緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の戦い 開幕

「ふぁぁあああ……」

「あ、おはようキンちゃん」

 

襲撃を受けた次の日……キンジは甘くとは言えヒステリアモードを使い更に戦ったためか疲れて星伽神社について早々倒れるように寝た……

 

「おはようキンジ」

「おはようキー君」

 

そして……

 

「無事のようだな。遠山」

「ジャンヌ!?」

 

キンジは驚いた。何故ジャンヌもここに?

 

「お前たちが襲撃を受けたと聞いてな。後……」

 

ジャンヌは何かを出した。

 

「これって……」

「ここに来る直前平賀 文に会ってな。ちょうど良いから渡せとの事だ」

 

そう言ってキンジにジャンヌは多機能コート・龍桜を渡す。

 

「前回の戦いで破壊された龍桜(それ)に改良を加えた完成形だとのことだ」

 

確かに持ってみるとシャーロックの時より軽い……

 

「後、遠山にはこれだ」

 

ジャンヌがキンジにもうひとつ渡す。

 

「だがこれを使えるのか?」

「ま、おいおい何とかするさ」

 

キンジは平賀に預けていた秘密兵器を仕舞う。

 

「そういえば一毅は?」

「ずっとレキの所に居るわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

一毅は胡座を掻いて眠るレキを見る。

 

(また……守れなかった)

 

一毅は拳を爪が掌に刺さるほど強く握る。

 

「桐生様」

「あ、風雪」

 

そこには毛布を持った風雪が来た。

 

「風邪をひきますのでどうぞ」

「すまない」

 

風雪から受け取ると包まる。

 

「……一応桐生様にも言っておかねばならないでしょう」

「え?」

「レキ様の……ウルスの璃巫女について……そして璃璃色金につい……」

「なあ風雪」

 

一毅は風雪の言葉を止めた。

 

「桐生様?」

「俺はバカだ……」

「はい?」

「俺はどうしようもないくらいバカでアホでテストなんて赤点の嵐(レッドポイントストリーム)だし鈍くて鈍感で脳筋で……」

「?」

 

風雪には一毅が何を言っているのか分からなかった。

 

「でもさぁ……」

 

一毅は微笑む。優しく……だが何処か鋭利な刃……一流の名刀しか持ち得ぬオーラのようなものがあった……

 

「そんな俺でも何も分からない訳じゃない……俺とレキが出会ったのも……レキは最近言わなかったけど風とかにも……きっと俺も知らない何かの意思があるのも薄々感じてるしきっと何かとんでもないことが起きてるのも感じてる」

「っ!」

 

風雪は目を限界まで見開いた……風雪は完全に誤解していた。一毅(この男)は誰も気付いていないと思っていのだが誰よりも何かを早く感じ取っていた……だがそれを誰にも言わず自分の中に留めておいたのだ。

基本的には単純で……バカで先を見据えるなんて出来ないと思っていたこの男は実際は誰よりも油断してはならない男だった。計算は出来ずとも……考えるのが苦手でも……油断するべきではなかったのだ。

 

「でもな風雪……俺はお前の口から聞きたくない」

 

一毅はゆっくりと……だが威厳をもってはっきりと言う。

 

「俺は何時かレキが話してくれるって思ってるから……そりゃ表面的な部分は知っておかなきゃいけないし俺なりに推理しなきゃいけない。それが俺の義務だ。そしてそれができたときに俺からレキに聞く……それまでは深いところを知っても意味がないし知りたいとも思わない。それまでは……俺は蚊帳の外で良いよ」

「……分かりました」

 

風雪は頭を下げる。

 

「無礼をお許しください」

「いや、構わん」

 

すると風雪が手紙を出した。

 

「あと、これを桐生様に」

「なに?」

 

一毅は手紙を読む。

 

【清水寺の天辺にて貴殿を待つ……夏侯僉】

 

「……そうか」

 

一毅は手紙を仕舞うとその場を立った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おうっす」

「一毅?」

 

キンジたちは入ってきた一毅を見る。丁度ご飯にするところだったようだ。

 

「お?ラッキー」

 

一毅も座る。

 

「丁度呼ぼうと思ってたところなの」

「わりぃな。大盛りで頼む」

「うん」

 

白雪の超絶ウマウマ和食を一毅はがっつく。

 

「俺たちは今日の新幹線で帰るぞ」

「ああ、行ってこい」

 

一毅の返答にキンジは眉を寄せる。

 

