顔も、それに比例するように曇っていく。

 おーい、耶倶耶ー?笑みが引き攣っていますよー?

 対して、夕弦の方はそうでもない。まだまだ大丈夫って顔だな。

 そうして・・・

「きゃああぁぁぁ!!」

「驚愕。うわー」

「おぉぉ、スゲェ」

 三者三様。それぞれのリアクションをしている。

 しかし、そんな風にしていると、待ち受ける未来は一つしかない。

 バッシャーン!!!

「のわあぁぁぁ!?」

「衝撃。おおー」

「うおっ!?」

 そう、これはウォーターアトラクション。何もしなければただ濡れるのみだ。

「いやぁ・・・ずぶ濡れだし~・・・」

「呆然。びしょびしょです」

 アトラクションにも乗り終え、外にでた俺ら。それぞれが髪や服から水を滴らせている。

 まあ、なんだ。水避けの存在を知らなかった耶倶矢や夕弦ならともかく、思いっきり忘れてた俺の責任でもあるのかな。

「おい・・・」

 ということで、とりあえず声をかけようと彼女たちの方を振り向こうとした俺の首は、すぐに逆方向に向くこととなった。自身の意思で。

「こ、こっちに来い!」

「?何故だ?次は七海の番ではないぞ」

「懐疑。もしかして、順番を無視するつもりですか?」

 その台詞から察するに、どうやら気づいていないようだ。

「少しは自分の現状を確認してみろ!」

「ふん、何をわけのわからぬことを」

「指摘。そういえば、何故こちらをむかないのですか?」

 まだ、まだ気づいてないのか・・・!

 もはやなんで気づかないのかわかんないんだけど。ほら、そろそろ人目を集め始めてるし。

 もう、強行手段にでるしかないかな。

 俺はそう決めると、なるべく二人の方を見ないようにしながら彼女たちの手をとった。

「おう?なんだ、七海。どうかしたのか?」

「いいから、黙って着いて来い!」

 そう言って、視線を張り巡らせていると、いい感じの茂みがあったのでそこに入る。

「質問。一体、夕弦たちをこんなところに連れ込んで、何をするつもりですか?」

 う!そう言われれば、まあ、わからんでもないけど。意味不明だもんな。俺のやってること。

 いきなり怒鳴ったかと思えば、こっちに顔は向けないし、連れて行かれたと思えば、その先は人目のつかない茂みの中だし。

「とりあえず、自分自身を見下ろしてみてくれ」

「自分自身・・・?」

 耶倶矢が呟きながら、自身の体に目を向けると・・・

 ボンッ!見たいな感じで、顔が一瞬で真っ赤になった。

「発覚。これは・・・」

 夕弦も気づいたみたいだな。

 そう、彼女たちの服は(俺も含め)濡れていた。言い換えるならば、つまり、透けていたのだ。

 俺は、すぐに服を掴んで中に空気入れてはがしてたから、それほど目立ってないけど、二人の方はそうじゃないらしい。張り付いた服が彼女たちの体のラインをはっきりさせるほどになっていた。

 透けた服から見える肌色や、下着(着けといてくれた)を極力視界に入れないようにしないよう、彼女たちの目を見る。

「とりあえず、服乾かしてやるから、ほら」

 俺がそう言うと、二人は自身の体を抱くようにして後ずさる。何故だ。

「い、いや、大丈夫だし。こっちでなんとかできるし」

「要求。そういうことなので、少し向こうを見ててください」

 は?どういうことだ?自分たちでどうにかできるっていうけど、どうやって?

 俺が、不思議そうな顔していつまでも向こうを見ないからか、耶倶矢が怒ったように言ってきた。

「いいから!早く向こう見るし!」

「お、おう」

 その剣幕に多少、たじろぎながらも俺は言われたとおりに彼女たちを後ろにするように体の向きをかえた。

 すると、少ししてから後ろからちょっと強めの風が吹いてきた。

 ・・・今日、こんなに風強かったっけ?

 

 数十分後にしてやっと、もう大丈夫ということでそっちを見てもいいという許可を得た。

 その間、暇だったので上の方は脱いで、炎を生み出して乾かしたり、下の方はどうしようもないので、ちょっと小さめの炎で着たまま乾かした。一回、小さくしすぎて風で消えそうになったりもした。

 ということで、やっとお許しが出たわけだし、一声かけておくか。

 ・・・そういえば、風が止んだな・・・

「やっと、終わったのか」

「くかか、まあ、我らの手にかかればこのくらい造作も無いな」

 ・・・あれ?

