緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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第八章 極東戦役 開幕
龍への相談……そして


「じゃあ一毅……これはあんたにだから聞けるんだからね?他言絶対無用よ」

「お、おう」

 

チーム登録から速くも一週間たった日の放課後……一毅とアリアは珍しく二人でリーフパイを片手にベンチに座っていた。

 

「しかしなんだ急に相談なんて。珍しいじゃねえか」

「そうね……でもこれは私だけじゃ判断しきれない難問よ」

 

アリアだけで処理しきれないだと……?そうしたら自分で力になれるのだろうか心配だ。

 

「安心しなさい。あんたじゃなければダメよ」

 

アリアはそんな一毅の心証を読み取って言う。

そこまで言われたら一毅も男だ。腹を括って話を聞こう。

 

「OK……聞こうじゃないか」

「……ええ……」

 

少しアリアは深呼吸した。

 

「あのね……」

「あ、ああ……」

 

ゴクリと唾を飲む。

 

「…………なの?」

「え?」

 

声が小さすぎて聞こえなかった。

 

「わ、悪い。もう少し声大きく」

 

アリアは顔を真っ赤にする。そして……

 

「聞きたいんだけど……」

「ああ」

 

一毅は今度こそ聞き逃さないように身構える。

 

「男にとって性的興奮ってどういう感じなの?」

「俺にしてみたら男にそんなことを聞くお前の頭がどういう感じなのか知りてぇよ」

 

とんでもない爆弾を投下して来た少女を見ながら一毅はコメカミを抑えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?どういう事だ?」

「キンジのヒステリアモードの事なのよ」

 

ああそう言うことかと一毅は納得した。つうかいきなり真面目な顔して性的興奮を聞かれた時は頭のネジが取れたのかと思った。

 

「そ、その……あいつって興奮すると強くなるじゃない?」

「まあな」

「その興奮が性的じゃない?」

「そうだな」

「そ、それで謎なんだけど……男と言うのはその気になれば誰相手にでも興奮するもんなの?」

「…………」

 

難しい質問だ……アリアの心根の考えはわかる。

アリアはキンジは自分に対して多少なりとも好意を抱いているからそう言う感情があるのか……それともただ単にそう言う生き物なのだから興奮するのかを問うているのだ。本人に言ったら多分全力で否定するだろうが……

 

「まあ……男は産ませる性だからな……ぶっちゃけた話見た目が整った相手であればそう言う気が起きないと言う方が少ないと思う。起きなきゃそれこそホモか相手を異性として全く見てないかだ」

 

無論話してみて性格が糞だったらそんな気が削げるが……

 

「そ、そうよね……」

 

アリアが眼に見えて落ち込んだ。少なくとも自分に対して好意がなくても起こるものだと言うことがわかったからだ。

 

「ただ……そう言う興奮が起きやすい相手と言うのは存在する」

「え?」

「キンジのヒステリアモードは俺も聞いただけなんだけどそう言う状況に対して身構えてればある程度までは耐えられるらしいんだ。まあ限度はあるけどな」

「そ、そう」

「ああ、だからなんつうかお前が相手の場合はそう言う身構えが出来る暇すら与えずに成ってる気がする」

 

本当はキンジがアリアに対して好意を抱いてるのは知ってはいるがそれを言うべきじゃない。言うのはキンジでなければならないと思ってる。

 

「そうなの?」

「まあ興奮自体は誰相手でもするけど……少なくともお前相手だと顕著かなっては思う」

 

あくまで自分の想像だよ~みたいなことを言っておく。後は自分で推理して実行してもらおう。

 

「うん……」

 

アリアは照れ臭いような恥ずかしいような色々な感情が混ざったような顔をした。

 

「ふむ……」

 

一毅は腕を組む。もう一歩突っ込んでおかなければダメそうだ。

 

「よしアリア……キンジの心根を一発で知る魔法の言葉を教えてやる」

「わ、私超能力系はやったこと無いしあんた自分でそう言う才能はないって言ってたじゃない」

「キンジに向かって声を出すだけで効果を発揮するものだ」

 

そう言って一毅は少し息を吸うと、

 

「キンジ……私はあなたの事が好き……注意しとくけど異性としてだからね!……これでどうよ」

「……………」

 

アリアの顔がミルミル赤くなっていく。

 

「この異性としてってのが重要だぜ?そうじゃねえとあいつLOVEじゃなくてLikeの好き誤解して……」

「わ!私は別にキンジの事が好きな訳じゃないわ!ああああああいつはパートナー!と言うか聞いたのだって学問的に気になっただけよ!」

 

ハァハァ息を荒あげる……それからリーフパイを乱暴に咀嚼する。

 

「とりあえず落ち着け。俺は他の人間に言い触らさねえから」

 

とは言えアリアがキンジに対して好意を抱いてるのもまた周知の事実……気付いてないのは当人たちくらいだ。

 

「だから違うわよ……」

 

そう言うが語彙に力がない。

 

「別に良いんじゃないの?好きになったって」

 

一毅はリーフパイを口に含む。

 

「誰か好きになるって言うのは結構低い確率だぜ?だってその誰かと出会って好きになるくらい深く付き合うってだけでも神懸った確率なのにそこから好意に発展する」

「…………」

 

アリアは黙って聞いていた。

 

「なら俺はそう言う心は否定するんじゃなくてその人に向けてあげるべきなんじゃないかなぁと思うぞ。せっかく会えたんだからな」

「ライカの好意に気づかなかった癖に言うわね」

「うぐっ」

 

