緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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金と妹の力

「ん?」

 

陽菜の衝撃行動の次の日……キンジの携帯にメールが入った。

最初は一毅かと思ったが違う……

 

【屋上で待つ……アリア】

(は、果たし状?)

 

キンジは思わず天を仰いだ。遂に来てしまった……何て事だとキンジはガックシと地面に膝をつけた。

何れ来ると思っていた。会えば殴るか蹴られるか……まず無事ではすまないだろう。

 

「に、逃げよう」

 

逃げるのも策の内だとキンジはメールを無視して行くことにした。

 

「さて今日も良い天気(バキュン!)……え?」

 

頬の近くを銃弾が通過した……見てみれば校門には一毅とレキが仁王像のごとく待機していた。

 

「よぅ」

「お、おぅ……」

 

一毅がにっこり笑って親指で屋上を指差す。

 

「み、見逃してくんねぇ?」

「悪いがサブリーダーのアリアからキンジが逃亡図った際に多少粗っぽくとも良いから連れてこいとも言われてる」

「さぁて屋上にいくかぁ!!!!!」

 

最初からそうしろよと一毅とレキは思ったが黙っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

さてそんな茶番のあとキンジは重たい足を動かしてなんとか屋上にやって来る。

 

「遅かったわね」

「ちょ、ちょっとな」

 

屋上のドアを開けるとアリアがいた。ほらほら背後に大魔人が鎮座しているよ……

 

「な、何かようか?」

「聞いたわよ」

「…………」

 

な、何を?と聞きたかったがそれを許してくれる雰囲気ではない。そんなことを聞けばぼこぼこにされそうだ。

 

「フォース今何処にいるのかしら?」

 

アリアは怒らないから言ってみなさいといった雰囲気で聞いてくるが……余計に怖い。

 

「か、かなめは今俺の部屋に……」

「あ?」

「っ!」

 

ヒィ!っとキンジは後ずさる。

 

「かなめ?」

「ふぉ、フォースの事だよ」

「ふーん!」

 

ギリギリ歯軋りしながらアリアが睨んできた。滅茶苦茶おっかない……

 

「あんたやっぱり妹にまで手を……」

「出してねえよ!」

 

キンジもそこは否定した。重々言っておくが流石に妹には手を出さない。

 

「どうかしら?理子だってキスしたあとなんか「キーくんマジ人間離れ人間!」って言ってたわよ」

「いや……その……」

「辰正ですら若干軽蔑してたわよ」

「ぐはぁ……」

 

何気に一年生ズの良心とも言える男からの軽蔑の方が心に響いた。

 

「……でも妹って言うのは本当なの?一毅に聞いたけど今まで存在すら知らなかったんでしょ?」

「まあな……」

「まあキンジのお父さんだし隠し子がいてもおかしくないでしょ?」

「いやなんで俺の親父だとk隠し子がいてもおかしくないんだよ!」

「一毅が言ったら全員が納得したわよ?」

「今度蹴り飛ばしてやる……」

 

キンジは固く誓った。

 

「でも勘だけど何となくキンジのあの子は繋がってる……そう思ったわ……」

「……」

 

アリアの直感はよく当たる。それ故に無視できない……

 

「…………」

「ん?」

 

アリアが俯いた……そのまま黙りコクってしまう。

 

「アリア?」

「本当は不安だったの……あの子可愛いし背は大きいし胸だって大きくて愛嬌あって……」

「?」

「だから目の前でキスされたとき混乱して……でも落ち着いてから考えたらあんたヒステリアモードにならなかったじゃない?」

「あ、ああ……」

「だから本当はわかってた……大丈夫だって……」

「じゃあなんで来たとき怒ってたんだよ」

「逃げようとしたじゃない。何か後ろめたいことがあるんじゃないかって思ったのよ。話してたら別にないんだってのは何となく分かったけどね」

 

キンジは頬を掻いた……確かに後ろめたいのはなかった。

本当はアリアと顔を会わせたらどんな顔をすれば良いのか分からなかったのだ……

 

怖かった。色んな奴とキスしてきたと言うかされてきたがアリアは怒ったりしてもキンジと交流を絶つことはなかった……だが今回は敵で自称妹……心の何処かでアリアに嫌われたんじゃないかと言う思いが過った……怒られたって良いけど……嫌われたんじゃないかと言うのは嫌だった。

