「ウォオオオオラァ!」
一毅は右手に握った
「ひゃ!」
だが宍戸はそれを横に動いて意図も簡単に躱すと鎖分銅を勢いよく降りながら一毅の顔面めがけ投げる。
「くっ!」
一毅は
「うらぁ!」
「ひゃふ!」
一毅は
「くっ!」
一毅は横に転がって躱す……そして、
「二天一流・必殺剣!二刀側転斬!!!」
「くぉ!」
一毅は転がりながら素早く
「甘いでぇ!」
「っ!」
宍戸は素早く腕に鎖を巻いて防具代わりにして一毅の二刀による斬撃を受け止めるとその隙を突いて鎌を握り直し一毅に振り下ろす。
「くぅ!」
どうしても生じてしまう攻撃後の硬直を突かれた一毅は咄嗟に
「ぐ……」
「ひっひっひ……」
一毅は片手では足りず右手の
「ウッラァ!!」
このままでは押し負けると判断した一毅は二刀を横に大きく振ることで鎌を横に逸らして何とか回避することに成功する。
更にそれだけに終わらず一毅は素早く立ち上がり渾身の頭突きを宍戸に叩き込んだ。
実はキンジの方が石頭だが一毅も結構石頭なのだ。
「ぐがっ!」
宍戸は突然の頭突きにふらつきながらも壁にもたれる……その隙を一毅は見逃さない。
一気に宍戸との間合いを詰めると、
「二天一流・必殺剣!!豪双!!!!!」
壁を背にした相手を二刀で挟み込み一気に一撃を叩き込む二刀流の技……
一馬之助が牛に襲われたがギリギリで角に当たらず助かった光景から天啓を得た妙技である。
相手を壁に追い込んでいないと使えないが意表を突くには充分すぎる技である。
「がぁ……」
宍戸が膝をついたのを見て一毅は一旦後ろに下がって距離を取る……すると、
「ふひひ……今のは結構痛かったでぇ……」
「っ!」
完全に決まっていた……現に宍戸はふらついている……だがそれでもなお宍戸はニタリと笑い一毅を見る。
【
「行くで……」
「くっ!」
宍戸が言った次の瞬間……鎖分銅がその手から放たれた。先程とは比べ物にならない速度をもって一毅を狙うが何とか横に跳んで躱す。だがそれを見て宍戸は笑った……
躱されたのに笑う?意味がわからなかった……が、
「っ!」
一毅は殆ど無意識に伏せた……すると頭上を分銅が通っていく。
見てみれば鎖が柱を支点に方向を転換していた。
だが再度隙ができてしまった。
「ヒィイイイイヤッハァアアアア!!!」
「ちっ!」
宍戸は其処を狙って飛びあがると一毅を狙って鎌を振り下ろす。
「くっ!」
一毅は体勢を崩しながらも後ろにそれを跳んで躱す。
「ウララララ!」
だが宍戸は逃がさんと言わんばかりに追撃し鎌をぶん回していく。
「らぁ!」
それを一毅は
『ぐ……ウォオオオオアアアアア!!!!!!!』
一毅と宍戸の腕の筋肉が隆起する。互いの腕がミキミキ言う……
「負けるかぁああああああ!!!!!」
すると次の瞬間一毅の体から蒼いオーラが現れた。
これの名は【ブルーヒート】…これは前回紹介した【ヒート】の一つで前回の【ホワイトヒート】の上位種に当たる。
【ホワイトヒート】は火事場のくそ力とするならこの【ブルーヒート】は更に深奥に眠る肉体の力を限界まで強引に引き出す。使用後に筋肉痛になるが此処から繰り出すのは二天一流の奥義……
「勝機!!!」
二天一流において
奥義は今回は出さないがどちらも共通して言えることは 【ブルーヒート】状態であること……だが違うところは奥義はどんな状況でも使えるが秘奥義は限定的な状況でしか使えないと言うことだろう……そしてこの秘奥義は鎖鎌に対してのみ使える秘奥義……
一馬之助が鎖鎌使いの男と戦った際に使った秘奥義……
「二天一流……秘奥義……」
一毅の目が光る。それはまるで獲物を見つけ……勝利を確信した龍の目……
「
絡まっていた刀を勢いよく引き抜きつつ相手の体勢を崩させる。そしてその力を利用してそのまま二刀の連撃を叩き込んだ。
「がはっ……」
宍戸は血を吐いて膝を付く。だが倒れない……
「おい、かなり深く決まったんだ……下手に動くのは危険だぞ……」
「黙ってろや……お前にだけは……お前にだけは負けるわけにいかんのや……お前みたいに汚いやり口で点数稼ごうとする奴にだけは……負けられんのや!」
「はぁ?いきなり何言ってんだ?」
「惚けんやない!ついこの間適当な罪作ってしょっ引いたやろうが!」
「何を言って……」
一毅は困惑する……この男は何を言っているんだ?
