緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の夏休み その三

(ん?)

 

ライカは布団から体を起こす。

 

「ふわ……」

 

大きな欠伸をひとつして私服に着替える。

夕べは歓迎会と称し結構遅くまで騒いでいた。そのため少し寝坊してしまった。

因みに今の服装はTシャツとジーンズと簡素で男っぽいが機動性重視だ。

 

「あれ?」

 

降りると誰もいない。まだ子供たちは起きてきてないのだろう。だが一毅たちは……と思ったとき、

 

「オラァ!」

「っ!」

 

裏の道場の方から一毅の声が聞こえた。

 

「失礼します」

 

道場にはいると、

 

「ラァ!」

「惜しいな」

 

一毅と一明が木刀二刀流で打ち合っていた。とは言え一毅は完全に遊ばれてる。

 

「あ、ライカさんおはようございます」

 

レキはライカの方を向く。

 

「どれくらいやってるんですか?」

「彼此一時間くらいですかね」

 

レキが言っていると一毅は右手の木刀で切り上げる。

 

「よっと」

 

一明は木刀の切っ先で止めると反対の手の木刀で軽く一毅の額を突いた。

 

「ホレホレ~彼女がもう一人来たぞ~カッコいいところ見せたれ」

「この!」

 

一毅は反対の手の木刀で一明を払う。だがそれを少し首を逸らしてミリ単位で躱すと頭突きをぶちこんだ。

 

「がっ!」

 

一毅が後ろに倒れた。

 

「中々腕をあげたな~。学生相手なら負け無しだろ?」

「よく言うよ……」

 

一毅は立ち上がると構え直す。

 

「丁度いいや。ライカちゃんも一緒にどうだ?」

「え!?」

 

ライカは驚く。

 

「レキちゃんには断られたしな」

「勘弁してください。私はそう言う混戦での戦いは苦手です」

「で?どう?」

「……分かりました」

 

ライカはいつも持ち歩いているグローブを着ける。

 

「一応生で見てみたかったからね。お前の強さをさ」

 

一明も少し目を細める。

 

「一毅に二天一流おしえて貰ったんだろ?」

「は、はい」

「見せてみな……一毅が信用したお前の力をな」

『っ!』

 

ホンの一瞬だけ見せた桐生 一明の覇気……自分達の潜った修羅場など幼稚園児の喧嘩程度だったのかと錯覚するほどの恐怖を叩きつけられた気がした。

 

「………」

 

ライカは腰を落として体を僅かに捻る。

 

「放つタイミングは任せるぞ!」

 

先に一毅が疾走……両手の木刀を握ると右手の長い方の木刀で突く。

 

「っ!」

 

一明は左手の木刀を前に出して一毅の物とぶつけると剃らしそのまま右手の木刀で脇をすり抜けながら一閃……

 

「ぐっ!」

「っ!」

 

そこにライカが跳躍……

 

「うぉおおおおおお!!!!!」

 

ライカの煉獄掌が一明を狙う……だが、

 

「やっぱりな」

 

一明は納得した顔で動きを止める。

そしてライカの煉獄掌が決まった瞬間威力に逆らわずに回転……

 

「しゅ!」

 

その勢いを利用してライカを投げながらそっと地面に転がした。ちゃんと頭を打たないように気遣いまでされた……

 

「この!」

 

一毅が背後から跳ぶ。

 

「二天一流・必殺剣!二刀側転斬!!!!!」

「っ!」

 

だが一明はダン!と足を踏み鳴らし体を捻って躱すとそのまま一毅の頭を木刀で打った。

 

「あが!」

「……ん?ああ、わりぃ。咄嗟だったから気付かずに手加減忘れた」

「気付かなかったって……」

 

一毅は頭を押さえながら座り込む。

 

「心眼……か?」

「お?誰に聞いたんだ?」

「前に戦った男からだ」

「ふぅん」

 

一明は目を細める。

 

「お前も使えるのか?」

「まあ……自分の意思では使えないけど」

「その方がいいさ」

 