「お前は残るのか?」

「これだ」

 

一毅は夏侯僉の手紙を見せる。

 

「今夜清水寺に行ってくる」

 

キンジは流しながら読むと、

 

「大丈夫なのか?」

「ああ」

 

キンジと一毅の視線が交差すると、

 

「気を付けろよ」

 

改良版龍桜をキンジは一毅に投げる。

 

「いいの?」

 

アリアがキンジに聞く。

 

「大丈夫なんだろ?」

「おう」

 

一毅は魚を口に放り込みながら飯を口にいれる。

 

「じゃあ一毅以外俺たちは東京に戻る」

 

全員が頷いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜……

 

一毅は龍桜の前を締めながら清水寺目指して階段を上がっていく。

一段一段階段を踏み締めながら上がる……風が吹くと龍桜が揺れて背中に刺繍が施された王龍が揺れる。

観光客はいない。入り口が封鎖されていたため恐らく邪魔が入らないように夏侯僉がやったのだろう。上等だ。

そうこうしてると着いた……夏侯僉隠れもせずに手すりから京都の町を見ていた。

 

「良い町だな」

「そうか?」

「ああ、中国にも有名な夜景はあるがこっちには派手と言うよりは怪しい感じだ。そこが良いんだがな」

「あれか?百億ドル夜景だっけか?」

「いや、桁が増えすぎだろ……百万ドルの夜景だ」

 

夏侯僉に突っ込まれた。

 

「ここに来る前日本の歴史少し勉強してきた。京都は日本の歴史の転換の時の戦いの中心地になることが多いんだな」

「へぇ~」

 

一毅は感心した。だが……

 

「それと何が関係ある」

「今も転換の時と言うことだ」

 

夏侯僉は一毅を見る。

 

「お前にも近日中に分かるぜ?お前たちが中心に世界が動き始めてる」

「全く心当たりがない」

「理由はそのうち分かるさ」

 

夏侯僉は剣を抜き剣打の構えをとる。

 

「言わばこの戦いは前哨戦だ。これから起こるでっかい戦いの前菜だよ」

「勘弁して欲しいね」

 

一毅も二刀流の構えをとる……

 

「一つ教えておいてやる……新幹線で遠山キンジたちは帰るみたいだがそっちの方にはココと周岑が向かってるぜ」

「そうかよ」

「心配じゃねえのか?」

「バカかお前は……あいつが死ぬかよ」

「そうか」

 

二人は力を込める。

 

「行くぞ……」

「ああ……来いよ」

 

二人は疾走……次の瞬間刃から火花が散った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃キンジたちは新幹線にいた。

 

「キンちゃん何か飲む?」

「あ、ああ」

 

キンジは白雪からお茶を受けとる。

 

「何だかんだでやっぱり心配してんのね」

「まあ……」

 

動いていく景色を見ながらキンジは一毅を何処かでやはり心配はしていた……すると、

 

「ん?」

 

止まる筈の駅をそのまま走り抜けた……

どういう事かと周りが騒ぎ始める。

 

【新幹線は事情があり止まることができません。不審物をお見掛けした際は近くの職員にお知らせください】

 

『っ!』

 

キンジたちは咄嗟に何が起きているのかを感じ取った。

 

(この新幹線はジャックされたのか!?)

 

「ふざけるな!俺は降りるぞ!」

 

男が緊急用のレバーを引いて無知やりドアを開けようとしたが……

 

「おい!」

「うるせぇ黙ってぼぶぅ!」

 

止めたが聞いてくれそうになかったためキンジは男の鳩尾に膝を叩き込んで意識を刈り取ると適当に縛って転がす。

 

「理子と白雪は運転席の方を……俺とアリア後ろの方を見て危険物がないか見るぞ」

「分かった」

「任せて」

 

二人はうなずく。

 

「後、確かこの新幹線には武藤も居た筈だし何人か武偵も乗り合わせてるはずだ。さっきの放送で危機には気づいてるだろうしそいつらと協力しろ」

 

そう言いつつキンジは改良版龍桜をバッと着る。キンジの龍桜に刺繍された桜吹雪の模様が揺れた。

 

「行動開始だ!」

 

キンジとアリアは後ろへ…… 理子と白雪は運転席の方へと動き出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更にその頃東京では……

 

「今日先輩達帰ってくるみたいだし楽しみだね」

「あかりの場合アリア先輩帰ってくるから~とかだろ?」

「でもライカちゃんだって一毅先輩帰ってくるから浮き浮きしてたじゃん」

「う……」

 