 

「その……すまん……」

「別に良いけど……ねぇ」

 

アリアが少し近づいてきた。

 

「まさかあれ以来キスしてないわよね?」

「そりゃ当たり前だろ……」

 

本当陽菜に頬にされたがあれはノーカンで良いだろう。

だがアリアは良かった……みたいな顔をしていた。

どうしたんだ一体……

 

「ね、ねぇキンジ……ちょっとしゃがんで」

「何でだよ」

「い、良いでしょ!」

 

まあ別に構わないのだが……としゃがんだ瞬間……

 

「《チュ!》むぐ!」

 

ガチッと歯が当たったが間違いなくキス……しかも陽菜のように頬にではなく口と口のキス(マウストゥーマウス)……

 

「あ、アリア?」

「っ!」

 

カァー!!!!!っと頬を赤くしたアリアは屋上の入り口に爆走し、

 

「う、上書きよ!」

 

そう言い残し消えた……

 

「う、上書き?」

 

キンジには意味がわからなかった……どう言うことなのか?いや……かなめのキスに大してなのは分かる……だがそれを上書きする意味……それは……いや、上手く考えが纏まらない……幾ら今のキスでヒステリアモードに成ってしまったとはいえ混乱が強すぎる。

 

(それにしても……)

 

キンジは屋上の入り口の裏に回り込む……そこにはパイプとか色々あるのだがそれは全て握り潰されるか引き裂かれていた。

 

(明らかに人為的な損傷だな……)

 

まさかここに熊とか居るわけはない……しかし何があったのだろうか……

 

(何か気に食わないものを見て物に八つ当たりか?)

 

だとしたら何て傍迷惑な奴だ。どんな奴だか知らないが他人の迷惑……はここなら無いだろうが物に八つ当たりは問題だろう。

 

「とりあえず帰ろう……」

 

キンジは家路についた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後キンジは家につくとかなめが出迎えてくれた。

 

「お帰りお兄ちゃん」

「あ、ああ……どうしたんだその手」

「ちょっとね」

 

かなめはてへっと舌を出した。可愛くないことはないがなぁ……

 

「ご飯にする?」

「ああ」

 

キンジが頷くとかなめがキッチンに行きコンロに火を着けカレー(ここのところずっとカレーだ)を暖める。

それを見ながらソファに体を預ける。さっきヒステリアモードに成ってしまったため少し体が怠い。まあショックが強すぎて余り長時間の変化でなかったのは良かったが……

 

「ねぇお兄ちゃん」

「っ!」

 

かなめが抱きついてきた……こんなのは既に日常茶飯事……だが今回は何か嫌な予感がした……

 

「何だかなめ……」

「私ね……お兄ちゃんが好きだよ?」

「……は?」

「口では面倒臭がっても面倒を見てくれる所とかいざというときは体を張るところとか……でもね……なのにお兄ちゃんは忍者娘とかロリ女でばっかりヒステリアモードに成る……」

「んなっ!」

 

キンジは背筋が凍った……

 

「お前見てて……」

「うん……全部見てたよ。風魔 陽菜って忍者娘にほっぺにキスされたところとかさっき神崎 アリアに口と口のキスされたときも居たよ?」

 

かなめの腕がキンジの首をゆっくり絞める。

 

「お兄ちゃんは女子の好みが悪いと思うよ?お兄ちゃんは私でヒステリアモードに成れば良いんだ」

「っ!」

 

流石にヤバイ感じがしたキンジは咄嗟に腕を解いて脱出するとかなめと距離をとる。

 

「落ち着けかなめ……兄妹でヒステリアモードに成ったら倫理的にアウトだろう」

「言ったよね?愛があれば良いんだよ。互いに愛を満たしあってヒステリアモードを発動させ会う。互いがスイッチに成るんだ。そうすればいつでもヒステリアモードに成ることができる。最強の兄妹……【双極兄妹(アルカムディオ)】となれる」

ここに来てやっとキンジはかなめの目的がわかった。詰まり今まで自分だけを見て欲しがったのも自分にくっついてきてヒステリアモードを誘発するような事をしたのも……

 