一明は木刀を壁に置く。

 

「まだ成長しきってない体じゃ将来体をぶっ壊す可能性がある。お前が成人したら教えるはずだったんだけどな」

「でも強いですね……」

 

ライカはレキに立たせられた。

 

「そりゃお前らより乗り越えた修羅場は多いからな」

「あ~麻薬組織を二人で潰したとか?」

「確か500人でしたっけ?」

「凄いですよね~」

「それ嘘だぞ?」

『え?』

 

一明の言葉に三人は唖然とした……が、

 

「実際は援軍とか来てその倍以上はいたかな……いや~途中から数えんのめんどくなってさ」

『え……?』

「流石に同僚たちがドン引きしたね」

 

そりゃしただろうね……その言葉は一毅達三人の心に秘められ同時に噂は当てにならないと言うが今回は当てになって欲しかった三人であった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を食べた後ライカとレキは二人でアサガオ内の探検をしていた。こうやって歩いてみるとなんとも広い家だ。

 

「大きいですね。レキ先輩」

「ええ」

 

耳を澄ませば海の音とセミの鳴き声……平和だ。

 

「でもさっき実は一発くらい入れられると思ったんですよね~」

「まだまだ戦力分析が未熟ですね」

「いやだって反則的な強さですよ?」

「一流と呼ばれるクラスになればあそこまでとはいなくても今のライカさんより強いのはたくさんいますよ」

「そうなんですけど……」

 

やっぱり悔しいものは悔しいのだ。

それに一明がライカの煉獄掌を見たときに呟いた言葉ははっきりと聞こえた……

 

(なにがやっぱりなんだ?)

 

するとレキが止まる。

 

「どうしたんですか?」

「いえ、少しこの本が気になりましてね」

 

レキが指差すとリビングのテーブルの上にポンっと本が置かれていた。

 

「えーと……桐生家の家系図?」

 

レキとライカが顔を見合わせる。

 

「ちょっと見てみません?」

「まあ見ても怒られるものではないでしょうし」

 

そう言って開けてみる。一番下には一毅の名前……更に上にいくと一明、一心、一條(いちじょう)一茂(かずしげ)と続いていく。更にこれは珍しいことに母方の方にも親までならば載っていた。

 

「こうやって見ると長いんですね~」

「確か江戸時代の初期からですからね」

 

そうやって見ていくと……

 

「あれ?」

 

ライカは一人に目が止まる。

 

「桐生……一武(かずむ)……」

「知ってるんですか?」

「あ、いえ……この人の奥さんの両親なんですが……」

「え?」

 

そこには……【斉藤 一】【斉藤(旧姓・楢崎) 龍】

 

「あれ?」

確か楢崎(ならさき) (りょう)は……

 

「坂本 龍馬の奥さん?」

『……』

 

二人が沈黙した……

 

「あれ?どうしたんだ?」

『っ!』

 

そこに一毅が顔を出した。

 

「ああ!それそこにあったのか!探してたんだよ~」

「あ、すいません」

「いや、二人に見せようと思ってたからいいんだけどな。レキが去年来たときは見せられなかったし」

 

そう言って一毅も隣に座る。

 

「なげぇだろ?まあそれでも世界的に見たらまだ日が浅い一族だけどな」

「そうなんですか~じゃなくって!」

「ど、どうした!」

 

ライカが急に大声を出したため一毅は驚く。

 

「これなんですか!?」

 

そう言ってライカは指差す……そこには先程の斉藤 一と龍の名前だ。

 

「あ~それな。まああれだよ。真実は記述より奇なりって言う言葉があってだな」

「一毅さん……真実は小説より奇なりです」

「……………ま、まああれなんだよ。その斉藤一は本当は坂本 龍馬なんだ」

『……は?』

「実はさ~」

 