「催促。時間を無駄にしてしまいました。早く行きましょう」

 ・・・おかしい。

 耶倶矢の服も、夕弦の服も、どっちも、

「お前ら、どうやって服を乾かしたんだ?」

 そう、乾いているのだ。

 どうやら、俺のことは見ていたのか、疑問に思っていないようだけど。

「う、ま、まあそんなことはいいじゃん。ほら、早く行くし!」

「え、ちょ、おい!?」

 そう言うや否や、俺の手を握って茂みから飛び出す耶倶矢。

 俺が咄嗟に手を握った夕弦も連れて飛び出し、すぐに離す。俺の方も、なんとなく同時に夕弦の手を離す。

「・・・そういえばさ」

「な、なんだ!?」

 何をそんなに焦っていやがる。

「いや、普通に服を変えたらよかったんじゃね?視認情報でなんとかなるんだから」

 わざわざ乾かすよりも、そっちのほうが早く済んだはずだ。

「否定。それは出来ません。夕弦たちはこの服しか覚えてないので」

「なら一旦霊装に戻って、その後にその服に戻れば良かったんじゃ?」

「不覚。あ・・・」

 どうやら、その方法に気づかなかったらしいな。

 まあ、過ぎたことだ。別にいいだろう。今更でもあるし。

「・・・さて、次は何処にするんだ?」

 俺がそう訊くと、夕弦はまたパンフレットを見ながら言った。

「思考。・・・コーヒーカップというものに乗ってみたいです」

「わかった。何処にある?」

「案内。ついて来てください」

 そう言ってパンフレットを閉じ、歩き出した夕弦。

 俺は耶倶矢と並んで、その背中を追いかけた。

「・・・ねえ、七海」

 その道中、唐突に耶倶矢が話しかけてきた。

「どうした」

 彼女のほうに顔を向けて短くそう返すと、多少の逡巡があったのか、少しの間ができた。

 俺は、何が言いたいのかわからないし、向こうから話しかけてきたので待っていた。

 そして、耶倶矢は俺の顔を見て、口を開ける。

「私と夕弦がこんな風に一緒に遊べるなんて、数時間前までは考えもしなかったんだけどさ」

 その突然の言葉に、俺は何も言えない。言えるはずがない。

 今、耶倶矢が言いたい事を、俺が止めちゃいけない。黙って聞くべきだ。

 俺はそう判断し、続きを待つ。

「七海のおかげで、こんなに楽しいことが出来たから、なんていうか、その・・・」

 耶倶矢は、また台詞を区切る。

 だけど、さっきよりは短い間で。でも、さっきよりは早口で。

「・・・ありがと、ね」

 そして、照れくさいのか顔を真っ赤にして、叫ぶように言う。

「ふん!ほら急ぐぞ!夕弦が待っておろう!」

 だだだーっと、夕弦のところまで駆け寄る耶倶矢。勿論、夕弦は待ってなどいない。時折立ち止まりながら、方向確認してるぐらいだ。

 頬を掻きながらそれを見て、考える。

 七海のおかげ、ねえ・・・

 ・・・俺は、少しは強くなれたのかな?

 無意識に空を見上げていた顔を戻して、その思考を中断させる。これは今、思い出さなくていい。

 それを振り切るように、俺も彼女たちの元へと駆け出した。

 

 そして着いたコーヒーカップ。メジャーだからか、ここも人は並んでいた。

 まあ、別にこいつらと居れば飽きはしないからいい。

 ということで、俺らの順番。

 適当に近いところにあるやつを選んで、座る。やはり、俺を真ん中に両側にそれぞれ耶倶矢と夕弦が座っている。

 間もなくして、アナウンスが聞こえ、音楽が流れ始める。

「この音楽が流れている間は、これが回り続ける。回転を速くしたいなら、このハンドルを回すんだ」

 多分、知らないだろうから説明をする。

 そして、それを聞いた二人は、目を光らせた。

 ・・・なんだ?

「ほう、速くするのならばこれを回すと」

「同調。でしたら、勿論」

 すると、二人同時に手を伸ばし、ハンドルを掴む。

 掴んだのならば、することは決まっている。すなわち・・・

「おりゃああぁぁぁ!!」

「掛声。とりゃー」

 回す。とにかく回す。力の限り・・・かどうかは知らんが回す。

 二人だからか、結構重いはずのハンドルは、どんどん回る。比例するように、周りの景色も回る。

 遠心力の所為で耶倶矢の方に倒れようとする体を、カップの淵を掴む事でなんとか維持し、叫ぶ。

「うおおぉぉぉ!?」

 酔う。いや、酔いそう。視界が目まぐるしく変わっていく。

 対して、回している当の本人たちは楽しそうに笑っている。耶倶矢は、ジェットコースターは駄目なのに、なんでこれは大丈夫なんだろう?