だがそこに、
「動くなぁ!」
『っ!』
声が響き渡り一毅と宍戸はその方を見る。そこにはレキにナイフを突き付ける男が居た……
「なにしてんねん!木島!!!!!」
宍戸に木島と呼ばれた男は一度こっちを見る。
「てめえがあん時に邪魔しなけりゃ…お陰で俺は元締めにてめえの首を持っていかなけりゃいかなくなった……だと言うのにそこのバカは負けるしよぉ……」
木島は頬尻を上げる……
「とは言えお前もバカだなおい、こんな女一人に命賭けて突貫かよ」
「そう言うことか……」
一毅は木島の方を向く……
「そこの男の言ってることが可笑しいわけだぜ……どうやら嵌められたらしいぞ、あんた」
一毅は宍戸に言いながら確信する……ぶっ飛ばすべきなのはこいつだ……宍戸じゃない。
「どう言うことや木島!こいつが適当言って捕まえたんやないんか!」
「バカですね組長……こっちは薬捌いてたってのにこいつが邪魔したんですよ……」
木島は一毅を見る。
「まあここは逃げさせてもらうぜ……薬売った金はたんまりある…それで海外に高飛びだ……」
木島はレキを引きずり離れ始める。
(くそ……どうする……)
一毅は奥歯を噛み締める。
「……………」
「くそ!とっとと歩きやがれ!」
「その必要はありません……」
レキはゆっくりと木島を見た。ゾッとするほど機械的な感情のない目……
「あ?」
「貴方はここで……」
レキは
「死ぬ……」
「っ!」
一毅は次の瞬間光一との会話がフラッシュバックした。
「私は一発の弾丸……」
「辞めろレキ!!!!!」
一毅は考えるより先に持ち銃であるジェリコ941を抜くと天井に発砲した。
『っ!』
その場の全員が驚きで一毅を見る。そして一毅は
「ぎゃ!」
木島の肩に深々と
「レキ!走れ!」
一毅の声を聞いてレキはこっちに走る。
「このガキ!」
木島は
「なっ!」
「残念やったな……」
それは宍戸の鎖分銅で弾かれた。
「くそ!」
木島は後ろの扉から逃げだした。
「待たんかい!!」
宍戸がその後を追う。
『………………』
二人がいなくなり一毅とレキだけになるとその場が沈黙した。
「レキ……お前今死ぬ気だっただろ?」
「ええ」
一毅が聞くとレキは何でもないかのように答えた。
「何でだ……?」
「足手纏いになるなら死ねと……」
「風か……?」
「はい」
一毅は自分の中の血がカァっと熱くなったような感覚がした。
「ふざけんな!」
一毅はレキの胸ぐらを掴む。レキの感情のない目が一毅の目を合う。
「何が風だ……てめえはんな意味分かんねえ物のために死ねんのかよ!」
「そう命じられたのなら……」
「っ!………」
一毅はレキを乱暴に離す。
「そうかよ……なら勝手にしやがれ……!!!!!!だけどなぁ……俺は命を粗末にする奴は大っ嫌いなんだ……二度とその顔見せんな!!!!!」
一毅は木島の逃げた方のドアをぶち開けるとレキを見ずに出て行った。
だが結局その日……木島は見つかることはなかった……