一毅が言うには斉藤 一改め坂本 龍馬は恩人であり親と言っても過言ではない男を殺され下手人を探すため京都に潜伏……そして斉藤 一と名乗りながら犯人を探し犯人と同じ剣術を使う集団、新撰組に入隊しその後様々な事件に巻き込まれながら犯人を突き止めるもその先にある巨大な陰謀が発覚……そして最後は全身に銃弾を受けつつも黒幕を切り捨てると同時に坂本 龍馬と言う名を完全に棄てて斉藤 一として生涯を閉じたらしいとのこと……

 

「じゃ、じゃあ坂本 龍馬が切られたって言うのは?」

「あれは斉藤 一として行動してる最中に現れた偽物だよ。因みに切ったの斉藤 一だからな?」

「じゃあ今の日本史って……」

「まあ少なくとも幕末辺りの下りは全部間違ってるぞ」

『…………』

 

ライカとレキは呆然とした。

 

「だから今の二天一流って斉藤 一の剣技とか無手も組み込まれてるから正確に言うと桐生 一馬之介が作った剣術じゃなくなってるんだよな~」

 

因みに斉藤 一は右手に刀と左手に銃を持つ乱舞の型と言われる戦い方や拳銃を使った戦いを得意とした男なのだが残念ながら桐生にはそっちは引き継がれず一刀と無手のみに限定された技を引き継いでいる。

 

「もしかしたら辿っていくと一毅先輩の一族って日本史を根っこからぶっ壊しそうな秘密が出てきそうですね」

「まあ私の先祖もチンギス・ハンと言うか源義経ですし今更一毅さんの先祖に驚きの繋がりがあっても驚きません」

「ええ!」

 

ライカが驚愕した。

 

「あれ?言ってませんでしたっけ?」

「もしかして私だけ普通の一族……?」

「でも確かライカのお父さんだって有名じゃん」

「良い年こいて覆面被って戦ってますけどね」

 

ライカがそっぽ向いた。

 

「一応親が別れたとは言え父親なのには変わりませんから恥ずかしいです」

「まあまあ」

 

ライカの父親はアメリカで有名な覆面武偵で誰もその素顔を知らない。特殊な能力を持たないがその反面平賀もビックリな武器(ガジェット)で戦うアメリカを代表する武偵の一人だ。現在はライカの母親とは離婚して別の人と結婚している。まあそれでも連絡はとってるらしい。

 

「でもだとするとライカってハーフ?」

「まあそうなります」

「じゃあ英語とか喋れますか?」

「まあぎりぎり日常生活位だったら大丈夫ですよ」

「…………」

 

一毅は黙る。一毅は英語なんぞしゃべれるはずもない。

 

「レキ先輩って何ヶ国語くらいしゃべれるんですか?」

「フランス、イタリア、ドイツ、英語に中国と韓国語にアラビア語までです」

「世界中で生きていけますね」

「一毅さんも少し勉強したらいかがですか?」

「良いんだよ……俺は日本からでないから……日本語だけ話せてれば良いんだよ!中国にもフランスにもドイツにもアメリカにもイギリスにも行く気はないし」

「武偵は世界中に雄飛せよですよ?一毅先輩」

「う……」

 

一毅はそっぽ向いた。

 

「おーいお前ら~」

 

そこに一明が顔を出した。

 

「これから海に行くんだけど行……」

「行く行く今すぐ行く!!!!!」

 

一毅は立ち上がるとレキとライカを立たせる。

 

「さ!行くぞお前ら!」

「逃げましたね」

「ホントですね」

「ぐふぅ……」

 

一毅は二人を引きずりながら血涙を流した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに海での一件は残念ながら記すことはない。普通ならば女子の水着姿にドキドキするだろうしそれが楽しみだった読者の皆様には大変残念だろうが沖縄は日差しが異常に強く水着で遊ぼうものなら背中とかがあっという間に火傷したみたいになり水脹れが出来てしまい大変なことになるのでTシャツ等を着た状態で遊ぶからである。




次回で東京に帰ります。

後、一毅の一族に出てきた斉藤一のお話を詳しく知りたいお方は【龍が如く 維新】をプレイすればわかると思います。

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