痛いところを突かれた……でも、とアリアは続けた。

 

「……私好きなのよ……キンジが」

 

やっと認めた……

 

「何時からか分かんない。もしかしたら初めてあったときからかもしれないし別の時かもしれない。切っ掛けっぽいのが多すぎてね」

「だろうなぁ」

「どこに惚れたのかしら……女ったらしで昼行灯で顔は……まあ整ってるけど」

「それはお前にしか分からないな」

 

キンジの良いところは知ってる。でもそれがアリアがキンジを好きになった理由かどうかは別だ。

 

「……そうね」

 

アリアはうなずいた。

 

「参考程度に聞かせて。レキってあんたに何て告白したの?」

「狙撃銃を突きつけて【結婚を前提に付き合ってください】だったな」

「………あの子最初はそんな奴だったの?」

 

アリアは少し引いてる。

 

「そうだな」

 

一毅は少し笑いながら言う。

あいつも変わった。恋は人を変えると言うがアリアも変わっていくのだろうな。

 

「じゃあライカは?」

「いきなしキスされた」

「参考になら無いわね」

 

だろうね……と言いそうになったが黙っておく。

と言うかキスどうこうなどアリアたちからしてみれば今更だろう。

 

「少し自分で考えるわ」

「おう」

 

そう言うとアリアはリーフパイを食べきり立ち上がる。

 

「やっぱりあんたに相談して正解だったわ。またね、一毅」

「またな」

 

アリアが走り去ったあとを一毅はみる。

 

「青春……だねぇ」

 

リーフパイを平らげながら言った一毅の爺臭い呟きは誰の耳にも届くことはない……すると、

 

「ん?」

 

電話が鳴った。電話してきた主は調度話題に上ったキンジだ。

 

「よぅ色男(ロメオ)

《はぁ?》

 

電話の向こうから困惑の声が聞こえた。

 

「で?どうしたんだよ」

《少し付き合ってくれないか?》

「わりぃが男色の毛はないぞ?」

《ちっげぇよ!ジャンヌに呼び出されたんだ。出来ればお前も来いってよ》

「俺も?」

 

腕時計を見れば既に六時近く周りも暗くなり出してる。

そんなときに呼び出すとは……

 

「何処に行けば良い?」

 

なにか不穏な物を感じた。

 

《七時に俺たちは飛行機を不時着させた人工埠頭(メガフロート)だと言われてる……》

「じゃあ現地集合でいいな?」

《大丈夫だ》

 

キンジの返答を聞いてから一毅は電話を切る。

 

「仕方ねぇ……いくか……」

 

一毅はキンジに言われた場所に向かって歩き出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今や懐かしき人工埠頭(メガフロート)……既に飛行機は撤去されたが未だにひしゃげた風力発電用のプロペラとかが残ったままだ。

そんな場所にキンジは足を踏み込む。ここに来るのは事件の時に一回……カナに呼び出されて二回……そして今回で三回。今までここでろくな目にあってないため今回も非常に嫌な予感がする。そういえばカナ(兄さん)は元気だろうか……

 

「はぁい♡」

「……………」

 

なんか普通に居た……

 

「おーい!」

 

そこに一毅も来た。

 

「カナぁ!?」

 

一毅も驚愕する。

 

「何で……――っ!」

 

一毅は周りを見直す。ここまで接近して……その気配は突然現れた……キンジもカナに驚いていたため遅れてたが気づく。

この場には人種を越えて様々なものがいた。

 

明らかにシスターと思われる服装で背中に一毅の断神(たちがみ)のような剣を背中に背負った女。

 

逆卍……つまり示すのは大戦時のナチスの残党と思われる服装で眼帯の女の子。

 

銀灰色の髪を後ろで一つに結んで狙撃銃を携える何処かで見た覚えがあるような顔立ちの少女。

 

中性的な顔立ちと身長の性別は……男かもしれないし女かも知れないような人間。

 

背丈は平均だが肩幅が広く相当鍛えてるのがわかる上に腰に一振りの刀を携えた剣士。

 

線は細く恐らく軍師系と思われるが何かそれだけではないように思える中華服の男。

 

黒い傘に黒いゴシックロリータの服で金髪美少女。

 

変なゴーグルを付けて派手な服を着た男。

 

エジプトの古い服……と言うかあれはパトラだ。

 

全身に機械の装甲をつけた女の子までいる。

 

それどころか良く見れば明らかに鬼の角と思われる物が生えた女の子だとか狐耳の和服の女の子とか……人種処か種族も越えて大集合……

 

「一体何だこれは……」

 

キンジと一毅の体を嫌な汗が包む。

 

「滾るのは良いがまだ仕掛けるんじゃないぞ」

『っ!』

 

二人は振り返る。そこには先程まで全然違う方向に居た狐耳をした和服の女の子が二人の背中に居た……

 

「ふむ……これが今代の遠山か……ふむ、面差しが残っている」

 

そう言うと今度は一毅を見た。

 

「お主が桐生か?」

「あ、ああ……」

「お主にも一馬之助の面影があるの……まあ武の方は影すら踏めておらんようじゃが」

「え?」

 

一毅がどういう事か聞こうとしたところに突然照明が点く。

 

「それでは始めよう」

 

現れたのはジャンヌ……ジャンヌは荘厳な口調で言う。

 

「我らが前に進むために……新たな時代の幕開けのために……ここが世界の中心となる」

 

一毅とキンジは唾を飲んだ。

何が起きるのか全くこれっぽっちも分からないが分かることはある……

 

―――新たな争乱の幕開けだ―――


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