「それが目的か?」

「うん。あ、でもお兄ちゃんが好きなのは本当だよ。お兄ちゃんは私を受け入れてくれればそれで良いんだよ」

「馬鹿言うな……お前ではヒステリアモードに成らなかったのは今までで分かった筈だ!」

「そうだね。だから勉強したんだ……大丈夫ゆっくりリラックスして……私がお兄ちゃんを成らせてあげるから」

「っ!」

 

キンジは脱出しようとして後ろにとんだ……だが、

 

「なっ!」

 

突然足に布のような物が巻き付き動きを奪う……

 

「はあっ!」

 

かなめが包丁を振り上げてきた。

 

「くっ!」

 

キンジもバタフライナイフを抜いて応戦する。

 

「てめえ……」

「お兄ちゃんの足に巻き付いてるのは磁気推進繊盾(P・ファイバー)……先端化学兵器の一つだよ」

「自称妹が兄と呼ぶ男にこんなもの引っ張り出すな!」

 

キンジは弾き返すが顔の真横に蹴りが来た。

 

「このっ!」

 

キンジは腕で防ぐ。ヒステリアモードの後では力が入らない上に眠い……しかも向こうはなんだが最近はやりのヤンデレになっているし……

 

「くそ!」

 

キンジは横に吹っ飛んだ。そのままかなめはキンジにマウントを取る……

 

「ふふ……お兄ちゃん……」

 

ゾクッとするような笑み……

 

「ああ……凄い……お兄ちゃんがこんな近くにいるって思うだけで脈拍が強くなる……ヒスりそう……」

「この……おりろ!」

 

身を捩るが足は磁気推進繊盾(P・ファイバー)とか言う奴で縛られてて動けないし上手く抑えられてるらしく腕力ではキンジが上にも関わらず返せない。

 

「はぁ~……ねえお兄ちゃん……」

 

かなめが顔を近づけてくる。

 

「このまま成っちゃおうよ……そうすればお兄ちゃんはいつでもヒステリアモードに成れる。私はお兄ちゃんを成っても責めないよ?そして私はやっと意味を見つけられる」

「意味がわかんねぇよ!」

 

キンジは逃げようとするがかなめは構わずキンジに顔を近づける……

 

「取り合えずまずは上書きし返さないとね」

「やめ!」

 

キンジは顔を背けて逃げようとする……すると、

 

「…………」

 

かなめは突然黙り出した。

 

「か、かなめ?」

「何で?」

「え?」

 

ポトッと頬に滴が落ちた。

 

「かなめ?」

「私はお兄ちゃんが好き……大好き……」

 

弱々しく……儚げな雰囲気になっているかなめ……

 

「お、おい?」

「何でお兄ちゃんは……私が嫌いなの?」

 

ポロポロと涙を流しながらキンジの胸に顔を埋める。

突然のかなめの変化……まるで人格が入れ替わったような……

 

(そうか……)

 

キンジは思い至った……この変化は兄の金一のカナへの変化に似ている……そう、これは、

 

(女のヒステリアモード……)

 

ヒステリアモードは本来子孫を残す力の極端化であり異性に好まれやすい人間に成る傾向がある……つまり男は()()()()()()()()に……そして女は……()()()()()()()()()()()()()()()に……

 

「お兄ちゃ……」

 

キンジは緩んだ拘束を解いてかなめのこめかみの辺りを軽く叩く……するとかなめは意識を失った……

 

これは脳髄液を揺らして相手の意識を僅かな時間であるが奪う小技みたいなものだ。昔祖父が「面白いものを見せてやろう」とか言って兄にこの技をかけて見せたの思い出してやってみたがヒスってなくてもぶっつけで出来るもんだと思った。因みにそれをやった祖父はその後祖母にボコボコにされたが余談である。

 

その後キンジはかなめを抱き上げるとベットに運んでやりそのままリビングに戻った。

するとすぐに意識を戻ったらしく啜り泣く声が聞こえた……

ほっておけない感じがする。そしてほっておけず宥めて慰めてとんでもない事をやってしまうのだろう……

 

(罪なもんだな……俺たちの力も……)

 

キンジはこれからどうするか考え始めた……




キンジが使った小技はアリアもAAにて志乃に使ってましたね。

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