龍と万人
「そうか……言ってたのか」
「ああ」
一毅とキンジは並んで荷物を手に歩きながら話していた。
会話の内容はキンジのアリアへのヒステリアモードの告白である。
「それで?」
「別に結構普通に受け入れられたよ」
「良かったじゃないか」
「でもぶん殴られるの覚悟だぜ?少し肩透かし喰らったよ」
「だろうな。でもアリアなりの覚悟じゃないのか?お前を受け入れるってのはさ」
「そうかな」
「そうだろ。で?後は買うものはないのか?」
「あとは大丈夫だな」
キンジは袋を覗く。そう、修学旅行まで後二日……新学期も始まって早々忙しいことこの上ないが文句言っても仕方ないので準備だ。因みにアリア、理子、レキの三人も女性同士で買い物に行った。
「歯ブラシ買ったし替えの下着も買ったし序でに移動中に食べても良い御菓子とかも買ったし切れてた牛乳もあるし大丈夫だろ」
「だな……そう言えば白雪はどうしたんだ?武藤がゴリラみたいに闊歩しながら探してたぞ」
「あいつなら星伽に帰ったぞ」
「星伽に~?」
一毅は嫌そうな顔をした。あまり言いたくないが白雪も星伽自体もなに隠してることはシャーロックが口走っていたことからもキンジと一毅は感じ取っている。聞きたいこともあるが白雪はその事には触れないでオーラを出しまくっているため聞くに聞けない。
そんなときに星伽への帰郷である。何かありそうだ。
「ま、今は情報が少なすぎる。そっとしておこうぜ?どちらにせよ刀が戻ってきたって話かもしれないし」
キンジが言っているとそこにフワリフワリとシャボン玉が飛んできたかと思うとキンジに当たってパチン!っと弾けた。
『ん?』
「お前ら今一人死んでもう一人は戦闘不能ネ」
そう言ってシュタッと近くの木から綺麗に着地した黒髪の長いツインテール……チャイナ服を着ているものの背も低く童顔で何と言うか……色違いのアリアである。後序でに酒臭い。
「なんだ?この幼女……お前また拾ったのか?キンジ」
「人を幼女と見れば片っ端から拾うみたいな事言うんじゃねえよ!」
「ああ、すまん。幼女はアリアだけだったな。ロリコン」
「すっげえ爽やかな笑顔で人を貶めるな!」
まあ大体あってるだろう。するとアリア擬きが怒った。
「誰が幼女カ!ココはもう14ヨ!!!!!」
「アメ食うか?」
「いただくヨ」
一毅が出したデカイペロペロキャンディーをココと名乗ったアリア擬きは舐め始める……だが、
「はっ!」
「ぷぷ!」
「騙し討ちよくないヨ!!!!!」
ついさっきシャボン玉で奇襲かけただろう……
「わかったわかった。牛乳飲むか?」
キンジが牛乳を出すとココは奪う。
「これで将来バインバインネ……はっ!」
キンジと一毅は腹を抱えて笑った。
「騙すには最低よ!」
『悪い悪い』
謝るもののキンジと一毅は完全に笑ったままである。
「ウガー!!!!!」
ココは地面をダンダン踏む。
「お前ら0点ネ!!!!!ココをバカにしすぎヨ!!!!!絶対後悔させたるネ!!!!!」
そう言ってどこかへ走り去った。
「何だったんだあいつ……」
「さぁな……ああ!」
「どうしたキンジ!」
急にキンジが叫んだため一毅は見る。
「いや、あいつペロペロキャンディーと牛乳はなんだかんだ言いつつちゃんと持っていったぞ……」
「そ、そう言えば……」
一毅とキンジは呆然としたままその場に立ち尽くした………
『ただいま~』
「ムカつくムカつくムカつくーーー!!!!!」
キンジの部屋に行くとアリアがダンダン床を踏んでいた。こっちも本家アリアがイライラしている。
「あ!キー君!カズッチ!お帰……」
『失礼しました!!!!!』
キンジと一毅はクルッと背を向け走りだし……
「逃がさないよ!」
理子の髪に捕まった……
「離せ理子!イライラしたアリアになんて近づけるか!」
「そうだ理子!離すんだ!」
「だってアリア理子に八つ当たりしてくるんだよ!」
『知るか!』
グギギギギ……と一毅とキンジの二人は踏ん張って逃げようとしたが結局理子の髪の毛に部屋に引きずり込まれた……因みにそれ以降キンジの部屋は髪の毛のお化けが人を飲み込むと言う噂が立ったがそれは別の話である。
「で?何があったんだ?」
部屋にはレキもいたがじゃんけんの結果キンジがアリアに事情を聞きに行った。
理子いわく買い物でちょっと眼を離した隙にアリアが突然襲われたらしい。一応撃退には成功したもののかなり苦戦を強いられ勝負の途中で逃げたらしい。
「しかも私が行く途中で食べようと思ってたアメとか飲もうと思ってた牛乳を持ってかれたわ!!!!!」
『ん?』
キンジと一毅が首をかしげた。その出来事どこかで聞いたような……
「アリアさん。牛乳では胸大きくなりませんよ?(注・ホントです)」
「ええ!それホントなの!?レキ!」
「はい。あれは元々牛の胸が大きいからそう言う噂が立ちましたが医学的にも統計的にもあれは嘘です」
アリアがガーン!っと言う顔になった。
「飲んだって然程変わりません」
「何だかレキュ経験則からも言ってるが(パキュン!)……失礼しました」
理子が何か言おうとしたがレキに顔の真横銃弾通過で黙らされた。
「待て待て!話が逸れてる。で?どんな奴だったんだ?」
「髪が黒くて、背が低くて……ツインテールで……」
『ん?』
一毅とキンジは首をかしげた。どこかで聞いたような特徴だ。
「後語尾に【ネ】とか【カ】とか着けてて……ああ!そう言えば名乗ってたわ!そいつは……」
『ココ……』
一毅、キンジ、アリアの三人の声がハモった。
「何で知ってんのよあんたたち!」
「俺たちもさっき襲撃されたんだ」
キンジがアリアに事情を説明する。
「ふぅん……あんたたちも奪われたわけね」
「まあ……」
奪われたと言うか冗談であげたらそのまま持ってかれたと言う方が正しいんだが……
「ココか……」
「理子?」
一毅が理子を見る。
「ココは知ってるよ」
『っ!』
全員が眼を見開く。
「【万人の武人】ココ……一時期イ・ウーに出入りしてたよ」
「じゃあ仲間だったのか?」
「ううん。潜水艦の燃料とか食料とかを買っていたんだ。と言うかココは既に
「売り手と買い手の関係ってやつか」
キンジが言うと理子が頷く。
「因みに理子の中国拳法もココ直伝だよ」
「はぁ?私のところに来たココは剣を使ってきたわよ」
「だから【
『…………』
全員があんぐりと口を開けた。何だその何でもあり人間……誰にしても戦い方の得意不得意がある。
テレビゲームにしたって同じシューティングでも狙撃が得意だったりしたり拳銃の方が好きだったりと存在する。それが現実となれば尚更でそのために武偵だってチームを組んで不得意を潰すがその必要がないと言うのは中々面倒だ。まあ何人もいる訳じゃなければその一人に注意すれば良いとも考えられるがそう簡単なものでもない。
「また……面倒事が起きそうだな……」
キンジは半ばもう諦めたような声を出す。
「いつもの事だしココより今は修学旅行の事を考えようぜ」
「そうだな……」
キンジを含めその場の全員がうなずいた……