 現実逃避気味に考えて、早く終わることを願う。

 このアトラクション内に、笑い声だけが響いていく。

 ・・・あ、もう悲鳴は上げてないよ?

 

 大分フラフラしながらも、なんとか出てきて小休憩。

「あの程度でギブアップとは、まだまだだな」

 そんな感じの台詞を前にも聞いた気がするよ・・・。いつだっけ?

 俺は近くにあったベンチに腰掛け、ぐだーとなっていた。

「嘲笑。うおおぉぉぉ、ですか」

 あー、言ったなー、そんなこと。

 ・・・よし!こうなったら!

 俺は立ち上がりながら声を上げる。

「よし、とことん遊ぶか!」

 急に立ち上がった俺に二人は少し驚いていたものの、すぐに挑戦的な笑みを浮かべる。

「くかか、そう来なくっては面白くない!」

「不敵。遊び尽くしますよ」

「おう!」

 

 そうして、言葉通り遊び尽くすこと数時間。耶倶矢が何故か絶叫系を選びまくったり、夕弦と一緒になってお化け屋敷で耶倶矢を驚かせたり、途中で飯を挟んだりしてたら結構早く時間が経った。

 いつの間にか客の数も減り、あたりは夕焼けの赤に染まっている。多分、そろそろ日も落ちて暗くなるだろう。

 この遊園地は8時までは開いてるらしいから、日が落ちてすぐ出れば大丈夫だろう。

「最後、これに乗って終わるか」

 俺が何に乗るか決める番、そう提案すると、

「くく、そうだな。順番的にも丁度いい」

「承諾。わかりました」

 そうと決まればすぐに、列に並んで待つ。

 俺が選んだのは、観覧車。締めとしては最適だと思う。

 客が減ってきているおかげで、ものの数分で順番が来た。

 そうして、ゴンドラの中に乗り込む。向かい合う形で二人席が置かれているので、耶倶矢と夕弦で一方、もう一方に俺が座る。

 少しだけ揺れながら、上へ上へと向かっていく。

 しかし、沈黙も気まずいので二人に呼びかけようとする。が、先に彼女たちの方が口を開いた。

「これは、あんまり面白いものではないな」

「同調。そうですね」

「え・・・」

 あー、確かにスリルがあるわけでもない、ただ景色を見るものだもんな、観覧車って。

「でも・・・」

 耶倶矢が何かを言いかけたので、俺はそちらに顔を向ける。

「でも?」

「うん。でも、こんな風に落ち着いて下を見るのは初めてだなぁ、って」

「肯定。確かに、夕弦たちはいつも下は見てませんでしたからね」

 ・・・成程。考えてみれば、いつも二人は相手だけを見ていたのだろう。どんな勝負事でも全力で戦って、負けるために。

 だから、こうして二人で並んで下を、地上を見ることはなかったんだろう。

 二人のその言葉を最後に、ゴンドラ内に沈黙が訪れる。気がつけば辺りは暗くなり、地上は点々と灯りが見える。

 そしてそのまま、一周終了。

 会話のないまま遊園地からも出る。耶倶矢と夕弦は並んで俺の後ろをついて来ている。

 適当に少し歩いたところで、俺は振り向いた。

「俺は、お前らを救うと決めて良かったと思うよ」

「?なんだ、いきなり」

「だから、俺はお前らとずっと一緒に居る。前でも後ろでもなく、横に並んで」

「疑問。一体、どうしたのですか?」

 二人のその言葉には答えず、俺は続ける。

「つまり、何が言いたいかっていうと・・・」

 実際、何を言おうかなんて考えてない。ただただ思ったことを言ってるだけだ。

「笑え、騒げ、楽しめ。俺も一緒になってやるから」

 その言葉で、どうやら気を遣わせてしまったらしいと気づいた二人。はっとした表情になる。

「ふん、七海のくせに、生意気なことを言う」

「多謝。心遣い、ありがとうございます」

「・・・ああ」

 今更ながら、照れくさくなったので、顔を背けてしまう。

 その流れで、体も反転させて言う。

「ほら、暗くなったし、旅館なりなんなり探すぞ」

 そうして、歩き出す俺。

 直後、両腕に暖かい感触が。

「そうだな。誰かさんの所為で遅くなってしまったからな、早くするがいいぞ」

「探索。夕弦たちも手伝います。どんなものを探せばいいのですか?」

 突然のことに驚いてしまったが、俺は顔に苦笑を浮かべる。

「そうだな・・・」

 そうして、3人で並んで歩く。心なしか、俺らの周囲は明るく感じた。




 ここまで読んでいただき、有り難う御座います。

 次回で、八舞編が一段落でしょうか。冗長になりがちなので、多分、ですが。
 
 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。