辰正に指摘されライカはそっぽ向いた。

 

「あれ?」

 

すると全員の携帯が鳴った。

 

『え?』

 

全員が唖然とする……内容は東京行きの新幹線がジャックされたこと……そして東京駅を占拠されたらしい……

 

「駅に向かおう!」

 

あかりは言うが早いか走り出してしまう。

 

「あ、待って!」

 

辰正が追いかけだすと他の皆もそれに続き駅構内に入った。

 

 

犯人はすぐに見つかった。数は5人……

 

「ん?その制服は……ああ、武偵か?」

「うぉう!早いな~結構やるじゃん」

「もう少しかかると踏んでいたんだけどな~」

「ま、実力は大したことはなさそうだね」

「……………」

 

男が二人に女が三人の集団はあかり達を見た。

 

「だれ?」

「日本ではこう言うんじゃないのか?聞く前に自分から名乗れ……とな。まあいい、俺は関羅(かんら)……武神・関羽 雲長の子孫と名乗った方が分かりやすいか?」

「おりゃあ甘餓(かんが)……甘寧っていったら結構有名だろ?呉の武将」

「私は楽刄(がくは)~、楽進って言う魏の将の子孫だよ」

趙伽(ちょうか)……趙雲と言う武将の子孫だ」

「………夏侯……(びん)……夏候淵の子孫……」

 

全員が名乗り終える。

 

「まあ名乗ってしまったけどよ。俺たちは別に戦いたい訳じゃないんだぁよ」

 

甘餓はダラリとしながら話す。

 

「俺たちの目的は仲間が乗ってるからここ封鎖しといて迎えて序でにあいつらが倒した奴等を連れていくんだ」

「倒した奴等?」

 

ライカが聞く。

 

「ああ、遠山 キンジ、神崎 アリア、星伽 白雪、峰 理子。あと京都に残ったレキって女と桐生 一毅だ」

『っ!』

 

一年生ズは驚愕した。

 

「ま、良いから帰……」

 

一年生達は全員武器を構えた。

 

「余計退けなくなった」

「あちゃ……言ったら不味かった?」

 

甘餓が振り替えるとその仲間達が肩を竦めた。

 

「やるしかないようだ」

 

そう言って関羅は薙刀のような武器……先祖伝来の武具、青龍偃月刀を握る。

 

「……なら……!」

 

夏候黽は消えた……そして、

 

「っ!」

 

突然背後から現れ武器である鍵づめであかりの首を狙い……

 

「はぁ!」

『え?』

 

風魔の忍者刀一閃で弾かれた。

他の面々はやっと気づいたように風魔を見る。

 

「気を付けるでござるよ。この者は拙者と同じ匂いがするでござる」

「…………」

 

夏候淵は弓矢の名手と言うイメージが強いがもっとも得意としたのは奇襲攻撃である。三日で五百里、六日で千里移動するなどと揶揄されるほどの速い行進は現在では今のように相手の隙を突いて一撃で葬る暗殺者の力へと変貌していた。

 

「ほんじゃあ……」

 

甘餓はカリスティックと呼ばれる棒を両手に一本ずつ持つと疾走……それを志乃が弾いた。

 

「おお、意外と速いねぇ」

「…………」

 

志乃はたった一撃を弾いただけなのに刀を握るのに支障が出そうなほどの痺れを感じていた。

 

「さぁて……遊ぼうか」

 

楽刄はメリケンサックを付けると拳を振りかぶって突進……それを辰正は後ろに流した。

 

「うわっとと~」

 

楽刄は楽しそうに笑う。

 

「面白い技だね」

「そうでもないよ……」

 

流した際に頬を掠り出てきた血を拭う。強い……

 

「行くぞ」

 

その間に趙伽が間合いを詰めていた……

 

「くっ!」

 

あかりは咄嗟にナイフで応戦したが下からの掌底が腕を弾きあげそのまま美しくも鋭い槍のような貫手があかりの腹を穿った……

 

「がぁ……」

 

 

 

「お前が私の相手だな」

 

ライカは構える。

 

「お前がこの中では一番みたいだな。面白い」

 

青龍偃月刀を持ち上げた関羅は頬尻を上げる。

 

「楽しませろよ」

「楽しむ暇だって与えるかよ」

 

京都・京都――東京へ向かう新幹線・東京の三つを舞台に戦いの火蓋が切られた………


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